撮影監督:ジャンヌ・ラポワリー/JEANNE LAPOIRIE

参考
監督は『8人の女たち』の照明を自分が大好きな1950年代のアメリカ映画の照明が投影されたものにしたかったのです。そこでダグラス・サーク監督の作品(『悲しみは空の彼方に』『天はすべて許し給う』)やヴィンセント・ミネリ監督のミュージカルを一緒に見ました。私自身は、ヒッチコック監督の『裏窓』や『鳥』を試写して見ました。これらの作品は素晴らしい色合いを持っていて、私たちもテクニカラーに似たような物を目標にしようと言うことになったのです。

テクニカラー
テクニカラーを再現するのはとうてい無理な話です。その工程は三原色を異なる三つのフィルムの上にバラバラに焼付けを行うと言うものでした。その完成にはテクニカラーの専門家の監督の元、非常に複雑な現像所でのプロセスを経て、多くのテストが必要だったのです。そこで私が考えたのは、当時の照明の仕方を探り出し、インスピレーションとしてそれを利用しようと思ったわけです。それはテクニカラー全盛時代の映画が観客たちの心に浮かぶように何かを再構築することでした。そこで結果を個人的な物にし、また現代的にするために現在と過去の手法を混ぜ合わせることでやって行こうと思いました。

セットと仕掛け
セットに関してですが、映画の冒頭は様式と時代色が際立つべきだと思ったのです。照明が行き届いているが、特に照明を意識させないセットでスタートし、衣装と舞台の色を強調したかったのです。現在我々が目にするものとは違う、遊び心がある何かが欲しかったのです。そして少しづつ映画が進むにつれて、照明の存在が感じられ、背景への照明が弱まり、より現代的な印象へと変る。物語が映画をコントロールして行く訳です。またセットの人工的な部分で遊んでみようと思いました。例えば、外の背景をリアルに見せようと努力しませんでした。見るからにペンキで塗ったカンバスの前に木があって、人工雪があります。この舞台装置を隠そうとせず、その反対に夜のシーンではブルーのジェルを使ったりもしました(普通絶対にしないことです!)そうすることで色の質感を高め、内側の暖かさと外の寒さをコントラストさせたのです。

8人のスターに照明を当てる
50年代では慣例だった、顔に直接照明を当てることはしませんでした。その代わりに後ろから髪が透けるような照明や、特にカトリーヌ・ドヌーブとファニー・アルダンの場合、ほぼ全身に照明が当たるようにしました、これは「スター」の感じが良く出ると監督も気に入ってくれました。こういった照明の原則は50年代の美観へ戻って、女優の美しさを高めてくれます。ルディヴィーヌ・サニエやヴィルジニー・ルドワイヤン、そしてエマニュエル・ベアールについては、より現代的な法則を使って、顔の彫りの深さを強調するように側面から照明を当てています。

誰もが知っている顔
あれだけ有名な女優たちをセットに集めることには皆、不安がありました。私は既にアンドレ・テシネ監督の映画で仕事をしたのでカトリーヌ・ドヌーブとは顔なじみでした。エマニュエル・ベアールとも知り合いでした。『焼け石に水』で、ルディヴィーヌ・サニエの照明もやりましたが、他の女優たちとは初めての仕事でした。(女優たちに進言されて)メイク・テストもやりました。そうすることでどの女優にどんな照明をするか決めるのに役立ちましたし、彼女たちと信頼関係を気付くことも出来たのです。各女優たちの驚くような魅力(衣装、髪型、メイク)には本人も満足していると思います。撮影に入る前に、テストで確認することが出来たので、その違いが出ていると思います。イザベル・ユペールは特に心配していたのですが、監督と私と共にテストを見て、私たちを完全に信頼してくれました。後でラッシュも見なかったほどです。当初の心配をよそに、女優全員にセット入りしてもらえたので、作業がより簡単になったと思います。私は非常にフォトジェニックなダニエル・ダリューと彼女のきらきらしている目が特に印象に残っています。

歌のシーン
監督とは歌のシーンの照明は他の場面のそれとは全く違ったやり方で撮ることを早急に決定しました。ファニー・アルダンが踊るシーンの撮影で、スポットライトが彼女を追いかけながら他の部分は真っ暗になっているのを見て、考えが浮かんだのです。同じアイデアを他の歌の場面でも起用しました、ルディヴィーヌ・サニエとヴィルジニー・ルドワイヤン、そしてダニエル・ダリューの歌のシーンでは使いませんでした、彼女らには相応しくなかったからです。とにかくセットの巨大さがこの映画の照明をより人工的に、より回顧的なものにしているのです。例えば、窓の効果を最大限に試すのは難しくなってしまいました。(サイズの問題です)そこで内部の効果を高めようとしたのですが、結果的に現実味に欠けるものとなりましたが、1950年代にハリウッドのスタジオで撮影された映画の名残を感じてもらえると思います。



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