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4月25日

『NAGISA』
小沼勝 日本 ’00

江ノ島の小学生、なぎさちゃんの夏休み。走り回って泳ぎまくって男の子を追っかけまわし、親友と一緒に人でいっぱいの海水浴場でザ・ピーナッツのマネをする。このあまりにも小学生的ななぎさちゃんをあっけらかんと映画にしてしまった小沼勝には正直、驚いた。過去の作品は情けないことに観たことないけど、話に聞いてのイメージ、つまりロマンポルノでSMをやってた人、ということからくる想像と、大分、いや、全然違った。

時代は60年代で、コーラを初めて飲んだり、炭酸アメに驚いたりと、些細で素朴な出来事を軽やかに演出する。親友の典子ちゃんとの笛アメ?(真中に穴があいててヒューヒュー鳴るヤツ)で会話するシーンは、まさに小学生的な友情のノスタルジー溢れる名場面だ。海水浴場の客が普通に最近のギャルや茶パツ男で、走ってる車も流線型の90年代以降の形で、低予算だというのがばればれだけど、そこが弱点ではなく、そんなことはいいじゃんか、という漲るパワーが嬉しい。脇役陣も魅力的なのが揃って、軽快なテンポで楽しいシーン満載の快作だ。

そして、ちょっとおませななぎさちゃんが「女」になる瞬間の官能性。水泳を教えてやった東京から来たひ弱な男の子にキスをする瞬間の表情、全ての出来事がここに繋がるのだけど、この一点のみに集約させてしまった小沼勝、恐るべし。

4月18日

『大地』
アレクサンドル・ドヴジェンコ ソ連 ’30

村にトラクターがやってきた。村人総出でお出迎えのシーンで、馬や牛までもが出迎えに来てて、歓声をあげる人の間に馬の顔が2、3頭並んでて、一緒に叫んでるような感じで大いに笑った。

トラクターが来て農業が変ってゆき、それは時代の変革であり、その中での人々の変化と衝突が物語りの流れであるけど、七十年間、牛で畑を耕し続けたという老人が、実った果実に囲まれ死んでゆく象徴的なシーンから始まり、終わりもたわわに実る果実が映る。人間の社会が変革しようとも、変わりなく生きつづける大地への讃歌。雄大な大地を大胆に収めてゆく力強い撮影と編集。ちょっと垢抜けない気がして、どうも好きじゃないかも。


『航空都市』
アレクサンドル・ドヴジェンコ ソ連 ’35

新たに造られようとしている都市を巡ってスパイやら反対派やらが争う。重要な人物が何人かいて、そのうちの三人がひげを生やした露西亜の爺さんなもんだから、誰が誰だか判らなくって、そのうち眠くなって、頑張ったけど寝てしまった。反省せねばなるまい。しかし、なんか、トーキーに失敗してる映画だと思う。セリフがやけに演説調で芝居がかって大袈裟で、顔のアップが力強いのはいいんだが、それが多くて、懸命に見てるとヒジョーに疲れる。

が、スターリンに直談判して許可貰って撮ったくらいの映画。最大の見せ所、飛行機が飛んでるシーンは圧巻だぜ!これは最初と最後にしかないのだけど、ま、ただ飛行機が飛んでるところを撮ってるだけと言えばそれだけなのだが、巨大な積乱雲の間を悠々と飛ぶ飛行機を空撮してて、『天空の城ラピュタ』も真っ青の迫力。ラストの飛行は、航空都市が完成して、ソ連のあちこちの都市から集まってくる飛行機、最初は1機だが、2機、3機、・・・と増えに増えて、2、30機の飛行機が並んで飛んでるぶっ飛びショット。ま、ここは特撮っぽかったね、流石に。映画で主に語られるストーリーと完全に切り離されてただただ目を奪われるこのシーンこそドヴジェンコの真骨頂だろう(と思うんだけど・・・)

4月17日

『積木の箱』
増村保造 日本 ’68

金持ちの家で、中学生の息子があるとき、今まで姉と信じてた女が実は親父の妾だったことに気付く・・・昼のメロドラマを90分に凝縮したようなメチャメチャ濃い映画。緒方拳がやけにマジメな奴だったのが気に掛かる。息子を誘惑する松尾嘉代。かなり来ました。ギトギトジジイ内田朝雄と絡む姿、流石に濃すぎる・・・。


『遊び』
増村保造 日本 ’71

未成年の工女、関根恵子が鬱憤晴らしにチンピラ、大門正明に付いていき、愛し合い、逃避行に・・・。

地面に這いつくばる映画だ。大門は兄貴分に殴られて倒れ、その母親は酒に酔って(ババァのくせに)ストリップまがいの事をして寝転がり、関根恵子の姉はカリエスで寝たきり、父親は泥酔して会社の近くの池で溺死。地面ではないけど、とにかく、倒れてる人物を上から見下すような構図が凄く多い。どん底なのよね。

どん底をはいつくばって脱出しようとする二人。感動的なのはどん底から這い上がろうなんて一切考えてないことだ。わざとらしさ満載だが、それは開き直りや居直りではなく、何も隠し立てしない増村のストレートな姿勢であり、二人の、悲しいとしか言えない真実の愛が直接にこちらの胸を打つのだ。

4月15日

『次郎長三國志』
マキノ雅弘 日本

『第一部 次郎長賣出す』 ’52
『第二部 次郎長初旅』 ’52
『第三部 次郎長と石松』 ’53
『第四部 勢揃い清水港』 ’53
『第五部 殴り込み甲州路』 ’53
面倒だから一気にまとめる。凄いだらだらした映画達だ。このダラダラ感、ホークスの『ハタリ!』に通ずるものがあるように感じられる。男どもが集まってワイワイガヤガヤ。配役を考えると、スター不在で一本一本の映画としてのメリハリが極端に薄まって、シリーズとしての映画、に思える。『第一部』『第二部』の最後にほんの少し次郎長一家に加わる事になる男が登場したりするのは、続編があることが前提になっている事が判る。

でも、全然薄くないでヒジョーに濃いいのは、男どもが友情を超えた愛で繋がってるからでしょう。第五部で加東大介の豚松が死ぬシーンで、「親分、ホントに好きだよ」「あぁオレもお前が好きだよ」・・なんて男同士で言い合って、これを気色悪いと思う人も大勢いるはず。さらに気色悪いかもしれない服を脱いで裸になるシーンも満載。寝てる間に服を博打の抵当にして、次の日、皆でそのまま裸で旅に立つ。そんな時、「ワッショイ」と言う言葉が誰からとも無く発せられ、次第に皆で「ワッショイ!、ワッショイ!」となる呼吸がなんともいえず楽しい。マキノ節炸裂ってとこだ。

4月14日

『赤い天使』
増村保造 日本 ’66

従軍看護婦に赴任して、すぐ犯される・・・若尾文子が天使をやるとなれば、この最初のシーンはイメージ通りだ。汚れて益々輝きを放つ魅力。決して下品にならないのよね。「西さくら」という役なのだが、上官に対して「西は・・」「西は・・」と言うのを聞いてしびれ、「さくら」――普通人の名前だと「さ」にアクセントを置くけど(例:『男はつらいよ』)、植物の「桜」のアクセントで自分の事を呼ぶのです。たまらんね。しかし、全体がたまらない映画なのだ。

両手を失った青年の性的処理をしてやったり、モルヒネ中毒でインポになった愛する軍医を勃たせようとしたり、襲撃が来る最後の晩、軍医の軍服でコスプレ・・・ロマンポルノかエロ小説か?というストーリー、シチュエーションなのだ。たまらんでしょ?

前線近い野戦病院に次々に運び込まれる大量の負傷者、並べられた大量の死者、三日三晩寝ずに弾丸を摘出したり手足を切断したりする軍医と看護婦、それらの物量とスピードに圧倒され、そのなかで愛と性と死を密接に結びつかせて語る増村の力量。そして最後の迫撃砲の迫力。凄い映画だ。


『盲獣』
増村保造 日本 ’69

増村保造の映画はいつももう少しで乳首が見えなくて悶々とするが、この映画の緑魔子は堂々と披露してくれてスカッと・・・するわけない。余計に悶々とする。更に腋毛も生えてたような気がしたけど、これは気のせいかなぁ・・・ぁぁぁ。

何十本の手、何十本の足、何十個の耳、何十個の目、何十個の唇、何十個の鼻!の彫刻でビッシリ埋まった素晴らしく気色の悪い壁に囲まれた地下室に監禁され、巨大な女体像に横たわる緑魔子を盲目の船越英二が触覚の芸術として塑像を創るため体をネトネトとこねくりまわす。元々増村映画は、セリフや画面のアクの強さから、こちらの感性にビシッ!っと直接的にぶつかってくるようであるが、そしてこの触覚映画!刺激の映画だ。

4月8日

『スポーツの女王』
孫瑜 中国 ’34

傑作!と思ったら、国策?だった。

冒頭、ヒロインの娘ッ子が客船のマストによじ登っている。風が良い具合に吹き、スカートがひらひらしてるところを仰角気味に撮り、健脚を見せつけてくれるなんとも中国っぽくない、颯爽とした驚きのショットだ。そして大きな家での犬と追いかけっこのドタバタ劇で、編集のテンポが非常によく会話も弾みウキウキしてくる。「これは傑作だ」と思ったわけよ。

スポーツ大好き娘が田舎から上海にやってきた。女子体育学校に入り、幼馴染のお兄さん(カッコいい)が教官をやってて、スポ根ドラマが始まる。娘は大変足が速く記録更新を繰り返し、調子に乗って遊びまくり、教官に怒られて、と、スポ根の常道。常道は一向に構わないが、ここら辺のテンポがだるい。凡作?と思い始める。

「体育皇后」(スポーツの女王)を決めよう、ということになり大会が開かれる。調子に乗ってるヒロインをなんとか負かそうとする女達。そのうちの一人は病気で医者から運動を止められていたが仲間に出場を強要(でもなかったんだけど・・・)され、競争中に倒れ、息をひきとる。ヒロインは異常な虚しさを感じ競技には出ないと言う。周りに説得され出場するが、わざと負ける。

教官が近寄ってきてわざと負けたことを確認する。ここでさ、普通さ、説教されると思うでしょ?「死んだ娘のためにも一生懸命走れ」、とかさ。でも違うのです。「勝敗なんて下らない。スポーツは突出した個人を造りだすためでなく・・・」といきなり演説調になる。「体育救国論」ってのがあるらしい。身体を鍛えることにより精神も強くし、それは個人の能力を引き出すということじゃなく、国民全員に均等になされるべきで、それで国力を上げてゆこう、というモノらしい。すごいな・・・。

そして最後にドでかい広場で、うんかのごとき大人数で体操しているところで締め括られる。こんな珍しいもの観れて良かったよ。

4月4日

『モレク神』
アレクサンドル・ソクーロフ 露=独=日 ’99 

ベルヒデスガーデンにおけるヒトラーの日常。唯一彼を「アディ」と呼ぶ恋人のエヴァ・ブラウンの前では「私は病気だ、すぐ死んでしまうんだ」などと、気弱で甘えた男。脆い・・・この映画のタイトルが「モロク神」ではなく「モレク神」なのはそういうつまらない語呂合わせみたいになる事を避けたためと推測する。

そびえたつ断崖の上のベルヒデスガーデン(荒鷲の要塞)。青黒い石の壁が、立ち込める霧と溶け合い、どこからともなく聞こえる囁くような声、そのなかで素っ裸に見えるババシャツのようなものだけ着たエヴァが一人で体操の床運動。まさに「神秘的」という言葉がピッタリな雰囲気。また、レコードに合わせて足で指揮を取るエヴァが最高。

神秘的な中、ヒトラーは食事中、例えば、「蟹を捕るには婆さんの死体が一番良い」、などとスプラッターな笑えない笑い話ばかりをして、総統のご機嫌取りに余念ない腹心たちは寒さに耐えて笑い転げる・・・。ヒトラーは実に痛々しいコメディアンだ。現実離れした場所で繰り広げられる現実離れした男ヒトラーのあまりに現実的な情けない姿。どう対処してよいかわからない映画なのだけど、気持ちよくも寒々しいという不思議な感覚。

4月3日

『紅い剣士』
文逸民 中国 ’29

中国の無声映画。武侠、カンフー映画の源流となる映画群の中の現存する貴重な一本らしい。婆さんが殺され、自らも危くやられそうになった軍隊の隊長に復讐するため、怪しい老人のもとに弟子入りする、といった話。まぁ出来としてははっきり言ってあまり宜しくない。最初はまぁまぁのサイレントだなぁと思ったが、中盤がかなりだらける。戦闘シーンも中国的チャンバラをロングで捉えて撮りっ放しで少々退屈に思える。

しかーし、凄い見どころ一杯。まず驚くのは、兵隊のボスが、盗賊みたいなんだけど、女が5〜6人侍っている。この女達が、下は女子陸上選手が穿くような短パン、上は紙で出来たようなビキニ。まぁ権力者の部屋にこのような女が居る事くらいは別段驚く事ではないが、問題は女優だ。アバラが浮き出たり、脂肪が弛んだり色々だが、全員、乳房の脹らみが殆ど無い。貧乳もいいとこだ。昔の中国人は全員貧乳だったのか?と思ってしまう。そして更に問題なのが女達の立ち居振舞い。後ろのほうで四人並んで立ってるのだが、なんとも居心地が悪そうで、ボケーっとつっ立ってて、猫背で姿勢が悪く、ヒロインが捕まったとき、「脱がせろ」とボスの命令に全員オロオロして手際悪く、なんか、例えると、テニス部に入った新入部員がなにをやっていいかわからないで何人かで固まってウロウロしてるみたいな感じ。ど素人集団か?

そんで、「紅い剣士」。昔の知り合いのピンチ。修行を終えた「紅い剣士」の登場はいきなり飛んで来る。空を。月光仮面みたいに白いマスクとマントを身に付け、剣を背中に差しているんです。

なんていうか「なんでもオモロそうなのとってやろ」という活動魂は感じた。



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