Interview Olivier Nicklaus. Les Inrockuptibles N° 143, Mars 1998
 

オリビエ・ニクラウス:(以下ON) 映画を見る時の好みは?

ヴィルジニー:監督で見ますね。普段より良くないって聞いたら、急いで見ないけど、最後には見ます。次に見ることになっているのは「グッドウ
ィル・ハンティング」。14才の時に映画館で「ドラッグストア・カウボーイ」を見て、ガス・ヴァン・サントを知ったの。もちろん、全部理解はできなか
ったけど「マイ・プライベート・アイダホ」を見た時にもあった魔法のようなものを感じたわ。二人がヒッチハイクをする長いショットがあって、
本当にドキッとして。ガス・ヴァン・サントは男の撮りかたを知っている監督で、それは珍しいと思う。ユーモアも好き。俳優の使いかたが素晴らしい。「誘う女」は本当におかしくて、2人の若者が凄く良かった、ヨアヒム・フィーニックスと凄い太った女の子ね。オーバアクトになってないし、ちょうどいい。「カウガールス・ブルース」は失敗作だって言われたけど、監督が好きなら、その人の世界、スタイルが見れるのならあまり面白くない作品でも気にならないの。

ON: 名作で印象に残っているのは?

ヴィルジニー:「シェルブールの雨傘」は二回強く印象を受けたわ。最初に見たのは5才半の時で、カトリーヌ・ドヌーブの美しさやこの映画の鮮
明な色使い、音楽に興味があったけど、3年前に見直した時には、話の残酷さや暗さが分って、映画館から出た時にはしゃべれなかったくら
い。 そんなふうになることはあまりないから… ベルイマンの「鏡の中にある如く」も同じようにショックだった。この父と娘の関係をよく考えるの
本当に興味深いテーマね。同時に、とても恐い映画。 私が理想とするリストにはゴダールの「気狂いピエロ」も入れておきたい。映画のことを
考える時、「どうしたらいいの」と言いながら、水を蹴飛ばしているアンナ・カリーナの姿が浮かんで来るのよ。

ON: 自分で見る映画はどうやって決めますか?

ヴィルジニー: 友人・知人に推薦してもらって。最近では、私はフンって感じで見なかった「タイタニック」を見ろって、オリヴィエ・アサヤスにしつ
こく言われて、見ることにしたの。見て良かったわ: 素晴らしい映画よ。みんなレオナルドの話ばかりするけど、ケイト・ウィンスレットも素敵。今
ではあまり見られない女性美、丸くて、肉付きがいい体を見せてくれたわ。

ON: あなたは大の読書家と言うことですね。

ヴィルジニー:読書は大好きです、間違いなく映画に行くよりもね。 早い時期、4歳半の時、母に読むことを教えてもらったの。子供の頃、私は
さほど遊び好きじゃなくて、日曜日の朝、両親が寝坊をしてる時は、よく退屈してたの。でも読書を知ってからは、それはなくなったわ。本を開く
と、時間の感覚を完全に忘れる。当時は「大きく」なるってことに頭が一杯だった。つまり読書は、自分だけの時間、「大きく」なれる瞬間だった
の。自分の想像力だけで、読んでいるものが面白いのか悲しいのか決められたし、つまり、乱読だったのね、雑誌、ローズ文庫、ラ・ベール、
推理小説から何でも読んでた。読んでないと、自分の時間がないって感じで。 好きな作家は19世紀と20世紀のアングロ・サクソン文学の作
家:ジェーン・オースティン、ヘンリー・ジェイムズ、エディス・ウォートン、ヴァージニア・ウルフ、もっと古いところだとウォルター・スコット、ジーン・
リース、オスカー・ワイルド。

好きな作品は、エディス・ウォートンの「美しい結婚」(注:これはフランス語題名の直訳で、英語の原題あるいは日本語で翻訳があったとして
も、全く違う題名がついている可能性あり:英語原題あるいは日本語翻訳題名を知っている方ご教示願いたい)と彼女の自叙伝「私が来た道」
(前注参照)も素晴らしい。それから日本の作家で谷崎もすごく面白い。日本人の多くが思っているように私も彼は「衛生的」だと思うし文体が
とても簡潔なの。「痴人の愛」はロリータの始まりみたいな感じ。 ヘンリー・ジェイムズの「悲劇のミューズ」(注参照)も大好き、売れっ子の女優
と売れない画家のカップルの競争心。巨大なエゴ、ナルシズムや嫉妬は最高のテーマね。カップルの話でもう一つ好きなのは、フィツジェラル
ドの "The Beautiful and Damned" 美しさ、愛と貪欲、そして"金銭欲" という三つのテーマの絡みかたにとても感動したわ。 ドストエフスキー
もよく思い出す: 「罪と罰」か「悪霊」ね。実際:ニコラス・スタブローギンには完全に自分を重ねることが出来るの。映画作家の世界にはめった
に自分を投影できないけど、小説の主人公にはとても簡単に共感できるの。

ON:音楽は?

ヴィルジニー:音楽の趣味は幅広いです。 昨日はポーグ、パッシ、今日はストーミイ・バグジー、ドク・ギネコ、それに 2バル 2ネグ、アサシン、
IAM、ロッカ。他のも聞きますよ。ボブ・ディランは私のアイドルの一人、レオナード・コーエンもそう。キャット・スティーブンスやル・ヴェルヴェット、アンダーグラウンド、ルー・リード。今は聞いているのはザ・ヴァーブ、でもビジュアル系よね。リチャード・アシュクロフトって本当に美形だもの。★



Olivier Assayas a propos de Virginie. オリヴィエ・アサヤス監督、ヴィルジニーを語る

Les Inrockuptibles N°148, Avril 1998
 

「冷たい水」を撮るのに、すごい数の若い子達に会ったんだ。当時の僕の目から見ても、ヴィルジニーは傑出していた。僕が探していたのは、一種の反抗心って言うか、激しさ、を持った、僕が会った多くのティーンが持っているものを越えた人物だったんだ。でも有り得ない、誤った
16才を空想してしまったんじゃないか、描くのを間違えたんじゃないかなと思い始めていた。当時会った子はみんな感受性はあったけど、まだ
子供って感じだった。

16才で、ヴィルジニーには、この人物とすごく共鳴する成熟さがあった。こっちが怖じ気づく位だったね。それに彼女は美人過ぎて、僕が意図
しない方向へ、役を引っ張ってしまうのではないかと心配だった。それは凄く教養がある優等生みたいに、考え方とか、独立心とかで、特別な人間だって言うことの間違いない証拠だよ。僕には彼女が骨の髄まで女優なのがすぐに分ったんだ。でも彼女がクリスティーヌかどうかは分らなかった。子役からスタートした人はこの業界の悪い癖がついてしまって、ずる賢くなっている傾向があるしね。ヴィルジニーの場合は、全く正反対でね。仕事ズレしてないし、仕事を糧に成長しているし、大人になってる。彼女はきちんと人生勉強して、知的になり、他人が理解出来る
ようになっているんだ。これはめったにないことだよ。

クリスティーヌの役に関しては、すぐに心配いらなくなった。表面的には、とてもてきぱきしていて、理性的な人物だと言う印象をあたえている
けど、その裏には反抗的で、激しくてラジカルな面があるんだ。僕があやつり糸を引っ張っただけで、人物がすぐに出てきた。次回作(8月の終わり、9月の始め)で、彼女は初めて大人の女性の役をやるんだ、思春期の魅力じゃなく、彼女の大人としての魅力を撮るつもりさ.



Benoit Jacquot a propos de Virginie. ブノワ・ジャコ監督、ヴィルジニーを語る
Les Inrockuptibles N°148, Avril 1998

"La vie de Marianne"を撮るのに、三ヶ月間の撮影に耐えられて、しかもどのショットにも映る18才の子を探していた。「冷たい水」を撮り終え
たオリヴィエ・アサヤスがずいぶんとヴィルジニーの話をしてくれた。私も「ミマ」を思い出したね。あの映画で、彼女は頭角を表していたし。必要な強固さが彼女にはあった。すごくがんばったね。仕事をする時には、言うことはきちんと言うしね。でもメチャクチャを言う訳ではないんだ。彼女にはきちんと節度があって、それをきちんと守っているしね。

彼女は頑固だとも思わないね。よくしゃべるし、楽しくやるし、常に楽しもうとしてるね。集中力に欠けるのではないかって思うこともあるけど、
実際は凄い集中力の持ち主だよ。女優をやるには、図太い神経がいるんだ。彼女は精神的にも強い人で、全ての面で、女優が女優であり、
女優で有り続けるための方程式を体現している。世俗的で、変わっているしね。これは真の女優に必要なパラドックスなのさ。誰にも親しみが持てて、しかも例外的でもある。同年代の女優の誰よりも彼女はこの2つの性質をうまく合わせ持っている。実生活でもそうだね。やりたい放題したいと同時にブルジョワ的な生活にも憧れている。個人的には、あまり狂気じみた感じにはなって欲しくないけど、普通過ぎるのもいやだね。彼女にとって一番の危険は、通俗化してしまうことだろうね。



Olivier Ducastel et Jacques Martineau a propos de Virginie.
オリヴィエ・デュカステルとジャック・マルチノー監督、ヴィルジニーを語る

Les Inrockuptibles N°148, Avril 1998

「ジャンヌと素敵な男の子」は僕たち二人にとって、最初の長編作品だけど、ヴィルジニーには10本目なんだ。しかも僕らより、10才も年下なん
だけれど、撮影中はよく元気付けてくれたよ。例えば人物像に関しては、全部引き受けてくれたね。一語一語指示待ちなんかしないんだ、
撮影は本当に混乱しながらだったけど、彼女はシーンについての詳細ではなく、役柄の全体像を考えて、質問してたね。シーンが少しでも浮いてしまったり、意図がはっきりしない時にはそれを感じ取ってた。彼女には驚くべき厳格さがあるんだ。同じシーンの撮影でも、全ての可能性を考えるなんてことはしない、彼女にとっては、場面ごとに真実があって、それを探している。しかもいつも正しいんだよ。シーン毎に加筆して、あちこちでディテールを変えながら、息継ぎの箇所をずらす細工師の仕事をしてもらった感じさ。繰り返しリハーサルをするのは彼女、好きじゃないね。OKって言えば、それ以上はやらないんだ。彼女の質問はいつも演出に関するものだったね、自分が出るシーンだけじゃないよ。女優としての幅の大きさはそうしたところに出るんだね。★

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