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★★★★★=傑作/最高 ★★★★=秀作/上手 ★★★=佳作/標準 ★★=凡作/下手 ★=駄作/最低 ☆=+α


シュレック

SHREK
評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★☆
★★★
★★★☆
ディズニーキャラを使った毒のある笑いが思ったよりない

2002年に初めて設けられたアカデミー賞最優秀長編アニメ部門の作品賞を獲得したフル3DCGムービー。 製作は元ディズニーのジェフリー・カッツェンバーグ。ドリームワークスはディズニーに対抗してと言うのが最早売り文句になっており、この作品賞も【モンスターズ・インク】を破っての受賞となった。フサフサのお化けよりもツルリとした緑の怪物と言う事で。

自分からドラゴンが潜む城に閉じこもっているフィオナ姫を救出すべく、チビの王子様に駆り出されたのは緑の怪物シュレックとその友達の喋るロバ。

まず見るべき所はオールCGによるアニメーション。完璧とは言えないが、充分人の目を惹くレベルだしキャラクタの表情も面白い。人形劇のような動きや人間キャラの造形の乏しさが映画にとってそれほどマイナス材料になってもいない。誰もがこのアニメ世界を素直に楽しめるのでは。
ただ一方で、映画の顔であるシュレックが「アラレちゃん」のニコチャン大王というか太ったナメック星人というか、醜い怪物ゆえに人との距離を置く悲哀の主人公にしては恐ろしくもなく可愛げもなく、酒場で酒飲んでそうな中年オヤジみたいな造形はインパクトが足りない。劇中の「美女と野獣」の構図も、シュレックは野獣というよりただ彼女に釣り合わないヤツに見え、化け物というより単に不細工なヤツという役割は映画のテーマには結びつくけど折角の御伽噺の映像世界を平凡にしているようである。もう少しなんとかならなかったんだろうか。
ついでに声を当てているマイク・マイヤーズだが、本人の顔が浮かんでしまう事とは別に、そう野太いとは言い難い彼の声は考えていたシュレックの声と結びつかず、合っているとは思えなかった。ちなみに浜田雅功は問題外だろう。相方のロバの方は、舌がよくまわるエディ・マーフィを持ってきた点は嵌っていると思う。まあこの手の凸凹コンビによくある「オシャベリキャラ」はいくらでも代わりは利くと思うが。でも日本では山寺宏一に適う者はいない。プリンセス・フィオナ役のキャメロン・ディアスは【チャーリーズ・エンジェル】の延長線上にあるようなキャラクタ。ウブなように見えて現実知っててカンフー強くて、でも逃避してるというか夢見がち。フィオナのすぐ後ろにディアスが見えるほどに違和感がない。一方の藤原紀香の方はアノ男顔負けの顔のデカさがフィオナの秘密にもマッチしてる(ゴメンナサイ)。

映画全体でも匂わされている事だが、中盤以降の意外な展開からラストまでが物語るテーマは、確かにアンチディズニーの姿勢が良い意味で結実したものだと思う。子供に向けたアニメだけに教訓を取り入れたのだろうが、中々に新鮮な結末は大人にも耐えうる映画になった。ただ、このテーマが奥深いとすればその取り扱いは注意すべきで、キャラクタの微妙な感情の変化によって表される「愛の芽生え」「姿形にとらわれない繋がり」といったデリケートな面は時間をもって描写しなければいけない。けれどその辺りは結局子供向けというか、同情や共感を越えた所にがあるのだが、互いの距離が縮まったり広がったりといった肝の部分は何とも安直に仕上がっている。フィオナ姫の内面もなんだか説明不足。彼女の抱えている悩みと、打算的な面や純粋な恋の感情などは物語の鍵なだけに残念。 ラストは見ようによってはスッキリしない部分が残ったりもするので、この辺はもっと盛り上げて、騙して欲しかった。
ちなみに私は見目麗しい主人公とヒロインが結ばれる結末が大好きだったりします。
  
内容 ウィリアム・スタイグの「みにくいシュレック」が原作。遥か昔、人里離れた沼のほとりに、人を喰うと噂の怪物が住んでいた。その名はシュレック。恐ろしい姿とは裏腹に、本当は優しい心を持った怪物であるが、震え上がる人間たちを避け、孤独に暮らしていた。その沼の彼の家に、ある日突然、おとぎ話の登場人物たちが大挙して侵入してきた。彼らは皆、デュロック国の支配者で横暴なファークアード卿によって、無益な存在だという理由で国を追放されたのだった。 シュレックは、騒がしくなった森から、再び静寂を取り戻すため、相棒のおしゃべりロバのドンキーと共に、ファークアード卿に掛け合いに出かけた。そして、皆を元の生活に戻すことを条件に、火を吹くドラゴンの城に囚われているプリンセス・フィオナを助ける旅に出発するのだった・・・。
監督 アンドリュー・アダムソン、ビッキー・ジェンソン
脚本 テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、ジョー・スティルマン、ロジャー・S・H・シュルマン
声優 マイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアス、エディ・マーフィ、ジョン・リスゴー、バンサン・カッセル
公開 2001年12月15日 アメリカ映画 91分 配給UIP映画


ポワゾン

Original Sin
評価
総合 役者 演出 その他備考
★★☆
★★★
★★☆
くちづけでそそぐ せつなさはー♪

ウイリアム・アイリッシュの『暗闇へのワルツ』が原作。キューバを舞台にアントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリーが濃厚な愛憎劇を繰り広げる、いかにも暑っ苦しそうな官能映画。成人指定

捻りがない映画である事は知っていたけど本当に何の捻りもないB級映画なので、何故有名俳優を起用してまでこんな映画を作ったのか理解に苦しむのだが。
まあこちらもジョリ姐のおっぱいを目当てに観たので少なくとも収穫はあったわけだけど、そんな目的と結果が完全に一致した、ホントにそれだけしかない映画なのさ。ジョリ姐のお披露目も期待ハズレというか、シーンは短いし期待するような思い切りの良い見せ場はない。昔のジョリ姐の映画の方がもっと大胆に見せていたゾ。目に焼き付くのはジョリ姐よりもバンデラスの真っ裸というのも問題があるな。
ストーリーからすれば、後半なんか(金持ちのジジイらに頼らずとも)普通にHな展開に持ち込めるのに。
結婚を前提に出会ったバンデラスとジョリ姐だが、実はジョリ姐はバンデラスの財産が目当て、彼のお金を持って行方をくらましてしまう。ジョリ姐のバックには男がいて彼女を操っているのだが、ソイツがジョリ姐に「オレからは逃げられない」とかいって押し倒すわけさ。でも演じているトーマス・ジェーン程度の知名度ではジョリ姐を脱がす事はできないらしく仕上がりはとってもソフト。フランス書院文庫辺りなら「ヘヘ、お前はココが弱かったよな。どうだ、感じてきただろう?ん?なんならアイツに見せつけてやろうか。お前はオレなしにはいられない身体に」云々といくはずで、これならバンデラスを越える使い手ゆえの説得力が生まれて官能度も上がるし、話の方向性もハッキリして盛り上がってくるのだが。ここで下手に恥ずかしがってしまったので狂言回しの役柄の押しも弱くなってる。
オチもぬるい。バレバレの尾行で真実を知ったバンデラス、「それでも愛してる」などとぬかすが、それはバンデラスのキャラクタじゃあない。逆襲の鬼と化したバンデラスが何食わぬ顔している二人にこの世の地獄を味あわせてなんぼでしょ。いや、原作付きの映画なんだけどさ。

魔性の女ジュリア・ラッセルにアンジェリーナ・ジョリー。ミステリアスになりすぎて、ここぞという時の心のうちも見えなくなってしまってる。彼女は好きな女優さんだけど、割れた唇にへの字眉の特徴的な美人は、関わる男達全員が彼女にのめり込んでしまうというお決まりなキャラクタを演じきれているようには見えなかったなあ。実生活でもそういう事してそうな女優を使った方が良い。ペネロペ嬢なんて適任でしょう。ルイス・アントニオ・バーガスにアントニオ・バンデラス。愛を信じなかった男が純愛に目覚めるというこの役柄は合っていると思うけど、色んな意味で弱さを見せる主人公はどうもバンデラスの色じゃない。

バンデラスVSジョリー。役者の個性が強すぎて、日本で言えば竹中直人VS小島聖のような、何となく、まるでキワモノの部類に入りそうな映画に見える。実際の官能度はそうでもないだけに、それだけでX指定にされたような気が。
  
内容 19世紀後半のキューバ。コーヒー輸出業で成功したルイス・バーガス(アントニオ・バンデラス)は身なりを整え、緊張の面持ちで船が着くのを待っていた。 ボルチモアの新聞が今しも妻を求める男と夫を求める女をここで引き合わせようとしていた。ルイスは愛など信じてはいなかった。 美人でなくともいい、誠実で子供を産んでくれる女を求めていた。新聞の交際欄を通じて、ルイスのそんな要求に応え、アメリカ人の女がルイスと結婚するためにやって来ることになっていた。アメリカ人の妻は、この地で富の象徴であり、また仕事を円滑に運ぶための手段にもなるはずだった。 ところが、ジュリア・ラッセル(アンジェリーナ・ジョリー)を名乗り、ルイスの前に現れたのは、送られた写真とはあまりにも違う、まぶしいほどに美しい女だった。トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』の再映画化。成人指定。
監督 マイケル・クリストファー【ジーア/悲劇のスーパーモデル】【ボディ・ショット】
脚本 マイケル・クリストファー
主演 アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー、ジョーン・プリングル、アリソン・マッキー、トーマス・ジェーン
公開 2001年11月23日 アメリカ映画 116分 ギャガ・ヒューマックス共同配給


オー・ブラザー!

O Brother, Where Art Thou?
評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★
★★★
★★★
のんびりしたい時に観る映画

ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』を大恐慌時代のアメリカ南部に舞台を移した物語。といってもそのエピソードは骨組み程度、ミシシッピ州のだだっ広い綿花畑にカントリー・ミュージックが被さる、旧きよきアメリカのイメージをユダヤ系のコーエン兄弟が膨らませて描いたミュージカル・ロードムービー。

服役中のエヴェレット・ユリシーズ・マックギル(ジョージ・クルーニー)は、仲間のピート(ジョン・タトゥーロ)とデルマー(ティム・ブレイク・ネルソン)に隠した財宝があるとそそのかして脱走する。そして3人は道中に、不思議な出来事に遭遇する事になる。

『オデュッセイア』とはトロイア戦争から凱旋するオデュッセウスが、一つ目の巨人「サイクロプス」や歌で船を岩礁に引き寄せる人魚に出会ったり「ナウシカ」に助けられたりと冒険をしながら何とか故郷に戻り、ようやく妻ペネロペイアと再会したら留守中妻に求婚していた悪者達がいたのでやっつけた、という話。
全てではないが、それに合わせて道中には盲目の預言者だったり歌を歌いながら誘惑してくる美女だったり眼帯したオッチャンがが出てきたりする。神話と、かつて大らかだった頃の米南部を重ね合わせる試しみは悪くなくて、赤茶けた映像と合わせた寓話っぽさが何とも心地良かったりする。「あの頃は・・」と言われる様になった時代を脚色する事で得られる非現実性の心地よさ。日本で言えば【帝都物語】みたいなもんだろうか
とはいえ全編を通してカントリーやブルースといったアメリカのルーツ音楽が流れるように、この映画が求めているのはアメリカの「ルーツ」、1930年代のアメリカを御伽噺のような映像で見せつつ探っていく事が真の目的。アメリカのルーツとは?インディアンを虐殺して手に入れた土地ですが何か?まあその辺は世界でも歴史に関する知識が著しく疎いと言われているアメリカ市民の記憶に上る事はまずないので、せいぜい白人至上の人種差別主義が挙げられるのでしょうという事で、劇中には黒人差別が当然の如く用いられています。
カントリー・ミュージックの耳馴染みはひたすらに良いのだけど、語られている物語はコーエン兄弟特有のズレた笑いと合わせて結構ブラックでして、ベビーフェイスが牛を平気で撃ち殺したり車で轢いたりする辺りに白人の根底といいましょうか、コーエン兄弟が思うアメリカ人の姿が垣間見えたりするわけです。その極めつけが、人気者になった3人組が選挙運動の道具にされるというという結末。でも権力によって罪が許されて万々歳、一発当てればデカイというアメリカン・ドリームを 良くも悪くも体現しています。あくまで陽気にアメリカを描いた映画なのですが、「ノアの方舟」のように一旦水で流さなきゃいけない国という見方もあったり。

ジョージ・クルーニーはダンディなオジサマよりこういう役の方が合っているような気がしないでもない。あまりこういう役はやらないので気付かなかったけど元々笑いの取れる顔なのだろう。ティム・ブレイク・ネルソンは【O】の監督だそうだが、劇中で最も味のある存在感、二足のわらじを履いているようには見えない(というか演出家に見えない)。ジョン・タトゥーロはまあいつも通り。妻役ホリー・ハンターもいつも通り。その他実在のミュージシャンが多数登場。

実のところ↑色々書いたストーリーはどうでも良かったりして。ご都合主義だって悪くない。盲目の輩が多く登場するように観るべき所というより聞くべき所、は音楽。ズブ濡れボーイズの「I Am a Man of Constant Sorrow」なんか最高ですから。アノ曲後半でもうちょっとちゃんと聞かせてくれれば良かったのだけど。
  
内容 1930年代、アメリカ南部で鎖につながれた3人の囚人が脱走に成功。途中、ノロノロと走るトロッコをヒッチハイクすると、体格の良いその運転手は盲目だった。彼は謎の予言を3人に残す。「おまえたちは宝探しの旅にでる。やっとの思いで宝も手にする。しかし、その宝は、おまえたちの求めていた宝とは違うであろう…」。
監督 ジョエル・コーエン【ファーゴ】【バーバー】
脚本 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
主演 ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン
公開 2001年10月20日 アメリカ映画 108分 配給ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ


ビューティフル・マインド

A Beautiful Mind
評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★☆
★★★☆
★★★★
碁のシーンがあるが、まさかヒカルの碁の・・

経済学の定説をくつがえす「ゲーム理論」を提案し、94年にノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの半生を描く伝記映画。74回アカデミー賞作品、監督、助演女優、脚色賞を受賞。 賞とは無縁だが音楽が良い。凄く良い。

アメリカのプリンストン大学に籍を置くジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)は数学の事以外は頭にない変わり者で、友人はルームメイトのチャールズ(ポール・ベタニー)だけ。才能はあるが中々形に表せず論文の発表もままならない。しかしふとした契機から「ゲーム理論」という斬新なアイデアを考え出し、念願のウィーラー研究所へ推薦される。 その後講師先の大学の受講生アリシア(ジェニファー・コネリー)と恋に落ち、結婚。順風満帆に見えた彼の人生だが、国防総省の諜報員パーチャー(エド・ハリス)に才能を認められて始めた極秘任務が元で、彼の周囲に不気味な影が付きまとい始める。

クロウ演じるナッシュは日々数学の事ばかり考えて食事もままならない理系人間のわりに腕も太くてやけにゴツいのだが、そんなタフガイが【シャイン】のジェフリー・ラッシュばりの変人振りでシナをつくってる姿は何とも不気味で、劇中周りが距離を置くのも頷けるというもの。ラッセル・クロウの演技は悪くないが、彼が数学者に見えるかどうかはさておき、こういう役がもっと似合う役者は他にもいるだろうとは思う。素直にエドワード・ノートンを使うという手もあるし。
そんなクロウ演じる数学者ナッシュは、ひたすら社交性に欠けとっつきにくい印象で、さらに話が進むと高慢にもなってくる。観る側はあまり感じ入れない主人公。そんな彼に自分から声をかけて来る怖れ知らずなジェニファー・コネリーだが、普通ありえないようなこの美女と野獣のカップリング、「実際に二人は結婚してるから」という物語上の前提以外には「名声に惹かれて」ぐらいしか理由が見つからず、観ていて彼のどこが気に入ったのかが分からない。だからその後の、辛い状況に耐え主人公を健気に見守り続ける妻の姿に説得力がない。まあタフガイ・ラッセル兄さんだけに夜の生活だけは順調で彼女を思う存分満足させていたのだと思うが。
苦難に耐え愛を語るヒロインはアカデミー審査員の好みかもしれないが、実際都合が良過ぎて彼女のキャラクタは薄っぺらく見えた。コネリーの演技にも目新しさを感じなかったし。助演女優賞は他に有力な候補がいなかったのか(もしこれが前年だったら絶対エレン・バースティンが獲ってる)?
ちなみに事実の方は二人は一度離婚していて、その後40年近く別居した後に結婚し直しているそうな。こちらの方が分かりやすい。

物語の作りは脚色を効果的に使って、伝記映画でありながら意外な展開で楽しませてくれる。やっぱり天才と●●は紙一重というか、考える事も違うなら見える世界も違うのネ。オタク人間のなれの果てみたいな主人公である。ウラヤマシイ。その他にも様々な要素を絡めながら展開をコロコロと変えて行き、そして最後は予想通りの結末で感動させる。ラッセル・クロウは年輩の役がなぜか異様に上手い俳優サンという事もあり後半になるに従いナッシュのキャラクタも落ち着き始めて、映画全体もシックリまとまってくる。前半の細かなエピソードが伏線となり後半の幾つもの感動に繋がるやり方も上手い。
ただ意外な展開の方が話の中心になりすぎていて、ラストの感動でも足を引っ張っている感がある。ノーベル賞の契機となる理論についての話は冒頭で完結していて、それ自体忘れかけた後半に突然理論の構築が評価されてもと思うし、その頃には劇中に起こる全ての物事に自ずと疑問の眼を向けているので素直に感動できない。物語自体は単純だし素直に描けば感動だけは出来たと思うけど、 色んな要素が入り込みすぎた為に結局お約束に落ち着いたラストでは予想以上の感動は得られなかった。ロン・ハワード監督の意欲的な演出の姿勢は賛同できるけど、ちょっと欲張り過ぎ。アカデミー賞に値するかは微妙。やっぱりリンチの方が・・。

ナッシュの実像を見ると、浮気して孕ませたとか暴力を振るったとか、かなりロクでもない。両刀使いでもあったそうな。そうした話題をひたすら無視して感動作に仕立てた点は、肯定的に考えれば脚色賞に値するが、否定的に見ればイイトコだけ拾って伝記映画を作るのは間違っているのではと思うわけで。今年のアカデミー賞の本命であり作品賞を獲ったわけだけど、アカデミー賞好みの感動作だから、という理由以上のモノは見つけられなかったなあ。
  
内容 実在する数学者ジョン・ナッシュがノーベル賞に輝くまでの半生を綴った感動作。第74回アカデミー賞作品賞他4部門受賞。
監督 ロン・ハワード【バックドラフト】【アポロ13】【グリンチ】
脚本 アキバ・ゴールズマン
主演 ラッセル・クロウ、エド・ハリス、ジェニファー・コネリー、クリストファー・プラマー
公開 2002年3月30日 アメリカ映画 134分 配給UIP


ロード・オブ・ザ・リング

The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring
評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★★★
★★★★☆
★★★★
原作を読んでいない人の意見

トールキンの世界的ベストセラー小説「指輪物語」を映画化した三部作の第一弾。
第三紀の「中つ国」、2500年前に闇に葬られた冥王サウロンが作り出した邪悪な指輪が、時を経てホビット族のフロドの手に渡る。指輪の秘密を知ったフロドは指輪を封印するため旅に出発し、9人の仲間を結成して指輪を破壊する「滅びの亀裂」へと向う。しかしサウロンも復活の兆しを見せ、冥王の追手がフロド達に襲いかかる。

3作で総制作費が340億、15ヶ月かけて撮影された世界中が注目するファンタジー映画。大体一作辺り113億で5ヶ月間の撮影と考えればそれなりの規模ではあるが、一作目が儲かるかどうかも分からない内から340億全て注ぎ込んで撮影を済ませてしまったのだから凄い。配給会社もよくGOを出したものだ。
それだけ世界から期待されているプロジェクトなわけで、そんな重荷を背負った掴みの第一作目だが、これは出資側の不安を払拭するに足る出来と言える。正直これほど完成された、ファンタジックな映像世界は見た事がない。本、アニメ、漫画、ゲームといった媒体で今まで見てきた御伽噺の世界が、かつてない程違和感なく実写化されている。壮大で緻密で、そして美しい。ニュージーランドの幻想的な風景がこの世界を作り出すのに大きな役割を負っていて、観ている間ずっと画面に魅了され惹き込まれっ放し、登場人物達と一緒に長い旅をしているような3時間でした。
113億かかったと考えても、逆に113億でこれほどの映画を作れた事が凄いと思う。そこらのハリウッド映画の様な、役者に廻す金が少なくて済んだと言うのもあるのだろうけど、セット1つとってもどうやって撮影したのか不思議に思う程。そしてCG技術の発達はここまで来たのかと思うほどの映像処理、特にクリーチャーのリアルな造形は素晴らしく、黒馬を駆る黒衣のマント達の怪しい魅力、さらに縦横無尽に流れるカメラが映す蠢くオークの群れの醜悪な姿、そのおぞましさなどはこの映画一番の見所と言える。さすが【ブレインデッド】の監督。培ったB級映画の底力を見せてくれます。というか、なんで【ブレインデッド】の監督がこんな大作を撮っているんだろう・・・。
(注:【ブレインデッド】→超B級スプラッタ・ホラー映画。これ観た後の晩飯が焼肉で、吐き気がした覚えがある)

くどすぎるアップの多用や、大雑把に思えるカット、巨人との特撮を駆使した戦闘での突如としたシーン全体のぎこちなさなど、撮影技術に関してはまだ未熟に思える部分はあるけど、その他映像面については褒める部分は多い。けど、そんな映像が見せるストーリーに関してはあまり良いと思えない。というのも、やはり長大な原作を映画用にまとめるのは一筋縄ではいかないようで、その世界観はどうしても説明不足な点が出てきて、さらに劇中で使われる特殊な用語については解説を放棄している所がある。原作ファンには必要無いだろうが、ビギナーには辛い。それに3時間のという尺の長さでも足りないぐらいに話を詰め込まなければならない為、1つのエピソードが早足すぎる。これは【ハリー・ポッター】同様、原作持ちの避けられない弱点なのだが、結果どうなっているかというと、映像には圧倒されるが、実際何が起こっているのかはよくわからないのである。
世界中の子供の事は知らないが、私の子供の頃の愛読書は「けんぼうは一年生」、モーリス=ルブランはちょっと読んだが「指輪物語」なんて読まなかった。原作を読んでいないと世界観を理解できないというのは不親切だよな。個人的には前半分のエピソードを削って他の事に割り当ててても良いと思うんだけど、それは原作ファンが許さない、苦渋の選択でビギナーはこの際涙を飲んでもらう事にした様。映画はそうやって3時間という長丁場を原作のエピソードをとにかく処理していく事に当てて、「指輪物語」という既に決められている流れを実写化していく事に挑んだわけだけど、この話、原作がなかったら30分は削れる。映画として見せるのなら、原作通りにただ続いていく流れをそのまま映像化する事はあまり褒められない。さらに映画は三部作、しかもこれは一作目、話は序盤に過ぎず物語にそれほどの盛り上がりはない。そんな中で作り手側は健闘していて、逆にある程度全篇見せ場の状態には持っていっているのだけど、原作の「指輪物語」が持つ以上のストーリーは生まれていないように思える。これは原作がある映画にとって仕方がない事、そんな限界を目にすると独自の物語だったらもっと凄いファンタジーが、と思うわけである。
本当ならTVドラマなどで何十話と続けるべき物語のはずで、今回の映画も映像は最高だが、3時間ではドラマをダイジェストにした印象が付き纏う。【ハリー・ポッター】も同様。最近ファンタジー小説の映像化が流行りだけど、そんな原作の世界を見せ切るには「映画」の時間って短い気がする。

この原作の設定自体も少々難があるように思えた。勿論自分は原作読んでないのでよくは知らない事だが、RPGよろしく指輪を捨てに行く旅に集まった主人公含め9人の仲間達、しかしこの9人の内、ホビット(これ差別用語じゃないの?)が4人、戦闘能力があるのは実質5人。更に何人かが退場するし後の4人は足手まとい、こんな状態で荒野を埋め尽くすモンスター軍団に立ち向かおうとするのってどこか間違ってません?ゲームならそれもありだが、実写だとどうも違和感が残る。さらに主人公のフロドは勇者でもないかなりの足手まとい、「指輪を手にしてしまったものは仕方がない」という皮肉な運命の下、指輪さえ手にしなければという後悔の念を抱きだがら数々の危険に立ち向かう旅をする。二作目で色々と盛り返すのだろうけど、一作目を観る限りこのパーティの旅路って凄く無茶なものに思えたんだけど。


主人公フロドにイライジャ・ウッド。子供の頃は可愛かったのに、今じゃちょっと顔変形気味。青い眼は相変らず綺麗だが。そういえばあの「小人」ぶりは映画一番の謎。どうやって撮影したんだろう。フロドの義父バギンズにイアン・ホルム。バギンズの親友、【ナウシカ】のユパ様みたいな登場をするガンダルフにイアン・マッケラン。ガンダルフの宿敵サルマンにクリストファー・リー。この【X-MEN】と【ドラキュラ】の、死にそうな二人の対決は見物。
フロドを守る4人。放浪者アラゴルン役に男っぷりNO.1のヴィゴ・モーテンセン。【ゴッド・アーミー 悪の天使】で心臓食ってたヤツ。相変らず長髪と髭が似合う。アルゴランに忠誠しているんだかしていないんだか分からないボロミア役に【RONIN】のショーン・ビーン。ドワーフのギムリ役に【ハリー・ポッター】にもいたような顔したジョン・リス=デイヴィス。そしてこの映画で一番人気が出ると思われるエルフの王子様レゴラス役にオーランド・ブルーム。金髪長髪(でも本当は黒髪五分刈り)、弓の名手で劇中一番役に立つ男。中性的な風貌は女性客を虜にする事間違いなし。佇まい、挙動のエルフっぽさがファンタジーを観ている気にさせてくれる。そんなレゴラスと、アラゴルンの王子二人の触合いはかなりやおいッ気アリで、一部の女性にさらに人気が出そうである。というかフロドを取り巻く輩がみな野郎で、「君を守る」とか「君に忠誠を誓う」とか「どこまでもついていく」とか言う様は誰が見ても怪しいのだが、やっぱりその手の層も狙っているのだろうか。
そんなやおい層からあぶれた女性陣は逆にゲスト出演のような出番の少なさ。エルフの姫様アルウェン役のリブ・タイラー、エルフの国の女王ガラドリエル役のケイト・ブランシェットは、原作にあったのでとりあえず出した程度の役の印象。この場合知名度が高い程、何故か損をしているような印象を受ける。しかしまあ女性陣の層が少ない割にコレという美女がいないので、私的に面白みに欠けた所がある。折角エルフの出てくる映画なのだから、金髪美女の可愛らしいエルフが一人でも入ればと思えて仕方がない。後、耳はもっと長くして。

映画はヒットするだろうけど、3時間の長丁場や、総合的には良くてもエピソード一つ一つの面白さには少々欠ける点は、繰り返し観たくなる気はあまり起こさせない。1度観れば満足するだろうから、リピーターもそれ程出ないだろう。子供向けファミリー映画という程でもない。その点【ハリー・ポッター】の方が良い。そこで映画のやおいッ気が動員を左右するかどうか、楽しみである。
  
内容 アカデミー最有力、J.R.R.トールキンによる最高のファンタジー作品の映画化。3部作の第1作。その指輪を捨てなければ、この世は闇となる―――。世界を滅ぼす魔力(パワー)を秘めた1つの指輪をめぐり、選ばれし宿命の勇者9人と悪の勢力との壮絶な戦いが今、幕を開ける。
監督 ピーター・ジャクソン【乙女の祈り】【さまよう魂たち】
脚本 ピーター・ジャクソン、フランシス・ウォルシュ、フィリッパ・ボーエンズ
主演 イライジャ・ウッド、ビリー・ボイド、ドミニク・モナハン、ショーン・アスティン、イアン・マッケラン
公開 2002年3月2日 ニュージーランド・アメリカ合作 178分 日本ヘラルド映画・松竹共同配給