いるかHotel「花火みたい」

2000.5.3(水) 於:駅前劇場 18:00開演の回 前から三列目(桟敷席)・右端から四番目にて鑑賞

【物語】

花火大会の行われるある一日。

「イチ……」町の片隅から聞こえてくる、孤独な呟き。そしてまた町のどこかで、事務所の留守番電話がメッセージを流している。「はい、オフィス・アサノです……。」

そしてまたとある中学校の教室。憧れのサッカー部の中山先輩に告白しようと、リカ(長光)は親友・みな(竹原)相手に練習中。きめ台詞は「一緒に花火、観に行きませんか。」たまたま教室に入ってきた河野先生(谷)を練習台に見立てての告白リハーサルは大成功、勇気凛々で本番へ。首尾をきくために教室に一人残ったみなの脳裏に、数日前の記憶がよぎる。

レストランで会った、父の再婚相手の女性(工藤)。本当は父とみな、女性の三人での食事になるはずだったが、デザイン事務所・オフィスアサノをきりもりしている父は多忙のため急遽欠席。明るく、親切な女性はかたくななみなの心をほぐそうと話をしてくれた。父との出会いのこと、彼女自身も幼い頃父を亡くし、母が再婚していること。再婚話が出たとき反対したことも。「でも、母は母、わたしはわたしの人生でええんと違うかなと思ってる」それはあなたの話、わたしはそうは思えない。固く心を閉ざしたままのみな。ろくに食事にも手を付けず、席を立ってしまう。

 その頃。リカは学食の窓から校庭を見下ろしていた。中山先輩のかつての彼女・魔性の女黒木先輩(小山)出現、心惑わされるリカ。やっと黒木が去ったと思いきや、校庭の木陰で中山先輩と同級生・矢野ひでみがなにやら立ち話!ちょうどよく現れたとんちんかんな同級生・ゴロー(西うら)を偵察に行かせるが、役立たず。結局、何を話しているのかは不明のまま。もしかして、先に告白された?それとも、二人はつき合っている?悶々とするリカの前に、当のひでみが意気消沈して現れる。ひでみに探りを入れたリカの想像では、どうやらリカは中山先輩とつき合っていたのだが、先輩には他に好きな人が出来たらしい。そして、意中の彼女は吹奏楽部のクラリネット担当。一度試合の応援に来てくれたのだが、名前すら知らないという。
(クラリネット……それって、わたしやん!)
でも、つき合っている女の子が居るのに他の人に浮気をするような人だなんて……。うれしい気持ちと幻滅が入り交じるリカだったが、実は二股は勘違いだと知る。ずっと中山先輩が好きだったひでみは勇気を出して告白したのだが、「他に好きな人がいるから」と断られてしまったのだった。
勇気凛々、先輩に告白するため、リカは学食から駆けだしてゆく。
が……
突然雨が降り出し、うなだれて戻ってくるリカ。告白すると、中山先輩は言ったのだ。けがをして、最後の試合に出られなかったこと。「そんな俺、駄目やろ?」その言葉に「そんなことない」と言えなかった自分がリカは悔しかった。でも、決してゲームをあきらめない彼。試合に出られなくても横から一生懸命に応援していた彼。誰よりもボールを追いかけていた彼。そんな中山先輩が好きだったのだ。サッカーをやっている中山先輩だけが好きなんじゃない。その言葉を伝えるために、リカはもう一度学食から駆けだしていく。

 教室でひとりリカを待つみな。見回りにやってきた河野先生に、みなは父の再婚話のその後を話す。みなの反対で、父は再婚を取りやめた。その後妙に明るい父。しかし、少しおかしい。24ロールのトイレットペーパーを二日続けて買ってきたり……。再婚の沙汰やみに安心しつつも後ろめたさを覚えずにはいられないみな。そんな彼女に、河野先生は自分の話をしてくれる。
 先生もまた、幼い頃父が死んだ。そして、母に恋人ができた。「おかんが結婚するのは勝手やけど、俺は名字変わるのいやや。」彼の一言で、母は再婚をやめた。今、姉は富山に住んでいる。彼は新婚ほやほや、そうそう家に帰ることが出来ない。母は、一軒家にひとりぽっちで住んでいる。彼は、どうしても母の孤独を思わずにはいられない。それは今だから言えることだけれど。……
 先生の話を静かに聴くみな。
 花火が上がる。夜空一杯に広がる花火。打ち上げられる花火の爆発音の間から、みなの小さな声が聞こえた。
「先生、ありがとう。」
 何かを吹っ切ったようなみなに、先生は特別サービスをしてくれる。立入禁止の屋上からの花火見物だ。

 場所は変わって、とあるアパート。劇団の人気女優・あつみ(うべん)の引っ越し支度がもう終わろうとするところ。劇団の仲間も手伝ってくれて、あらかたの荷造りは出来た。本当は四年だけのつもりで芝居を始めたのに、気づけば十年の月日が経ってしまった。そう、あつみは芝居をやめて故郷に戻ろうとしているのだ。そこへ、一通の手紙が届く。開けてみると、大きなオーディションの一次合格通知。大喜びする仲間たち。しかし、あつみは二次審査には行かないという……

 また場所は変わり。
 徳島の田舎の家。若い男女二人・ともみ(園田)とけんじ(穐永)が床の間に座っている。二人は婚約者同士。ともみの親戚に結婚の挨拶をするため、東京から帰省してきたのだ。仏壇に向かって手を合わせ、死んだおばあちゃんに報告するともみ。世間知らずなけんじは仏壇への挨拶の仕方も知らない。線香を吹き消したり。結婚の支度もともみにまかせっきり。式間近というのに何もしてくれないけんじに、ともみは若干いらだち気味。
 そこへ、いとこのちえ(原)とその友達たかこ(松本)がやってくる。二人には夢がある。大阪へ行って吉本に入り、漫才コンビをするのだ。町のお祭りのお笑いコンテストで賞を取り、二人の意気込みにも熱がこもる。しかし、伯母さん(松井)は「あほなことばっかり」ととりあわない。……
 その夜、ともみとけんじは川原の散歩途中で大喧嘩。来週から、式場になるホテルとの打ち合わせがぎっしり詰まっているというのに、けんじは友達と一緒に沖縄旅行へ行くというのだ。けんじは結婚の準備なんて何もしてくれない。今からこんなで、本当に結婚してもやっていけるのだろうか……?情けなさや怒り、悲しさでともみの心は一杯になる。
 そこへ、浴衣を着た一人の若い女性(宇都宮)が通りがかる。「花火、しませんか?」家族で花火をしていたのだが、余った分を使い切ってしまいたいという。奇妙なことを言うひとだったが、ともみたちは花火をすることにする。が、マッチに火がつかない。乗ってきた車にライターが入っていたことを思い出し、けんじは取りにゆく。
 女性と二人きりになって、ともみは女性に尋ねる。結婚って、どんなものですか。「プラスマイナスして、少しプラス、っていうかんじかな。」結婚するのに必要なこと、大事なことは?「あきらめないことと、あきらめること。」結婚することを不安に感じ始めていたともみに、女性の優しい声がしみこんでゆく。
 けんじは戻ってきたが、ライターは持たず。教えた場所に絶対あるのに。ともみは自分でライターを取りに行く。ふたりきりになったけんじと女性。手持ちぶさたな時の流れ、なぜか会話は釣りの話に。「一緒に、行こうか。」呟くように言う女性。「え?あ、そうですね。」適当にあわせるけんじの頬に、女性の手が触れる。「二人で……ね?」あやうい瞬間、ともみが帰ってくる。あわてふためくけんじ。だが女性は落ち着いて。
 そして、三人は花火に火をつける。花火は線香花火ばかり。女性の小さな娘が大きな花火は怖がるので、線香花火しか買わなかったのだ。まだ小さな娘のことを、女性は話してくれた。ともみの好きな山もも酒を、娘さんも大好きなことなど……、暗闇にちりちりとともる、三つの小さな火花。いくつもいくつも。
 とうとう最後の花火の火種も落ちる。女性は「これから船ですぐ帰る」と言い、去っていった。最後に、ともみとけんじがうまくやっていけると請け合いながら。

 伯母さんの家に戻ると、伯母さんがともみに見せてあげようと、幼い頃に死んだともみの母の浴衣を押入から引っ張り出してきてくれた。包みから浴衣を取り出した瞬間、ともみは息を呑む。古びた浴衣の柄は、さっき川原で出会った不思議な女性が着ていた浴衣の柄とうり二つだったのだ。

<<五分間休憩>>

 浴衣から目が離せないともみ。あの女性は、幼い頃死に別れた母だったのか?呆然とするともみとけんじの前に、ちえとたかこが思い詰めた様子でやってくる。これから漫才をやるので、見て欲しい。ともみとけんじ、そして母の三人全員を笑わせられたら、大阪に行かせてもらう。大学に行かせてもらったつもりで、四年間だけは漫才やらせてもらう。四年間でものにならなかったら、徳島に帰ってくる。必死の表情の二人に、ともみたちは協力することに決める。いやいやながらの伯母を座らせ、いざ漫才開始。次々と繰り出されるネタにともみとけんじは大笑いするが、伯母はぴくりともしない。用意したネタが尽きても、とうとう伯母は笑わなかった。泣きながら部屋を出てゆく二人。追って、ともみも出てゆく。「ごめんな、あほなことにつき合わせて。」言いながら、部屋を片づける伯母。とりつく島もない様子に、けんじは何も言えない。しかし……
「ほなけど……」伯母の口から、小さく独り言のように漏れた言葉。「あの子ら、結構ええ線いってたなあ……。」
 そうそう、と伯母は奥から大きな瓶に入った、赤い果実酒を持ってくる。山もも酒だ。愛媛に住んでいるともみの幼なじみがたまたま近所に帰省してきていて、「さっき見かけたから」とともみの好物の山もも酒を持ってきてくれたのだ。じゃあ、さっき会った女性はともみの母の幽霊ではなくて、幼なじみの女性だったのか。母に会ったと信じているともみを落胆させたくないとおもうけんじ。そこへ帰ってくるともみは、山もも酒を見て大喜び。「これ、どうしたの?」「福島さんとこのあきちゃんがな……」と説明しようとする伯母の言葉を遮って、けんじは「もう帰ります」と切り出す。せっかく伯母さんが食事を用意してくれたし、まだ早い。と反対するともみを説き伏せて、無理矢理けんじは帰ることに決める。
 伯母さんが食事を折り詰めにしてくれている間、ともみはけんじに訊く。「どう思う、あの女の人?……」「浴衣の柄、似てたんだろ?あの人が誰なのか、朋美が一番分かるはずだよ。」優しい嘘をつくけんじ。そこへ伯母さんが戻ってくる。「その山もも酒、近所のあきちゃんが持ってきてくれたんでよ。愛媛からたまたまこっちへ戻ってきとってなあ。……」
 伯母さんの家を去りながら、けんじはともみに尋ねる。「愛媛に行くのって、……船?」ともみは笑いながら答えた。「同じ四国やもん、船なんか使うはずないよ。」
 「これからすぐ船で帰る」と言ったあの女性は……

場所は変わって。高い建物の屋上。一人佇む、孤独な面もちの女性(下出)。おもむろに、携帯電話をかける。出たのは留守番電話。抑揚の欠けた声で、彼女は語りかける。「最後のあなたへ。初めまして、わたしは月です。……花火の見える、大学の屋上にいます。一番目の花火が上がったら、死にます。それまでにあなたが来てくれたら、やめます。……」電話を切り、女性は呟く。「ジュウ。……」

 再び場所は変わり、女優・あつみのアパート。なんとかしてあつみの気持ちを変えようと説得する劇団の仲間たち。役者としてのあつみは人気もあり、演技の定評もある。それなのにあきらめてしまうなんて、もったいない。……しかし、あつみは言う。自分の芝居は、悪くないと思う。でも、「悪くない」でしかない。いつまでたってもそう。わたしの芝居はこんなものなんだ。「だったら、人よりも倍の時間をかけて、倍の努力をすればいい。」その励ましに、あつみは静かに言う。ゴールはない。ゴールを目指して自分は走ってきた。次の角を曲がればスタジアムが見えてくるかもしれない。次の角を曲がったら……。でも、いくつ角を曲がっても、ちっともスタジアムは見えてこない。いつの間にか、足を一歩踏み出すことすら、あつみは怖くなってしまったのだ。「走るのは、楽しかった。でも、疲れてしまった。自分でも意外だけど。」なにかをふっきったようなあつみに、とうとう仲間たちは何も言えなくなる。そして、あつみの新しい人生にエールを送ってくれるのだった。
 仲間たちが去り、一人片づけを続けるあつみのもとに、不動産屋が客を部屋の内見に連れてくる。入ってきたのは、ちえとたかだった。部屋を見ているところへ、ちえの携帯が鳴る。部屋のこと、漫才のこと、これからの抱負のことを徳島の母に語るちえ。それを横から眺めるあつみ。十年前の自分が、そこにいる。
 電話を切ったちえに、思わずあつみは声をかける。「役者さん?」元気良く答える二人。漫才コンビなんです。四年間で絶対デビューするんです。大学に行かせてもらったと思って……。希望に満ちた二人を、まぶしげにあつみは見る。
その時、窓の向こうで花火が上がった。歓声を上げるちえとたか。次々と夜空に上がる花火。それは夢に向かって突き進む二人の子たちへのエールのようでもあり、あつみの賭けた夢が燃え尽きる最後のきらめきのようでもあった。まぶしいものを見るように、あつみははしゃぐ二人を眺めていた。

 大学の屋上。孤独な女性が佇んでいる。まだ花火は上がらない。そこへ、ともみとけんじがやってくる。二人はこの大学の卒業生。ビューポイントを求めてやってきたのだ。「あの、……わたし、月です。」名乗る女性に二人は首を傾げ、また別の場所を探しに行ってしまう。そしてまた女性は一人取り残され、……雨が降ってくる。

 とある場所。五人の男女が奇妙な箱をこじ開けようとしていた。箱は、タイムカプセル。小学校五年の夏休み、「二十歳になったら開けよう」と当時の仲良し五人組で作ったのだ。が、成人式当日はすっかり忘れていた五人。さらに七年が経って、ようやく開封することになったのだ。
 集まった彼らの今の境遇は色々大変。離婚したもの、家業が倒産寸前のもの、リストラされそうなもの、……でも、一時彼らは幼い頃に戻ってはしゃぎあう。
 開いた箱の中身はタイムカプセルに関する誓文と日記、リコーダー、ぬいぐるみなど。しかし、なぜか宝物は六つ。誰も心当たりのない宝物が一つ、ドラミちゃんのお面。いったい、これは誰の宝物だろう?……お面についている本人の文章を読み、やっとみんなは思い出す。「大沢ふみかちゃん!ふみちゃんや!」六年になってすぐ、九州へ引っ越していった女の子。
 作文の内容はこうだった。五年の夏、ふみちゃんは病気で入院した。最初のうちはみんなお見舞いに来てくれたけど、だんだん誰も来なくなった。寂しくて悲しくて、文ちゃんはみんなのことが嫌いになった。お祭りの日、五人の友達が「一緒に花火見よう」と言って、来てくれた。お祭りのくじであたったドラミちゃんのお面をもらった。花火は雨で見られなかったけど、とてもうれしかった。だから、このお面は宝物。……

 思い出に浸っているとき、ひであき(坂口)の母が彼を物陰に呼び出す。彼らの話を盗み聞きする仲間。どうやら、家族で経営しているリフォーム業がうまくいかず、資金繰りができないらしい。しかも、字体はかなり切迫している。「どうするんや」と母にすがられるひであき。だが、「なんとかするよ。」としか言えない……。幼い頃の思い出から醒め、現実が彼ら全員の上に降りかかってくる。「これを入れた頃にいられたらいいのに……」誰からともなく呟きが漏れる。

 戻ってきたひであきは、ふと言い出す。「このお面、ふみちゃんに届けてあげようや。」タイムカプセルを埋めたときの決まり事。二十歳になるまで開けないこと。みんなで一緒に開けること。誓いを破ったら一億万円払うこと。……乗り気ではないみんなに、ひであきは強い口調で言う。「子供の時に決めたことぐらい、ちゃんとやろうや!!」大人になれば、願ったようにならないこと、思ったからといってそのまま行動できるわけでもない。せめて、いろんなことがかんたんにできた子供の頃の誓いぐらいは。……ひであきの言葉に、全員はうなづく。
 とはいえ、文ちゃんの消息は誰も知らない。が、昔彼女が住んでいた家の隣に、ふみちゃんの親戚が住んでいることを思い出す。五人は、17年前の誓いを果たすために走り出す。

 屋上でたたずむ、孤独な女性。雨は上がり、どうやら花火大会は決行されそうだ。あと、三分で花火が上がる。誰も姿を現さない。
 突然、携帯電話のベルが鳴った。「大沢ふみかさんですか?」電話の向こうから聞こえてくる元気な声。一人だけではなく何人かいるようだ。どうやら自分を知っている誰かのようだが、すぐに思い出せない女性。「僕僕。ひであき。……わたし、ぎゃんこ。あみん。ゆっけ。いずちん。」……にぎやかな自己紹介に、少しずつ記憶が甦ってくる。小学校で一緒だった人たち?電話の向こうから、口々に同級生たちが言う。お面を渡しに行くから。「お面?」タイムカプセル。宝物。「え?……あ……」記憶が甦りかけた途端、電池切れなのか電話は切れてしまう。
 一人、携帯電話を手に佇む女性。「宝物……花火……。」
 ふいに、花火のように、あの夏の日の思い出が女性の脳裏で火花を散らす。寂しくて悲しかった入院生活、遊びに来てくれたみんな。うれしくてうれしくて。……いくつもの輝く思い出が女性の心の中で炸裂する。そして、夜空にも大きな花火が打ち上がった。いくつもいくつも、暗い夜空に花火が上がる。それは女性の心の中によみがえる思い出のようで。体中に響く爆音と、まばゆい光を浴びながら女性は呟く。「花火、みたい。……」
 アパートの窓からちえとたかこ、あつみが、中学の屋上からリカとみなが、大学の校舎からともみとけんじが。みなが、それぞれの思いを胸に、打ち上がる花火を見つめている。そして、孤独な女性の顔には、かすかな笑みが浮かんでいた。

 

【感想】

前半1時間半、五分の休憩を挟んで後半40分の長丁場。花火大会の行われる、ある一日のお話。前半はいくつかのエピソードがバラバラにつづられ、後半、全てのエピソードがつながり、花火となって昇華する構成。

時系列を並べ直すと、@(過去)みな、父の恋人とレストランで会う・ともとけんじ、徳島に行って母の幽霊に会う。とものいとこのちえ、漫才師になるため母を説得する A(花火大会当日)小学校の同級生たち、タイムカプセルを開ける・孤独な女性、携帯電話で自殺予告をする・リカ、先輩に告白するが失敗 B孤独な女性、ともとけんじに大学の屋上で会う C雨が降ってくる D雨が止む。あつみの引っ越し。あつみのアパートにちえとたかこがやってくる。E花火大会決行
と、なるのではないかと思う。かなり時系列を乱して構成してあるので前半は若干話が見えない感じがする。逆に後半、一挙に物語が収束していくので一種の爽快感はある。

若干装飾過多というか、削ぐことのできる台詞が多いような気がする。
例えばリカが校庭の先輩を眺めている間にへんちきりんな先生やら先輩やら同級生に悩まされるこのシーン。面白くはあるのだけどストーリーの中での比重としてはもっと短めで良かったのでは。ちょっと冗漫な感じ。特に、変な先生登場シーンはいらないような気がした。また、その他のシーンでも、心の中を説明する台詞をもう少しストイックに、削った方がいいのにな、と思った箇所がいくつかあった。

打ち上がる花火と、登場人物の心によぎるカタルシスを同化させたストーリー、演出は効果的。特にラストの孤独な女性の心に甦る記憶のシーンは心に響く。だらだら泣いてしまった。ともみの出会った奇妙な女性が母親だった、ということが分かるシーンも。イメージ的なものを表現することに長けている演出家だなあ、と感じる。また、登場人物を見る目線が高からず低からず、等身大な感覚。時にギャグに走ったりしても物語全体がうそくさくならないのは、作者の視線が登場人物と同じ所にあるからなのだろう。

役者。父親の再婚話に心揺れる中学生を演じた竹原未来。「中学生日記」を思わせるような、初々しくて清潔な自然体演技。ひたむきな感じ、いい。小山茜。いかれた美人先輩、黒木役のかわいくてオバカな仕草。イカス。

衣裳、セーラー服の上着のデザインがかわいかった!

劇中、徳島を舞台にしたエピソードがある。阿波弁(徳島弁)がかなり忠実に語られていて、徳島出身の自分は感心。イントネーションは若干違うが、独特の言い回しや語尾が正確に使われていた。シーンが始まってすぐに「あ、ここは徳島なんだ」と気づいたほど。脚本家は徳島出身者なのだろうか?懐かしかった。すごくリアルな場面だった。

ところで。

桟敷席最前列に座っていた青年。舞台に足をのっけて休ませるな!!非常識にもほどがある。罰当たりめ。

【DATA】

東京公演はすべて終了。

大阪公演:@扇町ミュージアムスクエア 2000/6/2(金)〜4(日)
開演:6/2 19時 6/3 15時・19時 6/4 13時・17時 開場は開演30分前
料金:前売り2400円 当日2600円 中高生1300円(当日受付にて要学生証提示) 

作:谷省吾 with J

演出・出演:谷省吾

出演:長光里奈 竹原未来 谷省吾 工藤まき 小山茜 西うらしんじ 松岡沙織 大野友起子 北村美和(大阪公演) 宇仁菅綾(東京公演) 坂口修一 うべん 魔瑠 園田知子 穐永賢一 松井尚子 原知佐 松本麻里 宇都宮奈津美 梅本真里恵 河部文 清水こずえ 下出麻衣子

舞台監督:永易須健介(東京公演) 岡一代(大阪公演)

照明:三浦あさ子 音響:三宅住絵 

舞台美術:岡一代 

宣伝美術:東學 宣伝写真:今田修二

演出部:園田知子 穐永賢一

小道具:松井尚子 河部文 長光里奈 衣装:宇都宮奈津美 北村美和

制作:阿部純子 宇仁菅綾 大野友起子