「あら、ロレアルの私の広告だわ!と彼女はパラパラ見ていた雑誌へと指を差し出す、これって自分だって、自分で認識できないのね」そうなのは彼女一人ではないだろう。ヴィルジニー・ルドワイヤンが見せる完璧なクロース・アップ、申し分ない微笑み、バラ色を背景にしたスターの中のスターは、クロゼリー・デ・リラ(訳注:カフェの名前)の隅っこで今、膝を立てて座っている若い女優には似ていないからだ。単に綺麗な娘さんといった感じだから。どんなに目ざとい人でも、即座に彼女を見分けることはできないだろう。見た目もニュー・ルックとは言い難い。髪にはクリップ、お化粧は全くしていないし、宝石を身に付けてもいない、Tシャツにシーンズとコンバースのスニーカー、今の他の女性たちと同じ。外見はどうでもいいらしい。少なくとも彼女にはそういう印象を受けた。27歳でヴィルジニー・ルドワイヤン(母方の祖母の名前)、本名はフェルナンデス(父はスペイン系)は思春期の若者を顔をしているが、その心は成長した大人だ。どんな事をしても他人に気に入られたいという病的な要求の持ち主ではない。彼女が大好きだという映画にしても、ある大家族の一員という感じでもない。彼女が属している場所は別にある。異常なほど正常?いや、7歳でダニエル・バラヴォワンのCM L'Aziza を撮るまで、映画には縁がなかったのだから。その後20数本の映画が続く。オリヴィエ・アサイヤス、ブノワ・ジャコー、クロード・シャブロル、フランソワ・オゾン、ジェームズ・アイボリー、ジャン=ポール・ラプノーらが彼女の自然さ、新鮮さ、そしてその脆さから彼女を選んできた。その脆さはとても上手く隠している。だから間違いを犯してはならない。彼女が気さくに話してくれるのも一種甲羅のようなものなのだ。そのために色々聞き出したい記者の試みはあっさり止まってしまうから。さようなら、ではまた。クロゼリー・デ・リラを後にする。ほら、ロレアルはなかなか頭がいい。ほら、あれヴィルジニー・ルドワイヤンだよ!■

ヴィルジニーとの一日

ゲストである人とパリを発見し、彼女の好きなお店や安らぎの場所で写真を撮るのが、本誌に託された任務だ。ヴィルジニー・ルドワイヤンは4月のある1日付き合ってくれた。魅力的な彼女は生粋のパリジェンヌだと言っておこう。14区で生まれ、育ったのがオーベルヴィリエ、5区の学校へ通学、彼女はこの首都と水を得た魚のごとく跳び回るその郊外を離れたことはない。それでよかった。パリでの運転には不慣れな私たちスタッフのために(大半の者が現場に歩いてやって来た)スター自ら、運転を引き受けてくれることになった・・・こんな風にこの春うららの小旅行は、彼女の生活について、日々の活動や現在やってみたいと思うことなどパリを案内してもらいながら少しづつ分って来た。『ザ・ビーチ』と『ボン・ボヤージュ』のヒロインは充実した生活を送っている:家族と映画の撮影(『サンタンジュ』は6月23日公開)真剣にやっているロレアルの仕事(それでカンヌ映画祭へも行く予定)大好きなニューヨークへの旅行に、何でも試してみる花屋のメリックと手入れをしている庭もあるし、料理上手でもある(友人が経営しているレストランで修業しているそうだ)・・・これだけ知るには時間がかかる。彼女と過ごせる一日は贈り物のような気がしてきた。電話を2回かけて(彼女の携帯は良く鳴る)タバコを一服する間に、ヴィルジニーはイーディス・ウォートンの小説 『Chez les heureux du monde(原題:The House of Mirth) 』 を読むようにと私たちに勧め、何度となくヘンリー・ジェームズが書いた 『Ce que savait Maisie(原題:What Maisie knew) 』を知っているかと尋ねてきた。どちらも彼女の好きな小説家なのだ。女優である彼女を形容するのに”滑らか”と言う人たちもいるが、反対だと思う。生き生きとしていて、熱いものを感じさせるヴィルジニー・ルドワイヤンはやりすぎてしまうことを拒んでいる。彼女自身は、全く自然体の人だから。

「私はいつもパリへ帰って来たいって思うの」

○カラボス(Carabosse)
この店はもう長いこと知っているの、とても素敵だって思っていたのよ、でも当時は自分には子供がいなかったから、私の目には少しシュールな感じで映ったのね・・・でもリラが生まれたから。カラボスを創設したナディーヌ・ラティゴーが私の友人になって、リラはカラボスの服しか着ないのよ、とても鮮やかな色で遊び感覚に溢れているのね。

○ルクセンブルグ公園(Jardin de Luxembourg)
この写真の私は2才半くらいだと思うわ。両親にいつもこの公園に連れて来てもらったわ、人形劇が大好きだったの。今では私が娘を連れてくるの・・・

本誌が剥がすスターのレッテル:スターに付けられた常套句や使い古された言葉。編集者の偏見を捨て、鏡の向こう側へと行って見た。

レッテル1:ヴィルジニーはよそよそしい
皆明らかに私はよそよそしくてスノッブで他人行儀な奴って思うみたい。私って凄い近視なの!でもこの近視にもいい面もあるわ。私を守ってくれる時もあるの、一歩前に出るのを躊躇する時があるから。退屈させられそうな物を見ないで逃げだせるから・・・

レッテル2:ヴィルジニーはインテリ
もしも「インテリ」って言葉が国立行政学院や科学専攻だとか、毎年論文を発表するとかいう事なら、私はインテリとは言えないわね。でも、もしこの言葉が身の周りで起きている事に興味深々で、好奇心を持てるっていう意味なら、このレッテルを貼られたままでも構わないわよ。

レッテル3:ヴィルジニーはミステリアス
自分を謎で固めようとは思っていないけど、でも演じた役で自分を知ってもらうことが大切だと思えるの。女優は自分の個性や人柄でイメージを汚してはダメだと思うわ。

レッテル4:ヴィルジニーは作家主義
レッテルってなかなか剥がれないのよ。私はオリヴィエ・アサイヤスとブノワ・ジャコー監督たちと映画を撮ったから、そう思われているの。でも「作家主義」って「退屈主義」と語呂合わせがいいみたい。それは私には不当で間違っていると思えるの。ある種無知ってことの証明になると思うわ。アクション映画が一番受けるって訳じゃないでしょ。全て視点の問題よ、方向性を持った視線、鋭い視線ってこと。

レッテル5:ヴィルジニーはオーベルヴィリエで慎ましい家族環境で育った
そう、大半の人がそうだと思うけど、私はお金持ちの家のお嬢さんじゃなかったわ。それは誇りにも思わないけど、恥ずかしいとも思わないわ。オーベルヴィリエ育ちよ。それもどうってことないんだけど、マスコミは今郊外を話題にするのが好きだから、私がオーベルヴィリエ出身なのを面白がっているのね・・・

○ギャラリー・ソントゥ(La galarie Sentou)
大金を使わなくて済む品揃えが好きなの、それに値段の幅が広いから、誰でも何かが見つかるわ。ジャン・プルヴェ(Jean Prouve')の再販もあるわ!贈り物を探したいなら、ここは理想的だと思う!

○シェ・シスカ(Chez Siska)
オーナーのフランチェスカは友人で、以前映画のスタイリストの仕事をしてたのね。このレストランは半年前に開店したんだけど、頻繁に来るのよ・・・それに少し、時々だけど、調理場の仕事を手伝うこともあるの・・・でも大変!先月は4人前のディナーを任されたの、それは友人のためだったのだけど、お客さんには変わりないから。メニューは、トリュフ風のアスパラガス、蜂蜜付けのローストダック、ココナッツとさやえんどうのピュレーにイチゴのコールド・スープ。

あちこち回って・・・

○お花屋さんメリック(Le fleuriste Melik)
このお花屋さんは私の庭師もしてくれているの。彼のことはある朝、植木を買いにランジス(パリの中央市場がある)へ行った時に聞いたの。モブジュ通りにもお店があるけど、いつも閉まっているの、彼はいつもあちこちの庭を駆け回っているから・・・若くて、いつも上機嫌で、素晴らしい花がお店にはあるの。

○エドガー・キネの市(Le marche de la place Edgar-Quinet)
わたしは市(マルシェ)には詳しいの、父がいつも仕事をしていたから。エドガー・キネの市は特にお気に入りなの。この近くで生活していたし、母はまだ市の焼く肉屋さんをやっているのよ!

○発見宮(Le Palais de la Decouverte)
子供の頃、学校でよく来てたの、とても綺麗だなって思うから、ここが好きなの。思い出もたくさんあって・・・

○アーティストたちの街(La cite des Artistes)
アラゴ通りには不思議だけど、惹かれるの、私の中ではここがパリだって思えないのね・・・すばらしいの、世間離れしてる感じで、アーティストたちの街(本名はシテ・フルリー)はサンテ刑務所の近くにあるの。近所も変わっているわね。

○カフェ:クロゼリー・デ・リラ(La Closerie des Lilas)
2002年までこの店の近くに住んでいたの。私はセーヌの右岸に住んでいたけど、私がいたのはいつもこの近辺。インタヴューや取材はいつもここで受けるの。静かで、店員の人たちも素晴らしいわ、気配りが万全なの。

○書店:文字の木(L'arbre a Lettres)
この後1時間空いてるって時は、この本屋さんに来るの。自分を忘れてしまうくらいね。本がない生活は私には考えられないから。ここなら自分が欲しい本が必ず見つかるの。店員さんのアドバイスも良く受けるわ・・・書店トゥシャン(Tschann)にも良く行くわね。

天使がサンタンジュを通っていく

6月23日(『ジェヴォーダンの獣』のメイキングを監督した)パスカル・ロジエの長編第一作『サンタンジュ』(Saint-Ange)にヴィルジニー・ルドワイヤンは主演する。既に17本の作品でヒロインを演じてきた女優にとって初めて挑戦するジャンルの作品である。

Elle a Paris: 無名の新人監督が撮る作品で、この種のファンタジーの世界はあなたにとって新しい冒険だと思いますが、これは少しリスクもあるのではないですか?

ヴィルジニー・ルドワイヤン:有名な監督と仕事をするのも同じでリスクがあると思うわ。今回はシナリオを受け取って、とても強い世界があるって思ったし、この女性の役をやってみたいって思って、出演を承諾したの。それにホラーとサスペンス映画の中間といったジャンル映画に自分が出演するのは初めてだし。

EAP:今回の共演者はルー・ドワイヨンですね、迷える孤児ジュディスを演じていますが、彼女との仕事はいかがでした?

VL:ええ、実生活の彼女のイメージとはかけ離れたこの変わった女の子の役なんですが、彼女は素晴らしかったですね。それに、彼女はとても人懐っこい性格なんです。とても馬が合ったと思います。

EAP:もう17年間も女優の仕事をしていると、他の女優たちと同様に監督をしてみたいという気持ちになりませんか?

VL:今は一生女優の仕事をしたいって思っています。ルーティーンだとか同じ事の繰り返しって思ったことはないんです。撮影毎に自分について何か新しく発見できるのが好きなんです。多くの俳優にとって監督をするっていうのは夢みたいですけど、私はそうは思わないですねえ。

→『サンタンジュ』は『アザーズ』と戯れる。
パスカル・ロジエの長編第一作『サンタンジュ』でヴィルジニー・ルドワイヤンはある子供が亡くなってから、さびれ、奇妙な形で閉鎖される孤児院に直面する線の細い女性アンナを演じている。彼女の相手をしてくれるのは、理性的な女性シェフのヘレンカと、迷える孤児ジュディスだけ。アレハンドロ・アメナバール監督の『アザーズ』がこの作品を通り過ぎて行ったような感じなのだ。

参考までに、好きな事そしてアドレスも・・・

マイベスト:

好きなCD:ボブ・ディランなら何でもいい。

好きな映画:イングマール・ベルイマンの『鏡の中にある如く』とコダールのほぼ全作品。それにクロード・ピノトーの『ラ・ブーム』は台詞を暗記しているくらいなの、それに今度この映画をDVDで買い直したばかりね!

愛読書:選ぶなんて無理。作家も次から次へ何でも読むわ。でもいつも心に残っているのは間違いなく、イーディス・ウォートン、ヘンリー・ジェームス、ジーン・リースに谷崎潤一郎。

好きなパリ:パリ市長。ベルトラン・ドラノエはとてもダイナミックね。この街とパリ市民を愛しているって思う。パリジャンであることを誇りに思わせてくれるから。首都であるパリがより生き生き、人間的であるようにって様々なイニシアチブで証明してみせたわ。パリ・ビーチ計画(セーヌの川辺をビーチに変える)やニュイ・ブランシュ(美術館や博物館などを一晩中開ける)民主党市民の集いとか、託児所や交通問題とか色々あるけど、この人を信じたいって思わせてくれたわ。

嫌いなパリ:物価が高くて、エリート主義になって街がその魂を失うのが嫌ね。でもそれが防げるかしら?難しいと思う。それはどの大都市にも避けられない運命なんでしょうね。

アドレス:
○カラボス(Carabosse) 11 rue de Sevigne メトロ Saint-Paul
○ギャラリー・ソントゥ(La galarie Sentou) 29 rue Francois-Miron メトロ Saint-Paul
○シェ・シスカ(Chez Siska) 4, Petit-Maine メトロ Gobelins
○書店:文字の木(L'arbre a Lettres) 2 Edouard-Quenu メトロ Censier-Daubenton
○お花屋さんメリック(Le fleuriste Melik)13 rue de Maubeuge メトロ Cadet
○書店トゥシャン(Librairie Tschann) 125 Boulevard du Montparnasse メトロ Vavin
○ルクセンブルグ公園(Jardin de Luxembourg) place Edmond-Rostand RER Luxembourg
○アーティストたちの街(La cite des Artistes)65 Boulevard Arago メトロ Saint-Jacques
○発見宮(Le Palais de la Decouverte) avenue Franklin-D Roosevelt メトロ Franklin-D Roosevelt
○カフェ:クロゼリー・デ・リラ(La Closerie des Lilas) 171 Boulevard du Montparnasse RER Port-Royal



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