青少年有害社会環境対策基本法をめぐる現在までのあらまし



まず、この法案が登場した背景には
10年前の「有害図書追放運動」とそれに伴い各地方自治体で制定された青少年条例から連なる流れの歴史的要素
97年の「神戸連続児童殺傷事件」を皮切りに少年犯罪や児童狙いの大人の犯罪の増加が騒がれ社会不安が強まるなどの時事的要素
インターネットにより性や暴力、犯罪や危険物の情報が無審査で国境を越え誰もが閲覧できるようになった事への世界的対応というサイバー・グローバル的要素
政権として、与党としてとにかくメディアを自分の管制下に置きたいと考える内閣・自民党の政治的要素
などが絡み合いながら存在しています。

2000年4月に参議院自民党が法案の素案骨子を作成し立案したところから動きは始まります。
法案の内容は前述の背景要素に対応するような形となっていて、各都道府県の「青少年条例」を中央立法として一つにまとめ上げ、「有害な」情報の規制を強化する事が考えられていました

法案が立案された直後に映倫などのメディア団体や個人有志の共同声明と言う形で激しい反応が飛び交いました。
6月にはメディア・法律の関係者によって行われた緊急アピールでは、

「メディアと問題行動との関係に短絡的な見方」
「青少年を保護(健全化)の対象としてのみ捉え、権利の主体とする視点が全く見られない」
「市民やメディアのこれまでの自主努力をないがしろにする行政優位思想」

「価値観や道徳への国家の過剰介入、表現・報道の自由や情報受領の自由への公権力の規制を容認するもの」


として批判しています。
以降のさまざまな法案反対意見においても同様の指摘を繰り返し述べていますが、それにもかかわらず、
現在に至るまで自民党内の法案推進者が指摘された事柄についてリアクションを持った事は一度もありません。

「メディアの悪影響が犯罪の要因」→「それらの有害情報から青少年を保護し健全な育成」→「そのために立法しメディアや表現活動に規制」

この図式が彼らの頭の中では「何も反論は行われなかった」かのように維持され続けています

2000年夏には文部省が「有害情報の研究」、性・暴力の表現の影響について調査に乗り出し、年末に結論としてメディアの法規制の必要性を主張し、法案制定のための小委員会を設置します。
その間の秋から冬には、対抗する動きとして、民主党が青少年「健全育成」法としての民主党案の作成に取り掛かり、民放連や出版倫理協議会は法制定を監視するための「第三者機関」の設置準備をはじめました。

12月には、15日、日本ペンクラブが法案撤回を求める声明を発表したり、18日に民放連が自民党 田中直紀議員(「青少年を取り巻く有害な環境対策の推進に関する小委員会」委員長)に「法案は必要ない」と申し入れたりするなどの反対の動きがあり、21日には民主党が自党法案の骨子を発表しました。

また、この月の後半は2001年新春公開予定の映画「バトル・ロワイアル」をめぐる討議が国会内で行われ、「何を以って有害とするのか」議員の人たちの感覚・認識力が明らかになるいい機会でもありました。
「(見てないけど、)中学生の殺人シーンがあるらしいから不健全」
「(同)暴力描写が激しいらしいから不健全」
「(同)政府批判や政策に逆らう描写があるらしいから不健全(←!)」

と言った代物でした。

翌年2001年1月は民放テレビ各局のキャスター有志によって法案反対の声明が発表されたのを始めとしテレビ、雑誌、新聞、ネット上などで法案の話題が多く扱われ始めた時期です。
その後2月から3月にかけて全日本テレビ番組製作者連盟、日本放送作家協会、シナリオ作家協会、日本ジャーナリスト会議、日本弁護士連合会が反対声明発表。
また、推進の立場と反対の立場との間での話し合いも比較的積極的に行われ、
2月2日に民放連による公開シンポジウム。自民党 石井道子議員(「青少年を取り巻く有害な環境対策の推進に関する小委員会」委員)民主党 水島広子議員(「有害情報から子どもを守るための基本法制定」プロジェクトチーム事務局長)と両陣営から参加。後日、民放連と民主党法案チーム、自民党法案の委員会などの意見交換が行われました。結果上は認識の差が明らかになるだけに終わったようですが。

17日には日本ペンクラブ、日本ジャーナリスト会議など6つのメディア関係団体の主催で「誰のためのメディアか―法的規制と表現の自由を考える」シンポジウムが開催され、パネリストとして6名の各分野の識者と300名の出席者が参加しました。
このシンポジウムは国会テレビで放映されるなど、メディア業界と政府の両側に大きな反響を与えたようです。

4月に民放連は民主党案「子ども有害環境からの子どもの保護に関する法律案」骨子に対しても反対意見を発表しました。続いて児童人権擁護NGO(非営利団体)「エクパット関西」の要友紀子氏によるメディア規制に関する論文が発表され、その中で民主党案への反対意見も述べられました。自民党案同様に児童を保護の対象としてのみ捉え権利を省みない法案であり、決して「自民党案よりマシ」ではないことを指摘しました。
19日、民放連は法案対策機関として「放送と青少年問題特別委員会」を設置しました。

5月から7月にかけては法案推進・メディア規制サイドの動きが活発に進んでいました。
5月18日に警察庁・文部科学省・プロバイダ業者・大学教授ら13人が「インターネット上の青少年に有害なコンテンツ対策研究会」を発足、6月半ばにはさらに警察庁内に有害情報の研究会を設置、7月に入ると文部科学省がアメリカに調査団を派遣しテレビ番組の「格付け」について調査、その結果を「文部科学省青少年有害環境会議」にて検討する,と言った動きがありました。

7月後半には各メディア団体・企業が独自に青少年へのメディアの影響について調査・データを発表する,と言う動きがありました。
8月21日に民放連は「放送と青少年問題」対応策の進歩状況を発表。自主調査、自主規制という側面を以って法案に対抗する姿勢が活発となりました。

しかし、10月に入ると内閣の「青少年育成推進会議」によって「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」がまとめられ、本格的なメディア規制の準備が開始されたと見られる状況になっていきます。
11月後半には自民党の法案小委員会が「青少年有害環境対策法案修正案」をまとめました。
この修正案に対するヒアリングが12月に行われ、関係省庁とメディア団体から意見が求められました。


2001年までの動きはここまでの形となります。
乱暴な言い方をすれば、根本的な問題点・反対意見に対する解決が何らなされないまま自民党の手でずるずると押し切られようとしている状況のようです。



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