インタビュー: ジャック・モリス
Telerama N°2534, Aout 1998

□ 狂気の世界

今は、ワールド・カップのことしか考えられないの。頭から離れないのよ(笑) フランス・チームは最高だと思うわ。何人かの選手にはクラクラ来ちゃう。私が好きなのはビクセンテ・リザラズよ。本当にミーハーだと思っているんでしょ?凄い緊張しているのよ。親友と、全試合見たんだから。 気が狂いそうだった、叫び声を上げてね、友達には狂ってるわねって言われたもの。でも私のサッカー好きは今に始まったことじゃないから。マルセイユ・チームが勝ったヨーロッパ・カップも憶えているわ、凄かったもの!ルールも殆ど分るわ、オフサイド以外は。これはいくら説明してもらってもダメだった。論理的じゃなんだもの。私は論理的思考だと思っているけど。

□ 地下鉄

外国に行くと、最初にすることは、地下鉄に乗ることなの。ニューヨーク、ベルリン、ロンドン、リヨンとリーユの地下鉄に乗ったわ。プラハのも凄かった。一面、白いタイル張りで、巨大なエスカレーターがあるの。 地下鉄は町の魂を発見できる最高の方法だと思う。人生が詰まっているって感じで、お金のある人もない人も、様々な人が乗っていて。何百って顔とすれ違って、彼ら一人一人の一日を想像するのよ、読んでる雑誌で、何してる人か推理したり、主婦や管理職だって分ったりね。地下鉄に乗り始めたのは9歳の時。オーベルヴィリウェに住んでいて、5区にある学校へ行っていたのね。全部で20駅あるの。 いつも地下鉄の生活が好きなの、ざわめきや往来、青白い光がね。

□ プール

ここも雰囲気の問題かな。 シャワーにめがねをかけた人たち、子供たちの歓声、反響。地下鉄と同じで共鳴する場所よね。ポントワーズ通りによく行くのよ。 古いけど素晴らしいプールがあってね。そこに泳ぎにいくの、時には5分間だけ泳いでくるのよ。

□ お店ごっこ

父が市場で行商の仕事をしてるの。子供の頃、一緒に行ったことがあって。日の出と共に起きるとワクワクしてくるの。きれいな野菜や果物の売り台よりも、仕事の雰囲気に魅了されてた。いろんな人を見ることが出来たし。父は何でも売ってた:包丁や家庭用の小物とか。口上でその製品を誉めていく訳、劇みたいな感じで、説得していく。私が女優になりたいって思ったのもそこから来ているのかも知れない。聴衆の前で、力強く話している男の人の娘であることが誇らしかった。まったく淀みなく、信じられないことまでペラペラって言って、−それがこの職業の原則の一つでもあるんだけど。私も少しはお小遣いを稼いだの。腰に小銭入れを巻いて、お釣を渡してね。お店ごっこみたいに。

□ 世界中から

オーベルヴィリエに長いこと住んでいて、幸せな少女時代を過ごしたと思う。 コゼットみたいな話もないしね。大きな家に住んでいたから、自分の友達と比べたら恵まれていたと思うな。頻繁じゃなかったけど、友達にも家に泊まりに来てもらったり。103停留所の前にあるバーガー・キングに皆、たむろしていて、タバコ吸ったり、おしゃべりしたりね。私のクラスの8割り方がモロッコやアリジェリア人だったから。私はマイノリティーだったの。パリに来たら、逆になったけど。黒人や北アフリカから来た人たちが本当はマイノリティーだったのが分ってショックだったわ。私は世界中から集まってきた人たちに囲まれていつも生活してきたから。私のルーツはバスク地方とアンダルシアだし、従兄弟は黒人にカビリー人だし、義理の母は中国人だもの。

□ ロックとファンク

プリンスにハマっていた時代があったの。"ラブセクシー"は最高のコンサートだった。バラのTシャツを来て、赤っぽい格好で行かないとダメなのよ。今では昔ほど好きじゃなくなってしまったけど、当時、プリンスは斬新だったもの。両性的で、悪魔的。ガールズ&ボーイズを歌ったら、一線を越えたって感じだったもの。デペシュ・モードとかア−ハーとかひどいグループに熱を上げてた学校の友人と自分を区別するのに、結構変わったところを聞いて喜んでいたのね。当時、親友がアメリカ人で、彼女の家へよく行ってたの。ルー・リードやヴェルベット・アンダーグラウンド、マリアンヌ・フェイスフルのCDがあったわ。それとは別でフランスのロックを聞いた時期もあった。 自分のスタイルがあって、ドック・マーティーンとガールズとか。マノ・ネグラの大ファンだったわ。彼らのコンサートは狂っていて、外の通りへ出てしまうの。会場にお金がなくてあるいはキップが買えなくて入れなかった人たちのために演奏するのね。ポリスやストーンズ、ボブ・マーレーも聞いたわ。もちろん、ゲンスブールもね。彼が死んだ時には泣いた。スキーへ行って、クラブにいたのね。14才の時、Sea, sex and sun を聞いている最中で、突然DJが言ったのね。"セルジュ・ゲンスブールが死んだって"そのニュースのせいで、クラブからすぐ人がいなくなったもの。今はラップもよく聞くわ、フランスのもアメリカのも。

□ 小さな泥棒

母に読むことを教わったのは4歳の時。それからは、貪るように読んでる。子供のころ、私にとって読書は独立や自由と同じ意味だったの。自分で読むものを選んだし、好き嫌いも決められたしね。お小遣いをもらうようになってからは、地下鉄の駅近くの同じ本屋さんでよく本を買った。自分の本が欲しかったから図書館へは行かなかったわ。珍しく行ったら、本は返さないもの!(笑)ローズ文庫、ウイウイやファントメットとか最初に読んでた。そして、「セギュールの伯爵夫人」があったわ−ロベール・オッセンが直々に全集をプレゼントしてくれたの!10才の時に、バルザックの「あら皮」を読んだの、何もわからなかったけど。でも読破したのよ。何か無意識に引かれるものがあったのね。 それは今でも私の中に残っている。父にウディ・アレンの映画に連れていってもらって、意味はよく分からないけど、魅せられたのと同じね。

□ ヘンリー・ジェイムズ、マルグリット・デュラス

ヘンリー・ジェイムズは、私の好きな作家のひとりよ。彼の作品で印象的なのは、時間を超えた夢想的なところ。風俗を凄い正確さで、洗練されてるけど残酷なスタイルで−決して都会的ではないけど、描写しているのよ。彼は19世紀終わりと20世紀初頭のイギリス文学を発見させてくれたことでも重要なの。エディト・ウォートン、ジェーン・オースティン、ヴァージニア・ウルフ、凄い現代性を持った作家たち、自分たちが生きた時代に深く関わった女性たち。もちろん、ディラスもそう。現在性のエクリチュール。「太平洋の防波堤」のような初期の作品はまだ小説の形式だけど、「Lol.V Stein の誘惑」から、お話はなくなって、一種の新しいカモフラージュした自叙伝って感じね。何がデュラスのパワーなのかを説明するのは難しいなあ。好きな理由は彼女が大嘘付きで、完全にファンタジーを作っているんじゃないかと思わせる人。 自分自身の伝説を、あんなふうに、一語一語、築いていくのに熱中できる人は凄いと思う。
 

□ アンナ・カリーナ、イザベル・ユペール

ゴダールの「小さな兵隊」に出ているアンナ・カリーナは、私にとって傑出した映画のイメージね。つい最近この映画を見たのね。ショックだったわ。この映画のカリーナは衝撃的だった。「気狂いピエロ」の彼女も好き。"どうしたらいいの?何をしたらいいの?"って言うところ。それにイザベル・ユペールも大好きよ。彼女の演技・存在感・ 不透明なところ。" L'Inondation(The Flood)" はあまり多くの人が見なかったけど、彼女は素晴らしかったわ。原作を気に入った彼女がミナエフ(監督)を探して、彼女がいたからこそ映画が出来たの。彼女のそういうところが好きね。女優であり、企画を実現させるために行動する女性でもある。ある世界から別の世界へ移っても、常に自分を見失わないのは素晴らしいと思う。ゴダールのような強烈な個性の持ち主と仕事しても、自分のアイデンティティをきちんと持っているもの。

□ エゴン・シーレ

"La Vie de Marianne"を撮影したチェコスロヴァキアの小さな村で、彼の絵を偶然見つけたの。撮影初日で、ちょっと自由時間があったのね。ブラブラ歩いてたら、偶然その家に来たの。石灰で塗られた白い家、シーレが実際に住んでいたことがあって、今では彼の絵を何枚か保管してるの。新発見って感じだった。彼の絵は暗くて、不安な気分になるって言う人が多いけど、私はとても生き生きしていて、詩的だと思う。彼の描いた女性が好きだな、赤毛で、死体みたいに白いけど、血色がいいの。

□ 動物園にて

ニューヨークの動物園って変なところなの。セントラル・パークの中にあって、カフェテリアがすぐ近くにあるのよ。北極の動物がいるの、白熊やペンギンやアシカとか… 台湾の首都のタイペイにも動物園があってオススメよ。岡の上にあって、町を見下ろしているの。エドワード・ヤンの映画(カップルズ)に出た時に、見つけたの。夜や、朝の4時から撮影したり、変な所での撮影だったの、空き地とか、橋の上とかね。昼間は町で、散歩しいてたの。この動物園には、よく行ったわ。 とてもシックな日本茶のサロンがあって。でも窓の外を見ると、動物たちが放し飼いになっているジャングルなのよ。みんな本当にズレてるって感じでね。タイペイで、(日本)茶を飲んで、サルが枝から枝へ移動してるのが見える。猿って、いつ見てもおかしくて。 それに動物園て、感じがいいでしょ、子供がたくさんいてね…

□ ジェラール・ランバン

彼にはいつも夢中だったの。ピエール・ジョリベの映画"En plein coeur"で共演したばかりなのよ。私の好きな俳優で、この世界であった人では、一番ストレートな人。おかしくて人間的で、人を煽るとこがなくて、寛大だの。ハンサムで、逞しいし、それと同時に人なっつこくて、感動的なの。ランヴァンには凄く親しみを憶えるのよ。多分父親の仕事が二人とも同じだからかなあ!★

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