
えー、今の世の中、人の弱みにつけこむっていう、悪どい商売をしてる奴がおります。返せるあてのない金を貸すとか、何も知らない奴にクズのような土地や株を売り付ける、とかいろいろありますが、その中に、人の悩みを聞いて金を取る、ていうのがあります。いろいろありますわな。壷うんたらとか、具体的にいろいろ列挙するとちょっとヤバ目なんでやりませんが、まあカウンセリングなんてのもその一つですな。解決できるような「相談」っていうのは、結局のところ適切な情報が足りなくて、その情報を求めてのことでしょう。例えば、このホームページがアップロード出来ないんだがどうしたらいいのか、といった、具体的な質問。これならば、そのスジの人に聞けばなんとかなるでしょう。でも、今不倫してるんだけどどうしたらいいのか、なんて質問された日にゃ、勝手にしろとしか答えられませんて、本当。まあそれでも、うんうんと聞いてあげて、何か毒にも薬にもならないような事を言って、納得した気にさせて帰ってもらうと、結構喜ばれるんですな、これが。え? あたし? あたしゃしがない落語家でさあ。関係ありませんて。まあ、そういう話があるっていうことでございます。これは、どちらかというと、解決できる方の相談のようで…
Pt(患者):ご隠居! てえへんだてえへんだ!
Dr(医者):だれがご隠居だよ。それはお前さん、落語の聞きすぎってもんだよ。今日はいったい何だってんだい。
Pt:何だってじゃねえってんだよ! あんた、医者だってのに、この大変さが解らねえってのかい? それでも医者かい?
Dr:また無茶な事を言う人だねえ。最初から、何があったのか、落ち着いてちゃんと話してごらんなさい。
Pt:これが落ち着いていられるかってんだ。最初からだあ? しょうがねえ、話してやるか。昔、世界は渾沌だった。そのあと、天と地に別れ…
Dr:最初から過ぎるってんだよ。あたしゃ別に創世記聞きたいわけじゃないんだから。何か事件があったんだろ。それを話してごらんって言ってるんだよ。
Pt:そうですかい。いや、実はね、あっしの隣に住んでる奴で、独り者なんだが、最近、同棲でもしてるのか、やたら話し声がする。
Dr:いいねえ、若い人は。それのどこが大変なんだい。
Pt:話しはこれからでさあ。まあ、あっしもそう思って放っておいたんだ。でも、今日、回覧を届けに行ったら、誰もいない空間を相手に喋っているじゃねえか! これがびっくりしなくて、何がびっくりするってんだ!
Dr:ああ、なるほどね。確かに、それは分裂病の疑いがあるな。
Pt:でしょう! だから、ここは先生の出番ですぜ。
Dr:あたし? あたしが何をするんだい?
Pt:トボけちゃいけませんぜ、先生。病人が居るんですぜ。先生の出番でしょう。
Dr:往診しろってことかい。で、その人は、何か人に危害を加えるとか、食事もしないでずっと喋っていて、生命に支障がある、とかいうことはあるのかい?
Pt:いや、そんな事はねえな。食事も、居もしない彼女の分まで作って食べてるし、もともと根っから温厚な奴で、血を見たら卒倒するのも相変らずだし、毎日働きにも出てるし、夜はあっしより早く寝ちまう。
Dr:じゃあ大丈夫じゃないか。まあその人には、何か困ったことがあったら、あたしの所に来なさい、とでも言っておいてくれ。
Pt:そんなこといっても先生、気持ち悪いじゃないですか。とっとと強制入院でもさせて下さいよ。
Dr:そんな事言ってたら、おまえさんの顔だって気持ち悪いじゃないか。入院するかい?
Pt:先生、そんな人が気にしてることを…そんな事はどうでもいいや。だって先生、さっき、分裂病って言ったじゃないですか。
Dr:疑いがある、と言っただけだ。そんな、見たこともない人の診断はできないよ。それに、その人自身や、周りの人が何か困ってる、というのでなければ、治療の対象にはならないんだ。
Pt:ですから、気持悪くて困る。
Dr:だから、そういう主観的な「困る」じゃだめなんだよ。まあ、近所の人皆が気持ち悪がってて、本人に家から出ていってもらう、という話にまでなったら別だが…まあ難しいところなんだ。そんな動きはあるかい。
Pt:いえ、この事はあっししか知らないと思います。
Dr:お前さんとその人は仲が良いのかい。
Pt:まあ、ずっと隣同志だったスからね。
Dr:それだったら、さっきも言ったけど、あたしの所に一度来るように言ってみな。みんな気持ち悪がってて、ここに居られなくなるかもしれないぞって説明してな。職場でも同じこと言われてるかもしれないしな。それで来ないなら、それでいい。
Pt:それでいいんですかい。よく新聞で、精神病の人が人を刺した、とかあるけど、そういうことにはならないんですかい。
Dr:それはいわゆる関係妄想ってやつだな。これこれこうなったのは、誰々のせいだって思い込むやつ。でも、人を傷つけるってのは、本当に稀なんだよ。だいたい、お前さんだって、殺したいほど憎たらしい奴って、いないかい?
Pt:ああ、いますいます。○○医○の病○の○○とか、××科の××の××とか。
Dr:これこれ、そういう実名を出してはいかん。一字でも漢字があるとバレる恐れがあるから、ほとんどど伏せ字になってしまったではないか。で、そいつらを、本当に殺そうとしたことはあるかい?
Pt:うーん、本当に怒ったら衝動的にやるかも…
Dr:じゃあお前さんのほうが危ないってことだよ。あとは理性がどれだけ強いかってことだね。分裂病では、理性の低下はない、とされている…何に書いてあったかはちょっと忘れたけど、実践で見た限りではそうだと思う。だから、そういう事件というのは、結局は病気のせいではなく、その人自身の問題だと思うぞ。
Pt:今日はやけにマジですね。学会が近いからかですかい。じゃあ、あの、法律で、精神障害者だと無罪って奴は…
Dr:あれもいいかげんなんだ。分裂病でも有罪になる奴は有罪になる。だいたい、医療刑務所ってのがあって、そこは半分は精神科の病棟だってのはどういうことなんだ。見沢知廉が言ってたぞ。
Pt:宮崎とか、酒鬼薔薇は…
Dr:酒鬼薔薇は暗黒療法でちょっと説明してある。宮崎の方は、偉い人たちの論争って感じだな。まあたとえ無罪になって世間に出てきても、あれだけ有名になったら、もう悪さは出来ないだろう。
Pt:宮崎で思い出しましたけど、多重人格ってやつは分裂病と何か関係あるんですかい。
Dr:それはだな…おっと、時間となってしまった。これはまた今度にしよう。で、このコーナーでは悩めるメリーサンの楽ありゃ苦もあるさ、何だかわからなくなったな、からの人生相談を募集している。マクラではああ言ったけど、別に解決しようのない問題でも結構だ。ただし下の注意事項を良く読む事。
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