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ラモーナの眼鏡
ラモーナの眼鏡の向こう/こちら

『コネチカットのひょこひょこおじさん』でのラモーナは、両親に愛してもらえない、かわいそうな
少女だ。母親・エロイーズは世間体を異常に気にしていながら、娘には犬にするようなしつけ
しかしようとしない。ラモーナは、孤独を感じて空想の世界に逃げ込もうとしている。架空の
恋人を想像し、いつでも彼と一緒にいる。その空想の世界と現実を隔てる役割をしているのが
ラモーナの分厚いレンズの眼鏡である。ラモーナは架空の世界を創造しながらも、そこに閉じ
こもるのではなく、母親の愛情を欲し、興味をひこうとする。だが、エロイーズは自分の不遇を
嘆くので精一杯である。そんなの母娘にも愛が芽生えようとする。
  JDS作品の心憎いところなのだが、母と娘に何が起こったのかは記述されていない。ただ
真暗なラモーナの部屋の片隅に佇んでいるエロイーズがいるばかりである。長い間、佇んで
いたエロイーズだが、突然、ナイト・テーブルに足をぶつけながらも、ベッドで寝ているラモーナ
に駆け寄る。そして、ラモーナの眼鏡を頬に押し当て「かわいそうなひょこひょこおじさん」
"Poor Uncle Wiggily”と、泣きながら何度も繰り返した。ようやく泣き止むと、レンズを下に
向けて眼鏡を置き、ラモーナに濡れた接吻をする。
  エロイーズは、自分が唯一愛したウォルト(・グラース)が、足を挫いた時に掛けてくれた慰め
の言葉「かわいそうなひょこひょこおじさん」とウォルトの優しさ忘れ去れずにいる。ラモーナの
部屋で佇んでいる間、ウォルトの気の利いた優しさとラモーナの寂しい架空の恋人が同質の
ものだと気づいたのであろう。ラモーナの悲しさの象徴、現実との隔たりを設けている眼鏡に
かつて挫いた自分の足首にしてもらったのと同じ様に、優しさを注ぐ。レンズを下向きに置いた
のは、娘・ラモーナを現実の世界に引き摺り出すのではなく、眼鏡の内側=空想の世界に
自分が入って行く事によって理解しようという行為である。エロイーズはぶつけた足を引き摺り
「コネチカットのひょこひょこおじさん」になってラモーナを救った。これからはラモーナは眼鏡の
内側の空想の世界にいたとしても、ひとりぼっちではない。優しさを思い出した母親の理解に
よって、もう、空想を逃避の道具にしなくてもいいのだ。

*ラモーナの眼鏡の向こう/こちら―『コネチカットのひょこひょこおじさん』"Uncle Wiggily in Conneticut"
主な参考文献―『愛の再生』高橋美穂子、群馬県立女子大学紀要9


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