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★★★★★=傑作/最高 ★★★★=秀作/上手 ★★★=佳作/標準 ★★=凡作/下手 ★=駄作/最低 ☆=+α


首吊り気球

評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★
★★
★★★☆
バランスのとれた作品群

『伊藤潤二恐怖Collection』の中の3作を映像化。映像はテレビドラマと変わらないので過去の映画化作品に比べて迫力は乏しいけど、秀逸なストーリーを選んだ事、チープになりがちな映像を逆手に取るなどして、水準に達する作品にしている。しかも、短編集はどれか1つはハズレる場合が多いが、どの短編も楽しめるものになっていて、さらにそれぞれテイストの違うものを用意する事でバランスも生まれている。特に最後に【首吊り気球】を持ってきているのだが、これが締めを飾るのに良い意味で機能しているのだ。

【悪魔の理論】 監督/清水崇、脚本/斉藤正勝
恋人・和美がクラスメイトと浮気しているのではと疑った岡盛は、彼女に盗聴器を仕掛ける。やがて和美が飛び降り自殺し、岡盛は残された盗聴テープから意外な事実を知る…。

【呪怨】【学校の怪談G】の清水監督。ストーリーに合わせて撮り方はオーソドックスだが、後半、主人公が死んだ彼女の声をテープで聞きながら、彼女が辿ったのと同じ道のりを歩んで行く姿を、過去と未来2人を同時に重ねて見せていく演出は上手い。語られる「悪魔の理論」の雰囲気を出すべく学校の階段を迷路のように映すなど小技も冴えている。実際3作品の中でもストーリー展開と映像、一番地味な内容だが、一番出来が良い。ただ惜しいのが、要になる「悪魔の理論」の説明があまりに強引で、どうしても陥った真相に納得し切れない。これを京極作品並の説得力で見せられたら完璧だったでしょう。
ちなみにVFXの使い方は黒沢清の【回路】のようです。

【屋根裏の長い髪】 監督・脚本/三宅隆太
純情なOL・チエミを疎ましく思った恋人・晃一は、多額の金をせびった挙句、他の女を作って捨ててしまう。チエミは泣きながら、晃一に言われて伸ばした長い髪を切り…。
これは典型的な怪談。監督が【案山子】の脚本の1人というのが少々気になるが、これも撮影、演出等作りはしっかりしていて、かなり見応えのある作品に仕上がっている。【悪魔の理論】もそうだけど、少し工夫して、事実を解明して行くような形で観る側を惹き込むやり方は上手い。恐怖演出は正直鶴田法男や中田秀夫と変わらないんだけど、長い髪で恐怖を盛り上げ、期待のショッカー演出で締める見せ方は充分怖い。
ただ、ラストは恋愛ドラマの行く末といった形で終わらせてるけど、個人的には救いようのない方が好み。

【首吊り気球】 監督/小田一生、脚本/小田一生/まさきひろ
人気コミック「首吊り気球」がもとで謎の怪現象が始まる。人の顔をした気球がその本人の首を吊り、空へ引っ張っていくというのだ。第一の犠牲者はアイドルタレントの藤野輝美だった…。

これはくっだらね〜〜(褒め言葉)。
一転して笑いを取る方向で作り上げた本作は、巨大な人間の顔が気球となって人を襲う様を、やかましい音楽と下手な役者達と低予算らしい安いVFXで乗り切ってしまう。前2作が落ち着いた映像で見せられていた分、この絵ヅラの破壊力は凄まじい。ああ、これが伊藤潤ニだったんだ!と思い直させてくれる。監督はVFXコーディネーターとしての名を見掛けるのだが、【首吊り気球】という一番難しそうな題材を、奇をてらわずそのまんまに映像化した度量は賞賛に値する。もうこれは前半すっ飛ばして、気球が攻めて来る所から始めるべきだね。
初音絵莉子が「友情出演」になっているが、ショットガンぶっ放して暴れる根津甚八こそ頼まれて嫌々出たように見えるのだが。どういう経緯で出演したのだろうか。
  
内容 ホラー漫画家伊藤潤二作品の短編を映像化。学園ホラー。
監督 清水崇、三宅隆太、小田一生
脚本 斉藤勝正、三宅隆太、小田一生、まさきひろ
主演 橘実里、馬渕英里何、初音映莉子
発売 2000年6月9日 80分 発売元大映株式会社


TOKYO G.P.

評価
総合 役者 演出 その他備考
ハード・コア&ヒップホップのプロモ映画

【死んでもいい】【ヌードの夜】【夜がまた来る】【GONIN】と立て続けに良作を放ち、劇画作家としての地位を築きあげた石井隆監督。しかし【黒の天使】シリーズで葉月里緒菜、天海祐希に足を引っ張られ、そして井上晴美主演の前作【フリーズ・ミー】で監督、脚本家としての株を大きく下げる。商品価値としての信用を失った石井監督にやっと舞い込んできた仕事はヒップ・ホップ系ミュージシャンのプロモ映画の仕事。こんなの俺のカラーじゃないとぼやきながらも渋々脚本と監督を引き受け、いつもとは正反対のカメラワークで挑む事でやっつけ仕事っぷりをアピールしましたとさ。
・・・そうとしか思えないんだが。

HIRO、ZEEBRAといったヒップホップ系のプロモを石井隆監督が撮る。塚本晋也や石井聰亙ならまだしもと思う通り、演出に切れも冴えも全く見られない。鶴見辰吾といつものエンド・ロールで辛うじて石井作品だと認識できる程。多分、ほとんどのカットに製作側と出演者が口を出したんだろう。
石井作品はどちらかというと歌謡曲、場末の酒場といった感じ、元々の路線が違う。こういう映画もやってやれない事はないだろうが、出演者がほぼ全員全くの素人、友人の輪で集まってきた輩を出演させただけなので、勿論演技もへったくれもない。そんな撮影に本気を出す気もなかったようで。
たかが50分のプロモ映画。中篇は本気を出そうと思えば濃厚な作品にもなれるが、2度と観る気も起きないような薄っぺらい作品になるのが殆ど。出演している輩のファンだという人以外、全くススメられない。

パッケージでHIROがしているSGは[ジュリエット](SG置場参照)なのだが、これが使われてるんだと思って観たのに、劇中では全く使用されていなかった。詐欺だ・・。
  
内容 太陽が沈んで新宿からビッグ・タウンへの地獄のロードレースが幕を開けた。次々と襲いかかる敵を倒し、夜明け前までに目的地へたどり着いた者だけが勝者となる過酷なゲーム。参加するのは六本木をホームタウンとする選ばれた男たち。復讐、裏切り、策略が渦巻くストリートを駆け抜け、最後に生き残るのは果たして誰なのか。
監督 石井隆【天使のはらわた】【月下の蘭】
脚本 石井隆
主演 HIRO、ZEEBRA、HARU
公開 2001年8月18日 52分 配給(株)ケイエスエス


クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲

評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★★★
★★★★★
★★★★★
85年の科学万博は行きました

ヤバイ、泣いてしまった。それも大粒の涙をこぼしてしまった。自分の年代じゃあそれほど共感できないはずのこのストーリーに涙してしまった。という事は、完全に受け入れられる30代、40代の方々は号泣だな。内容については、詳しく触る映画ではない。とにかく観てくれ。ストーリー、展開、アニメーションのレベル、音楽に至るまで、公開時期と合わせて文句のない傑作。2001年のベスト映画といえるかもしれない。
普段【クレヨンしんちゃん】なんて観ないという人も是非観て欲しい。私も今までTVはともかく劇場版を観た事はなかった。通常あまり観る機会のない人が多い分、人に勧めたくなるような良作です。

少し前、消費税はなくて商品は全て定価、自販機のジュースは100円だった。そんなもん誰でも知ってるだろうが、今は知らない子供も出てきているはず。
今の子供はファミコン(高橋名人の16連射!)やガチャガチャ(キン消し)を知ってるだろうか。ギャバンやサンバルカンなんてヒーローは・・・知らないだろうなあ。音楽はレベッカとかバービーボーイズが好きだったけど、やっぱり今の子供は知らないんだろうなあ。そんな事を上の世代になればなる程思い続けているんだろうなあ。そして自分が少年少女だった時に見たもの、聴いたもの、遊んだもの、アノ頃が一番良かったと思っているんだろう。
この映画の要になるのは60年代。その時代を生きた人にとっては、21世紀ってきっと夢のような世界だった。【2001年宇宙の旅】は初公開が68年、2001年になりましたが宇宙の旅なんてしてません。車も空を飛んでいません。いまだに高速道路を作ってます。ちなみにノストラダムスは大嘘つきでした。
夢も希望もない今の世の中で、大人でいる事に疲れた大人達が、子供だったあの時代にふと戻りたくなる。この映画はそんな大人達の気持ちを描いた映画です。
ただ、こんな世の中にした輩がその世代の中にもいる事は紛れもない事実ですが。

この映画の主役は出てくる大人達であり、ターゲットは映画を観に来た子供達ではなく、付き添いで来た大人達に絞っている。それも完全に。勿論しんのすけも活躍するし、最終的に主役になるのは子供である「しんのすけ」でなければならない。でも子供達にこの映画のテーマなんて簡単にわかるはずもない。子供なんてキャラクタが動いてればストーリーなんてどうでも良いんだ。作り手は21世紀になった今、とにかく適当な題材に自分達(大人)が思っている事を、あます事なく積め込もうとした(だから、作り手たちは皆素晴らしい働きをしている)。これは大人の為の映画、未来を作ろうとする子供のために力を貸していこうという映画なのだ。

そしてラストは、大人達の為に拓郎の「今日までそして明日から」で締めくくられる。
わたしは今日まで生きてみました ときには誰かの力を借りて 
ときには誰かにしがみついて わたしは今日まで生きてみました 
そして今 わたしは思っています 明日からもこうして生きていくだろうと

スタッフロールの方は小林幸子が担当しているが、【千と千尋〜】の木村弓のようなレベルに達していないことを考えると、最後まで拓郎で締めた方が良かった。

【クレヨンしんちゃん】でなきゃいけない必然性はあまりないんだけどね。【うる星やつら】で言う所の【ビューティフル・ドリーマー】(知ってるよね?)みたいな位置付け(他のクレしん作品を知らないけど)。過去の映画のオマージュのようなカーチェイスや、未来を変えるというテーマの発言を幼稚園児にさせているけど、そういうのってせめて小学生だよなあ。
  
内容 春日部では“20世紀博”が開催されていた。大人たちは、昔の映画やテレビ番組に懐かしさを覚え、すっかり虜に。そのうち大人達は自分達が遊ぶのに夢中になり、子供達のことを構わないようになっていく。なんとこの“20世紀博”には、“オトナ帝国”化計画という恐るべき野望が隠されていたのだ!
監督 原恵一 【エスパー魔美】【クレヨンしんちゃん】
脚本 原恵一
声優 矢島晶子、藤原啓治、ならはしみき
公開 2001年4月21日 89分 配給東宝


案山子 KAKASHI

評価
総合 役者 演出 その他備考
★☆
★☆
★☆
和製ジョン・カーペンターにすらなってない

伊藤潤二原作の漫画を【リング0】の鶴田法男監督が映像化。
相変らず作り手には人気の伊藤潤二ものを今度はホラー映画の立役者・鶴田法男にやらしてみたというのがこの【案山子】。香港との合作になっていますが、アジアでもヒットした【リング】ブームの影響で、最初からアジア公開を視野に入れた製作なんだそうで。伊藤潤二&合作というのに惹かれてこの企画を引き受けた鶴田法男ですが、全て悪い方向に行ってます。要は【死国】と同じネタなんですが、それよりもつまらない。

トンネルを境界とした山奥の閉鎖的な村にやってきたヒロインを迎えたのは陰気で不気味な村人達。彼らが隠している秘密とは?っていう、過去どれほど似たような話が作られてきたのか分からないぐらい使いまわされた話。ここから映画を盛り上げるには相応の展開を期待するわけですが、全く逸脱した展開も描写もなく、面白味のない事この上ない。脚本を見てみると、村上修・玉城悟・鶴田法男・三宅隆太とホラー系が4人も手がけてるんですが、あれか?人が多い分意見が割れて、結局無難な形でしかまとめられなかったって事か?こいつら全員最悪だ

どう突つけばよいか。とりあえず要になるのは、終盤に起こる泉という少女の復活。ヒロインのかおるを憎んで死んだらしい。泉はかおるの兄の剛が好きだったが、愛するオニイチャンを取られたくなかったかおるに阻まれた。それで死んだのか?回想シーンすらないのでこの辺の細かい恋愛事情はよく分からないが、泉の死と復活は村に不吉な事が起こる前兆だ!とかヌカす説明好きのオッサン(河原崎健三)の言う通り、かおるの周りでおかしな事が起きる。案山子に襲われたり。でも所詮案山子。

この村の秘密は、「死んでしまった人間を案山子を依代にして生き返らせる」事。それは村人の切実な願いを表した風習であり、恐怖とは少し違う。そこに、復活した案山子が人を襲い出すという展開を新たに盛り込む。それなら最終的にはゾンビのような虐殺系の展開に持ち込むのが順当だが、ドラマ性重視の監督、大勢の案山子達が人を襲いにやってくるシーンでクライマックスを作らず、復活した泉、かおる、兄貴の恋愛事情だけで映画を締めようとする。しかし泉の死、剛への想い、かおるの近親相姦的な想いといった感情の面が、やっぱり回想シーンすらなく、薄っぺらいので全然響いてこない。好きとか憎むといった相手への感情の説明をもっと増やさないと。
【死国】の場合は、愛する人への想いをかなり描いた上で、生き返った彼女がなぜか怪力だった為、「あ、あんなのに抱きつかれたら死んじまうっ」って事で、何とも物悲しいシナリオが出来上がっていた(どこの漫画だ)。
この映画は結局、取って付けたような恐怖演出で無理に盛り上げた割に、全然生きてこない恋愛ネタで終わる、夏場によくやる短編ドラマ程度の出来になっている。
しかも泉は、ヒロインを憎んでいるという設定も生かす事なく、出てきたと思ったらサッサと退場する。彼女の憎しみの影響は他の案山子にも及んでるけど、その辺りはうやむやなままに幕を引き、案山子がゾンビのように村中を練り歩くショットは見られない。その代わり、やっぱり取って付けたような展開、足し算が引き算になったような形で映画が唐突に終わる。恐怖演出、恋愛描写、共に半端で全く惹きつけられない。
いっそ赤い服着てる泉を筆頭に、案山子達が一斉に踊り出せば・・。

役者もアイドルと素人ばかり。ダメ女ヒロイン役の野波真帆はどうも演技が空回りしてるし、剛役の松岡俊介はボ〜っとしてるだけ。近親相姦の気があるヒロインはもっと行動に偏屈さがあった方が面白いし、兄のキャラクタはいかにも美形といった精悍さがあるべき。ヒロインには三輪ひとみ、兄役には鈴木一真といくべきだね。泉役に柴崎コウが出てるけど、出番が少なすぎて印象に残らない。その他大勢の村人はもっとマシな素人使えって感じで、怖がらせるどころか笑わせてくれる。ある意味レベルが一定なので突付きようがない。強いて言えば河原崎健三が、キャラクタ作りすぎてて逆に出る杭状態。
後、合作って事で向こうの役者を使わなければならなかったらしく、香港からの留学生役でグレース・イップが出ているのだが、山奥の村になぜかいる彼女の存在意義がどこにあったのか分かる人がいたら教えてください。

香港スタッフとの兼ね合い、多すぎる脚本家、ギャラの少ないキャストといったマイナスの要素が重なって、監督はありきたりなストーリーを水準以下でしか作れなかったようです。しかしこれが、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001・コンペディション部門のファンタランド国王賞を受賞してます。なんだかよく分からん賞ですが、日本と香港の合作って所だけで獲れるような賞なんでしょう。
  
内容 連絡の途絶えた兄の部屋で見つけた一通の謎めいた手紙。兄を探すために向かった村でかおるが見たものは、不気味に林立する案山子の姿だった。そしてその村では、1年に一度、案山子に死んだ人間の魂を宿らせて生き返らせるという風習が残っていた。
監督 鶴田法男【亡霊学級 】【リング0〜バースデイ〜】
脚本 村上修、玉城悟、鶴田法男、三宅隆太
主演 野波麻帆、柴咲コウ、グレース・イップ
公開 2001年6月15日 86分 日本=香港合作 配給マイピック


完全なる飼育 愛の40日

評価
総合 役者 演出 その他備考
★★★☆
★★☆
★★★☆
前作の主人公竹中直人が特別出演。でもいらない・・

UFOに自分を攫って行って欲しいと願う、ちょっと変わった17歳の少女を攫ったのは、UFOではなく冴えない中年男だった。
実際の事件を元にした原作「女子高校生誘拐飼育事件」の再映画化。既に和田勉監督で映画化されています。前作は見た目が野獣な竹中直人と、昔の日活ロマンポルノによくある「お前女子高生ちゃうやろ!」って突っ込みいれたくなる小島聖の人間凶器2人組でしたが、今回はいかにも冴えない中年男の緋田康人と撮影時18歳の深海理絵。
緋田康人は「冴えない中年」であるだけでなく、「犯罪に走りそうな」面も漂わせていてはまり役。そして優しい面もちゃんと持ち合わせてる。終盤で晴れやかな笑顔を浮かべた時なんか、監禁されたヒロインが逃げなかったのも頷けた。女子高生を飼育しようとする程には追い詰められてなかったようには見えるけど、変態性と優しさが上手く同居してる。
そして深海理絵18歳。可愛いしスタイルも良い、というか巨乳。オーディションで選ばれた新人だそうですが、こんな役をわざわざ・・と思えるような逸材。映画の半分近くを半裸で過ごし、劇中色々やってくれます。ああ、涙が・・。
この映画を盛り上げるのに必要な、プロポーションと顔立ち、そして18歳という年齢。映画化にあたっては理想的なヒロイン役がキャストできていると思います。ただはっきり言って、演技はあまり上手くない。そりゃあまだ18だし、こんな事してくれる娘に演技まで要求したら完璧超人になってしまう。でもこの映画で一番重要な描写、監禁された女子高生が誘拐犯に惹かれていくという、まるで嘘みたいなストーリーラインに真実味を持たせるには、ヒロインの演技が重要になるんだよなあ。
それは若さ故という部分もあって、映画にリアリティを醸し出す為の必須条件が、映画というフィクションの中では生きてこない事もあるというか。

それをカバーするかのように、UFOを追いかけてるようなちょっと変わり者の娘という設定をヒロインに与えて、監禁されている状況に慣れ、逃げられる時に逃げなくなる、という所でもリアリティを保っている。演出は結構しっかりしていて、「飼育」の状態をきちんと描きながら、2人が心を通わせて行く展開は細かい小技・イベントを幾つも用意して、段々と相手に心を許していく様を丁寧に描いている。全体的に描写は淡白で、監禁生活も淡々としているし、ヒロインが男への想いを強くしていく流れもそれほど強い感情の揺らぎはない。悪く言えば、感情を前面に出した作品の割に淡白なので、あまり伝わってこない。でも淡々とした描写が悪いわけではなく、異常な状態らしい雰囲気が漂っていて良いと思う。
ただ絡みの描写、特に初めて男に身体を許すシーンと追い詰められた2人の最後の絡みのシーン、一番盛り上がるべき性描写は、感情が形に表れた描写として重要なシーンだと思うのだが、これも監督は短く、監禁生活の中の1シーンといった感じで割と何気なく演出してしまってる。勿論、女子高生のヒロインにあまり凄い絡みをさせても嘘っぽくなる。ここであえて年齢が上の女優を使う事で、逆にその嘘で映画が生きてくる場合があるのだが、今回は正真正銘の18歳。絡みを淡白に抑えたのは上手いと思うけど、抑えすぎて2人の心情が見えてこなくなっている。描写は抑えたまま、この2つのシーンを充実させる、そこは監督の腕でしょう。

こういう映画って、もっと長くていいと思うんだけどね。2人の時間を丁寧に描いてるんだけど、短い分ちょっと弱いというか。その分エピソードを増やして。不謹慎ですが実際の事件は約半年、この映画は40日、心を通わすにはそれなりの期間が必要です。
  
内容 実在の事件を元にした松田美智子(故・松田優作の元妻)原作「女子高校生誘拐飼育事件」(幻冬舎刊)を映画化し話題となった『完全なる飼育』の第2弾。彼女はなぜ逃げ出さなかったのか・・。
監督 西山洋市 【桶屋 】[黒澤清【蜘蛛の瞳】の脚本家!]
脚本 島田元
主演 緋田康人、深海理絵、竹中直人
公開 2001年6月23日 89分 配給キネマ旬報社