2003年9月15日、フランスの女優ヴィルジニー・ルドワイヤンが、自信に満ちた足取りで部屋へと入って来る、僕の姿を見て、同時に"Hi"とにっこり挨拶しあったのだが、その直後うまく意思疎通が取れなくなってしまった。僕が数日前、鼓膜が腫れていると診断されて、このインタヴュー取材中、彼女の発言がうまく聞き取れないかもと詫びながら進めたことと、これが取材で忙しい朝、彼女が受けた最後のインタヴューで、お決まりの言葉の壁もあり、彼女の返事がすこし素っ気ない原因となってしまったのだ。

残念ながらこの編集された言葉しか読めない読者にとっては、ルドワイヤンさんの身振り・手振りが興味深かった事を伝えておく。スクリーンで見るより大人びていて、かつてはモデルをしていたそうだが、(今でもロレアルの仕事をしている)座ったり、立ち上がったり、条件反射的にカメラへ微笑んでくれる。でも彼女のジェスチャーには僅かだけど"Bon Voyage"(トロント国際映画祭でのプロモで来訪)で彼女が演じたカミーユのように自意識が感じられた、僕がカメラを構えるとすぐに、写真には眼鏡なしでと、黒ぶちの眼鏡を外してくれた。フランスに置いて来た9月の終わりに2歳になる彼女の娘リラちゃんの誕生日のお祝いを言って、話を始めた。--ビル・チャンバーズ
 

フィルム・フリーク・セントラル:母親になって、キャリアに変化があったと思います?
ヴィルジニー・ルドワイヤン:言葉で説明するのは難しいわね。赤ちゃんの時そして大きくなって歩いたり話したりできるようになると、もっと一緒に時間を過ごしたくなるのは本当ね。

では、仕事の量は減らしたい?
ううん、仕事の種類によるわ--プロモーションの仕事をする時は、以前よりも少し気をつけて、スケジュールを組んでいるわ。

"Bon Voyage" はカブールのロマンス映画祭で、最優秀監督を受賞しましたけど、この作品にジャンル映画のレッテルを貼るのには躊躇しますね。この作品で一番惹かれた事は何でしたか?
たくさんあるわ。まず、ラプノー監督とは本当に素晴らしい監督だから、長い間一緒に仕事をしたいって思っていたの。それに脚本を受けとった時から、ストーリーにもとても魅力を感じたの、たくさんの要素が混ざっているから。ドラマで、コメディでもあるし、冒険活劇でもある、人間のドラマでもあるわ、それに私が演じた役は、勇敢でとてもエネルギッシュなところも気に入ったわ。

ラプノー監督と仕事できる機会は、あまりないですよね--彼は寡作ですから。どんな監督ですか?
とても細かい人です、自分が何をやりたいか詳細に知っていて、セリフにとてもうるさくで、厳密なんです・・・

映画の中で繰り返されるモチーフがあって、主人公が近くに来ると毎回あなたが眼鏡を外すのですが、彼にあなたが関心があるって事を示すうまいやり方だと思いました。あれは台本に書かれていたのですか?
ええ、書かれていました。私は眼鏡をしているので、監督はそれを見て、主人公を少し誘惑したい時、彼女が眼鏡を外したら、面白いだろうって思ったのでしょう。

とてもうまく演じられていたと思います。
(微笑む)

カミーユを演じるのは何が難しかったですか?
私が大変だと思ったのは・・・彼女はお転婆なんですね、それにダサイ部分も持っているんです。いつもスパイのように行動していて、それで気をつけた事は、それでも彼女が魅力的である必要があったので、彼女が傲慢だと思われないように注意しました。

役作りには普通、どんな準備をするのですか?
役次第です。ラプノー監督はあまり準備を重要視していませんでした、映画のリハーサルはやりたがらない人なんです。監督次第なんですね、リハーサルをやりたいと言う場合もあるし、そうじゃない場合もあります。ある映画で、メイドの役を演じたんです、ルーム・サービスの係りですが、あの時はホテルへ行き、どんな手順で仕事をするのか勉強しました。演じる役にとても依存しています。

この作品では話をしているのが画面には映るのですが、観客にはその会話が聞こえないシーンがありますね。階段であなたはグレゴリ・デランジェに何をヒソヒソ言っていたのですか?
重水の話をしていたの。

ではプロットに見合う話を作っていたわけですね?
そうね。

撮影がトラブル続きだった『ザ・ビーチ』以降、あなたがアメリカ映画には出演していないのは偶然なんでしょうか?
『ザ・ビーチ』ですけど、撮影時には出演出来てとても嬉しかったの。あの作品はとても好きだったし。でも私はフランスに住んでいたし、フランス映画を忘れてまでアメリカ映画への出演を待っていた訳じゃなかったから。ハリウッドから素晴らしいオファーを受けて、起用された監督も好きな人だったけど、「アメリカ映画に出たんのだから、フランスなんか、さよならね」とは思わなかったわ。私は女優で、自分の好きな作品、自分を楽しませてくれる作品で仕事をしたいのね。当時私がワクワクした企画はアメリカ映画じゃなくて、フランスの作品だったから。

多くのヨーロッパの俳優さんはアメリカ映画を一本やると、ハリウッドに飲み込まれてしまいますね。
その通りね・・・私は全然気にしてないわ、今の自分の仕事が大好きだから。

最近はアンサンブル・キャストの作品が続いていますね?以前の方が主役が多かったような気がしますけど。
ううん、『8人の女たち』は絶対やりたい作品だったし、ラプノー監督の作品も、純粋に出演したいって思ったの。一ヶ月前に撮影が終わった作品(Saint-Ange) では主役を演じています。好きな、やりたい作品に出たいだけで、やりたくないのは・・・(ためらう)

あなたが企画を選ぶ時、監督が大きな要素みたいですね。
(強調して)そうね。

映画で演じる以外では、映画を見ることも好きですか?フランスには素晴らしい映画文化がありますね。
ええ、映画は大好きよ。

モデルからスタートしたそうですが、いつも女優になりたいって思っていたのですか?
ええ、そうね。映画は私にとって魔法みたいなものだったから。今でも色々な種類の作品が好きなんです。

是非、一緒に仕事をしたいのは誰ですか?
タランティーノ。ウディ・アレン。大勢います。

あなたは1994年から1999年の間にセザール賞に3回もノミネートされていますね。3度目の時は、皮肉なお世辞と言う感じはしませんでしたか?
それは私には関心がないことですね、でもノミネートされたのは嬉しかったわ、だって自分の仕事を認めてもらえた訳だから。でもとても変な感じですね、5人の女優、4人の女優、部門も4つに分かれていたりで。私は変だなって思ってしまうんです。でも賞に参加できることはいいことですけど。

10年前は、女優として認められて来ていましたが、今から10年後のヴィジョンはどうですか?
判りませんね。自分が好きな事をやり続けることが出来て、幸せていられることだと思います。今は演技する以外の事をしたいとは思いません。女優でいられる事が本当に大好きなんです。

原文はこちら



Hello Hollywood: Interview with Virginie Ledoyen

レオナルド・ディカプリオの失敗作『ザ・ビーチ』には記憶に値することはあまりなかった。しかしこの作品は、フランス女優のヴィルジニー・ルドワイヤンがこれまでに出演した唯一のハリウッド映画だったのは覚えておいていいだろう。

ルドワイヤンは最新作、ジャン=ポール・ラプノー監督作品ナチ占領下のフランスをコメディ・タッチで描いた『ボン・ヴォヤージ』のPRでニューヨークを訪れた、積極的に多くの話題に触れ、特にハリウッドの大作についても自分の意見を述べてくれた。

「ええ、またハリウッド映画に出たいと思います」と彼女は頷く。「私にとっては、どんな役を演じるにしろ、監督次第だと思いますね、自分の役を監督から切り離して考えるのは難しいですし、あるテーマを監督がどう見てるかが大切ですから」

「アメリカの大作で、本当に気に入っている作品もありますけど、普通、女の子の役がないんですね、特にフランスの女の子にはないんです」と笑う。「でも私はいい映画に出たいだけですから、なんの先入観もありませんけど。これは興行的に大ヒットしそうだからと思って映画に出ることはないですね」

『ボン・ヴォヤージ』はアメリカではジェラール・ドパルデュー主演の『シラノ・ド・ベルジュラク』の脚色とジュリエット・ビノシュとオリヴィエ・マルチネス主演の活劇ロマンス『プロバンスの恋』で知られるラプノー監督久々の作品である。テーマはよりシリアスだが、30・40年代のスクリューボール・コメディを彷彿とさせ、フランス人がどうナチの占領に反応したかを描く。(政府のように)降伏したものもいれば、抵抗した人間もいた。

ドパルデュー、イザベル・アジャーニが名を連ねるキャスト陣で、ルドワイヤンは同盟軍を援助するために国外脱出を図ろうとする科学者の賢い助手:カミーユを演じている。この役について、ルドワイヤンは説明する:「あまり準備はしなかったわ、まずシナリオが詳細に書かれていたことと、それに監督はあまり役作りをして欲しくなかったの。出来るだけ自然に演じて欲しかったのね」

もちろん、難しい質問も出る:占領下に生きていたら、彼女ならどうしたか?「自分ならどうしたかって言うのはいつも難しいわ」と前置きして、「あの時代なら、レジスタンスに参加したって皆言うけど、特にフランスでは正しい選択をした人は少なかったの。私は自分なら出来たと思いたいけど」

『ボン・ヴォヤージ』がフランスで公開された時、大半の期待に反して、大ヒットにはならなかった。ルドワイヤンはその理由が分ると言う。「この作品はコメディだから、人が苦しんだ時期について笑わそうとする映画を見るのを、みんな躊躇したのよ」と説明してくれた。

しかしルドワイヤンは『ボン・ヴォヤージ』に出演することに迷いはなかった。「シナリオをもらった時、嬉しくて仕方なかったの、監督はもう7年も映画を撮ってなかったから、その作品に参加できて嬉しかった」「シナリオを読んだ時、その歴史的意義とシニカルにならないであの時代を元にコメディを作る(監督の才能)を素晴らしいと思ったの。素敵な役だったし、演じたいと思えるヒロインだったから」

奇妙にもルドワイヤンは、彼女がフランスではある年齢とタイプでは唯一の女優だと思っている記者から質問を受けた。ベルナルド・ベルトルッチ監督が最新作『ドリーマーズ』の主役を彼女にオファーしたか否かを聞いたのだ。

笑いながら、彼女は答える「ベルトルッチ監督はあの作品のために私を使おうとは全然思ってなかったわ。最初から(エヴァ・グリーン:Isabelle役)を起用するつもりだったから。私はあの作品はあまり好きじゃなかったけど、ベルトルッチ監督がオファーしてくれたら、受けたと思う。映画は完成するまでどんな作品になるか分からないもの。ベルトルッチ監督と仕事するのは凄いチャンスだったでしょうけど。それにあの役なら、ヌードになるのも全然問題ないと思うわ」

ベルトルッチ監督が彼女を起用しなかったのは残念だ、ヴィルジニー・ルドワイヤンが出ていたら『ドリーマーズ』を最後まで見るのはもっと楽だっただろう。

原文(英語)はこちら


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