"私って、現実的なの”

28歳を目前にして、既に30を超える役を演じ、2歳になる娘と、常にマスコミには登場しない男性が彼女にはいる・・・ヴィルジニー・ルドワイヤンはうまく2つの生活をやりくりしている。もうじきホラー映画に出演する彼女に会える、震えながら。

ジーンズにスニーカー、ピチピチの黒いセーターに、急いでアップにした髪、ベッコウ縁の小さなメガネ・・・2人のヴィルジニー・ルドワイヤンがいる。もっといるのかも知れない。カンヌ映画祭(セレモニーの司会を2度務めた)で、スクリーンで、ロレアルのイメージキャラクターとして神々しいまでの彼女と、気負いなく挨拶のキスを交わしてくれる彼女、言い直す前に親しい口調になってくれるから、こちらもガードが甘くなる。今度はこっちの番だ。

 約束の場所は彼女が決めてくれたモンパルナスのカフェ。ヴィルジニーは常連だ。一人づつ笑みを浮かべて「こんにちは、元気?」、(ここ素敵でしょ・・・)と挨拶してくれる、「コーヒーとミントのヴィッテルをお願い・・・」気取らず、注意深く近視の視線をこちらへ投げてくれるクールな学生といった感じで、テーブルにマルボローを1箱置いた。(そう、禁煙してけど、また”彼女”は吸い始めている、一本どう?)美しくて低いその声の調子に一致する何かがある、すぐに距離が生まれる些細な何か。理性なのか。
 ルドワイヤンさんは夢見ごごちな人じゃない。彼女は考え、働き、生活し子育てして、しっかり者だ。神秘的でもないし、オーバーなところもない。10歳から28歳まですでに30近い役柄を演じてきたら、こんな風になるのだろうか?ヴィルジニーにとって、事は明快なのだ、実際の人生と全てが可能な映画の世界の間にある越えることが出来ない境目もそう。
 自己防衛の仕方?結果は上々。ほぼ申し分のない若い女性はたばこに火を点ける前に吸ってもいいと聞いてくるし、こちらの質問には卒なく答えてくれた。余計な言葉は一切ない。声の調子にも変化はなかった。それから彼女は現れたように去っていった。通りのつむじ風と人生の現実に吹かれながら。
 

ホラー映画で新しい役を演じているのには驚かされますね?
ええ。(にっこりする)初めてね。でもマージナルな映画ではないわ。ミステリアスで雰囲気があって少し怖いの・・・でも血がドバドバみたいな作品じゃないし。不安になって怖くなっていくの。

女性の映画ですね。男性は出てこないし、ラブストーリーもないし・・・
そうね。すべて1960年代のフランス、田舎の孤児院で展開するの。私が演じる人物アンナは若いメイドさんで、もう子供たちがいなくなった大きなお屋敷にやって来る。ここにずーっといるルーマニア人のコックと、大きくなり過ぎてあまりにも奇妙だから誰も引き取らなかった孤児のルー・ドワイヤンと一緒になるの。突然、さまざまな音が聞こえてきて、他にも人がいるって確信して、その調査を始めるのね。

幽霊と言うのは想像の産物なのではないですか?
そう、それが問題なの。アンナはノイローゼで誰かいるんじゃなかって思っていて、余計その症状がひどくなって行くわけ。自分の思い過ごしなの?それとも本当なの?この映画は神経症の女性のお話なのよ、女性だからそうなっているって訳じゃないわ、女性蔑視の映画じゃないわよ。でも自分の話のせいで、ノイローゼから抜け出せると思っているの。

幽霊の世話をするのにノイローゼである必要はないでしょうが・・・あなたには同じような問題はないのですか?
ないわ。私はアンナよりも現実的だから。だからこの人物に惹かれたのだと思う。でも私にはあんな想像はできないわ。でも私はイメージに興味があったの。私は信心深くないから。(微笑む)まだなっていないの。あるいは自分で知らないだけかな。でも正にその理由で私は女優をやっているんだと思う。自分とは違うものを信じることや、自分の知らない世界に自分を向かせたいから・・・

アンナは妊娠していますね。『サンタンジュ』は母性についての映画でもありますね・・・
自分が望まない、育てたくない子供を身ごもったの。そして母性を受け入れるか否かを自分で確かめていくうちに、お屋敷自体が人物になり、その答となっていく。アンナはあの家には死んだ子供たちがいて、彼女はそれを見つけなくてはいけないと思っているの:彼女はある種普遍的な母親になるのよ。

あなた自身小さな娘さんの母親ですが、今回の役のある面に関しては不安を覚えたのではないですか?
この映画をスタートした時は、リラはまだ一歳だったの。でもおかしな反響を覚えたわ。でもシナリオを読んだ時は、まったく問題とは思わなかった。別に平気って思っていたのね。でも撮影中は居心地が悪いだけじゃなくて、自分の役でより不安に、怖くなったの。

恐怖を演じるっていうのは子供時代の思い出が蘇って来たのではないですか?
怖さって子供時代の産物だとは思わないわ。年を取れば取るほど、怖くなるんじゃない?世界観もより現実的になって来るし、とても安心できる世の中じゃないしね。怖さの度合いも大きくなってるし、その理由もはっきりしてるわ。

怖いものはなんですか?
もちろん、近親者が亡くなることね・・・でも私はさほど怖がり屋さんじゃないわ。怖いのは動物とか昆虫とか(微笑む)もしそこにハチがいたら、外へ逃げちゃう。(笑)これは年を取っても変わらないみたい。

自分は強い人間だと思いますか?
自分の生活から逃げないようにしてるわ。私にとって強さってそういうことだと思う。自分の生活をして、意思決定をしていくこと。自分が意図したように生活したいって思うわ。他人まかせじゃなくてね。それに自分自身の人生をきちんと「演じたい」な。

楽天的であることは?
大好きね。悲観的でありたいとは思えないもの。強さで、私が思うのは、全てを請け負う「ワンダーウーマン」であることではないから。そんなの全然信じないわ。反対に楽天的で軽快さがなかったら、物事には意味がなくなってしまうと思う。笑わなくなって、食べたり楽しむことが嫌になったり、大大切なものが神格化できなくなったら、地獄のような人生だと思う・・・

物質的なほうですか?
ええ、そうだと思う。明確なものが好き。日常的なこと、料理したり、買い物に行ったり、家事をしたり、訪問を受けたり・・・でもこれみよがしにしたいって意味じゃないわ。自分が気持ちよくいられることの一つってこと。

自分はどんな母親だと思いますか?
お尻を叩くような母親とは思ってなかったけど、叩いてしまったことがあるの。「彼女は飴は食べないだろうな」と思っていたら、食べちゃったみたいな感じね・・・自分がどんな母親になるか理論的に考えていたのだけど、空中分解しちゃった感じね。母親になるのを教えてくれるのは自分じゃなくて子供なんだって気がしてるわ。

娘さんには何を伝えたいですか?
本当に自由でいて欲しいと思う。娘の邪魔にならないようにしたいわ。自分の好きなことが出来るようにね、やってみたいと思う仕事ができるように・・・プログラミングされたようにはなって欲しくない。

あなたは自分の家族から何を得たと思いますか?
まさに今言ったことも少しあると思う。私は小さい時から仕事を始めたから。両親には色んな意味で助けてもらっているの。自分たちの仕事とは全く違う知らない仕事をしている私を支えてくれたわ。15才の時、私を独立させてくれて、やれるところまでやってごらんって、チャンスをくれたの、私を十分信頼してくれて、十分愛情を注いでくれたってこと。あんな風に考えてくれたことにとても感謝しているの。今度は自分が母親になってみて、私が家を出て行った時、どんなに複雑な心境だっただろうって、私にもわかったから・・・

少女時代についてですが、あなたはオーベルヴィリエ出身のコゼットだと揶揄されるのにはウンザリじゃないですか?
オーベルヴィリエで育ったのは本当よ。でも家に住んで、家族がいて、弟もいたわ・・・何かに不自由したことはないし、父は露天商をしてて、市場で仕事をしてたの。当時、母は働いていなかったけど、後でレストランを経営したのよ・・・皆と同じよ。質素っていうだけ。

皆と同じような家族で育って、女優をやりたいっていう願望はどこから来たのですか?
事がどう発展したのかを説明するのは苦手だわ。ずーっと映画に出ているから。赤ちゃんだった頃も、広告の撮影をしていたわ。4歳だったから髪を染めたり、ダイエットの必要はなかったけど。(笑)少女時代には、水曜日の午後(訳注:フランスでは学校は半日となる)に撮影をやっていたわ、それでもらったお金は18歳になるまで銀行口座に貯めてあったの。仕事がイヤになることもあって、止めて、また始めて・・・でも10-11歳の頃、学校で将来何になりたいって聞かれたら、女優って言ったことはなかったわ、とても言えなかった。「少年裁判の判事」って言ってたの。女優は仕事って思えなかったのね・・・実際、自問したこともなかった。でも女優は職業なんだって理解して、それ以外のことはしたくないって気持ちを受け入れた時、両親のもとを飛び出したの。当時、もう何本か映画にも出れて、お金ももらったいたわ。

若くしての成功やお金って、自分に酔ってしまいませんか?
酔うと思う。特に『ザ・ビーチ』が公開された時は、「そんなことない」って思いながら、自分では気付かずに酔っていたと思うの。世界中を旅行して、お殿様気分だったわ。「これが初めての映画じゃないし、最後の作品でもないから・・・」なんて自分で思いつつ、何も変わっていないなんてつもりでね。20歳のころよ。

その酔いを冷ませてくれるのは何ですか?
自分以外の人ね、家族や友人・・・酔わせてもくれて、酔っているのを認識もされてくれるの。この業界以外の人たちもそう。(学生時代に知り合った友人はいまでも変わらない私の友人)そして業界の人たちも同じね。

今の家族構成は?
とても身近にいる両親と、それに自分の孫に夢中の私の母ね。自分の存在意義は孫だ言ってくれてる、素敵よね。友人たち、もちろん娘に彼女の父親・・・

そのパートナーとはもう十年近く一緒に生活していますね、なぜ結婚しないのですか?
私には信仰心がないのね。結婚には宗教的な意味があると思うから。

実生活で経験する以前に、映画で愛を発見したと思いますか?
ほとんどそう言えるかも(微笑む)でも同時に映画で演じる愛にはまったく実体がないから。これをいつも説明するのが、友人にするのも大変なの。「ハンサムな男性にキスして何も起こらないなんて言わないでよ」って言われても、何も起こらないんだから仕方ないわ。たぶん、自動作動みたいな感じになるのね。

14歳でマルチェロ・マストロイアンニとキスして、その後はジェラール・ランヴァン、レオナルド・ディカプリオ・・・抵抗するのも容易ではないんじゃないですか?
マストロイアンニやディカプリオにキスする時は、周りに200人のスタッフがいるの、3秒くらいしてカットまたやって撮影、「頭をそう動かさない!」とか、男性へのキスじゃない。画面に納められているものだから。書かれていて、ドアを開け閉めしたり、歩いたり、何かを手にしたりする動作と同じなのよ。

そんなことをしていると実際の男性との関係がややこしくなりませんか?
俳優も実際の男性よ。誘惑のあるなしには関係ないから。映画では俳優同士が、実際と同じく大恋愛をすることもあるでしょう。私は映画と自分の人生は別物だって区別しているから。

あなたは芸名を使っていますよね、ルドワイヤンは”本名”じゃない・・・
父方の祖母の名前なんです。父は祖母がどんな人だったかは知らないのですけど、伝え聞くところでは祖母は女優をしていたんですね。父がこの名前を使ってみないかって私に言ったんです。素敵なオマージュだし、とてもきれいな名前だって思ったから。

なぜ名前を変えたんですか?
解りません。(微笑む)祖母の名前だったし、少し変わるけど、変わり過ぎないから。(微笑む)女優だけど、なり過ぎないってこと・・・

あなたはロレアルのイメージキャラクターをやっていますね。グラマラスな面は少女の夢といった感じではありませんか?
この仕事は大好きです。とても気取った女優さんたちを見るのをいつも夢見ていました。私は毎日イメージキャラクター風な生活をしているわけじゃないですし、あれにはとても時間がかかりますから、でも定期的にやるのは大好きですね。私はこの仕事はとても面白いって思っています。

あなたは美しくあることには貪欲になれるタイプの人ですか?
えっ、全然違うわ。ううん、何も問題ない。(笑)美しさってライフスタイルとか学歴とか宗教とか同じく、私は興味ないの。まったくないわ。それに美しさって一過性のものだから・・・

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|彼女の好きな言葉 ”aimer”愛すること |好きな美徳 ”優しさ” |好きな欠点 ”短気” |好きな物 ”花瓶” |好きな料理 ”パスタ”|男性で好きなのは ”知性”|女性で好きなのも”知性” |自分で好きな部分 ”エネルギー”

|彼女が嫌いな美徳 ”慇懃さ” |嫌いな欠点 ”高飛車な態度、軽蔑” |嫌いな物 ”コンピュータ” |嫌いな料理 ”デザート” 
|自分で   嫌いな部分:   短気なところ、他人が短気なのはいいのよ(笑) 


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