| 2009年11月30日(月) |
豚と軍艦 (DVD) |
・評価:7(佳作)
・制作年・国:61年日本
・監督:今村昌平
・出演:長門裕之、吉村実子、三島雅夫、丹波哲郎、小沢昭一、山内明、加藤武、殿山泰司、西村晃、南田洋子、中原早苗、大坂志郎、東野英治郎、菅井きん、加原武門
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基地の街・横須賀。アメリカ軍の残飯を流用した養豚で一儲けを企むヤクザ組織があった。豚の飼育係の欣太(長門)はヤクザで出世を夢見るが、恋人の春子(吉村)は川崎の工場で真面目に働くことを勧める。その頃、流れやくざの春駒がたかりに来るが、幹部の鉄次(丹波)に殺される。豚の飼育係の欣太(長門)に死体の始末を依頼するが、行き違いで鉄次が入院する羽目になる。組織の中に裏切り者が続出し、屋台骨がガタガタになり・・・。
今村監督が、戦後の安保体制下で混迷する日本人の姿を描き、日米関係を戯画化した作品。今村作品の特長である「重喜劇」のスタイルを確立したと言われている。米兵に輪姦されようが、機関銃が乱射されようが、人が殺されようが、全てが逞しく大らかで、鋭い人間観察に裏打ちされたアイロニーと社会風刺に満ちている。
何でも食いつくし、食うものがなければ共食いする「豚」は、貪欲なヤクザのようであり、アメリカの残飯を漁って生きる日本のようでもある。「軍艦」は、もちろんアメリカの喩えだろう。
アメリカのオンリー(愛人)になるか自立するかで悩む春子の気持は、当時の日本人の心境であり、現在の普天間移設や地位協定など日米安保条約の問題に直結してくる。今みてこそ、半世紀経っても変らない日米関係の本質が理解できるし、豚のように貪欲で逞しく生きていたかつての日本人の姿が眩しくも思える。
豚の餌になった春駒の金歯を吐く鉄次や、米兵と乱痴気騒ぎになって輪姦される春子、便器に顔を突っ込んで絶命する欣太など登場人物はみな、猥雑で強欲で危いが、暴走する豚のようにエネルギッシュな躍動感に溢れている。
故・南田洋子と長門裕之が共演し、コメディな殺し屋を演じた丹波哲郎や、当時高校2年生であったという吉村実子など、登場人物のリアルで個性的な存在感も素晴らしい。
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| 2009年11月26日(木) |
スラムドック$ミリオネア (BD) |
・評価:6(満足)
・制作年・国:08年アメリカ、イギリス
・監督:ダニー・ボイル
・出演:デーヴ・パテル、マドゥール・ミタル、フリーダ・ピント、アニル・カプール、イルファン・カーン

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インドのスラム出身の少年ジャマール(パテル)は、人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問で2000万ルピー(日本で20億円相当か?)を手にするところまでくる。しかし、これを面白く思わない番組の司会者が警察に連絡し、不正で答を得たとして詐欺容疑で逮捕される。ジャマールは警察の厳しい尋問に対して、答を知ることになった自分の過去を話し始める。そこには過酷な彼の人生と1人の少女に対する純愛があった。
出世作『トレインスポッティング』(96年)に原点回帰したような、ボイル監督の躍動感・疾走感溢れるアカデミー受賞作。経済成長著しいインドの裏面の貧困問題や幼児虐待、宗教紛争、格差社会などの社会的状況をたくみに盛り込み、映像重視のスタイリッシュな感覚で見せている。全編インドを舞台にしているが、過酷な現実と夢、アクションとロマンス、涙とユーモアなどの要素が詰め込まれたハリウッド映画仕立てだ。
この映画は、単なるクイズ番組のサクセス・ストーリーではなく、過酷な運命を跳ね返しつづける逞しい生き方や、一途な純愛が評価されたのだろう。クイズの1問毎にジャマールの生い立ちをカット・バックさせる構成や、インドの葛藤を象徴するかのような兄弟の確執を描いた脚本も評価できる。最後のダンスシーンは唐突ではあるが、インド映画を彷彿させ、娯楽映画ならではの上手いエンディングだ。
トイレから糞まみれになって抜け出すシーンについて、監督は次のように語っている。「スラムを象徴する糞や臭いと、彼らが大好きな映画スターへの情熱が同時に介在している。・・・相容れなさそうな要素が同居しているのが、典型的なインドのムンバイです。それはタイトルの <スラムドッグ> と <ミリオネア> の組合せにも言えますが、糞まみれの姿でスターに会おうとする幼少時のジャマールのシーンにも現れている」。
スラムや第3世界の過酷な現実を描いた娯楽作品には、『シティ・オブ・ゴッド』(02年)や『ブラッド・ダイヤモンド』(06年)など他にも沢山あるが、この映画はハリウッド式のエンターテインメント作品と割りきった方がよいだろう。個人的には、年度が違い候補にもならなかったが、『ブラッド・ダイヤモンド』の方がアカデミー賞に相応しかったと思う。
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| 2009年11月11日(水) |
おっぱいバレー (DVD) |
・評価:6(満足)
・制作年・国:08年日本
・監督:羽住英一郎
・出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル、石田卓也、大後寿々花、福士誠治
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1979年、北九州。赴任早々、中学の弱小バレーボール部顧問になった新任女子教師・美香子(綾瀬)は、やる気もない部員たちに「試合に勝ったらおっぱいを見せる」という、あり得ない約束をさせられる。そんな約束に戸惑う美香子をよそに、今までとは別人のようにバレーの練習に打ち込む生徒たち。しかし、試合の間近に「おっぱいの約束」が学校に知られ大問題となる・・・。
一見ふざけたタイトルで観るのを躊躇ったが、実話に基づいた青春物語という情報や、店頭に並んだ綾瀬はるかの困惑した表情とおかしなロゴが気に入ってレンタルした。これは、思わせぶりでインパクトのあるタイトルと、それに反し「エッチではない」という幅の広い動員を狙った宣伝効果の賜物だろう。
物語はオバカな中学生の話にみせかけて、実は女教師の成長物語という内容。「動機が不純であっても、目標を立てることは大切」というまっとうな台詞は理解し易いし、恩師・原田先生の墓参りの後、「自分が生徒たちに何をしてやれるか」を悟る場面では図らずも涙ぐんでしまった。
不満な点は、スポ根モノとしては中途半端で、懐かしい音楽を安易に流し続けている点と、欲をいえば
中学生たちの本音とリアルな会話をもう少し引き出して欲しかった・・・というところだろうか。
慣れとは恐ろしいもので、この映画により「おっぱい」という単語に対する抵抗感が失われ、徐々に市民権を得つつあるように思われる。そういえば書くのも気恥ずかしいような、「SEX」とか「童貞」という単語も、映画のタイトルに氾濫しているような・・・。
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| 2009年11月09日(月) |
お遊さま (DVD) |
・評価:6(満足)
・制作年・国:51年日本
・監督:溝口健二
・出演:田中絹代、乙羽信子、堀雄二、平井岐代子、金剛麗子、柳永二郎、進藤英太郎、小林叶江、横山文彦、藤川準、芝田総二

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船場の名家の末娘・お静(乙羽)との見合いに臨んだ骨董商の慎之助(堀)は、付き添いの姉・お遊に惹かれる。未亡人で一児の母であるお遊は、そんな慎之助の気持も知らず、お静に結婚を勧める。お静は慎之助がお遊に惹かれていることを知りながら、敬愛する姉のため形だけの妻になる決心をする。やがて3人で旅行し、仲良く外出する姿が他人の噂になっていることを知り、お遊は2人の前から姿を消す・・・。
『雪夫人絵図』(50年)の次作にあたり、溝口監督スランプ時代の作品と呼ばれている。原作は谷崎潤一郎の小説で、名画の雰囲気をたたえた映像美ではあるが、物語は徹底的に不器用でもどかしい。
慎之助は優柔不断で、姉を思う気持はプラトニック的なものだ。姉妹の関係はレズビアンのようであり、サド・マゾ的な結びつきのようだ。交錯する思慕の中で、3人がいびつに結ばれる関係には理解しがたいものがある。
この作品で、溝口監督は純日本的な新派劇の美意識を追求しようと試みたと思われるが、「愛欲映画の巨匠」としてドロドロした愛憎劇を期待すると物足りなさは否めない。
『雪夫人絵図』の小暮実千代のキャラクターはまだ分かり易かったが、田中絹代演ずるお遊さまのキャラクターがもう一つしっくりこない。溝口監督は、当時「あなたを最も美しく撮ります」と言って田中絹代に執着していたというが、仮にお遊さまを妖艶な小暮実千代か若尾文子が演じていたならば、また違った作品になっただろう。
『雪夫人絵図』もそうであったが、個々のモノクロ映像は素晴らしく、冒頭の日本庭園でのお見合いシーンから全編に渡って目を見張らせる。木立を移動し、新緑の若葉に陽光が煌く宮川一夫のカメラワークは、前年の『羅生門』(50年)をも彷彿させた。
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| 2009年11月06日(金) |
トウキョウソナタ (DVD) |
・評価:7(佳作)
・制作年・国:08年日本、オランダ
・監督:黒沢清
・出演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、役所広司、児嶋一哉

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平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川)はリストラを宣言され帰宅するが、妻にそれを言い出せない。夕食時、小6の次男がピアノを習いたいと言い出すが反対する。翌日から会社へ行くフリをしてハローワーク通いをする。ある日、長男が世界平和のためアメリカの軍隊に入ると言い出す。一家をまとめていた妻・恵(小泉)にも異変が起き始める・・・。
黒沢監督初めてのホームドラマとなるが、小津のホームドラマと同様に「家族の離散と集結」が描かれている。グローバル化、リストラ、就職難、学校の問題、戦争・・・など日本が直面している社会現象を背景に、黒沢映画ならではの独特の緊迫感とシニカルな味わいを湛えている。最後は「月の光」が絶望を洗い流し、黒沢の映画としては珍しくハッピーエンドで終わる。
この映画の家族は、同じ屋根の下に暮らしていても心はバラバラで、それぞれに重い役割の中で、誰もが孤独と秘密を抱えている。封建的な父親はリストラを言い出せず、孤独な母親はドーナツを作っても誰からも食べてもらえず、進路が見つからない長男は米軍に入隊し、父親から反対されるため次男はこっそりピアノを習っている。そうした家族の不協和音の中で、ある出来事が同時に起こり、それらがキッカケとなって奇跡的なハーモニーが奏でられる。
昨年作られたホームドラマに、母親を中心に親子3代の確執を描いた是枝監督の『歩いても歩いても』(08年)があったが、『トウキョウソナタ』は父親を中心に現在の家族の問題に切り込んだものだ。テーマや演出に監督それぞれの個性が明確なため、比較して観るのも面白いだろう。個人的には『歩いても歩いても』の方が作品として完成度は高いが、『トウキョウソナタ』は黒沢映画らしく個々に素晴らしいシーンがあり、それを読み解く魅力が秘められている。
道路脇で枯葉に埋もれて死んだように捨てられている父親の姿や、ショッピングセンターで子供が落としたアイスクリームを踏み躙って去る母親の姿、家出した子供を無理やり引き剥がす大人たちの姿などに、黒沢監督らしい無機質で寒々としたタッチが感じられた。
ハローワークでの順番待ちの風景や就職活動での面接シーンは、現在私が行っていることでもあり身につまされるものがある。また、敬礼をしてアメリカへ旅立つ長男を見つめる母親の寂しげな表情は、突然音声がオフになり感動的ですらあった。
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| 2009年11月03日(火) |
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 (TV) |
・評価:6(満足)
・制作年・国:07年日本
・監督:若松孝二
・出演:坂井真紀、ARATA、地曳豪、並木愛枝、佐野史郎、奥貫薫、大西信満、中泉英雄、伊達建士、伴杏里

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ベトナム戦争、パリ5月革命、文化大革命など、世界中が大きなうねりの中にあった1960年代。日本でも学生運動が熱を帯び、先鋭化され連合赤軍が結成された。革命戦士を志した坂口弘(ARATA)や永田洋子(並木)ら若者たちは、山岳ベースを設置して武装訓練を始める。やがて総括、自己批判という名の元に同志たちを追い詰めていく・・・。
「連合赤軍」の映画は、警察側からライフル魔事件として描いた『突入せよ!「あさま」山荘事件』(02年)と、劇中劇としてノスタルジックに追体験を試みた『光の雨』(01年)を観たが、この作品は時代の背景を描きつつ、連合赤軍の側から革命への夢が悪夢へと至る過程を記録したものだ。若松監督は「真実をきっちり残さなくちゃいけない」、時代を生きた当事者として「オトシマエをつける」と語っていたが、その甲斐あって意義ある作品になった。
先日観た『チェ 28歳の革命』(08年)もそうであったが、かつて世界的規模で若者たちが夢を抱き、各自が行動し、社会を変えていけることを実感できた時代があった。ゲバラは貧しい人々の立場で、決してブレず「勇気」を持ちつづけ、現在も世界中で多くの人々の共感を得ている。
それが「正しい」か「間違い」であったかは問わず、ここでは若者たちが夢を抱き具体的に行動した事実が重要なのだろう。言いたいことを言わず、やりたいことをやらず、何でも分かったつもりになって、社会や時代のせいと決めつけ、逃避と安堵の生活をおくる、最近の若者たちとの差異がここにあるのかもしれない。
映画は、1960年〜1968年の戦後史の中で起きた学生運動を描く序盤と、連合赤軍の結成と総括リンチに至る中盤、そしてあさま山荘での銃撃戦による終盤、という3部構成で辿られる。
序盤の政治・社会状況と学生運動が過激化していく様子は、当時の実写フィルムも交えながら、分かり易く見応えがある。中盤以降は遠山美枝子から永田洋子、森恒夫、坂口弘と中心となる登場人物を変えていくが、延々とつづく総括リンチには辟易させられる。
この陰湿な総括リンチは、「日本人の気質」をよく示しているようだ。イデオロギーを観念論や精神論だけで乗り切ろうとする姿は「カミカゼ」特攻隊に似ている。閉塞感の中で監視や制裁が行われる様子は、特高警察や軍憲兵のようだ。嫉妬心で他人に総括や自己批判を迫る様子は「村社会」の「ひがみ根性」の表出であり、最近の「自己責任」に通じるものもあるようだ。
序盤に描かれた1960年代の三里塚闘争や沖縄返還闘争の頃まで、学生たちは労働者、農民たちとも連帯し、一般市民の共感を得ていた。しかし、内ゲバや総括リンチが知れることになり急速に一般市民からの支持を失っていく。
「理想の名の下に誤りを犯す」ことは良く知られる。歴史は繰り返されるが、漸進して行くと信じたい。現在の鳩山政権について、しっかりとチェック機能から果たしていきたいものだ。
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