63(「駒嵐」チラシ撮影)

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2002年1月13日

様、あけましておめでとうございます。
今年も皆様に楽しんでいただけますよう、ひげ太夫一同全力で精進してまいります。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

***

日、第11回公演「駒嵐」のチラシの撮影を行った。
座長細川のふたりに来てもらい、撮影場所は新宿の公園。

この日は、本当に寒い日だった。
撮影は、公園のアスレチックを使って行うと決めていた。
子供が何人も遊んでいたので、邪魔にならないぬよう、端の方で、座長細川のふたりにそれぞれぶら下がったり、よじ上ったりしてもらい、それを撮影する。

寒さで手がかじかんだ状態でぶら下がるのは、かなりきつそうで、それが表情にあらわれていた。

ふと気付くと、少し離れたあたりで、子供の母親と思われる人が腕を組みながら、時々子供から目を離し、チラチラとこちらを見ているのがわかった。かなり警戒しているようだ。

自分の大事な子供が遊ぶアスレチックの片隅に、ひげを描いた性別も分からない見知らぬ人が、ふたりもぶら下がっている。
その親御さんの気持ちになれば、何か危険を感じても不思議ではないと思った。

が、もちろん、我々は子供たちに対しては、邪魔にならないように気を遣い、撮影は友好的な雰囲気の中で行われた。アスレチックの上を走り回り、にぎやかに鬼ごっこをしていたいた子供たち(年齢も性別もばらばら)は、次第に近くによってきて、突然、静かになったのでどうしたかと思ってみあげると、全員が並んでこちらを見下ろしていた。

ひとしきりぶら下がって撮影したあと、アスレチックの一部が登り棒になっていたので、今度はそこに登っているところを撮影することにする。すると意外なことに、座長がちょっと困った顔をした。

苦手なのだという。
小学校のときから、座長は登り棒ができなかったらしい。
「マイムでは何回も登ってるんだけど」と座長は、地上に立ったまま軽々と登るポーズをやって見せた。
なるほど。

子供たちはあいかわらず、上から身を乗り出して、食い入るように見ていたが、そのうち一人が下りてきて、悠然と登り棒を登って見せた。

続いてもう一人が下りてきて、やはりするすると登り始め、途中で止まって、下ったり、登ったり、もう自由自在である。

「頑張りなよ」子供の一人が言った。

座長は、相変わらず困ったように頭をかいたり、上を見たり、下を見たりしていたが、「よし、できるもできないも裏表」と『頭聞岳』の十角の台詞をつぶやき、のぼり棒に飛びついた。

「駄目だったらジャンプすればいいんだよ!」
「足はあんまり使わなくてもいいんだよ」子供たちは口々にアドバイスをする。
一度目は、そのままずり落ちたが、2度目には、辛くも成功した。
この写真を使うかどうかはまだわからないが、子供たち、ありがとう。

その後の撮影は、公園の中を、ラオスで買ってきた楽器を抱えて疾走してもらい、それを何枚か連写したが、このあたりで日が暮れかかり、これ以上の撮影続行が不可能になったので、この日の撮影を終えた。

砂場の隅にまとめておいた荷物の方へ引き上げる際、先ほどの子供たち6、7人が、座長細川の後ろを少し離れて、しかもなぜか全員抜き足差し足で、一列になってついて来ているのが見えた。

気付かずにメイクを落とし始めた座長が振り返ると、子供たちは、なんだ、ひげ落としちゃったのか。と残念そうな顔をして、走って逃げて行った。

子供たちの何人かは、その晩、ひげがはえた人の夢を見たかもしれない。



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