聴かずに死ねない〜Donny Hathaway

今回は「夭折したソウルの巨人」・・・というより、近頃では「歌手レイラ・ハザウェイの親父」と言ったほうが通りがいいかもしれない神様ダニー・ハザウェイ(享年33歳)の傑作「ライブ」(1971年録音・1972年発表)を紹介する。

ダニーはその印象的な声と圧倒的なソウル・パワーで今なお多くのフォロアーを生みつづける巨人である。彼の遺した作品はどれもハイレベルでハズレがないので、何から買っても問題ないと言える。しかし、やはり熱いソウルの燃焼を感じるにはこのライブが一番手っ取り早いのは事実である。(因みにこの会場では神様カーティス・メイフィールドもライブ盤を録音しており、それがまた「なんじゃこりゃ?」な傑作である。)

オープニングはソウル界「もう一人の神様」マーヴィン・ゲイのヒット曲「What's Goin' On」のカヴァーである。ダニーの弾くフェンダー・ローズの響きとともに一瞬にしてソウルな空気があたりに充満しはじめる。コンマ数秒で全身に鳥肌、「あら、もういっちゃったの?」になること請け合いである。マーヴィン大好きの筆者が言うんだから間違いない。

ベースは名手ウィリー・ウイークスで、オリジナルのジェームス・ジェマーソンにも負けないグルーヴィなボトムを形成している。ドラムは確かEW&Fのリーダー、モーリス・ホワイトの兄弟(フレッド・ホワイト)だったと思うけれど、これまた抜群のビートを叩き出していて、思わずのけぞってしまう。さらになんとも豪勢な話だが、ギターは元スタッフ、元ガッド・ギャングの名人コーネル・デュプリーが弾いている。(A面はフィル・アップチャーチ)このメンツで凄い演奏になるのは当然至極であるけれど、わかっていても、聴くたびにのけぞってしまう筆者はバカかもしれない。

「カヴァー曲はオリジナルを超えられない」というのはいわば定説になっているけれど、ダニーのこの曲に関しては、少なくともオリジナルにひけをとらいない出来映えである。このアルバムでは他にもキャロル・キングの名曲「You've Got a Friend」とジョン・レノンの必殺「Jealous Guy」もカヴァーされている。
特に4曲目「You've Got a Friend」のイントロで観客が「ギャ〜!」と叫ぶところは毎回盛り上がってしまう。それにしても原作者キャロル・キングは素晴らしい作家&歌手である。ダニーが取上げるのもうなづける、文句なしの名曲である。

2曲目「Getto」は重いベースのリフで幕をあける。そのB♭m7とE♭7(9)の繰り返しが癖になる超絶グルーヴを生み出す。このベースラインを知らないベース奏者など、筆者は信用できない。ダニーのエレピも強烈で、聴いているうちに脳内が完全に白痴化してゆく。(というかイントロで失禁するけど)

しかしやはりこのアルバムのハイライトはラストの「Everything is Everything」だろう。いわゆる「一発もの」で、コードはE一発である(一部展開するけれど)。ここではメンバー紹介を兼ねて各ミュージシャンがソロをとる。とりわけウイリー・ウィークスのベースソロは秀逸である。指弾きオンリーでスラップなどせず、黒々としたフレーズを紡いでいく。個人的に最も好きなベースソロのひとつである。

ベースの神様マーカス・ミラーは自分のバンドでよく「You've Got a Friend」をレイラ・ハザウェイと演奏しているが、その元ネタは明らかにこのレコードである。マーカス・ミラーも愛するソウル・バイブルなこの一枚、聴かずに死ねない。

2003年4月15日




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