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ライオネルの家出
ライオネルの家出の理由

『小舟にて』においてライオネルは何度も家出を繰り返す少年として描かれている。
物語中に起きたものを含めて、都合4度、家出をしている。
一度目の家出は2歳の時。アパートの正面入り口で、父親にさよならを言うために
頑張っていた、というものである。しかし、家出舌先がアパートの正面入り口で
あったのではなく、父親に別れを告げて、もっと遠くに行くつもりだったのだろう。
そうとうの覚悟のうえだったのだろう。
二度目の家出は2歳半の時。この時はアパートの地階にある選択場の流し台の
下に隠れていた。この行動の理由に就いて彼が語ったのは「ネオミが魔法瓶に
ミミズを勝っている。」という事だけである。
そして、もっとも家出らしい家出であった三度目は、真冬のセントラル・パークへ
逃げ出して、見付かったのは夜11時15分過ぎ、半分凍えそうになりながら、
ビー玉を転がしていた。男の子に「おまえ臭いぞ。」と言われたのがショックだった
らしい。
そして今回の家出はメイドのサンドラがライオネルの父親の事を「ユダ公(KIKE)」
といっているのを聞いてしまった事が原因に成っている。ただし、ライオネルは
「ユダ公(KIKE)」を凧の一種だと思っていた。
ライオネルは意味も知らない差別発言や命を大事にしない行為の中に世の中の
悪意を感じ取っているのだろう。言葉の意味が分からないのに、ショックを受けて
家を飛び出してしまったのである。
この「家出(run away)」という行為はシーモアの自殺と同種のものであろう。
世の中の悪意から逃げ出そうと自殺をしたシーモア。ライオネルは自殺すら
しないもののどこかへ逃げ出してばかりいる。
しかし『バナナフィッシュにうってつけの日』と『小舟にて』は全く逆の終わり方を
している。悩める少年・ライオネルには、偉大なる母・ブーブーの存在があった。
ブーブーは「ちょっとばかり手に余るわ」といいながらも、時には一人前の男として
時には幼い息子として、巧みな扱いをでライオネルに接し、遂には彼を人間的に
成長させるにいたる。最後のシーン、ライオネルとブーブーがかけっこをして、
ライオネルが勝つ、というシーンは苦難を乗り越えたライオネルの勝利の象徴
であり、息子を窮地から救い出したブーブーの勝利の象徴でもある。
こうしてライオネルはシーモアの二の舞を免れたのである。

*ライオネルの家出-『小舟にて』"Danw at the Dinghy"
主な参考文献―『That isn't the worst that could happen』(群馬県立女子大学紀要3)高橋美穂子


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