RKO 281 -ザ・ディレクター 「市民ケーン」の真実- ★★
放送局: HBO
製作: スコット・フリー・プロダクションズ/HBOピクチャーズ
プレミア放送日: 11/20/99 (Sat) 20:00-21:30
製作総指揮: リドリー・スコット、トニー・スコット
製作: スー・アームストロング
監督: ベンジャミン・ロス
脚本: ジョン・ローガン
撮影: マイク・サウソン
編集: アレックス・マッキー
音楽: ジョン・オルトマン
美術: マリア・ダーコヴィッチ
衣装: スチュワート・マケム
出演: リーヴ・シュライバー (オーソン・ウエルズ)、ジェイムズ・クロムウェル (ウィリアム・ランドルフ・ハースト)、メラニー・グリフィス (マリオン・デイヴィース)、ジョン・マルコヴィッチ (ヘルマン・マンキーウィッツ)、ブレンダ・ブレシン (ルエラ・パーソンズ)、ロイ・シャイダー (ジョージ・シェイファー)、フィオナ・ショウ (ヘッダ・ホッパー)

物語: 天才と騒がれ、「ボーイ・ワンダー (神童)」の異名をとり、20代前半にして既に名声を確立し、鳴り物入りでRKOと契約しハリウッド入りしたウエルズは、しかしスタジオが自分の撮りたい作品を撮らせてくれないため、次第に焦りを強くしていた。そんな時、ウエルズと盟友マンキーウィッツは、当時新聞王として全米の活字媒体を牛耳っていたハーストの豪邸に招待される。しかし闘牛の話をするウエルズと動物愛好家のハーストは初っぱなから意見が合わない。その夜、大広間でハーストが愛人のマリオン・デイヴィースと二人きりで踊っているのを見たウエルズは、これこそが自分が作りたい映画だと天啓を受ける。ハリウッドに絶大な権力を振るっていたハーストを怖れるマンキーウィッツは最初嫌がったが、ウエルズの熱意にほだされ、一緒に脚本を書くことを了承する。しかし協力して出来上がった脚本にはマンキーウィッツの名はクレジットされてなく、ウエルズとマンキーウィッツは袂を分かつ。ウエルズはRKOチーフのシェイファーを口説き落とし、「市民ケーン」は撮影を始めるが、映画製作では素人同然のウエルズは、たちまち行き詰まる。ある日マンキーウィッツの元を訪れたウエルズは、許しを乞い、二人はまたもや共同で「市民ケーン」に取り掛かる。ウエルズはほとんど傍若無人なやり方で製作を進行、平気で徹夜で撮影を続行するなど人使いは熾烈を極め、予算も大幅にオーバーするが、名匠とうたわれた撮影監督のグレッグ・トーランドらの尽力により、ついに撮影は終了する。しかし、「市民ケーン」が自分をモデルにしていることを知ったハーストは、公開を見合わせるようMGMのルイス・B・メイヤーを筆頭とする各スタジオのトップに圧力をかけ、その圧力に屈したスタジオは、資金を持ち寄って「市民ケーン」のネガを買い取り、作品を抹消しようと決議する‥‥

Shreiber & Scheider 史上ナンバー1の映画との呼び声も高い歴史的傑作、「市民ケーン」製作の舞台裏を描くドキュドラマである。天才とうたわれたオーソン・ウエルズと新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストとの確執を中心に、「市民ケーン」がどのようにして製作され、どのようなスキャンダルを生み出し、ほとんど公開が絶望的となった状態からどのようにして抜け出すことができたかを、事実とフィクションを綯い交ぜにしながら繙いていく。番組は、これらの困難を乗りきってなんとか作品上映にこぎ着けたウエルズとマンキーウィッツが祝杯を上げ、番組内で「市民ケーン」が幕を開けるところで幕となる。因みにオリジナルの番組タイトルの「RKO 281」は、RKOスタジオで「市民ケーン」に与えられた製作番号である。

「ザ・ディレクター」は、96年にアカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー「The Battle Over Citizen Kane」を見て感銘を受けた、「エイリアン」、「ブレードランナー」等で知られる映画監督のリドリー・スコットが映画化権を獲得していたものである。しかし、事実を基にしており、現存する人物が多いため、ハリウッド映画にした場合、著作権やら肖像権等、クリアしなければならない難問が多かった。それもそうだろう、ハーストの圧力に屈し、悪者として描かれることはまず間違いないだろうスタジオのトップの関係者が、映画化を喜ぶとは到底思えない。スタジオから金が出なければ、映画なんて作るのは不可能である。些細な事に時間をとられ過ぎるのを嫌がったスコットは、そのため今回は製作総指揮のみを担当することにし、「グレアム・ヤング毒殺日記」で注目を浴びたベンジャミン・ロスに演出を委ね、HBOと共同でTV映画として製作した。製作総指揮には、スコットの弟の、「トップガン」、「クリムゾン・タイド」で知られるやはり映画監督のトニー・スコットも共同で当たっている。名前からもわかる通り、プロダクション会社のスコット・フリー・プロダクションズは、スコット兄弟の製作会社である。

脚本は、来年公開予定の「グラディエイター」で今度こそリドリー・スコットに本を提供するジョン・ローガン。現在はオリヴァー・ストーン監督、アル・パチーノ主演のアメリカン・フットボール映画「エニィ・ギヴン・サンデイ」が公開中である。撮影は「リトルマン・テイト」、「スノーホワイト」のマイク・サウソン、音楽は「リトル・ヴォイス」のジョン・オルトマン、「市民ケーン」のセット再現というとんでもない所業に挑んだ美術は、「スライディング・ドア」のマリア・ダーコヴィッチが担当している。

ウエルズに扮するのは、「スクリーム」シリーズのリーヴ・シュライバー。ディーン・クーンツ原作の「Phantoms」といい、一時期ホラー映画には必ず彼が出ていたという印象がある。来年には「スクリーム3」公開が控えているが、本人は至ってシリアスな役者であり、本当にやりたいのは「ハムレット」のような舞台劇である由。ホラー映画は、一応名が売れて手っ取り早く金になるからね、と割り切っての出演である。ヘルマン・マンキーウィッツに扮するのは、「ジャンヌ・ダルク」、「マルコヴィッチの穴」等、今年も何かと評判の作品に出ているジョン・マルコヴィッチ。ウエルズと敵対するハーストには、「ベイブ」、「L.A. コンフィデンシャル」のジェイムズ・クロムウェル、その愛人マリオン・デイヴィースにメラニー・グリフィス。RKOチーフのジョージ・シェイファーにロイ・シャイダー。ハーストの圧力に屈せず「市民ケーン」を完成させるという、見場のいい儲け役である。他に当時のゴシップ・コラムニストとして有名なルエラ・パーソンズを、「秘密と嘘」のブレンダ・ブレシンが演じているが、こちらはほとんど出番らしい出番もなく、カメオ的な出演である。

番組はほとんどの部分は事実を基にしているが、ポイントとなる重要なシーンでは思い切った脚色を見せ、ドラマ性を高めている。ウエルズがハースト邸で、深夜ハーストと愛人のマリオン・デイヴィースが豪華なダンス・フロアで二人きりで踊るシーンを見、ハーストの傲慢さと孤独さの振幅の大きさから「市民ケーン」の着想を得るシーンなどはその最たるものである。ハーストと顔見知りだったマンキーウィッツはともかく、ウエルズは生前一度もハースト邸に招かれたことはなかった。番組のラストで偶然ウエルズとハーストが同じエレベーターに乗り合わせる、というのも、事実とするならこんなにドラマチックなことはないだろうが、こちらもフィクションである。しかし、こういった事実と創作の違いがとても気になるところが、この番組の主題の大きさを物語っているとも言える。

野心のある大きな番組であるが、成功したかというと私には疑問である。アメリカのマスコミでも評価は分かれていて、誉める媒体は絶賛していたが、貶すところは歯牙にも引っかけないという格好であった。この番組が好きでない媒体は、多分ウエルズと「市民ケーン」に対してある種の思い込みがあり、それと比較して番組を評価するからだろう。そりゃあ「市民ケーン」と較べて誉められる番組がそうはあるとは思えないからなあ。かくいう私も「市民ケーン」を思い出しながらこの番組を見ていた。だって番組内の「市民ケーン」の撮影シーンでは、まったく映画そのままの構図が登場するのだ。どうしても思い出してしまう。するとやはり、シュライバーとウエルズではやっぱり格が違うなあと思ってしまうのだ。シュライバー、うーん、悪い役者ではないんだが、役者としてではなく、自信の漲った傲慢な人間としてのウエルズとは、残念ながらカリスマ性に格段の差があるのが歴然である。

マンキーウィッツに扮するマルコヴィッチの方も、うまい配役とは言い難い。マルコヴィッチが最も映えるのは、やはり「危険な関係」や「ザ・シークレット・サービス」の様な癖のある悪役だろう。今回の、才能はあるがうだつの上がらない作家という役どころは、まともすぎて別にマルコヴィッチでなくともよかっただろうにと思ってしまう。逆に、ハーストに扮するクロムウェルは楽しめた。「ベイブ」の人のよさそうな田舎のおじさん役から、「L.A. コンフィデンシャル」では役柄ががらっと変わった裏のある人間を演じていたが、今回のハースト役はどちらかというとその延長上にある。役幅が広いのは演技力のある証拠でしょう。あるいは本人自身の懐が深いのか。どちらにしても大したものだ。ハーストの愛人デイヴィースに扮するメラニー・グリフィスは、私はやはりマルコヴィッチと共演した「狼たちの街」での似たような役柄を思い出した。要するに不幸な女性ということである。出番がそんなに多くないから、よいとも悪いとも言えないのだが、正面を向くと顎が歪んでいるような気がして、それが気になってしょうがない。バンデラスとお幸せにお暮らし下さい。


HOME