75(「烈々宙王」の稽古場)

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3月19日

ンフレット用の写真を撮りに、稽古場へ行った。
今回は、出し物師が新たに2名加わっている。

宣伝美術の当方は、そのふたりとは今日が初対面だったので、撮影しながら、ふたりに2,3質問をしてみることにした。


 
[石川聖子]

Q.ひげ太夫との出会いは?
A.きっかけは、部活の先輩がひげ太夫の招待券を手に入れて観に行ってきて、それで「面白かったから、行ってきなさい」と言われたからです。
第5回公演の頃から見ていて、ずっと出たい出たいと、アンケートに書いていました。

Q.ひげ太夫に入ってびっくりしたことはありますか?
A.ずっと客席から観ていたから、大体の予想はついて、それほど驚くことはなかったです。

ただ皆の実年齢を知って驚きました。皆、実際の年よりも若いし、体もよく動く。

(その驚きをメンバーにより強く伝えたいばかりに石川は、ある先輩出し物師にむかって、「こんな若い40歳はみたことないです!」と勝手に相手の年齢を四捨五入して、叱られたらしい)

それから、座長が稽古中に何か面白いことを言っても、皆笑わないのに驚きました。
皆、ふむふむ、とまじめにきいているから、笑っちゃいけないんだと思って、我慢してます。
みんな麻痺しているんだと思います。
とても出来そうにない事でも、出来ないとは言わないし。麻痺してます、みんな。
あと一番驚いたのは、座長のケガです。
ひげだより 3月14日参照)



[山田敬子] 

Q.ひげ太夫との出会いは?
A.最初に観たのが、前回の雲丈郭(昨年11月)です。
パンフレットに「出し物師募集」という文字を見つけて、一週間考えた末、勇気を出して応募のメールをしました。

Q.ひげ太夫に入ってびっくりしたことはありますか?
A.びっくりしたことだらけです。特に座長がケガしたとき、そして、それなのに次の日も、普通に稽古をやると言い出したとき。
それから、最初の稽古でいきなり2段の組体操やって、2回目の稽古では、3段になっていて、こんなのできるのかなぁと思いました。

(と、慎重な答えが続いたので、以下の質問をしてみた)

Q.座長の、特に困るところはどんなところですか?
A. ‥‥困らないけど(困惑したように、片手で顔をおおって言いよどむ)‥‥よくこんなこと思いつくなーと(少し考える)それに座長が絶対無理そうな事を言っても、誰も「無理だー」と言わないのがびっくりさせられました。
こうすればできるかも、とかみんな言い出して、
そうです!(急に声に力が入る)
それはほんとに、びっくりしました。誰も無理とか言わないんだもの!

Q.稽古は、体力的にかなりきついですか?
A.それは、大丈夫です!


この質問をしてかったことが、2つ有る。
座長のケガは、ふたりをかなりびっくりさせたらしいこと。そして、座長が相当な無理難題を吹っかけているらしいということ。


■補足■
この日誌を書くにあたって、念のため座長に、ケガについて尋ねてみた。
すると、不機嫌そうに、「ケガじゃない、コブだ」と言い張った。
血が出てないのだからケガじゃない。
ケガじゃないのだから心配する事ではない
と、こういう理屈らしい。

これは、ことわざにでもなりそうだ。
「ケガじゃない、コブだ」
意味:
本質的には大して違わない事柄なのに、「全然違う」、と強い口調で言い張る事。

ともかく大した「けが」ではなく、単に周囲を驚かせただけ、ということらしい。

ついでに、新出し物師が稽古でびっくりした話もぶつけてみた。すると、返ってきたのは、
「びっくりするのはこれからだ」という不敵な返事。
最後の1〜2週間の追い込みのすさまじさを言っているらしい。
新出し物師の健闘を祈る。



***

たりの写真を撮り終えたところで、鍵原の一声で稽古が始まった。


通常座長は、台本を書いてそれをコピーしてからやってくるので、それまでの間、他のメンバーは、すでに一度やったところを、再確認しながら微調整するのである。


やがてパンをかじりながら。本日の台本を持った座長がやってきた。

皆は、両手を広げて伸ばし、蛇行した川の流れを全身で作っているところだった。より川らしくみえるように、各々の位置を調整している。

それを見た座長(右端)、片手にお茶を持ったまま、「なんか、この前やったときとはちょっと形が違うね‥‥」と言い、石川にむかって、「そこは、もっとバナナじゃなかったっけ?」

「バ、バナナ?ですか」きょとんとする石川(左端)。
体の曲がり具合のことらしい。こうして細かく角度を決めていき、皆がそれぞれの位置や、自分のバナナ具合をしっかり記憶する。

今度は、座長が不安定な位置でさかだちをして、どの程度の支えが必要か調べている。
そして、それをちょっと離れた所から見ている荒川(左端)が、さりげなくオヤジっぽいたたずまいなのがまたいい感じである。

古場へは、公演の度に写真を撮りに行くのだが、いつもは公演の2、3週間前である。
それが、今回は公演までまだ一月以上あるから、かなり早い時期である。
いつもなら、
物語上の重要な建物などは既に出来上がっているのだが、今回はまさに、その形を皆で試行錯誤しながら作っている最中であった。

見ていると、この作業はかなり込み入ったものだということがわかる。
紆余曲折がある。
「じゃ、寺院を作ってみよう」といって組体操に取り掛かっているというのに、やり始めると、なぜか次々他のものが出来てくる。
「こっちの方から見ると、寺院というよりはむしろ植物に見える」。
で、別の方法でやり始めてみると、
寺院というよりは、今度はむしろ乗り物に見える」
という具合である。

かといって、それを却下するわけではない。
たとえそれが今回のストーリーに一切からみそうでない物であっても、丁寧にひとつひとつそれを完成させていくのである。
きっと将来、どこか思わぬところでそれが生きてくるのだろうが、ともかく、なかなか本来作ろうとしていたものにたどりつかない。
今日こうして見ているうちにも、寺院以外のものが三つも出来てしまっていた。

さらにその最中にもまた新たなことを思いつくらしく、「ちょっと、みんな。こんなのは体でできるかなぁ」と、座長が指先で組んで縮小版を作り、それを動かしながら説明したりする。
そうすると、出し物師たちはそれぞれ、体を動かして、過去にやったイメージの中から使えそうな形を思い出したり、提案したりし始めるのである。

新出し物師のふたりが先ほど口をそろえて「みんな麻痺していて、無理なことでも無理とは言わずに工夫を始めてしまうから驚いた」といっていたのは、こういうことか。
そして、その新出し物師自身も、結構色々と提案しているのであった。
麻痺」が伝染したらしい。

肩の上に乗って、実際の会場の高さを予想しているところ。



ある建造物のイメージを作っているところ。次々によじ登っていく。

指先やつま先の、動きや角度を調整する。
  

提案される形は、どれもすぐそれと分かるようにわかりやすい名で呼ばれていた。
  
例えば上の写真でふたりが作っているこの形は、「変なカップル」と呼ばれていたものである。
そのとぼけた命名に反して、実際にはかなり辛そうな体勢である。
公園などで、もし本当にこんなふうにして愛を語らっている変なカップルがいたら、当方としては相当な拍手を送りたいところである。

こちらは「無言の帰宅」。(中央の2人のみ)

以前、座長がこの状態からアゴを床に強打して口内に大量出血したことがあった。手より先に体が下りてしまったらしい。そのとき、止血のため、口にティッシュを一杯に詰めて、話ができない状態のまま帰宅していったことから、この名で呼ばれているようだ。



こうして、様々な試行錯誤の末、この日の稽古がおわった。

***

今日は、舞台を組んでくださる三宅氏(舞台監督)も稽古場に来ていた。
三宅氏座長は帰りの電車で舞台の組み方の打ち合わせをしていたのだが、その最中、突然座長が天井を仰ぎ見て、
「だめだー、暴れまわる場所が思ったほど広く取れないー」と、うめいた。

今回の物語は、やら波動やらに関わる物語らしい。
これはもう暴れまわらないわけにはいかないだろう。
まだ色々と工夫を凝らす必要があるようだ。



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