
最上にて紅粉(べに)の花咲きたるを見 眉掃きを俤(おもかげ)にして紅粉の花 (まゆはきをおもかげにしてべにのはな) 眉掃きというものを知らないが(知るわけがない)、下の紅花の形からすると、耳かきの後に耳を掃除する棒の先にふわふわしたものがついたあれのようなものであろうか。
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) 「いかにも眉掃きの面影を偲ばせるように、紅粉の花が咲いているよ。」 ●夏ー紅粉の花 |
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閑かさや岩にしみ入る蝉の声 (しづかさやいわにしみいるせみのこゑ) 瞑想的という観点からすれば「古池や蛙飛び込む水の音」と双璧の句ではないか。私の感じでは、「古池・・」の句が内観的なのに対し、この句は外側の自然に自らが溶け込んで行くという感じがする。 寂しさや岩にしみ込む蝉の声 これだと、掲出句のような瞑想的な感じは出ていない。掲出句は自然を感受する深い心と、それを言葉に練り上げる技術が二つながら備わった人物の傑作と言ってよいだろう。 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) ●夏ー蝉 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) ●夏ー五月雨 |
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元禄二年 四十六歳(曽良書留) ☆ 新庄(現、新庄市)の富商、渋谷甚兵衛の俳号。 「青々と茂る柳陰を清らかな水が流れて、いかにも涼しそうだ。この柳を目印に水上を尋ねて行けば、きっと氷室に尋ねあたることだろう。」 ●夏ー氷室 |
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☆盛信亭 風の香も南に近し最上川 (かぜのかもみなみにちかしもがみがわ) 最上川をまだ見たことがない。見たかも知れないが実感としては見たことがない。むしろいろいろな句や歌で、知っているような気になっている。案外、何かを知っているというのは、その程度の事が多いのではないか。例えば、身近な肉親の事を考えても、果たして自分は彼等を本当に知っているだろうか。いや、もっともっと極言して、自分は自分を知っているだろうか。否否である。だからこそ、インドのラーマナ・マハリシという人は「私は誰」というのを瞑想法としたくらいだし。ソクラテスは「自分は何も知らない」ということを宣言したのである。 |
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元禄二年 四十六歳(曽良書留) ☆ 渋谷九郎兵衛。風流の本家。新庄随一の富豪。 「やわらかい南風が薫って、まことに涼しく心地よい。この涼しさは、南に近く流れる雄大な最上川から運ばれて来るのだろう。」 ●夏ー風の香 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) 「霊場羽黒山のこの南谷は、千古の雪を頂く周りの山々から涼を運んで、薫風爽やかに吹き渡る、まことに心澄む有難いお山です。」 ●夏ー南薫 |
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涼しさやほの三日月の羽黒山 (すずしさやほのみかづきのはぐろやま) 「ほの三日月」という、繊細で女性的で優しい言葉と、「羽黒山」という男性的で太い感じの言葉の対比の妙。 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) ●夏ー涼し |
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雲の峰幾つ崩れて月の山 (くものみねいくつくづれてつきのやま) 私は初め、雲の峰が幾つも崩れては立ちまた崩れては立ちして、そのうちに月が出てきて、あたかも雲の連なりが山のように見える、というふうに取っていたのだが。 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) 「炎天の昼間、月山(がっさん)の峰に幾たびか大きな入道雲が立っては崩れて、やがて日暮には崩れ去り、月が昇って、山頂は山の名にふさわしく月光に輝く。」 ●夏ー雲の峰 |
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元禄二年 四十六歳(おくのほそ道) 「山中の様子いっさいを他言することの許されない、神秘不思議な湯殿山の尊さに、ただありがたくて涙を流すばかりだ。」 ※湯殿山の参詣者は山中の様子を他言しないことを誓約させられた。『ほそ道』にも「総じてこの山の微細、行者の方式として他言することを禁ず。」と記す。湯殿山は出羽三山中最も神秘視された修験道場。神体は深い谷間の熱湯の噴き出る褐色の巨岩で、男女の性器を象徴するという。 |
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その玉や羽黒にかへす法の月 (そのたまやはぐろにかへすのりのつき) 「玉」という言葉を広辞苑で引くと、三番目の意味に「美しいもの、大切なもの」とある。この辺の意味が魂という言葉の意味と重なるのだろう。また四番目の意味に「丸いもの」というのがあるが、これも魂の意味とだいぶ重なるだろう。考えてみれば、世の中の基本的なものは丸い形が多い。地球、星、太陽、宇宙、点、原子構造物・・・。人間の魂を丸いものとして考えるのも当然かもしれない。 |
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元禄二年 四十六歳(真蹟懐紙) 「この霊場に照る月は仏法の不可思議な法力で、遠流の地に眠る天宥法印(てんゆうほういん)の亡き魂を、再びこの羽黒の山に呼び戻してくれることだろう。」 ●秋ー月 |
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