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■今月の感想*ネタバレを含む場合があります。予めご了承ください。
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| 2012年01月30日(月) | ツーリスト (DVD) |
| ・評価:6(満足) ・制作年・国:11年アメリカ、フランス ・監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク ・出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ、ポール・ベタニー、ティモシー・ダルトン、スティーブン・バーコフ、ルーファス・シーウェル ![]() |
傷心旅行でイタリアを訪れたアメリカ人旅行者フランク(デップ)は、ヴェネチアに向かう列車内で見知らぬセレブ美女エリーズ(ジョリー)と出会う。彼女に誘われるままヴェネチアの超一流ホテルにチェックインし、夢のようにゴージャスでロマンチックな時を過ごすフランク。そんな2人の様子はロンドン警視庁の刑事に見張られていた。そして一夜明けると、悪夢のように恐ろしい運命が待っていた。 『善き人のためのソナタ』(06年)のドイツ人監督ドナースマルクのハリウッド進出作品。前作の社会派ヒューマン・ドラマとは異なり、今作はサスペンス系ロマンチック・コメディで、ヘップバーン主演の『シャレード』(63年)のような昔懐かしい香りが感じられる。アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップという2大スター共演による水の都・ヴェネチアでの観光映画風であり、お洒落な雰囲気と風格ある街の風景を楽しむことができる。 パジャマ姿で屋根の上を素足で瓦を割りながら、アタフタと逃げ回る姿はヒッチコック映画のようだ。アメリカ人旅行者というデップの役柄も、建築や運河、ゴンドラ、舞踏会といったヴェネチアの風格ある雰囲気の中で、浮いているように見える。しかし、これも演出の狙い目で、私の好きな映画『ボビーデアフィールド』(77年)のように、ヨーロッパ文明とアメリカ文明の対比として描かれているのかもしれない。 この映画はサスペンス映画なのに、2011年ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門3部門にノミネートされ、一部ではラジー賞候補の噂もあったという。ゴールデン・グローブ賞の審査員は「あまりにバカバカしいので、コメディだと思いました」とコメントしている。 私は『旅情』(55年)や『ベニスに死す』(71年)と同様に、単純にヴェネチアを舞台にした映画を見たかった訳だが、観てとても面白かった。映画の観方はいろいろあるが、贔屓のスターを見たり、美しい景色を眺めて、素直に楽しむことができれば・・・それでいいのかもしれない。 |
| 2012年01月07日(土) | 名刀美女丸 (DVD) |
| ・評価:5(不満) ・制作年・国:45年日本 ・監督:溝口健二 ・出演:花柳章太郎、山田五十鈴、大矢市次郎、柳永二郎、伊志井寛 ![]() |
刀鍛治の清音(花柳)は、孤児だった自分を本当の息子のように育ててくれた小野田(大矢)のために刀を作る。ところが藩の公務中に暴漢に襲われた際にその刀が折れ、小野田は謹慎を命じられる。さらに同僚の男が、小野田の娘・笹枝(山田)との結婚と引き換えに小野田の謹慎を解くと持ちかけたことで言い争いになり、挙句斬られる。小野田の死が自分の作った刀にあると自責の念にかられた清音は一時自暴自棄になるが、仇討をしたいという笹枝に励まされ、精根を込めて新しい刀を作る。 敗戦の直前(昭和20年2月)に製作された、芸道的要素を含んだ溝口時代劇。戦時中の物資不足のため、フィルムは配給制で1時間程度の映画しか創れなかったため67分と短く、ラストのスタッフ・クレジットも入っていない。当時は戦意高揚の国策映画しか作れなかったため、演出料稼ぎの早撮り映画であったことは否めない。溝口自身「食うために作るんです」「今更言うことないね」と語っている。 確かに溝口らしい「情念」の奥行きに乏しく、ラストも大団円後のハッピー・エンドで物足りなさは残る。しかし、鬼気迫る刀づくりの長回しや清音と笹枝が夜道で再会する美しい場面など、溝口の拘りもフィルムの各所に刻まれている。そして、若かりし山田五十鈴の美貌と口跡が見られることが嬉しい。戦時中に創られたプログラム・ピクチャーとして見れば、納得できる出来栄えだろう。 物語的には 勤皇精神と刀鍛冶の心構えや主人の敵討ちがメインであるが、国策映画として「日本刀は武士の魂であり、軍国主義のシンボル」としての精神的高揚(プロパガンダ)を狙ったのであろう。 中国人監督が創った『靖国 YASUKUNI』(07年)では、刀鍛冶職人に「作った刀で人が切られることをどう思うか?」と執拗に聞く場面があり、監督は「日本刀は軍国主義のシンボル」として捉えていた。溝口自身、この作品は当時の厳しい検閲と自分の作風に悩みながら創った、苦渋の選択でもあったのだろう。 この頃、小津安二郎は軍報道部映画班に所属し、シンガポールで『オン・トゥー・デリー』の映画に取りかかるが完成せず、大量のアメリカ映画を見続けていた。それに先立つ昭和13年、天才監督・山中貞雄が中国で戦病死している。私が敬愛するこの3監督の人柄と作品、時代について、引き続き関心を持ち見続けていきたい。 |
| 2012年01月05日(木) | 恥 (DVD) |
| ・評価:6(満足) ・制作年・国:66年スウェーデン ・監督:イングマール・ベルイマン ・出演:リヴ・ウルマン、 マックス・フォン・シドー、シッゲ・フュルスト、グンナール・ビョルンストランド、ビルイッタ・ヴァルベリ、ハンス・アルフレッドソン、イングヴァール・キェルソン、フランク・スンドストレム、ベント・エクルンド ![]() |
元バイオリニストのヤーン(シドー)とエーヴァ(ウルマン)は戦争を避け、小島で静かに暮らしていた。しかし内戦が激化し、解放軍が島へ浸入し、テレビ取材を受けざるを得なくなる。やがて政府軍から呼び出され、2人は反逆罪で逮捕されるが、知り合いの市長(ビョルンストランド)により助けられる。その後、市長が家に訪れるが解放軍に捕まってしまう。市長からもらった金を払えば釈放すると言うが、ヤーンは金は知らないと嘘を言う・・・。 戦争による人間性の喪失を描いた、異色のベルイマン映画。社会問題や戦争を背景にした作品は、微かに『沈黙』(63年)くらいしか思い浮かばないが、この映画では戦闘機や戦車、軍用車、軍隊が登場し、容赦ない爆撃や銃撃シーンが度々描かれ、ラストには累々たる兵士の死体が海に浮かぶ。 臆病な男が戦争に巻き込まれ、残忍な殺人者へと変貌していく映画は他に多数あるが、「神の沈黙」「愛と憎悪」「生と死」を主要テーマとする、ベルイマンならではの心理劇仕立てだ。戦闘機や戦車による轟音や閃光が恐怖心を煽り、生命の危機が差し迫った時、人間は理性や信頼、希望、尊厳さを失う。そうした人間の心理や惨めさを「恥」Skammenと呼んだのだろう。 ベルイマンの映画としては比較的分かりやすく、物語展開や修辞技法が直球的に思える。ラスト・シーンでエーヴァが夢の話をする。「私は必死で何かを思い出そうとしていた。誰かの言葉を。でも思い出せない」。前半の「戦時中に子供を持たなくてよかった」という言葉とも照応しているが、もう一つ唐突で意味不明だ。「神の不在」のリフレインのようにも思えるが、説得力には欠ける。 この映画はベトナム戦争が激化した1966年に創られた。ベルイマンといえども、製作動機にはそうした時代的背景があったのだろう。 演技をするリヴ・ウルマンはいつになく美しく、マックス・フォン・シドーはいつになく間抜けな風貌だ。撮影場所は、自然に囲まれた人里離れた家で、遺作『サラバンド』(03年)にも繋がってみえるようだった。 |
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