The Big Brass Ring -第一の嘘- ★★★1/2
放送局: ショウタイム
プレミア放送日: 8/15/99 (Sun) 20:00-21:45
製作: ミレニアム・フィルムス、ドナルド・ズッカーマン/フィルムコ・プロ
製作総指揮: ジョン・トンプソン、ウィリ・バエア、ボアズ・デイヴィッドソン
製作: アンドリュー・フェファー、ドナルド・ズッカーマン
監督: ジョージ・ヒッケンルーパー
脚本: ジョージ・ヒッケンルーパー、F. X. フィーニー
撮影: クレイマー・モーゲンソー
音楽: トーマス・モース
編集: ジム・マキージ
出演: ウィリアム・ハート (ブレイク・ペラリン)、ナイジェル・ホーソーン (キンボール・メナカー)、ミランダ・リチャードソン (ダイナ・ペラリン)、イレーネ・ジャコブ (チェラ・ブランディニ)

物語: ミズーリ州知事の座を狙う政治家のブレイクは、石油王の娘である妻ダイナの懐を有効に使って最終的にはホワイトハウス入りを狙っていた。ブレイクは選挙日まであと数日という忙しい日々を過ごしていたが、そこへヨーロッパから米国に来たばかりで何としてでも米国でスクープをものにしたいTVレポーターのチェラが現われ、レイモンド・ロメロとは誰かと尋ねる。レイモンドはベトナムで行方不明になったブレイクの兄であり、彼女はその名を、隠遁して現在はハバナに住んでいる元政治家、キムから聞いたと言う。キムはブレイクとレイモンドの養父であり、ホモセクシャルということが災いして失脚したという過去を持っていた。チェラはキムがハバナを離れ、セント・ルイスに来ていることをブレイクに告げる。いまさら兄のことを公けにできないブレイクの元に、素性の知れぬ封筒が届けられる。その中には、若い時のブレイクが黒人の男と絡みあっている写真が同封されていた。すべてはキムが仕組んだことであり、キムはブレイクが大統領になった暁には自分もホワイトハウス入りしたい希望を伝え、もしそれがかなわなければ写真を対立候補の元に送り付けると脅す。ブレイクは聞き入れず、写真は対立候補の手に渡るが、しかしブレイクも奥の手を持っていた。対立候補は元KKKのメンバーで、ブレイクはその写真を手に入れていたのだ。強請り、脅迫、贈収賄等の権謀術数が渦巻く中、選挙は投票日を迎える‥‥

The Big Brass Ring オーソン・ウエルズが生前残した脚本を基に映像化したショウタイムのオリジナル映画。野心や裏切りが渦巻く政界を舞台としたポリティカル・スリラーで、往年のフィルム・ノワールを彷彿とさせる雰囲気を持った作品である。85年に死去したウエルズはオリジナル脚本を82年に書いており、これを「市民ケーン」と対をなす政治ドラマとして位置づけ、ウエルズ自身が今回ホーソーンが演じた謎の引退した政治家キムを演じるはずだったが果たせなかった。因みにオリジナル・タイトルの「ビッグ・ブラス・リング」とはホワイトハウスを意味している。

主人公のブレイクに扮するのは、「蜘蛛女のキス」、「偶然の旅行者」等、演技派の代名詞ウィリアム・ハート。82年の「真夏の夜の夢」以来17年ぶりのTV出演である。近年ハートはこれといった作品に恵まれていない。シャルロット・ゲンズブールと共演した「ジェーン・エア」などは私には怪奇映画にしか見えず、ハートとフランケンシュタインの怪物がほとんどダブって見えた。キムに扮するナイジェル・ホーソーンは「英国万歳!」で気のふれた英国王ジョージ3世を演じて絶賛された。ここでも半分しらふ、半分狂気みたいな演技で相変わらずうまいなと感心させられる。

この二人に絡むのが、アル中気味で情緒不安定のブレイクの妻ダイナを演じるミランダ・リチャードソン(「愛しすぎて 詩人の妻」、「魅せられて四月」)と、野心家のTVレポーターに扮するイレーネ・ジャコブ(「二人のベロニカ」)。リチャードソンは出番が少なくて損している。しかもたまに出てくるシーンが大袈裟な演技が要求される場面ばかりで、はっきり言って鼻に付く。一方のジャコブの方はハートとの絡みもあり、出番も多く、儲け役。ヨーロッパ出身の女優は絡みのシーンで惜しげもなく脱ぐところが潔くてよい。また、ジャコブに限らず、ヨーロッパの女優の喋る英語のイントネーションは独特のエロチシズムがあるなと感じるのは私だけか。というか、アメリカ英語がきっとあまり綺麗じゃないということなのかも知れない。

製作総指揮は「カリートの道」のウィリ・バエアと、現在新作を次々に送り出してインディペンデント映画界に活気を与えているヌ・イメージ会長のアヴィ・ラーナー。監督は「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」でエミー賞を受賞したジョージ・ヒッケンルーパー。脚本はヒッケンルーパーとカルト・ホラー「フランケンシュタイン 禁断の時空」のF. X. フィーニーが、共同でウェルズの脚本をさらに脚色している。

流石にウエルズの遺作になるはずだった脚本ゆえ、見応えがある。役者も申し分ないし。が、時々ストーリーが入り組んでよくわからなくなってしまう部分もあることも確か。しかし、雰囲気がよく出ているため、あまり気にならない。新聞評では何が言いたいのかよくわからない、と散々叩いている評もあったが、私は楽しんだ。どうせ英語が100%理解できているわけではないし、わからなかったところを勘と想像で補うのはお手のもんです。それに往年のフィルム・ノワールなんて結構ストーリーなんてこじつけで雰囲気だけで持っていたようなもんだし、それに較べればむしろちゃんと筋が通っていると言えるのではないだろうか。出てくる役者は皆うまいが、爛れたホーソーンが一番うまいと私は感じた。これを当時の恰幅のよい (というか、デブの) ウエルズがやれば‥‥きっとこの上ないあくどいキムが出来上がったんだろうなあ。確かにそれは見たかったような気がする。


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