
書評「初稿・死者の書」「テンペスト」
書評「テンペスト」 −エアリエルたん萌え!!−
シェイクスピア「テンペスト」(エドマンド・デュラック挿絵版)(amazon)
ごきげんよう、ご主人様。御用を務めに参りました。
空を飛び、水に潜り、火をくぐる、巻き毛の雲にも乗りましょう…。
どんなことでも、ご言いつけのまま、エアリエルにお任せを。
(シェイクスピア「テンペスト」)
今日(06/5/24)、シェイクスピア作品が熱狂的に大好きな私は、
物語を彩るエドマンド・デュラックの美麗な絵画の数々が美しい
「THE TEMPEST」を読み、エアリエルたんに萌え狂っていたところ!
あの凄まじき雷神の、ジュピターの稲妻すら
かなうことなき、エアリエルの技。
(シェイクスピア「テンペスト」)
エアリエルたんが嵐を起こし雷を振るっているシーンで、
実際に東京に嵐が起き、雷が轟き渡った!!
滝のような豪雨、壮絶な雷鳴が鳴り響き、雷光が空を彩る様を見ながら、
凄いぞ!!エアリエルたんは二代目魔術師プロスペローたる私(爆)
の願いを聞き入れて、我が前に現れてくれたんだ!!
――ご主人様、エアリエルはお側におります…。
(シェイクスピア「テンペスト」)
ああ、感動ですよ!!エアリエルたんは、我が側に!!\(^^)/
シェイクスピア作品には様々な読み方、無数の解釈がありますが、私は
「テンペスト」はオタク魔術師プロスペローと風の精霊エアリエルのLOVE!!
の話だと思っていますので。この読みをしているのは世界で多分私だけ!(爆)
いやあ、でもほんとにそういう感じなんですよ。ミラノ大公(ミラノ領主)の
主人公プロスペローは魔術オタクで、大公としての仕事は全部弟に任せきりで、
魔術趣味に毎日没頭。そんな兄貴にぶち切れた弟が、兄貴をミラノから追放
してしまうのが、「テンペスト」の始まりですから。寝食忘れてオタ趣味に
没頭し過ぎて挙句の果ては追放される…まさにオタの鑑、キング・オブ・オタだぜ!!
追放されたプロスペローは、幼い愛娘を伴って、とある無人島に辿りつく。
そこは邪悪な暗黒の魔女シコラコスが追放された島で、シコラコスは既に
死んでおり、シコラコスの残した化け物キャリバンと、そしてシコラコスの
魔法によって召喚された精霊エアリエルがいた。エアリエルはシコラコスの
邪悪な命令を聞くのを拒否し、怒ったシコラコスによって拷問用魔空間に
幽閉されていた。優れた魔術師であるプロスペローはその圧倒的な魔法力を
使ってキャリバンを部下にし、そして、シコラコス亡き後も、拷問用魔空間に封印
され苦しんでいた精霊エアリエルの封印を解いて彼女を助け、己の使い魔とする。
それなんてラノベ?みたいな話ですが、シェイクスピアのテンペストは
本当にこういう話です。ていうか、日本の和製ファンタジーが、テンペスト
とかの西洋ファンタジーをパクオマージュしたので、こちらが元祖です!
で、「テンペスト」を読んだ人なら分かると思いますが、エアリエルたんマジ可愛い(^^)
一応はメインヒロインらしいミランダ(プロスペローの娘)なんか、エアリエルたんに比べれば、
全く印象が薄くて、どうでもいいメインヒロインだった記憶しか残らない、私の胸には、
エアリエル、君の想い出が深く強く、愛の力によって刻まれているんだよおおおお!!!
エアリエルたんは、何ていうのかな、ほんと、エロゲに出てくる妖精さんみたいな女の子。
優しくて、倫理的で、気が回り、忠実で、ただ忠実なだけじゃなく、主人公に文句を
云ったり自分で判断したりする主体性もあって、そして何より、主人を大切に想っている。
風の精霊として地水風土のエレメンタルを操れ、空も飛べ、自らの姿も自由自在にできる。
そして、美しい姿と、美しい歌声で、主人プロスペローの頑なな心を、だんだんと癒してゆく。
エアリエルたんは、本当はプロスペローに従う必要はないんですね。
プロスペローに助けられた時に結んだ主従契約は既に切れているんだけど、
だけどそれでも、主人想いの心、優しい思いやりで、色々手伝ってくれる。
テンペストは魔術師プロスペローが、自らの魔法力で自らの理想郷に作り替えた島に、
自分を追放した連中を誘き寄せて復讐する話ですが、プロスペローの心を癒して
その復讐を止めさせるのも、優しいエアリエルたんですし、ほんと、涙がでてくるよ…。
エアリエル
「ご主人様の(魔術の)力はたいへんなもの、
(プロスペローの魔術により狂乱している復讐相手の連中の姿は)
ごらんになれば、かわいそうだと思うでしょう」
プロスペロー
「そう思うか?精霊よ」
エアリエル
「――私が人間でしたら、きっと……」
プロスペロー
「私も……たぶんな。
おまえが、空気の精に過ぎぬお前が、彼らを憐れと思いやる心を
感じているというのに、彼らと同じ人間の一人であり、鋭き感性と
豊かな感情を持つ、この私が、お前より思いやりに乏しいなどとは?
彼らの行った不義非道は、私の魂の傷口をこれでもかと痛めつける。
だが、その激しい怒りを気高き理性で抑えよう。
復讐にかえて慈悲を施すことは、めったにないことであるが、
優れた行為である。
彼らが後悔しているからには、私の魂も、その怒りを
これ以上強めはせずに、慈悲に向かって漂わせることとしよう。
さあ、行け、彼らを自由にするのだ、エアリエルよ。
私の魔術の力を解いて、彼らの感覚を元に戻してやろう。
さすれば彼らも正気に戻るだろう」
(シェイクスピア「テンペスト」)
ああ、エアリエルたん!!私はもう涙が止まらないよ!!(ToT)
人間ではないけど、優しくて美麗で倫理的で、人間以上の存在である
女の子が、人間の主人の復讐心を癒していくって、まさに本田透さん
とみさき先輩というか、俺と観鈴ちんていうか、オタとエロゲヒロイン
の関係そのものだよ。シェイクスピアの天才的先見性には心底感服する。
ていうか、プロスペローは偉そうなこと云ってますが(彼の価値観は、
優美なエアリエルのことを大切に愛しく思っているけど、それでも、
人間>超えられない壁>精霊みたいな偏見に囚われているので)、
テンペストに出てくる登場人物の中で、一番生き生きとした
人間的な魅力があるのは、どう考えてもエアリエルたんなんですね。
そんなエアリエルたんとの別れのシーンは、もう涙が溢れて…。
プロスペロー
「エアリエル、私の雛鳥よ。
船を守るのが、最後の仕事、
それからあとは、大空を
自由に飛んで、元気で過ごせ…」
(シェイクスピア「テンペスト」)
ああ、エアリエル…、私の愛しい精霊よ…。
空気が動き、風を感じるとき、君はいつも、側にいてくれる…。
エアリエル――優美なる風の精霊、私の最愛の精霊よ――。
ご主人様、エアリエルを可愛いと思ってくださいますか。
(シェイクスピア「テンペスト」)
参考作品(amazon)
シェイクスピア「テンペスト」(エドマンド・デュラック挿絵版)
KEY「AIR
Standard Edition」
アニメ版「AIR」(DVD)
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書評「初稿・死者の書」 −深き幽玄−
今すこし著くみ姿示したまへ。
(折口信夫「初稿・死者の書」)
折口信夫の「初稿・死者の書」を読了――素晴らしい――。
ああ、この、何とも云えない幽玄な想いをどう伝えたらいいのか…。
少女を媒介(巫女)として異界を描いた作品なのだけど、その異界(幽界)
の描き方が…、日本の現代創作に異界を描いた作品は山ほどあるけれど、
それらに描かれる異界というのは浅瀬だったんだなと思った…、本作が
描いて行く幽玄の異界は、浅瀬の先にある深遠なる大海、果てしなく美しい…。
そして、なんていうか…解説にも書かれているし何より「死者の書」を
直に読めば実感するけど、折口信夫は私と同じく少女崇拝者だね。
折口を常に捉えていた夢、それは少女になること、
そしてそれに対する長くまた強く持続する欲望である。………
光へと開かれ、「光の曼荼羅」を織りあげる「少女」の物語。
(安藤礼二「光の曼荼羅」)
本作は絶対的に聖なる少女(姫君)が、死者の神魂を救済する物語でして、
神性=絶対的な超越性=少女であり、神は少女と同一して世界に具現化する。
描き方が…もう、美し過ぎて、読んでいるだけで、海に身体が熔けているような心持…。
截りはたりちやう/\、早く織らねば、やがて岩牀の凍る冷い秋がまゐりますがよ――。
郎女は、ふつと覚めた。夢だつたのである。だが、梭をとり直して見ると、
はた はた ゆら ゆら ゆら はたゝ
美しい織物が筬の目から迸る。
はた はた ゆら ゆら
思ひつめてまどろんでゐた中に、郎女の智慧が、一つの閾を越えたのである。
(初稿・死者の書)
純粋清らかな少女の内的世界が救いとなるというのは、現代日本の創作に通じている
のかも知れないなと読み終わって思った…。幻の如く美しい物語です。少女を愛する人は
ゆっくりじっくりと世界に浸かりながら読んで行けば、桃源郷を訪れることができるでしょう。
私は、本書において、日本の言霊の絶大な力を、そして、
無垢なる少女の玄妙なる大いなる偉大さを、魂がふるえて、実感した…。
世界を救済するのは、やはり少女なんだね――(^^)
長い渚を歩いて居る。郎女の髪は左から右から吹く風に、
あちらへ靡き、こちらへ乱れする。
浪はま足もとに寄せて居る。渚と思うたのは、海の中道である。
浪は両方から打つて居る。どこまでも/\、海の道は続く。
(初稿・死者の書)
参考図書(amazon)
折口信夫「初稿・死者の書」