
That Championship Season -栄光の季節- ★★★1/2
放送局: ショウタイム
放送日: 6/6/99 (Sun) 20:00-22:00
製作: ショウタイム、MGMワールドワイド・テレヴィジョン
製作総指揮: ゲイリー・シニース
製作: スティーヴン・グリーナー
監督: ポール・ソルヴィノ
脚本: ジェイソン・ミラー
撮影: ブルース・サーティース
編集: レオ・トロンベッタ
音楽: ラリー・ブランク
美術: ジョン・デクアJr.
出演: ポール・ソルヴィノ (コーチ)、ゲイリー・シニース (トム)、ヴィンセント・ドノフリオ (フィル)、テリー・キニー (ジェイムス)、トニー・シャルーブ (ジョージ)
物語: 20年前にペンシルヴァニア州の高校大会で優勝を果たしたバスケットボール・チームのメンバーは、毎年コーチの家に集まって旧交を暖めるのが慣例となっていた。持ち前のカリスマ性で市長に上り詰めたジョージ、中学の校長をしているジェイムス、親から事業を受け継いだ羽振りのいいビジネスマンのフィルに加え、州外に去った二人のうち、文筆家として生計を立てているジェイムスの兄のトムも姿を見せた。表立っては皆再会を喜んでいたが、しかし20年の歳月は彼らの間に超えられない溝を作っていたのも事実だった。トムはアル中となっており、コーチは胃の手術をしたばかりで安静にしていなければならないが、教え子の手前、虚勢を張って倒れてしまう。ジョージは再選を狙っており、ジェイムスがその選対参謀としてフィルに財政援助を申し込んでいたが、実はフィルは裏で対立候補を援助する約束をしていた。ジェイムスは自分のキャリアのためにどうしてもジョージに再選してもらわなければならなかったために、激昂してフィルがジョージの妻と浮気をしていることを皆の前でばらしてしまう‥‥
ジェイソン・ミラーの書いた「栄光の季節」は、71年のニューヨーク・ドラマ批評家賞、72年のドラマ・デスク賞、73年のトニー賞、ピュリッツァ賞等、名だたる賞を総嘗めにしたアメリカの戯曲史上最も高い評価を受けている作品のうちの一つである。過去の栄光にすがり時代に取り残された人間が登場するという設定のために、時にアーサー・ミラーの「あるセールスマンの死」と並び称されることが多いが、現在でも繰り返し舞台にかかる「あるセールスマンの死」に対して、「栄光の季節」は、過去の名作として現在では半ば忘れられた存在となっている。ジェイソン・ミラーと書くといったい誰のことかと思うだろうが、「エクソシスト」のカラス神父役と言えば、頷かれる人も多いだろう。あの、顔の濃い彼である。本業は劇作家で、自分でも舞台に立ち、作家/俳優を兼業している。
番組の演出を担当し、かつコーチとして重要な役どころで出演もしているのがポール・ソルヴィノ。舞台のオリジナル・キャストでフィル役だったソルヴィノは、82年の映画化版にも出演している。原作者のミラー自身が監督し、ロバート・ミッチャムやマーティン・シーン、ステイシー・キーチ等の著名な俳優を配したこの映画は、ミラーの経験不足や晩年で病気勝ちだったミッチャムの大雑把な演技により成功せず、今では忘れられた作品となっている。以来ソルヴィノは再映像化を念願としており、自分よりこの作品を熟知しているものはいないとショウタイムの社長ジェリー・オフセイを説き伏せての監督/出演となった。俳優としてはイタリア人然とした風貌を活かした「グッドフェローズ」等多くの出演作があるが、最近では娘のミラ・ソルヴィノがアカデミー賞を受賞した時に涙を流しながら喜んでいた人のよい父としてのイメージが定着している。
裏表のあるビジネスマン、フィルに扮するのは、「フルメタル・ジャケット」で精神に異常を来たして上官を殺した上に自殺する若者を演じて注目されたヴィンセント・ドノフリオ。あのデブ、と思うだろうが、彼はそのために40パウンドも増量して役に挑んだそうだ。ロバート・デ・ニーロみたいに役になりきる俳優がこの国にはこんなにいるのかとびっくりするが、そんなに簡単に体重の増減が図れる体質というのも驚きである。そうさせたキューブリックも大したものだが。彼は最近では「メン・イン・ブラック」等の話題作にも出演している。自分が認められていないと感じている鬱屈した中学校の校長ジェイムスには、現在HBOで放送され評価の高い硬派ドラマ「Oz」に出演中のテリー・キニー。市長ジョージに扮するのは、7年間続いたNBCのシットコム「ウィングス (Wings)」でのタクシー・ドライバー役で知られているトニー・シャルーブ。「リストランテの夜」の偏屈なコック役が印象に残る。出演者の中で最も知名度の高いゲイリー・シニースは、アル中ということを隠しながら久しぶりに故郷に帰って来る、やや狂言回し的な役柄のトムを演じている。シニースは製作総指揮も担当し、番組を全面的にサポートしている。脚本は完全な室内劇だったオリジナルに、冒頭に屋外シーンを取り入れるなど90年代ぽくミラー自身が多少の脚色を施したが、基本的にはほぼオリジナル通り。撮影はA&Eのオリジナル映画「ダッシュ・アンド・リリィ (Dash and Lilly)」に続いてのTV映画となるブルース・サーティースが担当している。
「栄光の季節」は、20年前に州大会で優勝したバスケットボール・チームのメンバーの再会の光と陰を描く骨太のドラマである。今や中年となったメンバーは実生活での利害も絡み、表面上は再会を喜んでいるが、実際は皆隠していることがある。たった一人昔のまま変わらないのがコーチで、旧態依然の行動様式に凝り固まったコーチは、再会が酒が入り、皆が本音を吐露してくると愕然とし、叱咤激励して事態を収拾しようとする。また、たった一人、恒例となった年に一度の再会に一度も現われない5人目のメンバー、マーティンは、コーチとの間に何か確執があったことが仄めかされる。番組はそれらの秘密が徐々に解き明かされ、しかも栄光の記憶そのものが土台から崩れていくクライマックスに至るまでの展開を、ほとんどスリリングとも言えるタッチでドラマ化しており、目が離せない。ソルヴィノは流石この作品に最初から係わってきただけあって、勘所を押さえた演出をしている。役者も皆それぞれ頑張っているが、私としてはポイントとなる狂言回しに扮したゲイリー・シニースにもう一頑張り欲しかった気がする。悪いわけじゃないのだが、彼はもっとうまかったはずと思うからだ。見応えがある作品だが、ほとんどが一つのセットで展開し、喜怒哀楽の激しい演技の応酬が続くため、これはやはり舞台での方が映えるだろうなという印象は如何ともし難い。しかし何年も忘れられていた作品に再度陽の目が当たるようにしたソルヴィノには敬意を表したい。
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