8時だヨ!映画劇場 第18 回

「BRUCE LEE in G.O.D/死亡的遊戯」(2000/アートポート)

監督 大串利一

出演 ブルース・リー,ダン・イノサント,池 漢載,デビッド・リー,ユン・ワー

 

 以前にこのコーナーで掲載した作品と重複する映画を再び取り上げるというのも如何かと思うが,これはもう書かずにはおられようか…とにかく観賞する前から,これほど興奮と戸惑いが交叉した何とも言えぬ複雑な気持ちに囚われた映画というものは初めてである.今から2年前に更新した「8時だヨ!映画劇場」の第2回「死亡遊戯」の項で,僕は「(現存していると言われている)未使用フィルムを存分に使って,もっとまともな『死亡遊戯』を作ってくれ〜」と哀願したものであったが,僕の魂の叫びが届いたのか,なんと本当にブルース・リーの生誕60周年である2000年にそれが実現してしまったのである!しかもこのプロジェクトは日米で同時進行で2種類制作され,米国サイドはワーナー・ブラザースが「A WARRIOR'S JOUNEY」というビデオ&DVD作品として,そして日本サイドでは株式会社アート・ポートが劇場映画として公開されることになったのだ!ほ,ほっ,…本当かよ!? 俺は23 年間,この日が来ることをひたすら待ち続けていたんどよ!人間生きていれば,こんないいこともあるんだなあと大袈裟ではなく僕は本当に心の底から神に感謝した次第である.今回は僕がわざわざ小倉まで出向いて,全身に鳥肌を立てながら観賞した日本サイドの劇場公開版「BRUCE LEE in G.O.D/死亡的遊戯」について綴らせて頂きたい.エキサイトして少しマニアックな内容になるかもしれないが御了承のこと….

 1978年制作のロバート・クローズ版は無理にストーリー立てに執着したあまり,肝心のブルース・リー出演シーンが僅か13分間という悲惨な結果を招いたわけだが,今回のアート・ポート版は「如何にして『死亡遊戯』の未使用フィルムを可能な限り披露するか?」ということに重点を置いて制作されているのが良心的で実に嬉しい限りだ!作品自体は2部構成となっており,前半は「死亡遊戯」制作におけるセミ・ドキュメント(リー役のデビッド・リーがちっとも似ていないのが難点であるが,この際ノー問題!)…そして後半の約45分は積年の恨みを晴らすかのごとく,怒濤の未公開フィルムの重爆撃攻撃がブルース・マニアの脳天を直撃する.クローズ版では「お呼びでない」とバッサリとカットされたジェームス・テイエン(田 俊)とチェン・ユワン(陳 元)を従えて(注:テイエンは回想シーンでちょっとだけ出演,ユワンは池 漢載のフロアでよ〜く見ると死体役でチラホラと画面の隅に登場していた)イノサントと対峙するリーが,「Do you speak any English?」と突然しゃべった時は本当にブッたまげた!残念ながらリー本人の肉声ではなく,後から声優がアフレコしたものなのであるが,クローズ版では黙々と戦っていたリーやイノサント,そして大巨人のジャバールまでもがセリフをしゃべっているのは新鮮な驚きであった.そして当然のことながら各フロアでの3人の刺客との戦い場面が異様に長く,「本当の『死亡遊戯』って実に奥が深くて,こんなに中身が濃いものだったんだなあ.」と痛感してしまった次第である.クローズ版では影が薄かった池 漢載も「フハハハ」なんて憎々しい笑みを浮かべたりなんかして,実際は表情豊かなキャラクターとして描かれていたんだよな,マジで目から鱗が落ちた思いである.

 さて今回これだけのマテリアルが正式な形となって公開されたわけであるが,それでも「死亡遊戯」にはまだまだ未解決な問題が残されていることも事実である.まず新界で撮影された「野原のフィルム」であるが,今回も使われたのはドキュメンタリー映画「ブルース・リーの神話」(1987年)と重複する僅かなシーンのみであった.実際は撮影時間30 分のフィルムが残されていたと言われており,まだまだ未公開映像が絶対にあるはずなのである.それから23年前の「死亡遊戯」香港プレミアの際に一度だけ公開されたと言われている「全長3mの大木を担いだユワンとイノサントの戦闘シーン」であるが,これも今回は含まれていない.一説によると,この場面のオリジナル・フィルムは行方不明になっているらしいのだが,観たいよなあ.誰だよ,隠し持っている奴は !?

 いかん,これだけの未公開フィルムを見せられて本来なら大拍手しないといけないというのに,ついつい欲が出てしまった.未完成作だったが故に謎が多く残されているところが,「死亡遊戯」の魅力なのかもね.しかしながら格闘シーンだけで最低でも45 分はあるこの映画…実際にリーが生きていて完成していたとしたらどんな作品になっていたんだろうか…?   


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