American Juniors   アメリカン・ジュニアス   ★★1/2
放送局: FOX
プレミア放送日: 6/3/03 (Tue) 20:00-21:00
ホスト: ライアン・シークレスト

内容: 子供版「アメリカン・アイドル」。

American Juniors 「アメリカン・アイドル」は、第2シーズンにしてFOXの中核番組として確立、FOXにとってなくてはならない番組となった。今後「アメリカン・アイドル」は、1年に1回ずつ放送されることが決まっているが、この金の成る木を1年にたった1回しか放送できないなんて、もったいないことおびただしいとFOX幹部が思ったのは、火を見るより明らかだ。いつでもすぐ製作できる番組なのに、半年間を何もせずにじっとしていなければならないのか。

とはいえ、この手の番組は、露出が過ぎると急激に人気は下降線を辿る。ABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」が、人気の出たのをいいことに週4回も編成された挙げ句、あっという間に飽きられてしまうという、番組の興隆と凋落の悲惨を視聴者が目の当たりにしたのは、ついこないだのことなのだ。

そういうわけでFOXは、「アメリカン・アイドル」に「ミリオネア」の轍を踏ませることなく、大事に育てるという方向で一応は関係者の了解を得ている。しかし、それでも、これだけ人気あるものを、次のシーズンを今編成できれば、また話題になるのは必至、視聴率1位を狙い、コマーシャル料金も跳ね上がるのは目に見えている。ああ、もったいない、もったいない。

とFOXが思ったのは間違いなく、そして、それでも「アイドル」の第3シーズンを今編成できなければ、似たような別の番組を作っちまえばいいと思ったのも、また確実である。それが、今度は参加者を6歳から13歳までに絞った、ジュニア版「アメリカン・アイドル」、その名も「アメリカン・ジュニアス」なのだ。「ジュニア」ではなく「ジュニアス」と複数になっているのを見てもわかる通り、今回はたった一人のアイドルではなく、5人のグループを作ることを前提にして番組が進んでいく。

とはいえ二番煎じだからな、「アメリカン・アイドル」だって第2シーズンの途中、少しだれたし、どうしよう、見ようかな、見ないでおこうかな、と思いつつもついつい見てしまった。番組の内容はほぼ「アメリカン・アイドル」と同一なのだが、最終候補者が揃って本選が始まった後、「アイドル」では視聴者投票によって最も人気のない者から一人ずつ落とされていったものが、「ジュニアス」では、一人一人、人気のあるものから当確していくというところが、進行としては最も異なっている。誰を落とすのかではなく、誰を選ぶのか、というのがポイントになるわけだ。多分、まだ小さな子供を一人一人落としていくという進行にした場合、最後に一人残されて落とされる子の気持ちを慮ってのことだろうと思う。

ところでその内容であるが、少なくとも、予選が終わって本選が始まるまでは、実は「アイドル」よりも「ジュニアス」の方が面白かったと言えなくもない。「アイドル」では、何をカン違いしたのか、どこから見ても音痴でしかない者が応募して来、それがジャッジのサイモンにこき下ろされるというところが面白かった。しかし「ジュニアス」の場合、だいたい親が自分の息子娘を連れてくるわけで、むしろ歌う本人よりは、その親の方が気合いが入っていたり、極度に緊張していたりする。自分の子が、多分初めてこれだけの人の前で歌うわけであり、多くの親は自分の子の歌に合わせて一緒に口ずさんでいたり、時には子供の晴れ舞台に感極まって、涙をこぼしたりしているのだ。あんた、それ、たかだか予選だぞ。そんな、泣くほどのものでもあるまい。とは思うものの、つい見てるこちらも口元が緩んでしまうのであった。

また、自分の子に絶対の自信を持っている親なんて、自分の息子/娘が落とされたのが納得できず、カメラ相手に憤懣をぶちまけたりしている。そばに子供がいるのに、Fxxk、とか、Sxxxt、とか、放送禁止用語を連発して怒ってたりするのだ。そばでは子供たちの方が、お母さん落ち着いて、みたいな感じで親をなだめたりしている。あるお母さんはどうしても腹の虫が収まらず、子供に、どうする、番組を告訴しようか、なんて訊いていた。あんたってば‥‥

もちろん、失敗して悔しい思いをして泣き出してしまう子もおり、歌い終わった直後に、自分が失敗したことをわかっているため、いきなり壇上から駆け降りてお母さんの膝の上に飛び乗って泣きじゃくる子もいたりなんかして、微笑ましいシーンも随所にある。子供って可愛いじゃん、なんて思わせてくれるのだ。

とまあ、思ってたより面白いじゃないか、この番組、と、わりあい感心して見始めたのであるが、実は、それも予選のシーンのみだった。「アイドル」ならこれからが本番という、最後の何人かが凌ぎを削る本選に入り、これからもっと面白くなるというところで、「ジュニア」は逆に失速し始めるのだ。その理由はいくつかあるが、最も大きな理由として挙げられるのが、「アイドル」で参加者をこき下ろす辛口ジャッジで皆から嫌われていた、サイモン・コーウェルの不在にあるのは間違いあるまい。

サイモンは、最低、とか、まったくよくない、とか、あんたはこの場に相応しくない、というような発言を平気でする。そこまで言われる参加者がショックを受けて泣き出したり、過剰反応したりするのを見るのが、「アイドル」の面白さの一つだった。ところが、「ジュニアス」の参加者は6歳から13歳までの子供たちだ。いくらなんでもそんな年端も行かない子供たちに、さもつまらなさそうに、出直して来い、なんて言えるわけがない。というわけで、当然のことながら「ジュニアス」ではサイモン、あるいはサイモンのような辛口ジャッジはいない。基本的に毎週登場するジャッジは、グラディス・ナイトとデビー (デボラ)・ギブソンで、共に幼い頃から芸能界デビューを果たしているところを買われたんだろう。

しかし、いまだに現役、というか、大物、という風格のあるナイトに較べ、ギブソンの方は、どうしても一発屋としての印象の方が大きい。実は私は彼女のデビュー・アルバムを持っており、当時 (既に10年以上も前の話だ) はわりとよく聴いた。洋楽ファンにはわりと人気のあるアイドルだったが、しかし本当にアルバム一枚きりで消えていった。私としては、結構きつい人選でないの、と思ってしまうが、本人は芸能界復帰、みたいな感じで楽しそうにやっているところをみると、自分が落ち目になったという気などさらさらないのだろう。

その、大御所と元アイドルの二人のレギュラー・ジャッジに、その週の特別ジャッジが加わって、参加者にコメントを加えたりする。しかし、シリアスなコンペティションとはいえ、相手はまだ10歳前後の子供である。当然のことながら、やはり失敗しても、そんなに酷評はできないのだ。たとえサイモンが「ジュニアス」に出ていたとしても、やはり子供相手にけちょんけちょんにやっつけるのは気が進まないだろうし、もしそんなことをしたら、今度は全米の怒りを買うに決まっている。そのため、どうしても、ジャッジは全員、なんとか参加者のいいところを見つけて誉めようとする。ああ、この子は失敗したなと腹の底では思いはしても、それを口に出すことはない。

つまり、結局、それが面白くないのだ。結局、なんか、なあなあの馴れ合いのできレースを見てるみたいになってしまい、「ジュニアス」は「アイドル」が持っていた勝負としての駆け引きや熾烈さ等の、一発勝負の面白さの部分を見事に取り払ってしまった。サイモンが失敗してしまった者にさらに傷口を抉る発言で死者に鞭打ち、それに耐える者を見る視聴者の嗜虐的な喜びは、ここにはない。やはり番組が競争として成り立っている以上、そこにはこの種の感情的な昂ぶりを見たいと思うのが視聴者の希望であって、ジャッジが参加者に気兼ねしている「ジュニアス」では、これは不可能だ。そのため、勝ち抜き型のリアリティ・ショウとしては、「ジュニアス」は成功していない。

さらにもう一つの理由として、やはり歌う子たちの歌唱力のレヴェルの問題がある。もちろん全米中から選りすぐった子供たちであるわけで、全員かなりの歌い手であるのだが、しかし、それでも「アイドル」の歌い手たちと較べると、一人一人の差がかなりあるように感じる。さらに、自分の得意な曲とそうでない曲とでデキの差が激しく、今回はうまく歌ったが、次回もうまく歌えるかはわからない、というような不安定さをどの子も多かれ少なかれ持っている。男の子なんてこれから声も変わってくるわけだし、やはり皆発展途上であって、たまにこういう子が一生懸命に歌っているのを聞く分にはいいが、毎週毎週見ようという気にはやはりならない。番組が進むに連れ、本当ならもっと盛り上がってくるはずなのに、番組としては逆に段々視聴率が落ちていっているのは、多分私と同じように感じる視聴者が多いからだろう。「ジュニアス」に第2シーズンはないと見た。

番組ホストは「アイドル」同様ライアン・シークレストなのだが、実はシークレストは、最初の数週間放送分の、本選が始まるまでの、最も面白いオーディション部分では登場しない。実は当初「ジュニアス」はシークレストではなく、「アイドル」でジャッジをしているポーラ・アブドゥルがホストとして考えられていたからだ。子供が中心の番組であるため、ちょっと皮肉っぽいシークレストよりも、「アイドル」で常にどこかしら歌い手のいい点を探し出して誉めようとするアブドゥルの方が適任だとの配慮が働いたのだろう。しかし結局、アブドゥルはこのオファーを蹴り、シークレストが「アイドル」同様ホストを務めることになった。

そのため、シークレストが最終的にホストに決まった時には既に「ジュニアス」のオーディションは始まってており、このオーディションの放送分ではTV画面にシークレストは登場しない。ただヴォイス・オーヴァーで後から画面に彼の声を被せただけだ。ホストもやはり、最も印象を残せるのは本選が始まってからではなく、画面に映ってお喋りする機会の多いこのオーディションの部分であるために、本人としてはいささか残念だったろうが、ま、しょうがない。


追記 (8/03):
私がまず第2シーズンはないだろうと踏んだ「ジュニアス」であるが、案に相違してこの番組、とにかくプレミアから数回の視聴率はよかったため、気をよくしたFOXは、秋から「ジュニアス」の第2シーズンを始めると発表した。しかしその後視聴率は降下し始め、番組が終わる頃には、誰も「ジュニアス」の話題など口にしなくなっていた。慌てたのはFOXで、いきなり、一度は発表した今秋の新シーズンで、火曜夜8時から編成されていた「ジュニアス」の第2シーズンを撤回、私の予想通り、「ジュニアス」に第2シーズンはないことになった。当然でしょう。面白くないもん。とはいえ、これで「ジュニアス」が完全に消滅したわけではなく、FOXは、もしかしたら来夏にまた「ジュニアス」を編成する可能性は残されているとしている。というわけで、来夏、FOXが何かまた新しいリアリティ・ショウを考え出すことができなければ、「ジュニアス」は復活してくるかもしれない。やめた方がいいと思うけど。



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