番外編「エピファニー」

星組バウホール公演『エピファニー』(ビデオで観劇)

評判が高かったのですが、東京での公演がなかった舞台です。 ビデオで観ても面白かったです。 シェイクスピアの作品はどれも面白いのでどう料理しても良くなると思っていたのですが、 そうとも限らないという実例を観てしまったので、内心どきどきしながら観たのですが、 心配は無用でした。
舞台を明治の日本に置き換えて、歌舞伎役者の妹のお高さんが行方不明となったお兄さんに成り代わって 役者になって、座元の恋の取り持ちをする。しかし、座元の思い人である文士の娘のお鞠さんは 男装したお高さんに一目惚れしてしまう。お高さんは座元が好き。 この主筋に高五郎を助けた元巾着切りで車夫の新五郎がからんで、もつれにもつれた人間関係は最後のハッピーエンドへ集結していくのです。

各キャストを原作の「十二夜」に対応させるとこうなります。
原作の役「エピファニー」での役出演者
ヴァイオラお高彩輝直
セバスチャン来光屋高五郎彩輝直
オーシーノー入谷司祐輝
オリヴィア毛利鞠妃里梨江
サー・トービー, サー・アンドリュー,執事,道化福永君朝澄けい
マライヤ八重美耶エリカ
アントーニオ新五郎真飛聖

お高・高五郎二役の彩輝直さんは特に器用そうな感じでもないし、声に多少難があるのですが、 それを補って余りある魅力でした。宝塚生物アヤキナオならではの役所でしょう。 丁寧に演技しているのに好感がもてます。お高さんの心の襞が伝わってきました。
座元の司祐輝さん、文士毛利林太郎の元で書生をしていたこともあるインテリ座元。この人がしっかりしていたから、 お高さんが生きたともいえますね。
福永君の朝澄けいさん。空回りする気障ぶりがナイスでした。サー・トービーとサー・アンドリューと執事と道化を足して4で割ったような美味しい役所ですね。福地桜痴がモデルなのでしょうねえ。 大まじめに演じているところがとても好感がもてました。
新五郎の真飛聖さん。演歌調の新五郎のくだり、結構好きなのです。役者ですねえ。
毛利鞠さんの妃里梨江さん。結構可哀相な役なのですが、恋に恋するのほほーんとしたお嬢様というところが丁度嵌っていたと思います。ファザコン気味で、まだ子供っぽいからこそ、男装したお高さんに恋をしてしまうのね、と納得させてくれました。

片想いの心を「妹背山」の久我之助と雛鳥に例えたり、劇中劇に「道行恋苧環」を入れたりして、 歌舞伎好きとしては嬉しかったですね。 それと、男役の人の素踊り(?つまり袴姿)の群舞!宝塚ならではですねえ。 原作を忠実になぞっている部分(鞠さんに恋文のお使いをするくだりで「ここからが良いのですよ!」というところとか)と大胆に削っている部分(マライヤとサー・トービーの執事いじめ)のバランスも良かったし、シェイクスピアらしさもあったし、とてもハッピーなお芝居だと思いました。


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