セット・デザイン:アルノー・ド・モレロン/ARNAUD DE MOLERON

セットの準備
フランソワにジュリアン・ディヴィヴィエ監督の『自殺への契約書』を見せてもらった。(1959年製作のフランス映画、英語題名:SECRET MEETING で『8人の女たち』同様全て屋内のセット撮影である)それでセットのボリューム感の着想を得た。この映画の中で俳優の一人が部屋を歩いていくシーンがあり、その歩数を数えて、部屋の長さは約16メートル位だったろうと計算した。『8人の女たち』では、8人の女優がいる訳だから、それも計算に入れて仕事をしなければならなかった!フランソワは、自分の映画にスタジオ撮影の質感と演劇の面も持ち合わせることを希望していた。それは、スタジオではリアリズムを保つことがとても難しいから、幸運だったとも言えるね。まず家の模型を作って、それを土台にジャンヌ・ラポワリーと一緒に作業を進めた。壁の色をどうするかで何色も試してみたから、ミニチュア・ハウスを数回塗り替えた。ジャンヌは照明のテストを繰り返して、デジカメで写真を撮り、その結果を検証した。外の背景画にも同じテストをしたよ、家のセットと同様、きちんと仕事をしたかったからね。屋外のミニチュアも作成した。8人の女性たちが隔離されたような、閉じ込められた感じを出すのに必要だったんだ。彼女たちを囲んでいる大きな公園の感じを出すのに背景画が役に立った。準備時間が短かったね。1300平方メートルのセットで、全てが作りこまれなくてはならなかった:空間、ボリューム、照明それに動き。模型で何度もテストしたにも関わらず、実際に出来上がったセットの大きさには少し驚いたな。幅にボリューム感が出て、家具を置くのが大変だった、部屋の真中に置くしかないこともあった!装飾品もそれに則して選ばなければならなかったしね。演出が進みにつれてセットを分解するのは論外だった、なぜならフランソワは早撮りで、しかも一日の日程の間に大量にフィルムを回すからね。
 

色と家具
セット・デザインを担当していますが、私は自分自身を監督の意のままに動く俳優のようなものだと思っています。フランソワはスタッフたちと良い関係を保っていて、皆、自由に発言し、アイデアを出し合うのです。私たちは女優と彼女たちの衣装を強調するために、濃いモノクロの装飾品がいいだろうと意見が合いました。私よりも早くから作業を進めていた衣装デザインをしたパスカリーヌ・シャヴァンヌの衣装も見せてもらいました。装飾品の色を決定する前に、衣装の色や生地がどんな感じなのか頭に入れておく必要があったからです。部屋の壁にどんな壁紙を貼るのか考えるのに衣装は決定的な要素をもたらします。壁は最初は濃い緑色のビロードを貼っていたのですが、最終的には黒っぽい感じになりました。フランソワは、緑色を使いたい言っていたので、他にも何かを考えなくてはなりませんでした。色に意味付けしたいとは思っていませんでした、最終的に見た時不快感がなければいい訳です。少し不安だったのは事実ですね。グリーンの壁に、白い下地、黄色のソファーに、赤いカーペット・・・少し色がきつ過ぎるのではないか、オウムのような色合いではと思っていました。しかし、撮影終了後のデジタル処理で色の調整をする以前に考えていたテクニカラーを質感を高めることになったのです。また装飾係は家具と装飾品に関しては、他の映画で使用された家具を使わないように細心の注意を払っていました。フランソワは自分の映画に出てくる家具には非常にうるさいんです。彼が色々提案し、そこから私が選びました。しかしいくつかに関しては、大目に見たところもありますけどね、例えば、『焼け石に水』で既に使っていたあの明かりが点いている怪物見たいな混血児の銅像です。

基点
家の作りについては、19世紀の英国の邸宅を参考にしました。この家が典型的なフランスのプロヴァンス風、あるいは田舎風な作りである必要は全くなかったのです。フランスには点在しているとは言い難い1910年あるいは20年代のアイルランドか、イギリスのお城や別荘のような感じをイメージしていました。外からの見た目と内装やディテールにも一貫性を持たせる必要がありましたからね。例えば、本編に出てくる車は1950年代終わりに作られたドーフィネです、大きさからすぐに分ると思います。(背景画との関連で車を大きくすることが無理だったのです)最終的に『8人の女たち』の家は現実感を削ぐために、形骸化させようとした訳です。



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