爆走アイドル・インタビュー 市井紗耶香

プッチモニだ、赤だ青だ黄色だ。ますます爆走するモー娘。ほんとにやりたい放題です。でも、逆に心配なのは頑張りすぎじゃないかってこと。特に市井。後藤の教育係であり、”モー娘の裏番”とも噂される彼女だけに、その忙しさは並大抵じゃないはず。ちょっとは息抜きしなさい、っていうインタビューっス。

「裏番ってほどじゃないですよぉ」

これはもう緊急事態。ピーポーピーポーである。市井紗耶香が心配だ。たまらなく心配だ。このままだと、クラクラ〜バタッと倒れ込むのではないかと睨んでいる。

根拠はひとつ。とにかく、最近の彼女は頑張りすぎじゃないのか。いや、モー娘の活動にしろ、”プッチモニ”の活動にしろ、はたまた『青色7』の活動にしろだ。一生懸命に取り組むのは当然だとは思う。だが、彼女の場合は一生懸命のレベルを超えて自分の身を削っているような必死さを感じてしまうわけだ。

例えば、ダンスのレッスンでも新曲の歌入れでも彼女は口を開くたびに「まだまだです。こんなんじゃダメです。全然、ダメです。」と頑なに言い放つ。妥協がまったく見受けられない。もしかしたら、後藤真希の教育係となったことがより一層、彼女の責任感に拍車をかけ追い詰めてしまっているのかもしれない。

巷では、教育的指導に苦心するあまり彼女がモー娘の裏番、つまり、仕切っているのではないかという噂さえ漂っている今日この頃なのである。

なんだろう。アレだ。最近の彼女を見ていると、ゴムがビンビンに伸び切っている状態に近いのではなかろうかと心配なのだ。ビンビンに張り詰めた結果、ピシッと切れた時の反動が怖い。

となれば、だ。なにはともあれ、うちらが目を覚まさねば。例えば、”挫けたっていいではないか” ”負けるのも成功の近道” ”死んで花実が咲くものか” ”命短し、恋せよ乙女” ”で、後藤のパンツは何色?”と申し述べてみることにしよう。

そうだそうだ。まだ間に合うぞ。急げ! 彼女のもとへ。

「まあ、死にそうですよね、忙しくて。アハハハハ」

だろ。分刻みのスケジュールで吐きそうにならない?

「吐きはしませんよ(笑)。本当ですって。吐きはしないんですけど、飛行機がどうも苦手で」

それって、質問の意味が違う。だから、んとね、正直な話、市井ちゃんは”裏番”なの?

「えーっ! アハハハハ。ウソですよ、そんなの。でも、うーん、裏番ってほどじゃないですよぉ」

ほどじゃないってことは、メンバーの誰かがダンスでミスしたら舞台袖でパンチを入れるくらいとか。

「違う違う(笑)」

顔はアザができるから腹にしときな、と指示したり。

「違う。でも、もちろん、メンバーがミスしたら”ここは違うよ”と教えたりとかはしますよ。自分は教える立場じゃないけど、ここはこうだからと言わないと絶対にメンバー同士が向上していかないじゃないですか。だから、モー娘にとってプラスになることであれば、気兼ねせずにどんどん発言したほうがいいと思うんですよね」

あ、やっぱり裏番なのね。

「いや、だから違う。モー娘の中で仕切ったりとかしてないっスよ」

本当っスか?

「本当っス(笑)。それに、仕切ったら怖いっスよ。逆に他のメンバーが」

あ、他にもっと怖い人がいる、と。

「はい(笑)。実はねえ…。アハハハ、ウソっス(笑)。怖い人はいないっス」

「ところで、後藤のパンツは何色?」

そういう噂が流れるのも、後藤真希の飼育係だったのが原因ではないか、と。

「それも違う(笑)。飼育係じゃなくて教育係」

ああ、そうか。

「うん。でも、後藤が入ってきたことによってすごくね、勉強になりましたよね。別に教育係といっても何かを教えるという立場ではなくて一緒に勉強している仲間みたいな意識なんですよ。後藤と一緒にいて私自身、学ぶこともたくさんあったしね。逆に後藤に助けられた部分もあるんです」

でも、どうかな。真面目な話、いろいろと注意したことはあるでしょ。

「うん。それはね。例えば礼儀とか。ここは、こういうふうな言い方は違うんじゃないのかな、みたいなね。徐々に教えていきました。でもね、聞いてくださいよぉ」

はいはい。

「自分が注意を与える前に保田圭ちゃんとかに聞くんですよ。ちゃんと」

ん? なにを?

「こういう注意をしたんだけど、私、間違ってないよね、とか(笑)。で、圭ちゃん(”プッチモニ”のメンバー)が ”あ、いいんじゃない。言っても” と言ってくれたり。うん、他のメンバーに確認してから注意してたな」

高校のバドミントン部のような会話だ。いやあ、いい。ほのぼのとする。

「だけど、後藤は正直なところ ”なんでこんなことを注意されなきゃいけないの?” と思ってたかもしれない。それでも私はいいと思ってた。だって、プライベートにしたって仕事にしたって、言いたいことも言えずに、ただベタベタと仲良くしても…ね。おかしいでしょ? 私たち、仕事をしてるんだもん。仕事上でお互いにしっかりすればいいんだしね。言ったら嫌われるとか、仕事には一切関係のないことだから」

いいねえ。グッとくるプロ根性だよね。

「デヘヘヘヘ」

で、教育係の頃はまさに寝食をともにして。

「今は違いますけどね」

じゃあ、ちょっと前までは後藤のパジャマ姿とか着替えとかも目撃してたわけだ。

「うん」

パンツは何色?

「ほえっ?」

いや、後藤のパンツは何色なのかな、と。

「でえ〜っ! 教えられないですよ、そんなこと」

いやいや、単純に少年の好奇心で何色かな、と。

「いやあ〜っ(笑)。やめてくださいよ、んもう(笑)」

あ、すまん。乙女心を理解してなかった。

「でしょ」

さてはスネてるね?

「ん?」

先に市井ちゃんのパンツの色を聞くべきだった。それが礼儀だった。

「でえ〜っ! それもなんだか絶対に違うと思う(笑)」

「どこに流されようと平気っスよ」

ちょいと待てよ。あれれ。何か忘れてる…。

「どうしたんですか?」

そうだっ、ゴムだった。パンツの話じゃなかった。ゴムの話をするために会いに来たんだっけ。んと、要するに最近の市井ちゃんは頑張りすぎじゃないか、と。まるでゴムのように自分自身を無理やり伸ばしているというか。

「そうなんですよね。伸びるだけ伸びた分、縮んじゃいけないと思って余計に頑張ってしまうんですよね」

それはいかん。

「わかってるんですよ。息を抜く時間を作らないといけないなって。だけど、ダメなんですよね。そう思っていても気持ちが伸びよう、上に伸びようとするんです」

そんなに頑張らなくてもいいんだよ。

「たぶんね、私、気負ってるんだと思うんです。どうしても歌にしろダンスにしろ常に上を目指したいから。それに自分の表現力に対して納得がいってないんですよね。だから気負っちゃう」

その姿勢は尊いけど、いいんだよ、少しは挫けても。

「うん。あのね、つい最近、こんなことがあったんです。私、モー娘とは別に ”プッチモニ” でデビューしたじゃないですか。あのユニットではせっかくセンターに立てたんだしね、一生懸命に歌わないといけないと思ってたんですよ。ええ、そうです、いつも以上に気負ってて。でもね、ある時ね、圭ちゃんがこう言ってくれたんですよ。『ちょっと頑張りすぎじゃないのかな。自分だけが頑張るのではなくて、もう少し周りの状況を見てごらん。私も後藤もスタッフも頑張っているんだから、あなたは私たちに甘えてもいいんだよ』って…。なんだかね、そのひと言でとてもラクになりましたよね。私はもうちょっと他の人たちに甘えてもいいんだと思えるようになったんです。それからですよね、忙しくてもどこかにゆとりのある時間帯があるはずだから、そこでどっぷりと休憩しちゃおうと思えるようになったのは」

今後を考えると大事なことだよ、それは。

「ねえ(笑)」

例えば、ゆとりのある時間帯にはどんなことを考えているの?

「英語を習いたい、とか。本当にひとりでいる時間をすっごく大切にしたいと思ってるんですよ。その時間を利用して、もっと自分の足元を見つめたいんですよね。私がやりたいこと、私がやらなければいけないこと、そんなことをうつらうつら考えているんです。たぶん、その考える時間をこれからも大切にしていけば、きっとね、いくらゴムが伸びようと、切れることはないと思う(笑)」

そうか。わかった。それにしても、今後のモー娘はどうなっていくんだろう。今度、またメンバーを増員したりとかするんでしょ。

「そうみたいですね…って他人事みたいですけど(笑)。正直ね、本当にわからないんですよ、私にも。う〜ん、わからない(笑)。先がまったく見えないですもん(笑)。この先、山があるのか…」

谷があるのか。

「うん。このまま川に流されていっちゃうのか(笑)。どこに流されていっちゃうんだろう、私たち(笑)。でも、これだけは言えるかな。あのね、さっきも言ったけど、メンバーひとりひとりが自分の足元を見つめて生きていけばどこに流されようと平気っスよ(笑)。倒れたりしないから大丈夫。おまかせっス!」


取材・文/トン
撮影/真崎可奈子
集英社 週刊プレイボーイ No.15
2000年4月11日発売号


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