PARIS MATCH 2000年2月号

インタヴュー:ミシェル・ペイラール

パリ・マッチ:あなたには似つかわしくない物々しい名字だと思うのですが、ルドワイヤンと言うのは本名なのですか?

ヴィルジニー:いいえ。実は祖母の名前なんです、私の父の母の。この仕事を始めた時、父に自分の母の名前を使ってくれないかって頼まれたんですね、伝え聞くところで祖母は女優をしてて、父も母の記憶はないのですけど、私はきれいな名前だと思って。

パリ・マッチ:あなたは慎ましい地域の出身だとよく強調されていますが、そう言われるのはひどいと思いませんか?「慎ましい」と言う単語には節度と服従があると思いますが。

ヴィルジニー:とてもイライラするわね。自分がどんな出身かを誇りに思う事自体、変だと思うわ。皆どこかで生まれる訳で、大騒ぎすることじゃないでしょ。ほとんどの人は同じだもの。自分が例外的だとは思えないな。誉められることはないわ。オーベルヴィルエで生まれたこと?第一、それならパリ出身と言うことになるし。どうでもいいわ。両親を誇りに持ってないとかじゃなくてね、自分が愛する人達だもの。労働者階級が住んでいる町の出身と言っても、家に住んでいたし、ボロを着てた訳でもなく、スキーにも行ってたし、万事順調だったわ。パンと水だけの食事で大きくなった訳でもないしね。反対に、フランス人だけじゃなくて、世界中の様々なバックグラウンドの人たちと成長したから。でもいづれにしろ、自分のバックグラウンドが標準だとか、それで人より自分は優れている、知的だと言う事にはならないもの。私のような経歴の人間が女優をやっているのは二世俳優やブルジョワ出身よりも華々しいってことになるのかしら?ええ、父は市場で働いていたけど、だから何なの?

パリ・マッチ:中世では、屋台の店の人たちや旅芸人、街角の歌手などの"流れ者"を洗礼して、領主の権力を認めていた"信仰のある"定住者たちと対極をなしていました。でも後者に夢を見させていたのは常に前者だったのですよね。だからあなたはお父さんの職業と同じ仕事をしていることになるのでしょうね。

ヴィルジニー:ええ、それは私が女優になりたいと思ったことに関係していると思います。15,6才の頃、父について市場へ行ったことがあるんですね。人を呼び止めて、あれやこれやと商品を買うように説得するのはコメディア・デラルテなんです。市場では、人のプライバシーにまで踏み込んで行ける正当性のようなものがあるんですね。客が何を聞きたいのか父はいつも知っていました。デモンストレーションする人は一時間位、何でもしゃべれるんです!彼らは桁外れの俳優ですよ。私の義理の父、母の夫も屋台の仕事をしてて、彼らの娘も同じ仕事をしてます。私にはとても魅力的な世界ですね、実体験で色々勉強できますから。今では私の父は市場ではなくて展示会で仕事をやっています、少しは出世したんですね!(笑)

パリ・マッチ:慎ましいと言うのは高慢の反対でもある訳で、ここまで来るのは高慢さも必要だったのではないですか?

ヴィルジニー:そうですね。でもそれは私の出身とは必ずしも関係あるとは思いませんけど。俳優になるためには高慢さも必要だと私は思います。常に誰かと一緒ですし、他人の欲望に負うところもありますから。映画を作るのは素晴らしい事ですけど、監督があなたを撮ってみたい、こんな役を演じて欲しいと思ってもらう必要がある訳ですから。いつもうまく行くとは限りませんからね。自分の事を考えてもらえないこともありますから。オーディションを受けても、ダメなこともあります。それは仕方ないことだし、そう言うものだから。高慢さも必要ですよ、自惚れってことではないけど。自分達を取り巻く環境に飲み込まれないようにするために高慢さがいるんですよ。

パリ・マッチ:屈辱的な思い出もありますか?

ヴィルジニー:いいえ、屈辱的な思いはないですね。自分はどうでもいい存在と感じさせらせたことはまだないので運がいいなと思っています。そんな気分にさせられる前に帰って来てますね。でも凄く居心地が悪い思いをしたことはあります。それに悲しい思いをしたこともあります。でも早くからこの仕事を始めて、ごく自然に仕事が続いているのですが、それは全く偶然と言う訳じゃありませんよ。

パリ・マッチ:一番傷ついた拒絶って何でした?

ヴィルジニー:正直言って、分りません。でもそれは仕事とは関係ないですよ。いつも女優になりたいと思ってきて、女優になった訳ですから。その点は私には欠かせない事ですね。だからと言って好き嫌いに関わらず、人は意見を持ちますから。悪く言われたら、当たり前ですけど、傷つきますよ。私は批評を読むほうなので、本当はその必要はないのでしょうけど。自分を危険にさらしたくないし、自分の人生や要求を疑いたくないですから、自分をプロテクトする方がいいでしょうねえ。

パリ・マッチ:今度の映画では、ディカプリオと共演で、ヒッチハイカーを演じていますがあんな風に旅行したことがありますか?

ヴィルジニー:いえ、ないです。少しは色々動いてみた唯一の旅行は、アフリカのセネガルへ行った時です。もう20年家族でそこに住んでいる友人と一緒だったのですけど。バックパックを背負ってなんてした事がなかったんですね。私は団体生活って、ぞっとしてしまうんです。普通、太陽が照っていて浜辺でなんて言うのにはすぐウンザリする方なんです。もちろん是非行ってみたいと思う国もありますよ、例えばキューバとか。取りつかれていますね。アフリカも大好きです。エチオピアかジブチにも行ってみたいですね。(行き先は)自分が知っている人に良く関係がありますね。私の義理の母は中国人で、それで私は台北で映画に出たんですね。英語を話さない俳優と中国語は出来ない私が色々な話をしたんですから。三ヶ月間、無重力状態のような気がしましたけど。

パリ・マッチ:「ザ・ビーチ」に出て来たような、もうそこから戻りたくない地上の楽園みたいな経験はありますか?

ヴィルジニー:私は南西に家を持っているんです。それが私の「ビーチ」ですね、場所もそうですが、人と生活の仕方もそうです。私にとっては楽園は幸福と同義語ですね。自分が愛する人達と一緒にいる時だと思うんです。友人たちが来てくれる家に自分がいる時ですよね。1週間位居てくれて浜辺へ行ったり、そうじゃない時は食事を作ったり。それが幸福なんでしょうね、それが私のパラダイスと言えると思います。

パリ・マッチ:家はいくつあるんですか?

ヴィルジニー:一つだけですよ、パリのアパートは私のではありませんから。パリにいるのは大好きです、自分が生まれた町だし、友人も家族も住んでいますから。パリへ帰る時はいつも嬉しくて。でも仕事をしていない時は南へ行くんです。別荘じゃないんですよ、一年中閉めっぱなしでもないし。生きている家です。特にそこに行く時は荷物を持って行きたくないんですね。パリ同様、いろいろ置いてありますから。食器を持っていく必要もないし、三日間過ごすためだけに行くこともあるんです。

パリ・マッチ:じゃあ家族で住める家なんですね?

ヴィルジニー:ええ、家族の家になったらいいですね。そのために買ったのです。部屋数も多いしみんなの部屋があるんですね。

パリ・マッチ:あなたの経歴には「モデルの女の子」と言う側面がありますが、皆と同じく、イタズラもしました?

ヴィルジニー:モデルの子がどんなのかは私は知りませんね。ただ話題に出来るような話は特別ありませんねえ。学校の勉強はきちんとしたし、あまり嘘つきじゃなかったけど、私は結構意地悪でしたねえ。あの頃は自分がしたかった事以外は、興味が少なかったですね。自分がとてもあどけないって事はなかったと思います。でも大好きな両親がいて、女優になりたい私を応援してくれましたし、彼らとは別世界ですけどね。相対的に見て、この世界を信じてくれたし。あの距離感が私には良かったんでしょうね。16才で独立させてくれた時も、ドラマチックな感じはなかったですから。

パリ・マッチ:子供時代の最高の思い出は?

ヴィルジニー:弟が生まれたことですね、でも私も小さかったし、4才半でしたから。最高の思い出はバカンスですね、ゲームとか夜になっても寝ないぞって騒いだり、弟と隠れてテレビを見るのにズルしたりですね。

パリ・マッチ:でもあなたは真面目で理性的だと思われているのはなぜだと思います?

ヴィルジニー:分りませんね、多分この低い声のせいじゃないかな。それにきちんと話をするのが好きですし。でも人って結局自分の事を話題しますよね。形式ばった話でも、例えば、子供のモデルの話題もそうですが、簡単に行間が読めますから。

パリ・マッチ:でも時代があなたの世代を真面目で責任感のあると言うように見なしたいのではありませんか?

ヴィルジニー:ええ、何だか一方的ですけど。2000年は60年代とは違うと思います。より灰色で、あいまいですよ。今の若者は理想を得るために戦うことなどしませんから。女性だって、中絶とかピルとか子供を産んで主婦になる以外のために行動を起こす必要もないんです。私達の世代は、その意味でより軟弱で主義・主張にあまりこだわらないですよ。地理的なバリアが消滅して全てが集まろうといている時代を生きているのですから、そこで何かを主張するのは、少し複雑なことだと思います。

パリ・マッチ:19世紀のアングロ・サクソン文学をあなたが愛読するのはそんな逸脱感、ダブーへの嗜好からではないのですか?

ヴィルジニー:そんなに知的な文学とは思えませんね。実際かなり屈折していて懐古趣味です。例えば、イーディス・ウォートンは容赦ない風俗描写をしてますね。自分の枠から出ようとする女性とか。彼女の描く世界は示唆に富んでいます。もちろん皆自分の基準をそこに見出そうとするのですけど。私がウォートンで好きなことはドストエフスキーで好きな事でもあるんです。二つの世界の中間、狂気の果てで、全てに逆らって何かを起こそうとする時の。

パリ・マッチ:あなたの好きなドラッグは?

ヴィルジニー:タバコです。それと自分が愛する人たち。それもドラッグですね。私はとても排他的なんですよ。耽溺しやすい性格なんですね。気をつけてますけど。

パリ・マッチ:それでいつも自制してる印象を与えるのではないですか?危険は冒したくないと?

ヴィルジニー:いいえ、そう言う意味じゃなくてね。自分の話題でとか、ドラッグを試して見たいとかではなくてです。自分を試したいんですね。自分を良く知るってことです。問題は、私は中途半端に出来ないんですね。悪くなったら、とことん悪くなって。極端なのが好きなんですね。いつも全てがゼロかなんです。特に人間関係がそうですね。だから建設的な行動で強さが必要なんです。実際私は考え方が硬いと言うか、意固地な性格ですね。

パリ・マッチ:同棲しているのですか?

ヴィルジニー:ええ。

パリ・マッチ:いつも何かを決定すると言うのは問題にはなりませんか?

ヴィルジニー:それが問題になる人とは暮らしていないから平気よ。彼は何も決めないってことではないけどね。決め方が違うの。だからバランスが取れるわけ。私が決めてるって思わせてくれている訳だから頭が切れる人よ。とは言っても一緒に住むのに私は滅茶苦茶気難しいと言うわけでもないわ。気まぐれって言うのが分れば、それに受け入れるのは簡単だと、私は思うけど。

パリ・マッチ:あなたの話し振りだと、年上の方なんでしょうねえ。

ヴィルジニー:ええ、どうしてかなあ。いつもそうなのよね、親友は同じ年代だけど、兄弟みたいな感じ。実は私、「囲われ」たいんですよ。自分がしたいことが全部は出来ないって言うのが好きなんですよね。相対的にしてくれる誰かが必要なんです、そのためには人生経験の多い人のほうがいいみたい。

パリ・マッチ:どうなったら平常心じゃなくなりますか?

ヴィルジニー:拒絶されることね。愛されないとかではなくてね。あと理解出来ない事があると苦しむほう。対人関係がうまく行かないと呆然としちゃう。全て理解する必要はないと分っているんだけど、ダメなのね。自問が多すぎるのかな。

パリ・マッチ:何もしてない時はどうしているんですか?

ヴィルジニー:そう出来ないのが問題ね。私ぼーっとしているのは無理。でもベットに横になるのなら平気。読書したり電話で話しながらお風呂に入るもの好きね。買い物もそう。スーパーに行くと、興奮状態なの。気に入ったオリーブ・オイルが見付かったって走り回ってしまうのよ。

パリ・マッチ:無駄使いしますか?

ヴィルジニー:少しだけね。今の生活で不便ないから無駄にお金は使わないわ。パリで自分の好きな区で生活することも出来るし。自分の家もあるしね。

パリ・マッチ:仲間が大切・・・

ヴィルジニー:もちろん。私の一番の夢は自分の仲間一人一人が住めるビルをパリに持つことなんです。15人くらいの人たちね。全員が私の知り合いじゃなくて、友人の友人もいます。各人各様でね。

パリ・マッチ:あなたに聞かずには居れない質問が最後にあるのですが。

ヴィルジニー:ディカプリオでしょ?

パリ・マッチ:そうです。何百と言う目にさらされると知りながらスターとキス・シーンをやるのは大変ではなかったですか?

ヴィルジニー:全然。考えたこともなかったですね。それに水中で息が出来ないし、撮影が難しいシーンでしたから。しまいにはなんかおかしくなってしまって。とにかく相手がディカプリオと言うのもすぐに忘れてしまったくらいで。今ではディカプリオと聞いても他人事って感じで。俳優は皆同じですから。この種のシーンはいつもとても恥ずかしくて。一番苦手ですね。でも大変って事はなかったです。

パリ・マッチ:彼はどんな人ですか?

ヴィルジニー:知的な人です。今では隠れて生活しているのにとてもバランスのとれた人。自己管理がうまいですね。でも彼のことを良く知っている訳じゃありませんから。4ヶ月間一緒に仕事をして、その間に様々な事を話しましたけど。彼も私もラップが大好きなんですね。グッド・フィーリングでしたね。とても面白い人です。観察眼の鋭い人ですよ。この世界での彼の行動を見ているのがとても楽しいですよね。

パリ・マッチ:彼はうまくやって行けると思いますか?

ヴィルジニー:そう思いますね。彼はとても両親に可愛がられています。特に父親にね、撮影期間中に1度か2度来ていました。それに凄い俳優です。スターであるなしに関係なく、自分の仕事があそこまで好きなのは素晴らしいですよ。白けた青年なのかなと思っていたら、全然違うんです。仕事が大好きなんですね。カメラの前にいる時が最高に輝いているんですよ。彼にはユーモアもあります、彼には驚きますよ。★

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