エマニュエル・ベアール 「この映画の撮影では、小さなネズミでいることだけで私には十分だったわ。」
 

決心:どんな映画なのかも知らずに、シナリオも読まず、キャストのことも知らないでオゾン監督に出演を承諾してしまったの。最初にオファーされたのはあのメイドの役じゃなかったのね。(訳注:当初はアルダンの役をオファーされた。)

役柄:オゾン監督は、悪意なしにとても微妙なやり方で、私たち一人一人のイメージを膨らませて行ったの。その後であのブーツやコルセットを身に付けることになったとんでもない日があって。私はルイーズって役を理解しているとは言えないわ。彼女はどこからやって来たのかしらって自問しても答えが見つからないし。自分は快楽を与えるためにここにいるのって言うけれどね。でもそこから彼女は何を得るのかな?この人はドアの影で立ち聞きしていたり、じっと観察していたり、マダムの服を着たりするの。犬にも興味深い執着心があるし。台詞も少ないし、しゃべる時は犬を話題にするためなの。家事は一切しないのね。他の登場人物とは違って、彼女は観客とも親しくならないわ。私はあのシャンソンは一種のモノローグだったって思ったけれど。

8人の女優:会話の輪から自分はちょっと遠ざかっていたのね。それで集中することも出来たのでしょうけど、いつもそうとは限らないから。この映画の撮影では、小さなネズミでいることだけで私には十分だったわ。自分が演じたルイーズが私の中に注入されたみたいに、覗き込んでいたって感じで。皆一緒に演じる場面が多くて、演出の中で自分の居場所を見つける必要があったの。撮影中は、休みの時あるいは自分が演じる番の時のどっちが幸福なのかよく考えたわ。それに答えはしなかったけれど。

閉じ込められて:残酷さがエスカレートしていくけど、あの女性たちは家に閉じ込められていて、私たちもスタジオにいてちょっと同じ気分だったの。毎日同じセットで同じ衣装を着てね、快適だったけど、少し息が詰まったわ。男優さんがいなかったけど、現場には多くの男性スタッフがいて、彼らの視線を感じていたから。

オゾン監督:若い良家のご子息って感じだけど、名前を体言しているの。大胆だし、他人にもそれを要求するの。(訳注:Ozon とフランス語の単語 Oser =大胆なことをするの意味をかけている)自分がやりたいことを明確に言う人よ。でも現場は民主主義だったって言ってもいいと思うわ。

シャンソン:私には歌詞よりも体が大切だって思ったの。あれはルイーズがコルセットを外す瞬間だったから。あのシャンソンはある日曜日の夜10時、3回録音したのね。しかも撮影前のことだったの、シャンソンが役柄について示唆してくれるところはあったけど。声にルイーズの二重の深みを出さなければだめだって思ったわ、クリスタルで重厚な声なんだって。



LE NOUVEL OBSERVATEUR Semaine du jeudi 31 janvier 2002 - n-1943

エマニュエル・ベアール

「大笑いしていたもの!」

「全てはフランス映画祭があったアカプルコの海辺で始まったの。私は『感傷的な運命』のために、フランソワ・オゾンは『まぼろし』を出品していたの。女優は視線を感じると、それが分かるのよ。本能的に監督の視線が私に注がれているのが分かったの。ある夜、これもアカプルコでなんだけど、寝るために少しお酒を飲んで寝室へ帰ると、人が踊っているのが聞えたから、また下へ降りて行ったの、少しだけ飲んだつもりが完全に酔っていて、一種恍惚とした感じで私も踊り始めたの。オゾン監督もまだその場にいたのね。それから一ヵ月後、彼が私を訪ねて来たの。私は『海を見る』『ホームドラマ』『サマードレス』が好きね。当初はファニーが演じた情婦の役をオファーされたの。シナリオを読まないで承諾したわ。また一ヶ月経つと、情婦からメイドさんに変更したって、オゾン監督が言って来たのね。ずいぶん無作法ねって思ったわ。でもこの役は覗き好きで、立ち聞きもする、マゾでかなり曖昧なセクシャリティーの持ち主なんだって言って私を説得するの。で、女優には魅力的な事を色々言われたの。それでシナリオを読ませてもらって、(キャスト)全員OKしていたんだけど、私はイヤだって言っちゃったのよ・・・そこでオゾン監督は私の役を練り直して、私は出演をOKしたのね。彼女がブーツを履いているのは、『小間使い日記』のジャンヌ・モローを参考にしたの。オゾン監督は単刀直入なの。私はそれが好きなのね。自分が置かれた枠が狭いほど、自由が大きくなるから。私がワクワクしたのは、誰かの命令に従わなくてはならないってことなの。オゾン監督に髪をブロンドにしてくれって言われて。茶色の髪にしていると、監督にブロンドか赤毛にしてくれって言われるのよ。髪を長くして撮影に入ると、もっと切って欲しいっていつも言われるのね。あのシャンソン"Pile ou face"はある夜、三回録音したのね。アルバムを録音するのなら、もっと年を取って、美しいハスキー・ボイスになるためにもっとタバコを吸わなくちゃだめでしょうね・・・『8人の女たち』では、最初に考えてもらった踊りの振り付けが全然気に入らなかったのを覚えているわ。すごく大人しいんだもの。あのルイーズって役の動物的な部分にまったく一致していなかったから。身に付けていたコルセットを外したかったのね。子供の頃、ある小説を読んで、不満を爆発させて家具に体当たりする女性が出てくるんだけど、ルイーズも少しあんな感じなの。着ている服は白黒だけと、彼女は赤いのよ・・・彼女も家具に当たっていくの!あるシーンではカトリーヌ・ドヌーブのスカーフを掴んで、それでテーブルを磨いたりするの。ハッとしちゃうでしょ。ドヌーブのコートから何かはみ出ていて、それを力一杯引っ張るのよ、自分に頭を下げさせるようにね・・・ルイーズは、前の女主人の写真を持っていて、その写真に写っているのがロミー・シュナイダーなのね。当初オゾン監督は、自分の母親の写真を使うおうと思っていたの、とてもきれいな人よ。誰かが欠けていたのよ。この写真で8人から9人になったわけ。大笑いしていたもの。競争心なんてなかったわ。あの8人全員が有名女優の映画だったら、違っていたかも知れないけれど。イザベル・ユペールが凄く楽しそうに演技をするのにはとても驚いたわ。危険なんて考えは彼女にはないみたい。ルディヴィーヌ・サニエがあの若さであそこまで出来るのにも感心したわ。自分はドヌーブの仕事のやり方に奇妙にも似ているのに気付いたわ。ダニエル・ダリューが歌う卑猥な歌も私は大好きよ」



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