Dash & Lilly - 三十年の愛 ハメット&ヘルマン- ★1/2
放送局: A&E
放送日: 5/31/99 (Mon) 20:00-22:00
製作: A&E/グラナダ・エンタテインメント A&E/Granada Entertainment
製作総指揮: スタン・マーガリーズ
製作: ジェリー・ルドウィグ、クレイグ・マクニール
監督: キャシー・ベイツ
脚本: ジェリー・ルドウィグ
撮影: ブルース・サーティース
編集: シンディ・モロ
音楽: ローラ・カープマン
美術: キャロル・スピヤー
出演: サム・シェパード (ダシール・ハメット)、ジュディ・デイヴィス (リリアン・ヘルマン)、ビビ・ニューワース (ドロシー・パーカー)、デイヴィッド・ペイマー (アーサー・コーバー)

物語: 1930年。小説家を志すリリアンはMGMで不満を抱えながら台本読みとして働いており、脚本家の夫ともうまく行っていなかった。夫と同伴したあるクラブで当時既に名声を確立していたダシール・ハメットに一目で惹かれたリリアンは、夫を席に残したままダシールの後を追う。リリアンは夫に離婚を申し出、ダシールと付き合い始めるが、ダシールは女癖が悪く、リリアンがいても外泊の癖は治らない。一方リリアンも直情型で、いい男がいるとすぐに寝てしまう。しかし似た者同士の二人は時に派手な喧嘩をしながらもお互いから離れられない。しばらくしてリリアンはダシールのアドバイスによって小説から戯曲に転身、ブロードウェイで成功して一躍注目の的になる。しかしそのプレミアの夜もダシールは帰って来ず、リリアンは明け方まで独りぼっちでダシールの帰りを待っていた。時代は進み、ハリウッドでは赤狩りが始まり、リリアンは公聴会での供述を求められる。リリアンは生活の安定をとるか、自分の信念を貫くかの選択を迫られる‥‥

Dash & Lilly アメリカのケーブルのベイシック・チャンネル、A&E (Arts & Entertaiment) が英国のグラナダと共同で、「マルタの鷹」や「血の収穫」等、ハードボイルド小説の元祖として知られるダシール・ハメットと、「子供たちの時間」、「ラインの監視」のリリアン・ヘルマンの何十年にもわたる共同生活を映像化。共にハリウッドで脚本を提供し、当時のスターにも負けない華やかな生活を送り、酒、煙草、ゴシップに彩られたハメットとヘルマンの暮らし振りは、ハリウッドでは既に伝説の部に属しており、ヘルマンの自伝「ペンティメント (Pentimento)」からも伺い知ることができる。因みにこの本の一部が映画化されて「ジュリア」となった。

「ハメット&ヘルマン」は、ハメットとヘルマンの出会いから、ハメットが癌で死去するまで公私にわたってパートナーであり続けた30年以上にわたる二人の関係に焦点を絞って描く。因みに原題の「ダッシュ&リリィ (Dash & Lilly)」とは、ハメットのファースト・ネイムのダシールと、ヘルマンのファースト・ネイム、リリアンの愛称のことだ。暴力や性描写にうるさいベイシック・チャンネルということもあり、性的に自堕落な生活を送っていたハメットとヘルマンの関係を描いているにもかかわらず、ヌードやセックス・シーン、暴力描写はほとんどなく、すべて匂わせる程度に留められている。これは初監督となったキャシー・ベイツの意向もあるだろう。番組はヘルマンが1952年の公聴会で共産党シンパの名前の公表を求められるが、自分の信念に従ってそれを拒否するというのがクライマックスとなっており、その時迷っているヘルマンがハメットと出会った頃を回顧するというシーンが番組のオープニングとなっている。

主演のハメットに扮するのは、寡黙でセクシーな男を演じさせたら右に出るものはないと評されるサム・シェパード。TNTのオリジナル映画「ゴースト・アウトローズ (Purgatory)」に続いてのTV映画出演で、その他ショウタイムの「リリィ・デイル (Lily Dale)」、CBSの「荒野の追跡者・ラレード通り (Streets of Laredo)」等、近年はTV映画出演が多い。道理で最近スクリーンで見る機会が少ないわけだ。もったいないと思う。あれだけカリスマ性のある役者は滅多にいないのに。「ライトスタッフ」と「天国の日々」のサム・シェパードより格好いい男は見たことがない。ヘルマンに扮するのはジュディ・デイヴィス。私は彼女の顔、好きだなあ。若々しさを失わず、理知的で、特に怒った時にわなわなと震える唇がなんとも言えません。昨年CBSのオリジナル映画「エコ・オブ・サンダー (Echo of Thunder)」でエミー賞候補になるなど、シェパード同様TV界にも活躍の場を広げつつある。同時代の女流作家として名高いドロシー・パーカーには、TVシリーズ「チアーズ (Cheers)」で91、92年と連続してエミー賞を受賞したビビ・ニューワースが扮している。

演出を担当しているのはなんとキャシー・ベイツ。NBCの「ホミサイド」やHBOの「Oz」等TVシリーズを監督した経験があるが、2時間ものに挑むのは今回が初めて。ベイツは監督に挑む理由について、「役者と違って誰かの振りをするという嘘をつく必要がなく、自分が好きなようにストーリーを語れるから」と言っている。製作総指揮は、「ルーツ」で知られるスタン・マーガリーズ。撮影は「ダーティハリー」、「レニー・ブルース」、「ビッグ・ウェンズデー」、「ペイルライダー」等、あらゆるジャンルの撮影を手掛け、アメリカ映画界の名手として知られるブルース・サーティースが担当している。「ダーティハリー」と言えば、冒頭、殺人事件のあった高層ビルの屋上にサングラス姿で現われるクリント・イーストウッドもシェパード並みの格好よさがあったなあ‥‥

閑話休題。

好きな二人の俳優が主演しているのだが、残念ながら作品は成功しているとは言い難い。ベイツの演出はほとんど常套的で、火のついた煙草と灰皿のアップからパンしていくオープニング・シーンなど、今どきこんな陳腐な演出をするのがいるのかと驚いたほど。シェパードは「ゴースト・アウトローズ」では悪くなかったので、これはやはり脚本とベイツの演出力のせいか。ヌード・シーンの一つも見せずに身持ちの悪い男と女を描くのも、よっぽど脚本/演出/演技が三位一体となって絡みあってないと説得力ないでしょう。ベイツはともかく、他は一流の布陣なんだがなあ。皆さん、次回に期待します。


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