61(「頭聞岳」ご来場御礼〜
亀がいる公園)

60へ戻る続く

12月2日

9回公演「頭聞岳」は、本日、無事楽日を迎えました。

お忙しい中おいでくださった大勢のお客様、まことにありがとうございました。心より御礼申し上げます。

次回公演は来年2月の第10回公演「髷牡丹」となります。
これはガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル出場作品でもあります。
皆様に楽しんでいただけますよう、一同ますます精進してまいります。どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

***

「髷牡丹」のチラシは数日前にできあがり、今回の公演でお客様にお配りするのになんとか間に合った。

個人的には、右端にいる亀の足が、驚いて踏み外したように見えるところがなかなか気に入っている。

撮影は、10月上旬だった。この日劇団員は、細川宅に集まって事務作業をすることになっていたので、その間、座長細川だけちょっとぬけ出してきてもらって、近くの公園で撮影した。

GG二次審査の稽古で、猫に迷惑をかけたあの公園である。

休日の午後だったので、あたりは子供だらけだった。

座長細川がメイクをする20分ほどの間、当方は、何か素材になるものはないかと、カメラを下げてあたりをうろついていた。すると、日が差す池の真中に、ちょうどいい具合に亀がいた。望遠レンズでそれを撮影していると、小学校低学年くらいの子供たち10人がばかりが集まってきて、口々に、「何で亀撮るのぉー! なんで亀撮るのぉー!」と言い始め、大変なことになった。

一回、遠くから、父親らしき人が子供たちに向かって
「こらっ! 亀を撮っている人の邪魔をしちゃいけない!」と一喝したので、子供たちは、少し離れたのだが、再び寄ってきて、今度は「どぉーして、おじいさんの格好をしてるのぉー! どおしてぇー!」とメイク中の座長を指差した。

撮影用の衣裳を着ている座長は、もちろん本人は若者のつもりで、別におじいさんになろうとしていたわけではないのだが、洋服以外のものを着ていると、子供には、皆おじいさんにみえるらしい。

が少なくとも、おばあさんでないというのは分かったようだ。

座長は普段、成人相手には気が強いのだが、子供相手にはそうでもなく、弱ったような笑みを浮かべただけで、別に何も言わなかった。

「この人たちは、舞台に立つ役者さん。で、亀は、チラシに載せるの」と説明すると、「チラシってなーにー」と始まったので、だんだん当方も適当にあしらいはじめる。

そのうちに子供たちが、「僕、どこにもつかまらないで岩に飛び移ったりできるよ」と池の中の岩に飛び乗ってみせたり、カメラに向かって様々なポーズ(多分サッカー選手の真似など)をとったりし始め、これはもう撮らずには済まない、という雰囲気になってきたので、仕方なく子供たちに向けて、何枚かシャッターを切る。

やがて、メイクも終わり、ようやくチラシの撮影を始めた。

第10回公演は、まだ詳しくはわからないのだが、「髷牡丹」という高度な技を習得した男の物語、ということである。
事前のチラシ打ち合わせで決まっていたのは、「座長がフグに乗った図柄」という一点だけである。フグに乗るのにふさわしそうなポーズをあれこれ考えながら撮影をすすめる。

撮影中、子供のひとりが補助付きの自転車で、至近距離(30センチくらい)まで寄ってきて、口をあけて役者ふたりの顔をじっとみつめていた。我々が光を求めて移動したりすると、子供もいっしょについてくる。30分くらいすると、さすがに飽きたのか、黙ったまま補助つきの自転車で去っていった。

子供が去った頃、既に日は傾き始め、最後のフィルムになった。

躍動感と緊迫感を出すために、最後の一本は、座長に自転車の上でバランスをとってもらい、そのままの体勢でつぎつぎポーズをとるところを続けざまにシャッター切ることにする。

なかなか当方が撮り止めないので、座長はやぶれかぶれになっていろんなポーズを取り続けた。

このうちの一枚が、今回チラシに使用した写真である。歯を食いしばっているように見えるのは、倒れそうな自転車の上で、本当に焦っていたからだと思う。
(とはいえ、これは一連の流れのなかでは、むしろおとなしい印象の一枚でもある。他のは恐ろしすぎる形相で、ちょっと使えない)

こうして撮影を終えた。はだしになっていたので足を洗う場所を探していると、子供の一人が、「水道知っているよ」と走り出した。意味も無くジャンプしながらかけていくその子供のあとについていくと、滑り台の隣に足洗い場があって、息を弾ませたその子供が、得意げに両手でそれを示した。座長細川はありがたくそこを使わせてもらい、お礼を言ってその場を離れた。

公園を出るときには、子供の一人が、「じやーねー。まーたーねー」と両手をふって見送ってくれた。座長細川は、気付かずにすたすた行ってしまったので、仕方なく当方ひとりがカメラバックを地面におろし、三人を代表してかなり長いこと手を振り続けたのであった。

細川の家の周辺は、随分とフレンドリーな土地柄らしい。

一度チラシを持って公園をたずねようと思っている。そうすれば、亀の用途も比較的楽に説明できそうだ。

そして座長は、そのうち、公演中に一回くらい、子供優先日をもうけようか、などと言っている。



60へ戻る続く
HOME