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2002年3月7日(木曜)更新

 

映画制作

 映画「竜二Forever」が話題を呼んでいる。83年に上映され、数々の賞に輝いた映画「竜二」の製作者で脚本家、そして主演俳優であった金子正次をモデルにした映画だ。金子や監督、プロデューサーを務めたその友人たちの、映画と映画作りへの情熱を描いている。劇中劇として映画を撮影するシーンが続き、映画が実際にはどのように撮られていくのかを具体的に知ることもできる。何度も繰り返し見る人がいる映画だ。一方で、金子たちのように、映画作りに情熱を傾ける若者は今も多い。そうした若者たちが学ぶ場も訪ねてみた。

 

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すてきな時間と場所共有

竜二Forever
映画「竜二Forever」の一場面。
映画づくりの現場を描いている

 「このまま終わってたまるか」「俺(おれ)はこんなもんじゃねぇ」「待ってろよ!」
 「竜二Forever」の中の、主役金子正次の言葉だ。金子は映画「竜二」の完成直後に、すい臓がんで33歳で亡くなった。だが、残された映画「竜二」は多くの人に支持され、金子の映画にかけた情熱とともに、映画界にいわば伝説となって残った。

 金子の映画作りは苦労の連続だった。金子の脚本で金子が主演するという企画を、映画会社に持ち込むが、相手にされず、友人に出資してもらってようやく制作にこぎつける。いざ、撮影が始まってもトラブルが続く。初めて映画監督を務めた友人が、俳優の立ち位置やカメラ位置をなかなか決められずスタッフにあきれられたり、資金が足りなくなったりする。

 そうした折々に、金子は不屈の闘志を見せ、冒頭のような言葉を語り続けるのだ。
金子役の高橋克典(37)は、金子のひたむきな姿に共感を覚えた。それとともに、今回の映画作りの現場そのものも、楽しくて楽しくて仕方がなかったと語る。
 「映画作りというのは、すてきな場所と時間を共有する仕事。映画という一つのものにスタッフやキャストみんなで向かっていくという思いがいい。盛り上がった」

 細野辰興監督(49)は映画作りを題材とした映画を撮りたいとかねがね思っていた。映画を舞台に、ものを作る人たちの情熱と素晴らしさを描いてみたかったからだ。
 「『竜二』の時代は、映画の作り手が今より元気で強かった。だが、我々も映画にかける情熱は、金子らと同じぐらいに持っている」

竜二Forever

東京・渋谷シネ・アミューズ(TEL03・3496・2888)で上映中。
 原作は生江有二「竜二 映画に賭けた33歳の生涯」(幻冬舎刊)。脚本は細野辰興、星貴則。
 出演はほかに、石田ひかり、香川照之、木下ほうか、奥貫薫、高杉亘ら。

「学校」から現場で活躍も

日本映画学校
映画作りをする
日本映画学校の学生たち

 映画作りを学ぶ場はさまざまだ。サークルでの自主映画作りからスタートする人もいれば、高校・大学を卒業後に、映像専門の学校に入る人もいる。そうした学校のひとつが75年に今村昌平監督が呼びかけて開設した川崎市麻生区の日本映画学校(佐藤忠男校長)だ。

 小田急線新百合ケ丘駅前の学校を訪ねると、ちょうど映像科3年生の立松真衣さん(21)を監督としたグループが、卒業制作の映画「レンニュウ」のダビングをしていた。撮影したフィルムを編集したあと、せりふや効果音、音楽を入れていく。地味ではあるが、演出効果を高める重要な作業だ。

 指導するのは元松竹で寅さんシリーズなど270本の音の調整(整音)を担当した松本隆司さん(73)。だが、フィルムと録音テープのスタートがなかなか合わず、作業を始められない。
 やっと、作業が始まると松本さんはやさしく指導を続けた。「歩行者の足音を少しあげていこうか」「雨の音はあんまり上げなくていいよ」

 卒業制作の映画作りが始まったのは、昨年4月。演出志望の約50人の学生がそれぞれ脚本を書き、そのなかから立松さんの脚本など4本が選ばれて、映画化することになった。
 「レンニュウ」は若い女性の心の渇きと、優しさを描いた作品。立松さんが十数回の書き直しをした末、9月30日に撮影が始まり、2月初めに完成した。250万円の予算だったが、約50万円超過した。

 立松さんのグループは、最年少が立松さんら21歳で、上は30歳までの25人。映画を作る過程で、けんかもしたが、「みんなでものを作っていく喜びは何ものにも代え難かった」。
 立松さんは卒業後は無給だが脚本家の助手になる。

 卒業生の佐藤功次郎さん(31)は、現在俳優修業中。映画「ロッキー」に感動し、ハリウッドで監督になろうと夢見た。渡米するためには、まず手に職をつけなければと、理容師になったという異色の経歴をもつ。25歳で映画学校に入り、卒業後、映画の助監督をして、「立ったまま寝てしまう」ような現場の厳しさを学んだ。幸か不幸か撮影中にそのユニークなキャラクターが認められ、まずは俳優を目指している。

 学校を出たからといって、金子正次のように夢を実現させるまでの道は遠い。佐藤さんがゼミで一緒に学んだ15人のうち、3年たった今、映画に直接かかわっているのは3人。佐藤さん自身も、レストランのウエーターで生計を立てている。だが夢は捨てない。

 「いい映画を作れば世界で有名になれる。テレビじゃ、世界的には有名になれません」
 日本映画学校の先生たちも、映画への思いは金子と変わらない。松本さんは「次の世代の若い映画人を育てていきたい」と熱く語っていた。

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2002年3月7日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

 
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