ウィンナ・チューバ(2000.3)


 ・・・昨年、ウィーンの国連関係機関に勤務する大島隆一さんからメールが届きました。

 大島さんは現在、ウィーン・ユナイテッド・フィルのチューバ奏者であるゲルハルト・ゼックマイスター氏(※)にウィンナ・チューバを師事されており、「この素晴らしい楽器を広く紹介したい。」とのこと。

 その後、大島さんから写真等の資料を郵送していただき、このページを作る運びとなりました。

これがウィンナ・チューバです!! ※ ゲルハルト・ゼックマイスター氏は、ウィンナ・チューバの継承と普及に熱心に取り組まれており、’98年にウィーンのドブリンガー社からその教則本を出版されています。

 ゼックマイスター氏は、オクロス・ブラス(現アート・オブ・ブラス・ウィーン)の創設者でもあるそうです。

【ウィンナ・チューバとは?】

 大島さんによると、ウィンナチューバの素晴らしい点は、まずその「音」にあるとのこと。

 倍音を多く含み、トロンボーン等とよくハモるその音は、一般的なFチューバと比べものにならないくらい素晴らしい音なのだそうです。

 また、ウィンナ・チューバを知ったブルックナーは、第4交響曲「ロマンティック」にこのFチューバのパートを書き加え、以後の交響曲全てにFウィンナ・チューバを使っており、以後の作曲家も、トロンボーンとのハーモニーを作る上で、Fウィンナ・チューバに重要な役割を与えるようになったそうです。

【楽器の説明について】

 ウィンナチューバについて、最近のパイパーズ誌(195、199、221号)に詳しい記事が掲載されています。

 また、世田谷ブルックナーの家にも、大島さんの詳しい寄稿文が載っていますので、ご覧ください。
 (このページをご覧になった皆さんも、ウィンナチューバを使用して録音されたウィーンフィルのCDのいくつかをお持ちではないかと思います。)

 (−−以下、大島さんの説明です。−−)

【メーカーは?】
MUSICA社(オーストリア)の刻印  ウィンナチューバは、パイパーズ誌221号の記事にもあるように、以前はベルリン、ウィーンの工房で制作されていたようです。
 ウィーンデーマル工房最後のモデルは、大阪芸大(前大フィル)の北先生がお持ちになっているはずです。
 一時アレキサンダー社がウィンナチューバを制作し、日本でも武蔵野音大、前新日フィルの宮川先生(現日大芸術学科)が使われていたそうです。ウィーン音大にもあるそうです。
 残念ながらアレキのウィンナチューバは、材質の関係か(ブラスが厚かった?)特有の音が出なかったそうです。
 現在では、ムジカ社(オーストリア、スタイヤー本社)から販売されています。
 ムジカ社は米UMIに買収されていますが、ウィンナチューバは引き続きムジカ社が扱っています。

 実際の楽器制作(少なくとも一部)は、チェコのボヘミアでやっていると聞いています。
 私の楽器はムジカ社のもので、ブラスの厚みが薄く、明るい音がします。
 ウィンナチューバ特有の、高音域で音が全くこもらない性質が出ています。
 日本では、河合楽器がKAWAIブランド(OEM)でチェコから輸入しています。楽器は、ムジカ社と全く同一です。

【マウスピースは?】

 ウィーンのマウスピース設計者のブレスルマイヤーがFチューバのためのモデルF3Aを出しています。ヤマノが輸入していると思います。
 F3Aは一般的なF管用のマウスピースです。
 ウィンナチューバ用には、特に低音の鳴りを改良したブレスルマイヤーのZ11が適していると思います。

 (なお、ご存じのように、ブレスルマイヤー氏はトランペット、ホルン用のマウスピース開発から始め、ウィーンフィルブラスセクションは、今では彼のマウスピースを使用しています。
 トロンボーンでも成功し、明るくダイレクトなウィーンサウンドを生み出しました。)

【フィンガリングは?】
ウィンナ・チューバは6バルブです。  ウィンナチューバのフィンガリングは通常と全く異なります。
 左1、2、3、右4、5、6で、左主体です。

 1で全音、2で半音下がり、3は1の替え指です。左がF管ベースです。
 右6によりC調に変わり、4、6で1全音、5、6で半音下がります。

 ラッパ吹きには面倒のようですが、木管楽器同様、右、左のフィンガリングにより、より明確なフレージングが可能です。


【演奏法】
ウィンナ・チューバを構える大島氏  ウィンナチューバは細管なので、アンブッシュアー(主として息の使い方)が重要です。
 Es、B、Cチューバのように楽器が鳴ってくれることはありません。
 プレーヤーが鳴らさなくてはなりません。
 私の経験では、息がいい加減だと音質ばかりかイントネーションも悪くなります。
 特に、6バルブを押さえるとかなり管が長くなり、全く鳴ってくれません。
 息のスピードが必要で、このために脇腹に息を入れるイメージ(lib extension=肋骨の下2本を広げる)が必要です。
 (・・・私はブレスを直すのに1年かかりました。以前は腹式呼吸のイメージで腹のコントロールのみでしたが、これだと腹筋がブロックして息が十分吸えません。)
【エチュード】

 ゼックマイスター氏のエチュード(1998、Doblinger)はアンブッシュアー(ブレス)のトレーニングを体系化したものです。
 ウィーンサウンドを収得するには、より深いブレスを基として、このエチュードとコプラッシュ、アーバン(W.ベルが低音用に書き換えたもの)を併用し、クリアなアタック、アーティキュレーションを目指します。
 ゼックマイスター氏のエチュードは、ブルックナーの音楽を吹けるように仕掛けられているので、ブルックナーの旋律がたまに出てきます。
 私の感想としては、このエチュードにはブレスの要点が書かれてあるのですが、独文、英文のためもあり、独習は難しいと思います。

 以上、ウィンナチューバの要点をまとめてみました。
 なお、私自身もまた、上記エチュードの途中ですので、あまり偉そうなことは言えません。
 希望としては、1年後には何とかエチュードを終えられればと考えています。

 とにかく、一度ウィンナチューバの音が出ると、忘れられないくらい“良い”音ですので、きついのですが、止められなくなると思います。

ウィンナ・チューバの写真

 ・・・以上が大島さんから寄せられたウィンナ・チューバの概要です。

 私(作者)も含めて、実物のウィンナ・チューバを見たこと(ましてや、生音を聞いたこと)がある人は、とても少ないのではないかと思います。
 世田谷ブルックナーの家を見ると、ブルックナー、マーラーを中心にウィンナチューバを使用したウィーンフィルの録音が数多く残されていますので、私も手持ちのCDを注意して聴いてみたいと思います。
 また、「フリッツ・ライナーがシカゴ響にウィンナスタイルの楽器を導入したときに、ウィンナチューバもウィーンよりもちこまれた。チャイコフスキーの第6交響曲はCDとしても残されており(1957年録音)、99年10月に惜しくも亡くなった名手アーノルド・ジェイコブスがウィンナチューバを使っている。」という記事は、とても興味深いと思いました。

 著作権の問題がないウィンナ・チューバの演奏録音があれば、今後、このページに掲載していきたいと考えていますので、ご期待ください。

 次(リンク)へ

 ホームページへ戻る