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4Aアセンブリーの系譜

SONATA

著者:Juan Tamariz
出版元:Editorial Frakson
発行年: 1991年

元々はスペイン語で出ていたものを英訳した本です。序文は「1989年、マドリッドにて」と記されていますので、これがおそらく元のスペイン語版の年でしょうか。

ワン・タマリッツは、今や世界に知られたクロースアップマジシャンです。
独特の風貌、独特のテンションで、まるでアドリブのように演技をするのですが、その現象は経験を積んだ奇術家の鋭い目にとってさえ、魔法に見えてしまうほどのものです。

奇術の歴史上、本当の奇跡を所有することを許された数少ないマジシャン達と同じく、彼もまた、 まるで即興のような演技であるにもかかわらず、その実あきれるほど鋭く深い洞察に裏打ちされていることが、この本でもよく分かります。

とくにこの本ではまるで、彼の20年に亘る思考彷徨を順に追うような読み解きも可能で、単に手順を覚えるという以上の面白さがあります。

では、内容を簡単に紹介しましょう。

【2014年7月27日追記】
この本の邦訳が東京堂出版より「ホァン・タマリッツ カードマジック」と題して出版されました。
そちらの日本語版を、私の新サイト【書籍紹介】ホァン・タマリッツ カードマジック(BEWITCHED MUSIC―SONATA)で紹介していますので、よろしければご覧ください。


カードマジック:技法編

The Perpendicular Control

この技法は彼の3巻組のビデオ"Lessons in Magic"でも解説されていますので、有名でしょう。
ダイアゴナルレフトハンドパームとスプレッドカルを融合させたような技法ですが、おそらくこの両者のいずれよりも容易だと思います。

同じ動作から、ボトムあるいは任意の枚数目にカードをコントロールしたり、あるいはパームやラッピング、グリンプスといった動作につなげることも可能です。
応用として、この技法を利用した奇術の例が6つ程紹介されています。

チェンジ

メキシカン・ターンノーバーの研究と、その発展技法である"The Peruvian Turnover"が解説されています。

"The Tamariz Turnover"は、ダブルリフトの後、巧妙にトップカードのみを分離する技法ですが、このアイデア自体は多くの文献に現れており、最も初期のものでは1947年のStanley Collinsの本にまで遡るようです。
Tamariz自身は、この技法を独自に発展させており、本書にもとくに歴史的経緯やクレジットには触れられていません。

"The Doublets Change"と"The Staircase Change"は、2枚、またはそれ以上のカードを同時に変化させる技法です。

シャッフル

"The Cascade Shuffle"は、手の中でリフルシャッフルを行い、ウォーターフォール、カットを連続して行いますが、デックのオーダーは完全に保たれているというフォールス・シャッフルです。
この種のシャッフルは手の大きさが問題になることも多いと思いますが、これは練習すれば手が小さくても可能かも知れません。実際、タマリッツ氏自身の手もかなりきゃしゃな印象でした。

"Notes on the Faro and Other Shuffles"は、ファローシャッフルの特性に関する考察、失敗の補正方法、そしてファローシャッフルをファローに見えないように偽装するアイデアなどが解説されています。

"The Antifaros"は、リバースファロと同じ効果を、ディーリングによって実現しようというものです。
とくに、リバースファロなら何回も行わなければならないところを、それよりも少ない回数の操作で達成できるところは面白いです。(その分、ディーリングの操作は煩雑にはなりますが)
また、これらのディーリング操作を自然に行うための理由付けなどにも考察が及んでおり、ただの実験思考にはとどまっていません。
なお、これは近年発表されたChristian Engbloomの"Antifaro Shuffle"とは別物です。

カードマジック:奇術編

Black Days

7枚の黒いカードのうちの1枚を観客が覚え、それを当てますが、選ばれたカード以外は全て赤いカードに変化します。
これだけ書くと、普通のカード奇術に過ぎませんが、ここでは面白い演出が付けられています。
題名の"Black Days"は、「仕事(その他のイヤなこと)がある憂鬱な日」というような意味でストーリーの中に組み込まれており、観客をいじりながらコミカルな結末を迎えるようになっています。

Three Actors

観客に選ばれた3枚のカードを、それぞれ異なる方法で見つけるというものです。
手順や技法も面白いのですが、表題のとおり、3人の俳優が競いながらも、決して一人が抜きん出てはならない、というようなストーリーに沿った演技となっています。
最後は、トライアンフのようなクライマックスです。

Double Ambitious

この作品もビデオ"Lessons in Magic"に収められていました。基本的にはアンビシャスカードですが、2枚のカードで同時に行います。
観音開きみたいにデックの両側に同時にカードを現したり、Pop Upを2枚で同時に行うムーブなどが面白いと思います。
個人的には、アンビシャスは普通の客に見せる場合は1枚で充分だと思いますが。

The Talisman

1枚のカードの表を見せた後裏向きに左手に持ち、タリスマン(護符のようなもの)で軽く触れると、カードがひとりでに表向き、カードが変化しています。
バリエーションとして、サインがひとりでに出現する、カードの裏色が変わるなどのアイデアが解説されています。

The Romantic Prisoner

2枚のジョーカーの間に観客の選んだカードを挟み、サンドイッチの状態にします。
もう一度確認した後カードを離すと、客のカードが消えてしまいます。
客のカードはその後、演者のポケットから出てきます。
現象は単純ですが、ある映画のストーリーを語るという演出で進められます。途中で映画館の「休憩タイム」が入ったりして面白そうですが、これを演じて実際に観客を楽しませるには相当のショーマンシップが必要な気がします。

Royal Assembly

「4エースアセンブリの系譜」のページでも触れましたが、「カードパズル」現象の一種です。
絵札を全て使い、それらをスート別(スペード、ハート、クラブ、ダイヤ)に4つの山に分けます。
マジックによりそれらのカードが不思議な位置交換を起こし、最終的には数字別(A,K,Q,J)の山に分かれます。

この現象一般に言えることですが、この奇術で実際に観客を楽しませるには、相当の実力が必要でしょう。

Triple Colors Routine

2枚のカードを心の中で覚えてもらいます。1枚は赤いカードの中から、もう1枚は黒いカードの中から選んでもらいます。 術者はデックにほとんど手を触れないで、それらのカードを当てます。
その後、黒いパケットがテーブルに、赤いパケットがポケットにある状態で、2枚のカードを入れ替えて見せます。
演技が終わったかに見えた頃、ポケットの赤いパケットとテーブルの黒いパケット全体が入れ替わってしまいます。

現象は変化に富んでいますが、パームやラッピング、ローディングといった技法が総動員され、またそれにともなうミスディレクションは、ある意味スライディーニの演技に見られるような、非常に個人的な動きに依存したものとなっています。
実際に読者が演じるには、個人のキャラクターに合わせて相当のアレンジが必要でしょう。

Escorial 76

ポール・カリーの名作"Out of This World"を発展させた現象がいくつか解説されています。
4枚のエースをテーブルに並べ、その上に客が指定した通りに一枚ずつカードを配ってゆくと、すべてのカードがスート別に分かれる手順、同じ現象でカードの裏色が変化する手順、客の指定したスートのみ数字が順番に並ぶ手順などが解説されています。
数種類のフォールス・ディールを駆使しなければなりませんが、これをなるべくやりやすくするためのアイデアも解説されています。
ステージでのプレゼンテーションも紹介されています。

The Hypnotic Power of the Jokers

"Everywhere and Nowhere"(どこにもあってどこにもないカード)のバリエーションです。
ジョーカーには人を催眠術にかける力がある、という演出で行います。
ジョーカーの不思議なパワーにより、 客が選んだカードが、デックの異なる3箇所から同時に現れます。しかしジョーカーの催眠が覚めると、それら3枚のカードは別のカードであったことが分かり、客のカードは術者のポケットから現れます。

この手順は私も何度か実演してみましたが、非常に考えて組み立てられています。
技法や動作は若干、彼の動きに合うように考えられているフシがあるのですが、ルーティンやミスディレクションの組み立て方は非常に参考になりました。
演者の技量にもよりますが、ともすれば冗長になりやすいようにも思います。

Neither Blind nor Silly

この作品もビデオ"Lessons in Magic"に入っていました。
ほとんどセルフワーキングと言ってもいいような手順ですが、天才的な手順構成により、そういった匂いを感じさせません。
観客の選んだ2枚のカードを当てるという奇術なのですが、あらゆる可能性を排除する、という演出で、その操作が実際には逆に演者の予定したクライマックスに向けてのセッティングとなっています。また、その演出が同時にエンターテイメントとしても立派に成立しているのが凄いところです。
知らなければ、マジシャンでも引っかかる手順だと思います。

A Clear Triumph

トライアンフシャッフルなどのフォールスシャッフルを使用しないクリアーなトライアンフです。
パケットを4分割して、ファローシャッフルによる組を2つ作って見せるところが特徴かと思います。

ダブル・トライアンフも最後に解説されています。

Jumbles

デックのカードを表裏バラバラに混ぜた状態で、客に自由にカットしてもらい、その位置のカードを覚えてもらいます。 これをさらに何人かの客に行ってもらいます。これらの操作の間、術者は後ろを向いています。
術者が秘密の操作を行ってから、デックを広げると、客のカードのみが表向き、それ以外はすべて裏向きに揃っています。

パーフェクトファローシャッフルが出来る人には簡単でしょう。ファローが出来ない場合のために、代替のやり方も解説してあります。

Total Coincidence

(A Jewel For you)と副題が付けられている通り、非常に派手で不思議な奇術です。

赤裏と青裏の2つのデックを使い、それぞれ別々の客にシャッフルしてもらいます。
これらをスートの赤黒に分け、赤い方の半分はそれぞれのカードケースにしまいます。
青裏の黒いパケットの一方から客が一枚のカードを選びますが、このカードの位置が、赤裏パケットの同じ位置のカードと一致します。

次に赤裏と青裏のパケットをシャッフルしてひとつにして、その中から2人の客に、赤裏と青裏のカードをそれぞれ選んでもらうと、それらが一致します。

青裏と赤裏を分けて、一枚ずつ表向けると全てのカードが一致しています。
さらに、初めに箱に入れておいた赤いスートのカードも取り出して表向けると、これもまた全てのカードの順番が一致しています。

文章で書くと込み入っていますが、充分なプレゼンテーションをもって実演すると非常に派手で面白いと思います。
この現象が、ほとんど技術不要で出来るのが素晴らしいところです。

The Magic Card

青裏のデックから1枚のカードが選ばれ、戻されます。
術者は小さな封筒から「マジックカード」を取り出します。このカードは青裏のブランクフェイスです。このカードの裏をデックにこすると、カードが赤裏に変わります。
さらにその表をデックにこすると、表が客のカードに変化します。
もう一度こすると、最後はマジシャンの似顔絵になります。

ちょっとした小品といった趣の奇術でしょうか。
ある一般的なガフカードの面白い使い方をしています。

The Travelling Cards

この作品も、ビデオ"Lessons in Magic"に収録されています。
客とマジシャンがそれぞれ10枚ずつのカードを持ち、マジシャンが持つ10枚のカードの中から、観客に心の中で2枚のカードを覚えてもらいます。それを輪ゴムで止めておきますが、確認するとカードは8枚に減っており、客のポケットの10枚のカードに、その2枚が合流しています。

いわゆるカードアクロスですが、 ある巧妙なギミックを使うことによって、「心で思っただけ」のカードの、非常にクリーンなカードの移動を実現しています。

私がビデオで初めて見たときは、タネが分かりませんでした。

The Three Goblets Prediction

この奇術は、Steavens Magic Emporiumの"Greater Magic Video Libraly"の一巻として出ている彼のビデオに入っていました。
新品のデックを客にわたし、封を切ってもらいます。
大きな封筒に予言が入っていることを示し、客に持っていてもらいます。
次に デックからまず9枚のカードを選んでもらい、それを3枚に減らし、最終的に1枚が残るようにします。
この1枚が、最初に用意した予言のジャンボカードと一致しています。


9枚のカードを選び、それを客の自由意志に基づいて減らしてゆく過程で、表題の通り3つのゴブレット(グラス)が効果的に使用され、怪しさをなくすと同時に原理のカモフラージュの役目も果たしています。
3つのグラスという、やや大げさな道具立てにより、どちらかといえばサロン向けだと思います。
感覚的に言えば、Nate Leiptigの"The Sympathetic Thirteen"にテイストが似ているようにも思います。

クロースアップマジック:ナイフ

技法

Classic Penknife Twist, Tamariz Twist, Ultrarapid Double Twist, The Trichangeの4技法が解説されています。
どの技法も、一般的なカラーチェンジングナイフの技法よりもカジュアルに見えます。
技法を行っていると言う感じではなく、くるくるとナイフを動かしながら弄んでいるうちに両面が見える、という表現です。

現象、手順

"The Travelling Penknife"では2本のナイフを使い、客が指定した方のナイフがマジシャンのポケットに移動します。

"In Which The Colored Penknives Pass Through A Handkerchef"では、ハンカチの内と外でナイフが入れ替わります。
Fred Kapsの手順に基づいた一般的な手順、2本同時に行う手順、普通のナイフ2本だけで演じる手順が解説されています。

"Progressive Routine 1-2-3"はその題の通り、1本、2本、3本と順に使用するナイフを増やしてゆく手順です。


"CAPICUA Routine"は、上記の技法や手順を組み合わせたものですが、用具すべてが観客の手にある状態から始まり、最後はまた同じく観客にすべて手渡して終わるようになっています。
ちなみに、"Capicua"とは、対称なものを意味する言葉だそうです。
手順の最初と終わりが等しい状態であることから名づけられたものです。

"Rainbow of Penknives"は、これもSteavensの彼のビデオに収録されていました。
彼がこれをDerek Dingleに見せたところ、自分の観賞用にビデオに撮らせてほしいと頼まれたそうです。
手順は時間的には短く、普通のカラーチェンジングナイフ手順とは随分印象が異なります。
どちらかと言うと、不思議さというよりも視覚的な効果を楽しむ手順といえるかもしれません。
そもそもカラーチェンジングナイフにはそういう視覚的な性格が見られますが、この手順では特にそういう雰囲気があります。
セリフは最小限で、よどみなく流れるように演じられ、詩的な幻想とともに静かな余韻を残して終わります。
ちょっと一般的でない組み合わせのナイフが必要ですが、その価値はあると思います。

アイデア

手順にまではなっていないアイデアが色々と紹介されています。

普通のナイフでのカラーチェンジ現象、ハンカチを利用したアイデアなどのほか、ナイフとカードを併用したモンテ現象、、マグネットを利用するアイデアなどはかなり変わっていて面白いです。

 

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