CD Review 1999/6/2

『This Song』/黒沢健一

ポニーキャニオン/PCDA-01168

このところ黒沢秀樹、USEとL⇔Rのメンバーのソロ作品が立て続けにリリースされたが、それらに次いでリリースされたのが、黒沢健一の久々のシングル。収録されている「This Song」「Free Bird」の2曲とも、現在O.A.中のNTV系ドラマ「ロマンス」の挿入歌として既に流れているので、聴かれた方も多いはず。久々に聴く彼のヴォーカルは、以前にも増して隅々にまで神経が行き届いた、透明感ある素晴らしい出来。ドラマというタイアップの影響も多少あるかも知れないが、今作では特に詞の内容に彼らしさがよく表現されている。「This Song」ではいきなり冒頭で、信じられない不確かな現代への疑問を投げかける。これは弟の黒沢秀樹がアルバム『Believe』の中で投げかけた問題提起(「Believe」や「1997年のダイアナ」でそれは顕著)や、古くはL⇔Rのアルバム『Doubt』で投げかけられたテーマを受けてのものとも、深読みすれば捉えられるかも知れない。この曲の中での主人公は軽い脱力感の中で、確かなもの(=君の声)を待ち続けようとしている。ちょっとだけこじつけて考えてみれば、今までL⇔Rで走り続けてきた自分を再度見つめ直し、捉え直そうとしている彼自身の姿とも、この詞の中のシチュエイションは一致するような気も。楽曲的には、やはりルーツである60年代のブリティッシュ・ビート(特に中・後期ビートルズやアンドリュー・オールダム作品など)を再確認しつつ、そこに彼独特の歌い方をプラスすることで、完成度の高い作品に仕上がっている。ストリングスも効果的。またカップリングの「Free Bird」は佐橋佳幸のギターをフィーチャーして、ファンク感覚溢れるグルーヴィーな仕上がり。「This Song」で立ち止まっていた主人公が再び能動的に走り出し、俯瞰で物を見る姿勢が、面白い。岡井大二&美久月千春のリズム隊も強力。佐橋佳幸のセンスあるギターは、まるでティン・パン・アレーの頃の鈴木茂を思わせる様な切れがある。いつもついつい、次作を早く聴きたい等と書いてしまうが、このシングルでその思いはさらに強まってしまった。

『MR. SWEDEN』/カジヒデキ

ポリスター/Trattoria/PSDR-5330

カジ君久々のシングルは、前作「Queen sound babbles again」に続いてトーレ・ヨハンセンのプロデュースによるスウェーデン/タンバリン・スタジオでの録音。タンバリン・スタジオというと、以前は古い機材でアナログ・レコーディングするというスタイルだったが、最近スタジオを一新して最新デジタル機器を導入。そのため従来のふわっとしたソフトな音から、切れのあるサウンドに少々イメージ・チェンジした。しかしそこは名プロデューサー、トーレのマジック!ご機嫌なサウンドに仕上がっている。カジ君自身、やりたいサウンドがやれるようになったと語るその4トラックを収録。ファンタのCF曲としておなじみの「MR. SWEDEN」は彼が特異とするポップな楽曲。Hiromixのシングル「hello! i love you」レコーディング中に堀江博久君と見た、矢沢永吉のビデオにヒントを得たという(笑)永遠のロック・スター像みたいなものが、歌い出しの「みんなが最高だ」からのフレーズに生きている。思いもつかない取り合わせだが、精神的な共通項はあるような気も。トーレとカジ君、エッグ・ストーンのメンバーが、お互いを信頼しあってレコーディングを進めていくというスタイルで録音された本作には、まさに制作の理想型から生まれる安心感や余裕さえ感じられる。デジタル・ポップっぽい「ENGLAND'S DREAMING」も、ちょっと胸キュンのギターが絡んだりしてなかなかの出来。ジャグっぽい小品「KENICKIE FOLKS」も面白い。7/1にはサード・アルバム『15 angry men』も発売予定。今から楽しみ。

『孤独な心臓(ハート)』/HICKSVILLE

SME/SRCL-4487

先日マニュエラ・カフェでのDJイベントで木暮晋也氏にお会いした。その時木暮さんが色々と語ってくれたマキシ・シングルが、遂にリリースされた。全3曲入り、そしてタイトル曲「孤独な心臓」は、何とあの松本隆氏が作詞を担当。「彼ら(=ヒックスヴィル)との出会いは、はっぴいえんど以来の衝撃」と松本氏も語ったという名曲の完成だ。いつもながらツボを押さえた木暮晋也さんの曲と真城さんの幅と安定感あるヴォーカルは、今作でもさらに生き生きとその魅力を増幅させている。時々聴かれる木暮氏のスライド・ギターも、すごく効果的だ。また2曲目の「サマー・ラプソディー」には、コレクターズの阿部耕作&小里誠という強力なリズム隊のお2人も参加。骨太のしっかりしたビートの裏で、ストリングスが絡む。特に後半の木暮氏のリード・ギターもかっこいい。さらに3曲目「雨のスゥイング」は、60年代のガール・ポップ的なリズムをデジタルで表現し、そこにスライド気味なエレキ・ギターが絡む独特のサウンド。音数が少なくヴォーカルがはっきり聴こえる分、真城さんの声質の良さが浮き彫りに。3曲とも派手さはないものの、何回も聴いているうちに心の奥にしみてくる、魅力的な楽曲ばかりだ。アルバムも楽しみ。

『Daily! Happy!! Splash!!!』/Roboshop Mania

TOY'S FACTORY/TFCC-87028

98年12月にマキシ・シングル「Smile & Shine」でメジャー・デビューを飾った、ロボショップ・マニアのサード・マキシ・シングル。「Smile & Shine」や前作「Shiny, Windy-Day」で見せた弾けるようなポップさは今作でもさらに押し進められ、全体としては良質なギター・ポップ/ネオアコ的作品に仕上がっている。利根川くんのヴォーカル・スタイルと声質は、甘ったるさがあるため好き嫌いがはっきり分かれるかもしれないが、それがクリアされる人には楽しめるかも。1曲目のタイトル曲「Daily! Happy!! Splash!!!」には、ブラスが効果的に配置され、また2曲目「Soft Surfin Music」はフリッパーズ・ギターの「GROOVE TUBE」的テイストを感じさせる佳作。アート・ワークもマキシ・シングルにしてはなかなか秀逸。

『Up, Up & Away The Song of Jimmy Webb』/VA.

SEQUEL/CASTLE/NEMCD-410

最近入手した、洋楽作品を1枚。このアルバムは、最近良質なリイシュー作品を多数リリースしているSEQUEL RECORDSからリリースされた、ジミー・ウェッブ作品集で全18曲収録。最近ソフト・ロックのブームもあって再評価されているジミー・ウェッブだが、本昨は全て67年〜78年にリリースされた作品で、イギリスの名門レーベルPye系列の音源で構成されている。ジミー・ウェッブといえば、グレン・キャンベルのヒット曲「By The Time I Get To Phoenix」や、フィフス・ディメンションの「Up, Up And Away」等のヒット曲の作者として有名だが、それはアメリカでのこと。68年にジミー・ウェッブはイギリスの名俳優リチャード・ハリスをプロデュース、発表された「MacArthur Park」は大ヒットを記録しているが、それ以来のイギリスでのジミー・ウェッブ人気を垣間見ることが出来る、好企画盤だ。僕も初めて聴く曲がほとんどだったが、THE BAND OF THE YORKSHIRE IMPERIAL METALSやおなじみTONY HATCH ORCHESTRAなどによるインスト・カヴァーあり、ラウンジものあり、表現者が違っても楽曲の素晴らしさを改めて確認できる、グッド・コンピレーションだ!


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