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【ダンスがみたい!7 新人シリ−ズ3】批評家賞と講評

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◆出演者
Aグループ 1/8(土)
清藤美智子『蒼-blue-』
Dance Unitジジ『ジジ』伊藤真喜子 池田素子 樋口信子 勝部ちこ
KOE『ミンナガウタ』板垣あすか
Bグループ 1/9(日)
あらた真生『ひとひら』
アダチマミ×無所属ペルリ『トランポリンの上で殴り合い』岸麻奈美 山口由香 アダチマミ
佐藤道代『シルク・マザー』
Cグループ 1/10(月・祝)
浜口彩子『5/6,200,000,000物語』MILLA 楠美奈生 都築智子 川口麻美 浜口彩子
ノシロナオコ『('LOCUS'考察2)』
大谷祐司『ニュートラルマインド』
Dグループ1/12(水)
神村恵『something soft & pink』
きこり文庫『エプロンかけて、町をゆこう 〜たぶん私達に出来ないことは、何もないと思うよ〜』安次嶺菜緒 松長宏美 岡村泰子 清水良子 轟桃子 松田晴子 川上暁子 佐々木智子
レモン組『もがき絵詞「若子快庵」』富岡千幸 霜村佳広 中西レモン 植田充俊
Eグループ1/18(火)
BISCO『読〜ミニこねた集〜』戎敦子 諏訪百合子 長田真喜子 ノブタアイコ 村上恵理
菊地びよ『目とセイシン』
竹部育美+ミンナノコ『素足と水色』竹部育美 ミンナノコ(向井千枝、長谷川宝子他)
Fグループ1/19(水)
武藤容子『Honey』
弦弓真理江『ふちなりの』
滝田高之(スピロ平太)『THE LORD OF THE 陰部』滝田高之他
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◆【批評家賞】
【アダチマミ×無所属ペルリの『トランポリンの上で殴り合い』】


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◆【オーディエンス賞】
【佐藤道代『シルク・マザー』】


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◆批評家賞授賞理由
 構成、照明、音楽とも巧みで完成度が高い。そこに何気なく奇妙な場面を挿入してインパクトを与える。ダンスや動きの質も高く、緊張感を保ちながら、それでもおかしい場面を作れるという才能は格別。いまユルさが王道にあるなかで、緊張感を一つの規範として持ち、ユルさの意味も租借しながら舞台を作っている。そのアイデアと意欲意欲に可能性を感じた。今回の出演者のなかではオリジナリティと構成力が際立っていた。(文責・志賀)
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◆選考経過
・批評家賞
 新人シリーズ批評家賞の選考会は、最終日 (1月19 日) の公演終了後に行われました。 出席者は志賀信夫、原田広美、村岡秀弥、柳澤望の4名で、吉田悠樹彦は投票用紙の提出による参加となりました。
 候補作品は早い段階で 2 作品に絞られました。それはアダチマミ×無所属ペルリの『トランポリンの上で殴り合い』ときこり文庫の『エプロンかけて、町をゆこう 〜たぶん私達に出来ないことは、何もないと思うよ〜』です。
 この2作品は類似した要素を持っていました。若い女性数名のグループで、リーダーの存在感があり、女性としての「身体性」への意識を作品に取り入れて構成しているという点です。アダチ作品は特にその視覚的な効果と独創性が評価されました。きこり文庫は、特に身体の日常的な状態を重視するというコンセプトが評価されました。
 僅差でしたが、2時間を超えた慎重で厳正な議論の末、アダチマミ×無所属ペルリの『トランポリンの上で殴り合い』を新人賞とすることに決定しました。
 なお、他に名前があがったのは、以下の方々でした。
あらた真生、大谷祐司、KOE、滝田高之、武部育美+ミンナノコ、浜口彩子、武藤容子、レモン組
◆批評家賞選考委員
 志賀信夫/原田広美/村岡秀弥/柳澤望/吉田悠樹彦
・オーディエンス賞:通し券を買い求めた方々の投票により決定しました。

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◆講評                                        原田広美
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武藤容子         KOE

 どの出演者にも熱が入り、〈新人シリ−ズ〉として予想以上のレベルを感じたことを最初に明記したい。そのうえでだが、私としては賞の決定に関しては「身体性=身体の感受性がどこまでのカオスを含み、逆にどこまでの内在する硬直と儚さ・衝動や病の領域にまで肉迫しえているか、またさらにそれを自らの〈表現様式〉として昇華して〈ある美意識を提出しえているか〉という、身体のあり方を含んだ身体表現そのものの質において、日常と表現者自らのエッジにさらに浸食し得たタイプのものを選出したかった」との思いが強く残る。それは[ダンスがみたい!]という[ダンス]の部分、そしてdie pratzeという、現在の東京のダンス・シ−ンのいわば最もアングラ的な部分 の一翼を担っているであろう会場とを考えたうえでの思いであった。
 審査員ではないが審査の席に同席された真壁茂氏(ディプラッツ代表)を含めて、私と似た視点がまったくなかったわけではないが、今回の選考においては別の基準が優先した。もちろん「アダチマミ×無所属ペルリ」がまったく悪いという意味ではなく、便器から白米を茶碗に盛るなどという奇抜なシ−ンを含めて、舞台全体の流れの演出もよくまとまっていた。ただこの種のまとまりのよさなら、他にもいくつかあったとも思う。
 前述した私の基準で目立ったのは、まず最終日の武藤容子で、殺気を帯びたほどの乾いた鋭さと、それでいてニヒルなだけでなく人の実存の真実に触れ得たいと感じさせるほどの〈雰囲気〉を持つ身体表現は群を抜いて感じられた。また構成力もあった。その〈雰囲気〉とは何? ということになろうが、それは私見一般として、前述した身体の感受性を伴う身体(肉体と精神)の集中・分裂・硬直・弛緩・衝動・位置・タイミング・身体造形、流動性と細密さ・自己への密接度などということになるだろう。身体表現そのものの同種の質を感じたのは、他に神村恵や「レモン組」などである。「レモン組」の中西は、自らの身体の感受性の幅のある逸脱・および嗅覚を刺激するような異質な味わいが怪奇的な演出全体に溢れ、美意識の確立度も高かった。
 一方、いわゆる現在の「ダンス世界市場」にも進出できそうなセンスと素養を微妙に感じたのは初日のKOE。大谷祐司は質のよい身体の感受性で〈ある高み〉を感じさせ、他にも上位に入れた審査員がいた。弦弓真理江も、いわゆるダンスを知らぬ間に細密な身体領域に引っ張れる素養を感じた一人だった。


大谷祐司         弦弓真理江
 原田広美「舞踏大全」ホ−ムペ−ジ http://www.h5.dion.ne.jp/~hiromi29
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◆講評                                       村岡秀弥
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 選考委員の大半が受賞者を選ぶ仕事は初めてだったので、早くから気を遣った。一例をあげると,選考会のときまで、どれがよかったかという話を委員の間でするのは慎んだ。すでに上演を終えた参加者とこれから上演する者との間で、有利・不利の不公平を生じさせないためである。
 筆者の評価として、「これなら (選考会の成行きによっては) 賞を与えてもよいかな」という作品が 6 つあった。今回の新人シリーズの作品は、そのように、平均レベルとしてはかなり高いものがあった。その一方、第1回と前回に比べ、突出した作品にめぐりあうということは、残念ながらなかった。選考会では早い段階で候補が2作品に絞られたものの、いずれに賞を授与すべきか、大いに悩み、議論したが、両者のいずれもが弱点を抱えていたためでもあるというのが、筆者の見解である。
 古典的ともいえるスタイルのモダンダンスから、現時点で最も先鋭的なダンスや舞踏まで、選考委員5名の審査眼を総合した結果として、偏りのない幅広い視点があったと思う。たとえばまた、女性と男性の参加者 (の作品) との間でも、主観に捕われすぎることのない公平な審査眼があると確認されたと思う。今回、(実質的な)男性のグループは3組だけと圧倒的に少数だったが、それらがともに高い評価を受けたのは妥当なことであった。ある特定の傾向の作品だけが受賞候補となるような懸念はないだろう。邦舞や各種の民族舞踊の踊り手にだって参加してほしいと、筆者は思っている。そこにはもちろん、創作性がなければならないのだが。
 さて、アダチマミ×無所属ペルリは、若い女性としての身体性 (または自身の身体についての意識) を作品のうちに反映させる仕方で創られているのだが、筆者はそういう点においてもまだ中途半端であると感じた。たとえば、下腹に両手を当てて腹痛に堪えているような所作や、自身の両の乳房を掴む所作があるのだが、どちらも場面転換の直前にごく短時間演じられて、やりすごされてしまうという感じなのだった。それらの形・所作について明確な意味があるのなら、自信を持って、時間も十分にかけて、より効果的な表現として見せてほしかった。
 きこり文庫は、筆者の個人的な希望としては、パワー溢れる踊り (というのはダンスらしいダンスでもあるわけだが) をたっぷりと見せてほしかったのだが、30 分という時間の制約もあるゆえか、そういうところがごく少なかったのが残念であった。
 上位に評価・分類した以外にも、新しいダンス表現を目指して、あるいはダンサー (作家) 個人としての切実性を伴った表現として、意欲的に工夫や努力をした作品が多く見られ、次回作や参加者たちの今後の活動に大いに期待が持たれた新人シリーズであった。

きこり文庫
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◆講評                                       柳澤望
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あらた真生         浜口彩子

 字数も限られているので、個人的にはっきりと肯定したり否定したりできることだけを書くことにする。
 あらた真生は、身体の質を練り上げて緻密な運動のフォルムを際立たせる。だが、過不足なく展開されるフォルムに身体の質は奉仕しきっている。設計の緻密さをのりこえてこそ始まるものがあるのではないか。
 弦弓真理江は、メリハリのあるしなやかな躍動感は魅力だが、その質は演劇性抜きで舞台を支えてはいない。板垣あすかの特異な動きの組み立てには注目したが、弦弓と同様シアトリカルな展開を安易に作品の支えにしているように思えた。巧拙に差はあるが清藤美智子作品も同じ理由から評価できない。
 Dance Unit ジジの作品はさすがに丁寧だが、既成の動きのパターンが無批判に使われていたようだ。既成の動きは、引用として活用されるか、古典的な均整の中に生かされるのでなければ紋切り型(クリシェ)に堕するだろう。浜口彩子作品も、飛行機のモチーフを繰り返す断続的構成は面白いがクリシェを脱していない。大谷祐司の舞台は技量と構成が申し分なく調和しているが、どこかで見た感じだ。ノシロナオコは還元主義的手法も思いつきで終わっており、動きはクリシェばかりだ。
 レモン組に関しては舞台が既成のイメージの枠内に収まっている点で評価できない。滝田高之の露悪的な価値転倒も、既存の価値への依存だと思う。
 きこり文庫の舞台では、安次嶺菜緒のステップに心動かされたが、グループ作品としては既存の手法を様々に応用しているだけに見えたし、観客との関係の結び方やマイムシーンの演劇性は安易なものと思えた。
 アダチマミ×無所属ペルリの作品がより好ましく思えたのは、各ダンサーが淡い照明に浮かび上がるラストの構成に堅固さがありながら、前半の展開の細部には構築性を破るようなノイズが仕組まれているように思えたからだ。些細な身振りを振付としてくみ上げてくる発想にも独自なものを感じる。グループ独特の創造性がより際立って発揮されることを期待したい。
 竹部育美+ミンナノコの舞台は、中盤、暗転を繰り返して情景を提示するタイトな場面に続いて、散らばったアクションが同時並行的に展開されるゆるい時間が流れるという構成も絶妙だった。濃密な幻想が舞台作品として結実するかのようで、確かに見え透いた作意を感じさせない。私は一番に推したが、幼児的な趣味を垂れ流しただけといった誤解に対し無防備すぎたことは否めない。


Dance Unitジジ     竹部育美+ミンナノコ
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◆講評                                       吉田悠樹彦
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 今回の新人枠は中々手ごたえのある作品が多かった。そのなかでも印象的な作品を取り上げたい。

KOE  灰色の衣装を着けた踊り手(板垣あすか)が現れる。繊細な踊り手の表情にライトなタッチの動きが映える。踊り手は舞台の上で横になったり動いたりする。一連の世界には東京を中心に活動する作家というよりはよりグローバルな背景を感じる。踊り手の選定もさることながら、作品には注目すべき持ち味を感じた。

佐藤道代  本作品は2003年7月21日、音楽舞踊新聞でも取り上げたが、初見に比べるとよりシンプルな作品となった。注目すべきはダンカン・テクニックが作品で生きていたことだろう。モダンダンス=女性性というストレートな図式を継承しながらも、それをコンテンポラリーダンスに活かした踊り手による表現が興味大変に深かった。

あらた真生  今回の新人シリーズのなかでは最も興味深かった一作。暗い空間の中に椅子が置かれ、その上で踊り手がゆっくりとからだを動かせていく。早くもなく遅くもなく滑らかな動きだ。椅子とソロの女性舞踊手という似たような設定の作品に80年代の黒沢美香の作品「椅子とアリア」がある。モダンダンスとの拮抗のんかあでコンテンポラリーダンスを切り出した黒沢と依拠する表現の論理や依拠する時代背景がまったく異なる作品である。コンテンポラリーダンスの影響を受けながらさらに新しい世代が登場しつつある事を感じさせた作品だ。

レモン組  中西は画家であるがパフォーマンスをする作家だ。江戸時代の世俗的な浮世絵のようにユーモラスで毒のある世界が展開。中西の作り出す動きは漫画のようであり、視覚的な効果も強く昨今のコンテンポラリーダンスと一線を画し注目すべきものである。コメディアン出身のジミー大西が岡本太郎以来の日本の抽象画家とされる現代美術の中でガッツのある軌跡を描いてほしい作家だ。


きこり文庫  現代女性によるダンスパフォーマンスユニット。一見軽くみえるがその表現はとても興味深いものを持っている。舞踏やバレエなど異なった背景を持った踊り手達が相互に絡み合うことで舞台が始まる。それぞれに共通する身体表現の層から<コンテンポラリーダンス>を提起し手応えのある作品を創り出しているように思う。

Dance Unit ジジ  中堅にさしかかりつつある踊り手達の世界とと肉体言語が集約された作品。伊藤真喜子と樋口信子がアメリカのモダン・ポストモダンダンスからの影響を感じる動きと共に池田素子が経験豊かなコンテンポラリーな動きで魅せる。勝部ちこのコンタクトインプロを活かしたコンタクトも効果的だ。がっちりとした作風と構造性がしっかりと手応えのある作品を創り出していた。

浜口彩子  フレッシュな踊り手達が日本のコンテンポラリーダンスらしい世界を描いく。浜口は、木佐貫邦子がモダンダンスと拮抗しながら作り上げた肉体言語や舞台表現を柔軟に吸収し初々しくも手応えのある作品をまとめあげた。身体を飛行機に見立てたり、重ねた手をしならせるといった世界には、木佐貫以後の感性を感じる。明確な論理が表現の背後に形成されればさらに新しい世代の感性も羽ばたくのではないか。

清藤美智子  青い踊り手がモダンダンスに影響を受けた動きを中心に作品を描いた。背中に描かれた月や舞台上に置かれた青い水が入ったオブジェを用いながらシーンが流れる。短時間で効果を狙うモダンダンスのコンクール系作品とは明確に異なるベクトルを持っている作品であるため、作品の完成度を高めること課題となるはずだ。


アダチマミX無所属ペルリ  現代を生きる若い女性たちにによるシュールな作品。「男はみんな狼よ」というせりふ、下着姿の衣装と所々に女性性を描いた作品である。シュールな作風が作品全体のメッセージ性をぼかしてしまっている感触がありとても残念であるが、フレッシュな持ち味には今後の可能性を感じる。漫画からの影響を感じるような視覚表現は現代の若者の表現を感じさせる。

大谷祐司  マニッシュな男性が光を片手に現れる。ダイナミックに踊るかと思いきや、そうではなく繊細に情景を描き出す。静謐で宗教的とも言える光景だ。このアンバランスさは最近の踊れる男性舞踊手の作品にはなかったものだ。男はモダンダンスからの影響を感じさせるようにしなやかに肉体を空間に走らせる。作品のストーリー性を明確にすることが作家のこれからの課題であるように思う。

ノシロナオコ  大音響がかかるなか、作家がつま先で立つだけという動きを繰り返す。ダンスというよりはパフォーマンスとも言うべき作品だ。動きに関する考察が朗読された後、作品は一転しダンスといえる躍動した動きを見せる。この情景の変化に一貫性を感じさせるとなお良い。全体として未だにラフな持ち味を持っているが、作品を構成する各場面にはそれぞれ完成されたものを感じる。一貫したメッセージ性を持たせることがこれからの課題だ。


神村恵  躍動感ある音に合せて身体を震わせる踊り手が登場。やがて踊り手は身体を宙に走らせる。神村は自らが見出したボキャブラリーを少しづつ変化させながら作品を構成する。冒頭の音に合わせて身体を震わせるなど所々にエッセンスが光る作家だ。しかし同じような動きが何度も反復しすぎる事が逆に表現を曖昧にしているようにも見えた。ありより多くの動きを編み出す事から、それを1つの情景に込めることが求められる。踊り手の力量は明確に解るため今後の研鑚に期待をすることができる。

吉田悠樹彦サイト http://web.sfc.keio.ac.jp/~yukihiko/index.html
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◆講評                                        志賀信夫
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KOE 静かで抽象的な音と動きが中心。細身で鍛えた身体が動く。テクニックを抑えた振付・踊りだが、惹きつけるものがあまりなく、意思が伝わらなかった。柱のゴム紐を引っ張り羽ばたき踊る姿は美しく、抑制し新しい踊りを求める意欲を買う。

Dance Unitジジ 女性4人が倒れ、争い絡むコンタクトインプロだが、新しさは感じない。動きが甘く緊張感がなく、同じようなグループがある。4人がお互いに相手の上に乗って絡んでいくところは面白く、執拗に重なり合ったらいい。

清藤美智子 青い水を入れたガラスの器を持って登場し、白い椅子に置くと照明で輝く。この色のモチーフをうまく使った。青い紙吹雪、背中に描いた青い月、最後は青いタイツで踊るが、タイトルそのまま。

佐藤道代 白い薄衣で天を意識したような動きから始まり、ブルガリアンヴォイスの声のなかで次第に狂女のようになっていく。音楽に合わせ予定調和的だが、静かに這うところは惹きつける。

あらた真生 椅子のダンスは非常に丁寧で、特に足の動きが素晴らしい。バッハのチェロ曲で踊りが激しくなっていくと、コンテンポラリーっぽくなるが、もっと椅子と心中し、椅子を物体ではないものに感じさせてほしかった。それができるダンサー。

アダチマミ×無所属ペルリ 軍楽隊のような音楽。シュミーズっぽい姿の女性が3人正座崩しのポーズ。位置のバランスと音のインパクト、独特の間が素晴らしい。水洗便器に手を突っ込み、茶碗に飯をよそう。ベースの音に狂ったハミングが混ざり、それぞれの壊れた踊りが連鎖してユニゾンし、狂気が見事に重なる。強いオリジナリティが感じられた。

大谷祐司  左右の背景にあるくぼみに光が当たり、上手に腕が出る。そして下手から蝋燭の灯を持って登場して踊る姿は印象的だが、踊り自体はどこかでみたコンテンポラリー。身体の息遣いが伝わらない。

ノシロナオコ  上手手前から下手奥に低い1本の光がさし、下手奥からゆっくりと登場して動く。静かな音とこの登場がいい。光源に近寄り、無音で動く部分は全体を薄あかり状態にしたらより効果的。中盤と後半で体がよく動くのだが、踊りは少々平板な印象。

浜口彩子  女性が4人床に伏せ飛行機の真似など抑えたコミカル。最初のソロが特にいい。クラシックをブツっと切るなどキリヤン、フォーサイス的だが、コンタクトインプロを元に1人と2人、1人と3人の組み合わせた動きをうまく見せる。パラパラや演歌をまぎれ込ませると、さらにイメージが広がったろう。

きこり文庫  白のブラウスに黒のパンツ、肩までの髪に眼鏡の女性が口を隠し奇妙な動きをすると、1人が大の字、さらに入ってくる女性は「エプロンをつけること」という話を語りだす。女性は増えて、バラバラに動き、時に絡む。ただ登場人物が多すぎて散漫になっていった。エプロンの話はラストにまた生かしてほしかった。

神村恵 真上からのスポット、激しい曲のなかジーンズとシャツ姿で髪を振り乱し踊る。音楽を壊そうとするかのような激しい動きに魅了された。横からの照明への鋭角的なポーズ、伸ばした右手に左手で戯れるダンス、いずれも緊張感があり、前半は素晴らしい。後半はちょっと冗長。自分の踊りを見つめ、体一つから何ができるかをきちんと追求しようとしている。微妙にスタカートの入った右手のバッハはだれの演奏だろう。


レモン組 男たちが4人団子になって登場し、中心の中西は椅子の上でうごめき、2人は周辺をかため、富岡がゆっくりとした動き。背後のくぼみで袈裟姿の中西が、顔を隠した男の乳首をつまむ場面など面白いが、全体的に芝居がかった印象。雪村模倣の鯉の絵がうまい。

菊地びよ 薄い光の円のなかに女性がぼんやりと浮かび上がる。立ち、静かに手を上げていく。白いロングドレスが神秘的にかすむ姿が美しい。トントンという弱い音の繰り返しに、一瞬だけ早い動き。ここまで抑制された動きで舞台をつくる意欲を買う。わずかな動作に身体が感じられ、独自の世界ができつつある。


BISCO 白いフードパーカーに膝丈パンツの女性4人は頬に丸く紅をつけおてもやん風。「エチケット」「ことわざ」などを司会の解説つきで演じるが笑えない。解説なしで題を文字で示し演じたらもう少し受ける。「意味」を観客に始めから与えすぎだ。


竹部育美+ミンナノコ それぞれがバラバラに動いたり、2人組になって争ったり絡んだり、子どもが遊んでいる感じのダンスが狙い。最後のような構成した動きを、冒頭や間にいくつか入れたら、コントラストが出ただろう。

武藤容子 カーキのコートにリュック、サングラスの女性が、リュックを広げて被り、激しい音楽がかかるパートはインパクトがあった。緩急をつけるが、緩い部分がちょっと冗長。上半身裸で後ろに反るポーズは美しく、そこからは緊張感が漂っていい後味を残した。

弦弓真理江 黒いシンプルな衣装、スポットのあたる所で、『新世界』の曲とともに激しく踊る。かっこいいが3回繰り返してボキャブラリーが見えた。床に這い奇妙に捩れて動くところはとてもいいが、ずっと『新世界』で緊張や効果が薄れた。

滝田高之 直径約80センチの肌色の丸い球体はまわりに毛、中心に亀裂の女性器。それがうごめき、ピョンピョン跳ねて移動。中から羊膜をかぶった頭と全身が産まれ、首に臍の緒が絡んでのたうち叫ぶ。観客をマジな顔で見つめる瞬間が面白い。下品、汚い、馬鹿と三拍子揃ったアイデアを実現する力と意欲は、舞踏や前衛のエネルギーを感じさせる。
志賀サイト  http://www.geocities.jp/butohart/
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