CINE LIVE 2002  対談:カトリーヌ・ドヌーブ × ルディヴィーヌ・サニエ
 

シネライブ:ルディヴィーヌは『焼け石に水』に出演したからフランソワ・オゾン監督の世界は既に知っていたわけですが、カト リーヌ、 彼の世界へ入り込むのは大変だったのではないですか?

ドヌーブ:キャストも大勢だったので、最初は少し面食らいましたね。フランソワは俳優たちと仕事をする前から物を凄く厳密に見る人ですから。

サニエ:彼は通常どんな仕事ぶりなのかって私に聞きに来られたのを覚えています。

ドヌーブ:ああ言った仕事の仕方には慣れていたかったのよ、ああ言う編成だと、慣れるのに少し時間がかかったわ。

サニエ:フランソワは自分がやりたい事に関して凄く細かい考え方をする人だから、女優としたら彼の意志に囲まれてしまう感じで、自分を忘れな  いといけないんです。私には面白くて、魅力があると思える権力を監督は持っているんですが、もっと自由に演技をして来た人には、それが面白く思えないかも知れませんけど。

-シナリオを読むと、各登場人物はそれを演じる女優さんたちに照らし合わせて書いてあると思いませんか?

サニエ:このシナリオで素晴らしいのは、50年代にロベール・トマが書いた通りの人物設定なのですが、同時に監督が選んだ女優さんたちに明白なイメージを与えていることじゃないかしら。

ドヌーブ:そうね、私以外の役わね、凄く驚いたのよ。「このギャビィって女、なんて意地悪なの!」って何度も思ったわ。意地悪な役を演じるのが嫌だったと言うことじゃなくて、その意地悪さが行き過ぎているって思ったのよ。エゴイストで気まぐれで、虚しい女性だって思っていて・・・でもフランソワと話をして、もっとユーモアも皮肉さも役に付けることが出来たから。でも最初は何てバカな女なのって、まるで娼婦みたいな、そうコールガールだって思ったの!(笑)

-女性の美しさときらびやかさのために様式化された映画だとオゾン監督は発言してますが、そのきらびやかさは人工的な物なのですか?

ドヌーブ:様式のきらびやかさと言う意味でね・・・少しはそうだと思うわ。

サニエ:ダグラス・サーク監督の映画を見た時、そこからこの映画の衣装を参考にしたんですけど、あんな風に人が通りを歩くなんて想像出来な
いですから・・・

ドヌーブ:でもね!(笑)豹の毛皮もヴィルジニーが着ているウェストの締まったドレスも、正にこの映画は別の時代の話だって言ってる訳よ。もし    そうじゃなければ、我慢ならない物があるわ。まずお話の要素として電話線が切られたから外部と連絡が取れない設定にならないじ ゃない。なにか別の方法を考えなくてはならないでしょ。こういう”プロヴァンス”風な面は古臭いわね、ルディヴィーヌが演じたカトリーヌの反抗以外はね・・・

サニエ:でも彼女の反抗は今の女の子のそれと比較したら、かなりズレていると思います。あれはタブーとうまく折り合いをつけるためなんですね。

ドヌーブ:そうね、フランソワも自分なりにダブーを破っていくの。時代を昔に設定したことで現代だったらおそらく簡単には行かない事でも言える   よ うになったのでしょうね。

-この映画での踊りの振付にはどう取り組まれたのですか?

 ドヌーブ:皆とても楽しんだわね。オゾン監督と振付を担当したセバンチャン・シャルルは、私たちにとても様式化されたことをやらせたのだけど、完全なミュージカルだった訳でもないし、そうしたいとも思ってはなかったのね。ただオゾン監督が切れ目なしに撮影したかったのね、だからそのシーンの撮影には時間がかかったわね、それに私たちは歌手でもダンサーでもないわけだから・・・

サニエ:私の振付が撮影の初日だったので、あれが終わった途端、とても・・・

ドヌーブ:・・・安心した?

サニエ:「やった、出来たわ。終わったのね、これで自由になれる、これから演技できるんだ。」って思いました。

ドヌーブ:そうね、やっぱり歌うのは台詞を言うより一つ上の事だと思うし、踊りながら移動するのも普通に動くのよりは大変よね。過剰な事をする場合、皆すぐに自分の特徴を見つけようとするものね。でもそれが他の人にもお手本になったりもするから・・・      

サニエ:全員が同じ立場に置かれたから、仲間意識が強まったと思いました。一人が振付をする番の日が来ると、他の女優も彼女が担当した歌 を歌って励ましあっていたんですよね。

-撮影中は皆仲良くされていたんですね?

ドヌーブ:ええ、そうね。女優たちの間では、とてもスムーズだったわ。ライバル意識もなくて、とても調和がとれていたし。でも私達が演じていた役は皆、すごいのよ!(笑)

サニエ:私は撮影当初はとても怖かったんです。何を期待したらいいのか全然分からなくて、でも時間も経つと団結することもできました。他の女優さんたちにも受け入れて貰えたから、でも怖気づいていたんですけどね・・・
 
ドヌーブ:それもすぐに消えたでしょう。むしろ先入観じゃない。理屈じゃないの。あなたの立場になって考えてみましょうか。私だったら、おそらくやめていたでしょうね・・・

-あなたがですか?

ドヌーブ:当時、あなたの若さだったら?ええ、物怖じしていたと思うわ。

サニエ:私よりも怖がりなんですか?
 
ドヌーブ:(笑)分からないわ、あなたがどれほど怖がりなのか知らないもの。でももっと若い時の私だったら無理だったと思うわね。あれだけの数の女優と顔を合わせるなんて・・・

サニエ:私はいつも励まされていました。一人で台詞を言わなくてはならない日があって、セットにいてくれたのですね、あなたが見てくれてい るのがはっきり分かりました。私のところまでわざわざ飲み物まで持って来てくれて・・

        

-この映画『8人の女たち』は多くの監督たち、例えばサークやヒッチコックへ目配せしています。でも色使いや視覚面では、ジャッ ク・ドミーを思い出します。ルディヴィーヌとヴィルジニー・ルドワイヤンの姉妹は、『ロシュフォールの恋人たち』や『シェルブールの雨傘』を連想させます。

ドヌーブ:たぶんね。でもドミー監督の映画はあれほど攻撃的じゃないわ。登場人物もメランコリックで、もっと重々しいから。

サニエ:私はそんな比較をしてもらえてすごく嬉しいです。そんな風に考えるなんて私には出来ませんから。でもジャック・ドミー監督の映画はなにかもっと”誠実”な何かがあるような気がします。

ドヌーブ:それは見た目なのよ。彼の映画はおとぎ話って感じじゃなくて、人が感じる以上に暗くて、見た目よりも残酷なの。

-それでは、ルディヴィーヌに質問ですが、カトリーヌ・ドヌーブのこれまでの作品で、どの映画が・・・

ドヌーブ:この質問が終わる前に、”だめ、だめ”って言ってしまいなさい!(笑)

サニエ:(従わずに)私の印象に残っているかですか?

ドヌーブ:でも今では映画はとても変わったわ。私が感じるには、さっき話題にした映画をまた見ても、その映画で演じている女優の好き嫌いに     関わらず、感情輸入出来るとは限らないと思うわ。

サニエ:カトリーヌが出た映画では、『昼顔』と『終電車』には魅せられました。何回見たか分からないほどです。でもこの二本の映画は出来て しまっているから、私が演じてみたいのはあの役だとは言えませんけどね。

ドヌーブ:私にとってはある意味で、映画は思われているよりも俳優たちのものなの。ある映画が気に入ったその瞬間から、その映画に出た俳優   と彼らの演技に強い結びつきが出来るのよ。もちろん監督たちの演技指導もあるけど、演じているのは俳優なのだし、それを見て感情輸入するのも俳優たちに対してなのだから。

-30数年前と比較すると、現在デビューする方が難しいと思われますか?

ドヌーブ:ええ、私がこの仕事をし始めた時よりも今の若い女優は大変だと思うわ。

サニエ:(少し腹を立てた振りをして)どうも!

ドヌーブ:だって今ではより多くの俳優がいるからよ。俳優であることが大変だし、この仕事を続けていくのはもっと大変よね。映画の寿命がどん どん短くなっているでしょう。すぐにテレビで放送されてしまうし、映画の見方も違うわよ。映画ファンはいつだっているけれど、でも映画の受け手は変わっていくものよ。

サニエ:でも二十歳の時、競争しなければいけないんだって言う気持ちがありましたか?

ドヌーブ:全然なかった。今でもその気持ちは更々ないけど。(笑)私は我慢するか諦めてしまうかどちらかのタイプだから、競争なんて無理。そういう風に育てられなかったのね、ライバルとか戦うとか、困難に立ち向かうとかね。今ではオーディションしたら、どの子も同じ役を目当てにしている競争相手がいるのが分かっているもの。私がデビューした時はなかったことよ。競争なんて考えは、私ならやる気がなくなってしまったんじゃないかしら。

サニエ:私はまだ競争するのが大変とは感じていません。多分それは幻想で、競争はもちろん存在していると思います。でも私はまだそんな に感じてはいません。私が不安になるのは、自分が良い選択が出来るかどうかと言うことですね。あなたのこれまでの全ての出演作を見ると、きちんと一貫性があると思います。

ドヌーブ:結果的にそうなのかも知れないけど、でも始めたころは、分からなかったもの、そうなって嬉しいけどね・・・

サニエ:私はまだこれからなので・・・

ドヌーブ:まだこれからなのね!でもそれはこれから多くの事が自分の物になって行くからよ、うまく行く場合もあれば、そうじゃない時もあるでしょう。でも見方は時と共に変化して行くわ。今では20年前のように、『シェルブールの雨傘』を私に語る人はいないし、『暗くなるまでこの恋を』も現在のような見方を公開当時にする人もいなかったの。物の評価って、その時その時で毎日されるようなものなのよ。でもイメージが出来上がっていくのは本当よ、だから私はいつもどうして俳優のインタヴューなんかするんだろうって思うの。彼らの映画での演技を見れば十分じゃないの。しばらくして、彼らの映画を知っている人が、俳優の動き方や演技に関連した解釈とか、役の選択や演じなかった役だとかに関して書けばいいじゃない、考えるのは自由だから。何を演じて何を演じないかは、ある俳優について、あるいはその人の個性について何かを語ると思うわ。

サニエ:私は選択を誤るのが怖いですね。

ドヌーブ:私の選択は身勝手なものだったと思うけど。私を最優先させた選択だったし、出会いを求めていたのね。説得される必要があったわけ。もちろん人はいつも成功を求めていて、それが結局手に出来なかったとしても、親しく説得されたことは私に残るから。

サニエ:選択の基準はシナリオですか、役柄ですか、それとも人との出会いですか?私はいつも優先順位をつけられなくて。

ドヌーブ:優先順位はいつも変わるからよ。最初の映画なら、監督の人柄を気に入るか、仕事を一緒にしたいかどうかが問題でしょう。時には役柄には魅力を感じないけど、シナリオが素晴らしいから出演することもあるしね。

-ルディヴィーヌはまだ当惑しているみたいだけど・・・

サニエ:ううん、きちんと聞いています・・・

ドヌーブ:経験はたった一人のものだから。ある部分でルディヴィーヌはこういう話には興味ないの。でも時にはハッとする会話を聞くこともあるのよ、例えば、「私はぜんぜん違うから!」とか「私ならそんな風に、反応しないわ」とかね。

サニエ:シナリオを読んでも、オファーされた役を忘れてしまうことがあるんですね、台本を・・・

ドヌーブ:お話のように読んでしまうから?

サニエ:ええ、そうなんです。読み終わってから、”あれ?良く分からなかったわ・・・”って思ったり。

ドヌーブ:”自分の役は何だったんだっけ?”(笑)

サニエ:自分で何が出来るのか確信できなかったり、忘れてしまうような場合は、その仕事はしないようにしてます。

-カトリーヌ、同じような反応をすることもありますか?

ドヌーブ:いいえ、だってたくさんのシナリオを読むけど、もう長い間、読むのと同時に役柄も見るようにしています。例えば、『ダンサー・イン・ザ・  ダーク』のシナリオを読んだ時、当初あの役は40歳の黒人のアメリカ人女性のために書いた役だって言ってラース・フォン・トリアが送って来たのを知らなかったら、監督が彼ではなかったら、あの役はおそらく引き受けてなかったでしょうね。

-今後の企画についてお聞きしてもいいですか?

ドヌーブ:だめよ、聞いてもいいけど・・・・でもだめ・・・(笑)

-このインタヴューはあまりうまく行かなかったのでしょうか?

ドヌーヴ:そんな事ないわよ。でも私、うまく年末を越せないのね。まだ2002年になっていないの!(笑)



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