Personality N°4, Avril 1998
1998年 パーソナリティ4号

どんな風に進めようか?

彼女(ヴィルジニー)が賞賛する本を一冊づつ、なぜお気に入りなのか、理由を聞くことにしてみよう。全てが無味乾燥にならないのは、一冊一冊に深い思い入れがあるからだろう。読書という真剣な事柄に望む彼女は、近視用の小さなメガネをウズウズしながらかけた。
 

1. ヘンリー・ジェイムス著:「ロデリック・ハドソン」

「あらすじを話しましょうか?アメリカの田舎に住んでいる若い彫刻家のお話で、あるパトロンがこの青年の天才を見抜いてローマへ連れていくの。この彫刻家は同時に栄光と疑惑に苛まれて、地獄に落ちていくの…」

「貴婦人の肖像」の男性版みたいな感じだね?

「そうとも言えるわね。複雑で、話すのが大変ね、ヘンリー・ジャイムスはいつもそうなのだけど、全てが混乱しているから。でもとても、とても美しいのよ。」

2. イーディス・ウォートン著:「美しい結婚」

「イーディス・ウォートンはヘンリー・ジェイムスの親しい友人だったのね。作家としては彼のほうが上だと思うけど、私は彼女の本のほうが好きなの。彼女は凄く現代的だと思う。自分が置かれた状況から脱したい女性ばかり描くし、アメリカの上流階級の話しかしないし、それで終いには描写が目に浮かぶようになる。例えば、この本のヒロインも私は大嫌いだけど。興味持ってもらえるように言うと、「タイタニック」のケイト・ウィンスレットはイーディス・ウォートンの作品の登場人物みたいな感じって言えるわね。」

3. 谷崎潤一郎著:「鍵」

「これは本当におかしくて、衛生的なのね。清潔さのことばかりを話題にするんだもの。自分よりもずっと若い奥さんを持った男のお話で、彼女を満足させるために、自分の娘の婚約者と関係させるの。本当に笑うしかないもの。」

ティント・ブラスが監督した「鍵」を見た?

「見てない。」
ステファーナ・サンドレリが出てて、ムソリーニ政権下のイタリアに話を置き換えているんだけど、すごくエロチックな映画なんだ…

「谷崎の作品はどれも素晴らしいわ!痴人の愛もロリータの始まりみたいで、15歳の少女に恋する日本人公務員の話なのね。信じられないようなストーリーだけど、同時に刺激的。」

エロチック文学も読みます?

「少しわね。例えばアポリネールの「一万一千の鞭」とかはあまり好きじゃなかった。サドも面白いけど、言葉にすぐ飽きちゃうな、古いのよね、みんな…」

アリーナ・レイエスのようなジャンルのもっと現代的な小説は?

「私、現代文学って、エロチックとかに関わらず、よく知らないのね。自然と、古典のほうに惹かれる。オリヴィエ出版の物とか、エマニュエル・バーンハイムやミチカ・アサイヤスの作品は例外だけど。彼らのはきちんと読むわね。ウィル・セルフも好きだけど、エロチックな文学ではないわ。」

4. ジーン・リース著:「サルガッソーの広い海」

「「偉大なオーグスティンの波止場」を書いたのも彼女よね。植民地で育てられた女性でアル中になってしまうの。とにかく素晴らしいの。」

この作家の事は誰かに教えてもらったの?

「オリヴィエ・アサイヤスにね。「冷たい水」を撮っていた時に、この本を読んでって言われて。おそらく演技の助けになると思っていたんでしょうね。でも文学はとても主観的なものだから。ジーン・リースの視点はオリビエのそれとは全く違っていると思うわ。」

本の)カバーに蝋が付いているけど、どこで付けたの?

「家ではいつも蝋燭をつけているのね。よく、たれちゃうのよ。」

5. セギュール伯爵夫人著:「デュラキン将軍」

「ああ、これ児童文学なんだけど、彼女の作品はぜんぶ好きよ。ちょっと前にまた読み返したのね。悪くないと思うわ。子供の時は、すごくおとぎ話っぽく思えたけど、凄く残酷なのね、それに官能的なの…」

どうしてセギュール伯爵夫人を読み返そうと思ったの?

「わかんない。これは大好きだったのね。」

6.オスカー・ワイルド著 「アーサー・サビル卿の犯罪」

「オスカー・ワイルドは全部好きよ。強烈なエクリチュールね。これは殺人、エスプリの固まり、金言のお話なの。「ドリアン・グレイの肖像」から読んだんだけど、好きにはなれないと思っていて。とてもおかしくて、シニカルで、ホモだけど、性的なところは全くないのね…」

"ブリリアント"な面にはうんざりしない?

「想像力を掻き立ててはくれないわね。でも彼の場合は小説を読むっていうより作家を読むって感じ。いつも明らかな偏見があるわね。具象文学ではないわ。」

彼のお墓を見に行ったことはある?

「ううん、考えたこともなかったわ。」
 
7.ヒューバート・セルビー・ジュニア著:「刑務所」

「私はジェニファー・ジェイソン・リーが好きだがら「ブルックリン最終出口」をまず見たのね。あの映画に原作があるのが信じられなかった。すごく視覚的で、暴力的だったから。「刑務所」は彼の小説の中で私のお気に入りなの」

オスカー・ワイルドとは正反対だね。

「そうね。読んだ?」

いや、これはまだ読んでない。

「本当に素晴らしいわよ。殺し屋になってしまうアル中のお話なのね、誘惑に負けて…読んでね!」

   
8. ハワード・ブーテン著:「ミスター・バターフィールド」

「実は「5歳で僕は自殺した。」を持って来たかったのだけど、家で見つからなかったの。それでこれを持ってきたんだけど。それに私は彼がラネラで道化師をやっているのを見たことがあるの。凄いのよ。子供の言葉で書くのは本当に難しいと思うし、同じジャンルで言ったらサリンジャーと同じくらいうまいと思うの。翻訳も素晴らしいわ。ジャンー・ピエール・カラッソの訳で、彼は最近ではサファイアのプッシュも訳してる。あれも持ってきたかったなあ。大好きだったわ。」

9. モーパッサン著:「ある女の一生」

「モーパッサンを読み始めたのは11、12歳頃ね。単に気晴らしじゃない読書をしてみたい、文学の味わいとでも言ったらいいのかな、それを味わせてくれた最初の作家よ。彼の作品では「マダム・バプティスト」も好きだけど、自分の家になかったから。」

線が引いてある文章があるけど… 本によく書き込みをするの?

「ええ、でもこれは学校で勉強したから、線が引いてあるのよ。」

10. ドストエフスキー著:「罪と罰」

「ドストエフスキーね。この作家について何を言ったらいいのかなあ?お話は大げさなものではないけど、そのテーマは深遠なものだわ。でも不満なのはプーシキン同様、ロシア語が分からないから、翻訳は素晴らしいけど、言葉が醸し出す音色を感じられないことかな。」

これは新訳ではないよ…

「あっ、そうか、新しいのかなと思ってた。失礼!」

11. アリソン・ルーリー著:「家族のいざこざ」

「これは知らないんじゃない?」

マジ?

「知ってるの?いいわよねえ…この作品は本当におもしろいのよ。」

フィリップ・ロスが後書きを書いてるよね。読んだ?

「ううん、彼はポール・オースターとかダニエル・ペレック同様、私の中では欠落してしまっているのね。」

12. キャロリーヌ・キーン著:「馬術教師アリス」

「"アリスと幽霊"は大好きだったわ。」

この役を演じないかって言われたことない?

「ないわ、でもそう出来たら嬉しいな。」

13. ヴァージニア・ウルフ著:「船出」

「これは彼女が最初に書いた小説なんだけど、私は彼女の作品は全部好きって訳じゃないのね。自伝的な要素と小説が混ざり過ぎてると、私は興味が薄れてくる、アナイス・ニン見たいにね。特に全部読むのならなおさらね。でもこれはとてもいいヴァージニア・ウルフの作品だと思うな。」

誰が彼女を殺したのか知ってる?

「それ、笑えないわよ。」

14. マルグリット・デュラス著:ロル・V・シュタインの喪心(ロル・V・シュタインの歓喜)

「デュラスは大好きよ、この作品は私のお気に入りなの。」

彼女は泣きながら執筆したって言うけど、読みながら泣いてしまうほう?

「ええ、でも彼女は嘘つきだから全てを信じる必要はないわよ。ローラ・アドラーがデュラスの自伝を出すから、それを読もうと思ってる。実際にデュラスと面識があった人たちを私は知っていて、彼女の話をいろいろしてもらったの。実際に知り合いになりたいとは思わないけど、彼女の作品は大好きよ。」

15. イーディス・ウォートン著:「海賊たち」

「最後は、またウォートンなんだけど…」

うん、でもそれはルール違反だよ。説明したよね?

「同じ作家の本を二冊選んではいけないの知らなかったわ。」

言わなかったっけ?

「ううん、聞いてないわよ…」

音読したりしますか?

「ううん、リサイトはすごくへたなの。それに私、速読だから、言葉を飲み込んじゃうのよ。」

じゃあ、誰がに音読してもらうのは?

「大嫌い!それではなにも「見えなく」なるもの。 分からなくなっちゃう。」

一気に読むの?

「いつもそう。 いつも読書してるの、(撮影)現場でも、 撮影の合間でも、お風呂のなかでも読むわ。」

それは、危なくないですか?

「うん、そうね。中に落としちゃった本がたくさんあって、後で乾かすはめになってしまったわね。」

本は大事にするほうですか?

「そうでもないわ。 本はどこへでも自分について来るものって思ってるから。本はね、単に紙じゃないのよ、生き物なの。あなたについてくるの。汚れて、ベタベタしてくるのね。家にある豪華本は全部、文庫で読んだものばかりだもの。プレヤード版は、美術品だけど、私はあれでは読まないな。」

海辺で読書しますか?

「どっちかと言うと雑誌かな? パラパラ眺めて時間を過ごすわね。」

ページにどうやって印をしてます?

「(ページ)数を憶える。」

忘れませんか?

「絶対忘れない。」

一番最近買った本は?

「エディット・ワートンの短編集とヘンリー・ジェイムスの自伝と日記よ!」★

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