
[斉藤 美穂]
出演することになったきっかけを訊ねると、
「ひげ太夫の舞台を最初に見たときに、キラーン(※)とやるのを見て、胸にズキューンときました。
(※、舞台上で、キラーンと輝いている様子をあらわすひげ太夫特有の動作)
真剣にバカなこと‥‥バカというのともちょっと違うんですが、‥ともかく全力でそういうことをやっているのを見ると、こんな風に感じるのか!と感動して、出たいと思いました」とのこと。「いい姉御たちが一杯で励まされています」
[大庭 美佐]
性格を訊ねると、
「笑っているか、笑っていないかだったら、8対2の割合で笑ってます」
(そばにいた鍵原が「9対1くらいには達していると思います」と付け加えた)
「おかしいか、おかしくないか、だったら、9割の人から『おかしな人』と言われます。でも残りの1割からは『堅物』だと言われる」のだそうだ。
残りの1割の方が本当の姿ということもあるから、まだよくわからないが、笑顔が多いのは確かである。
写真をひとしきり撮ったところで、稽古が始まる。座長は今日の分の台本を書き上げてから来るので、まだ来ていない。
鍵原の掛け声で、以前にも増して熱心に発声練習が行われていた。
やがてその日書き上げた分の台本をもって座長がやってきた。
座長は稽古着にも着替えずに、スリッパのまま、いきなり、今回のタイトルにもなっている「厳目綴り」という技の説明を始めた。
きっと今日、台本を書きながら、座長の頭のなかで、その技の詳細がむくむくと湧き上がってきたのだろう。そして恐らく、一刻も早くそれを皆に説明したいのだ。
なぜ、この人物は、「厳目綴り」という、こんなにも込み入った技を使うようになったのか?
そして、その技をかけられた人間は一体どうなるのか?
技自体も込み入っていれば、使う人物にも込み入った事情がある。
まだ座長の頭の中にしかない、誰も見たことのない技である。説明する座長にも自然に熱がこもる。
細川(中央)を立たせて、その技をかけられた場合の状況を説明する座長(左端)。説明しながらもますます気迫がこもる。

「厳目綴り」の何たるかを完全に把握していない一同は、座長の激しい説明に、やや困惑している。
ともかくこうして物語の核になる技の概要が伝えられた。そして早速、この技のかけられ方について、特訓が始まった。(この間に、座長急いで着替える)

中央で、一同をたぐり寄せる(ように見せる)役は、実際の舞台では座長なのだが、ここでは鍵原(右から二人目)がそれを担当し、座長は少し離れたところから全体の動きを見て、あれこれ注文を出す。
「みんな、もう少し『こずるく』動いてみて!」
「こずるく」とは、表現は悪いが、要するに、段取りどおりに動いたり、やみくもにリアルに動こうとしたりするのではなく、どうしたらそう「見える」のか、強調すべき部分をよく考えて動いて!との指示らしい。

拡大してみると、背後の他の出し物師たちの激しい動きにくらべ、手前の鍵原は、一見「どうということはない」という冷静な表情に見えるのだが、実はそうではなく、双方の動きの兼ね合いで、すべての動きの印象が左右されているのである。
息を合わせるために、何度も何度も同じ動きを繰り返す。
こんな風にして稽古は進み、やがて、「最後に、少しだけ組み体操やります」と座長。
今回は、時代背景が今までとは異なりほぼ現代なので、組み体操で作る背景も、いつもとは違う。
「石垣」や「櫓」といったものではなく、直線的で、部分的に直角に曲がっていたりもする。
だから組み方も今までとちょっと違う。

人間を直角に曲げるのは難しそうである。
こうして、稽古は終了した。
一旦着替えて表に出ると、今度は稽古場前の広場で衣裳の打ち合わせである。
それぞれが調達するものを、大まかに決めている。
衣裳の詳細は、座長が、近日中に決定して、皆に伝えるとのことで、この日はこれで解散した。
第14回公演「厳目綴り」が、いよいよ間近に迫ってまいりました。稽古はこのような具合に日々進んでおります。
皆様のお越しを、一同、心よりお待ちしております。