「摩天楼ブルース」こそJMVの代表作といえる一本だ!

これには異論反論もあるかと思うが、私は本質的にJMVを‘アクション’スターであり‘映画’俳優だと位置付けている。しかるに「摩天楼ブルース」はJMVという役者の持ち味を生かした、彼のラインナップを一言で代弁でしてくれる映画なのである。


JMVというアクションスターに、無敵のヒーロー役は似合わない。大男なんかには軽々と持ち上げられてしまう(※「バトルストーム」「ターザンニューヨークへ行く」等)ほど小柄な体格でおせじにも強そう!というルックスではないでしょ。
しかし、怒りや悲しみを勇気に変えて悪に立ち向かった時のJMVは誰も止められないほど強くその姿は美しい。腕力より精神力、これがJMVの真骨頂。

この作品の主役トミーギャンブル役は、まさに彼のために
書かれたような役どころなのである。ちょっとオチャメで女に意地悪で、アロハシャツやLeeのジーンズが似合う。現実的で冷たいところもあるが、本当は友情に厚く、陸にあがっていてもどこか海の匂いを感じさせる男。


こんな風に書き連ねていくと、「摩天楼ブルース」を観ていなくても、ファンなら察しはつくはずだ。そして一匹狼というキャラクターも忘れてはならない。


主人公トミーが船を下ろされるところからこの物語は始まる。船乗りのトミーは貨物船内で他の乗り組み員と揉め事を起こし、6ヶ月間の乗船禁止処分に科せられたのだ。やむなく寄航先のN.Yに一時的に身を寄せるという、たった数分の導入部だけでJMVらしさが覗える。

いや、そこでグデングデンに酔っ払っていてこそジャンという人もいるかも知れないが、ご心配なく。タイトルアヴァンのうちにちゃんと一杯ひっかけてますから。

ここで重要なのは、JMVが船内で揉め事を起こし、相手ではなく、彼が爪弾きに
されるという設定だ。

集団行動が苦手という役がハマる

という定義が成り立っている。


そう、彼は退役軍人という役や一匹狼という役がなんと多いことか。
しかも彼が降ろされたということで相手が上司、上官であること、同僚達も同情をみせるものの彼を救ってやらないということはこれ集団生活のなかで疎ましい存在であったことを感じさせる。彼の頑ななまでの正義感などがそうさせたのであろう。


軍隊のような「誰かの指揮下」に入って集団行動をこなす、あるいは社会の中で巧くやっていく、大人としての術を彼はもたない。
良い言い方をすれば、媚びない
とか妥協しないとかなんとでもいえるが、言い換えれば自分本位で幼稚で、社会の中で行動できない、ダメな大人である。自分の周りにいたら嫌な奴だろう。

そんなダメな大人役が誰より似合うのがJMVなのだ。

私生活での彼自身が、ハリウッドで徒党を組まず、スターもきどらず、気ままな生活
楽しんでいた(過去形?)ように、JMVはハリウッドきってのアウトローなのだ。


映画自体の作品評は毎度、操行ゼロ氏に委ねているが(おそらく賞賛の嵐になるだろう)私が特筆しておきたいのは、本作がバイオレンス・アクションにカテゴライズされながら劇中たったひとりの死者しか出さないこと。


その死も物語上たいへん重要な意味合いをもっている。これによってトミーは船員免許永久剥奪も恐れず(っていうか考えてない?)、立ち上がるのだ。爽快なラストへと向かわせるターニングポイントである。

ハリウッドのアクション映画には、痛みも感じさせず何十人何百人と平気で殺してしまうゲーム感覚の映画が実に多い。そんな中本作品はとてもリアリティがあり、J・ブラッカイマーも1人の人間なんだなぁと思う。命の重さが感じられるめずらしいハリウッドアクション映画だと言える。

流れ者」「よそ者」「俺には関係ない


そんなセリフを吐き続ける‘陸に上がった船乗り’トミー最後に見せた怒りの爆発!
そこに流れるソウルフルなエンディング曲
本作はJMVの魅力を余すところなく描いた、ファン必見のアクションムービーである。