CHARLOTTE RAMPLING - LUDIVINE SAGNIER  Affinit?s ?lectives
(Studio Magazine nr 189 - Mai 2003)
 

『スイミング・プール』で、フランソワ・オゾンは『まぼろし』のヒロインと『8人の女たち』の新人女優とのスリリングな出会いを演出して見せた。この驚くべき女優2人に対談をしてもらった。

カンヌ映画祭はまだまだ先の事のように思える。シャンゼリゼ通りに近いこの閑静なレストランで、『スイミング・プール』のヒロイン2人に鮭の料理とコカコーラ・ライトを前にルベロンの空の下、フランソワ・オゾンの演出で2002年の春に撮影された作品の話をしてもらった。シャーロット・ランプリングは心揺さぶられる『まぼろし』後、2度目となり『焼け石に水』『8人の女たち』後のリュディヴィーヌ・サニエは3度目の出演となる。2世代を代表する2人の女優は、互いに異なる方法で、この若手監督の作品を通じて対照的な役を演じてみせた。ランプリングはリアルで親密な役、サニエは幻想的で演劇的な役で、2人は『スイミング・プール』で合流する。この見かけに惑わされてはならないパズルのような作品でランプリングはルベロンへ静寂とインスピレーションを求めてやって来た冷淡なイギリス人作家を演じ、リュディヴィーヌ・サニエ演じる編集者の娘の目にあまる言動に魅了されていく。創造者と彼女のミューズ。吸血鬼とその餌食。それは現実と想像でもある・・・

フランソワ・オゾン監督は独特のやり方で撮影準備をするそうですね。脚本を書く前に俳優たちと会い議論する・・・この作品への出演依頼にはどんな事を言われたのですか?

リュディヴィーヌ・サニエ:私の決定打は、もちろんシャーロットの名前を言われた時!

シャーロット・ランプリング:うまい始まり方だわね!(笑)

サニエ:最初はフランソワは言葉少なに説明してくれる事を受け入れるしかないの。今回の場合なら「シャーロットと君と一緒に一本撮りたいんだ」ってことがメインね。シャーロットはフランソワの映画で素敵な刻印を残してくれたし、私は監督の作品ではまだまだってところもあるから、シャーロットと共演でこの作品に出られてとても良かったわ。

ランプリング:私はイギリス人女性で自分と折り合いがつかないしスランプに陥っていている作家の役で、執筆のためにプロヴァンスの別荘へ行く・・・フランソワはシナリオを書くために4ヶ月位かけていたわね、話し合いをするのに定期的に会いに来てくれたけど。

2人がお互いに初めて会ったのは?

サニエ:かなり印象に残っているわ。でもフランソワはシャーロットの話をよくしてくれたから、私は魔女に会うんだとは思わなかったわ!(笑)シャーロットは私を受け入れてくれたから私も怖気づかずに済んだの。『8人の女たち』の時よりも自然な感じだったわ、あの作品はスターたちの映画だったし、力とグラマラスが強調された作品だった。でも『スイミング・プール』ではシャーロットはもうフランソワの作品への出演経験があったから、私にも安心して仕事が出来たわ。

ランプリング:最初に会うときは、少しガードが固かったりすると、良い印象を与えることもあるし複雑な印象を与えることにもなるわね。私はサラ・モートンの生活の中にリュディヴィーヌが突っ込んで来るって言うのが気に入ったの。私が演じた役の乾いた生活に官能性が入って来る。あなたに会えるのを本当に楽しみにしていたのね。それに22歳のあなたと50代の私の間に、素晴らしい繋がり合いとエネルギーがあったわね。

敵対する2人の役を監督はどう説明したのですか?

サニエ:監督はまずシャーロットの役柄をどんな風にしたいか彼女に話していたの。それから少しづつ私を罠にかけたの!(笑)シャーロットと私の矛盾をどうにかして、それから私たちが演じる役サラとジュリーたちの矛盾をどうにかするって言ってたのだけど。でもどうなるのか私には分らなかったから。凄く下品で大抵は裸でいる女の子を演じるんだって分ったのがかなり後のことだったの。

ランプリング:お互い両極端なところまで押し込まれたって感じだったわね。私には閉鎖的で自分と折り合わない、非社交的人物を演じて欲しかったわけだけど、それ以上のことはなにも言わなかったの。監督は撮影中も登場人物たちの秘密を守っていたのよ。


サニエ:(ランプリングへ)私にはあなたの役の事を何も説明してくれないんです。私の役も説明してないでしょう。おそらく私がどんな役を演じるのかを想像して欲しかったでしょうね。監督は自分の要求を話さないんだけど、もう出来てしまったことや現実化されて来ていることで面白いと思うことの話はしてくれる人なの。でも自分が求めていることは説明してくれないのね。それを生きるのは私たち俳優なわけ。

完全な形のシナリオは読まなかったのですか?

ランプリング:いえ、読んだわよ。でも各シーンの内側や記述的なことに関してはとても慎重だったわ。どんな解釈でも可能なようにと自由な部分を残していたのね。

サニエ:あれにはたくさんの人が驚くと思う。今回初めて監督と仕事をした人たちには映画の授業を受けているような感じだったと思う。でも監督は説明しないでいろいろやるから。まず(自分が求めるものを)感じてもらえるようにやっているのよ。

リュディヴィーヌ、シナリオを読んで自分の役を理解しながら、何を感じましたか?

サニエ:感じたのは興奮だけよ。今になって怖気づいているけど。「凄い!私には何ができるのかしら?」から「どうしよう、私には何ができたのかしら?」へ変わってしまったけど。(笑)

ランプリング:そうね、時間が経つにつれて、不安があちこちに移っていくのね、でもそれが消えてしまうことはないわ・・・でも私が裸になって年取った庭師を誘惑するシーンでは、少し挑発的になって、がんばらなきゃって自分自身に言い聞かせていたのよ!(笑)

サニエ:オゾン監督の権力に苦しめられるのは自分独りだって思っていたの・・・映画のスタッフなら誰であろうと、監督に完全に身を委ねるなんて信じられないって思ってしまうの。

でも既に一緒に仕事を経験したことのある監督となら、少しは安心できるのではないですか?

サニエ:監督へは信頼と同時に疑惑も起きるから。

ランプリング:子供時代の友人と話せば、人柄が分るわね。(笑)私に関して言うと監督の世界へ溶け込む準備が出来ているって意味では、事は単純なのだけど。『まぼろし』の撮影が終わる頃には彼の人柄も分ったし、ある種の侵食作用が生まれたのね。でも同じ監督と2度目に仕事をする時は、慣れってことに気をつけなくてはだめ。オゾン監督とは、その慣れはなかったの。彼は人を煙に巻いてしまう才能があるから。でもそれで欲求不満になるとかじゃなくて、ほとんど科学的とも
思えるやり方なのよ。
 
                         
サニエ:監督とシャーロットの関係は私のとは違うもの。彼女は監督の世界を築いた中心人物の一人だけど、私は監督の思いのままに変えられてしまう。彼と組むと毎回、私たちの関係が複雑になって行くって気がするの。それでいいとも思うのね、対立の中での方が2人ともうまく仕事できるみたいだから。監督とは爆発するような関係が必要なんだって思うの。でもシャーロットは波風立てずに仕事をする。彼女がよく私たちの仲介をしてくれて、私に頭を冷やしたらって言ってくれてたのよ。

ランプリング:でも頭を冷やしたがらないんだもの!(笑)とにかく人は仕事をしたいと思える関係をいつも選ぶものよ。

サニエ:そうね!シャーロットの助けで分った事は、対立的な関係を望んでいたのは私自身で、私は犠牲者でも何でもないってことね!

ランプリング:この考えさえ一度分れば、いつも同じ方法で反応できるはずよ・・・原因も判っているわけだし。

サニエ:実際、私にはたくさんの経験がある訳じゃないし、直感的に仕事をするから、瞬間ごとに起きてる事を分析するのがヘタなのね。シャーロットは自身の経験を私と共有してくれて、この波風立ちやすい監督との関係は、私が演じた役を創造するのにとても助けになっていると教えてくれたのよ。

役に入って行くのは大変でしたか?

サニエ:ぜんぜん。『めぐり合う時間たち』のヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマンが演じた)みたいに、ポケットに小石を入れて、水の中に入って行くみたいに自分を混乱させるのってワクワクしてしまうの。現実とフィクションの間に、仮死状態と啓示の間に身を置けるなんて楽しいもの。

この作品では多かったヌードのシーンはどんな風に取り組んだのですか?

サニエ:最初はダイエットからよ!(笑)シャーロットがラザーニャを食べている間は、私は魚と蒸した野菜で我慢していたの。

ランプリング:ある時にはもう食べなくなってしまったわね。拒食症になってしまったのかと思えたほど・・・

サニエ:食事制限によって、味覚がなくなったの・・・痩せすぎって思えたくらい。でもあのダイエットとプールサイドを行ったり来たりすることで、自分の体に違和感がなくなって、裸になるシーンに自信が持てたわ。

でも随分下品な子でしたね、マネキュアが剥がれた爪、厚底の靴に、趣味が良いとは言いがたいヘアスタイル・・・

サニエ:でも演じるのは楽しかったわ。参考にしたモデルがいたの:ロフト(ストーリー)のロアナ。

ランプリング:言ってしまっていいの?(笑)

サニエ:でも風刺が目的なのじゃなくて、人物の感動的な面を見せることだから。ヌードのシーンは他のシーンとは違う取り組み方になるけど、オゾン監督はいつもフレームを自分で決めるから、カメラを通して私たちの間にある種の親密さがあるの。お互い言葉を必要としないの。とにかくカメラってとても官能的な物体なのよ。それにこの作品ではカメラマンが撫でるような照明を当ててくれたから、日向ぼっこしている子猫のような気分になって、それでセクシーでいられるのだと思うわ。

シャーロットは、このカロリー0%のヨーグルト食べてコカコーラ・ライトを飲んで、凄いシェミーズを着た、この堅物と思える自分をどう演じたのですか?

ランプリング:この作品で着たシェミーズは取ってあるのよ、『まぼろし』のヒロイン:マリーが着ていた水着も保管してあるの。自分が出演した作品の衣装を一点づつ持っているのね。また着ようって訳じゃなくて、役が恋しくなるからね。
衣装は作品の人物になるための助けになるベクトルのようなものね。

サニエ:私はこの映画の中で書いていた日記を取ってあるわ。私が撮影時に感じた印象を書きとめてある小さな宝物。この日記を撫でるだけですぐに撮影のことが思い出せるのね。アラジンと魔法のランプみたいに。

ルベロンでの撮影では一日の終わりにはどんな気持ちだったのですか?自分の役のままで、映画の中の関係を引きずって、お互い出来るだけ距離を置こうとしていたのですか?

サニエ:私は逃げようとはしなかったわ。撮影の印象はどちらかというと少し祭司になったような感じだった。自分の役によく血を吸われてしまうの・・・だから正に私の印象を主題にしたこの作品に出られてとても嬉しかったの。とにかく監督からのプレッシャーと自分の好みにまかせてたくさん吸収できるようにしたわ。

ランプリング:私には一日の終わりはきちんと休めて眠れて、恋人や友人、子供たちに電話できることが大切ね・・・私を実生活とつなげてくれるから。でも映画を撮影する時は、少しは遠くにいる気分になるから。”いつもの”生活をおくっているよりもね。でも皆じぶんなりの逃げ方を持っているものよ・・・

サニエ:撮影が終わって困るのは、ありふれた日常に戻って行くことね。だって物凄い旅をしてきたって思えたところだったから!ほらきっと宇宙飛行士が帰還して来た時も同じ気分だと思う、俗世間を見てうんざりって感じで。でも彼らは旅をしてきたの!私たちも同じ気分だったわ。

この作品は英語で撮影されましたが、シャーロットはリュディヴィーヌのコーチだったのですか?

ランプリング:ええ。自分の言ってることが分るって、私にひっきりなしに聞いていたわ。そう彼女は特に英語のリズム感を掴んだって思う。

サニエ:時々は間違えていたわ。シャーロットが分りやすいように、文法的に間違えていないようにと気を配ってくれたのね。とにかく本物のコーチがいるのは嫌だったの。一人でなんとかしてみせるってプライドが自分にはあったから!それに監督が私を信頼してくれたから。それに撮影中はシャーロットと私は英語でしか話をしなかったから、私たちの絆がより深くなったと思う・・・

ランプリング:でもオゾン監督の英語も撮影が終わる頃には上達していたから、うかつな事な発言はできなかった(笑)

『スイミング・プール』は一体どう考えたら良いのか分らないパズルのような作品ですね。現実なのか?空想なのか?文学作品なのか?ラストはあらゆる解釈が可能だと思います。監督はあなた方にはヒントをくれたのですか?

ランプリング:いいえ。彼自身どんな結末を導き出したらいいのか分らないって、あの悪戯小僧のような笑い方をして言っていますね・・・

サニエ:この作品は空想するってことを模索しているんです。だから観客にも空想して欲しいわけです・・・決まった結末がないって言うのはとても寛大な監督の決断だと思うわ。

ランプリング:そう、その通りね。仕掛けておいて、「君はどう思う?」って彼自身の解答なしで質問を投げかけているのね。ずるいわ!

オゾン監督はよく前の作品が公開されるのに先立って次回作の構想が出来ていると聞きます。撮影中に新しい仕事の話をするのは大変なことでしょうか?

サニエ:場合によるわ。『スイミング・プール』の撮影中に『ピーターパン』のティンカーベル役を引き受けることにしたの。シャーロットは監督のP.J.ホーガンを知っていたから、彼女に最初に話したの。

ランプリング:オゾン監督の影響で、引き受けるかどうかとても迷っていたわね。彼に話したのは間違いだったのよ。監督には次回作の話をしちゃだめ(笑)彼にしたら、浮気されてるのと同じ気分になるから!

サニエ:そう、「なにをやっているの?どうして監督の意見なんか聞くのよ?厚顔ね」ってシャーロットに言われたわ。その後オーストラリアの話をしてくれて、この映画がもたらすチャンスとかも・・・それで自分のやりたいことをやってみようと決めてこの映画に出たの。シャーロットには色々とアドバイスしてもらったわの・・・ありがとう・・・

本作はカンヌ映画祭のコンペへ出品されています。シャーロットはカンヌ映画祭は既に経験済みですが・・・

ランプリング:そうね!公式セレクションへ出品された3本の作品に出演したわ。1976年にテネシー・ウィリアムが審査員長を務めた時に私も審査員をやらせてもらったの。それからセレモニーの司会もしたわね・・・審査員はまたやらせてもらいたいけど、ジル・ジャコブによると規則で2回は出来ないそうよ。審査員は本当に羨ましい環境なの。1日に2本の映画を見て、散歩したり誰にも邪魔されないし、インタヴューを受けることもないのよ!何であれ、カンヌ映画祭のコンペに出られるってことは、素晴らしい盛大な映画祭だし、素晴らしい作品に出たんだってことなの・・・それに今年はパトリス・シェローが審査員長でしょう。(ランプリングの『蘭の肉体』の監督でもある)

サニエ:私にとっては本当に炎の洗礼って感じよ。映画を観に来た映画祭のゲストでは通らないから!

ランプリング:今は、プレッシャーが凄いわね。実際アリーナに放り込まれたグラジエーターって気分ね。そこら中血だらけになるかもね。

サニエ:注目が集まって、足をすくわれそうな瞬間ね。神経的には自信を保つのが難しそう、期待に応えられるか、アリーナの最初の戦いに持ちこたえることができるかしら。開催が近づくにつれて心配なの・・・

同時に世界の他の出来事と比較すると、反応は少しクレイジーではないのですか?

ランプリング:気持ちがクレイジーとは言えないわ!絶対にね!特に自分が標的になって、集中砲火を浴びるのだとすればね。私たちはアーティストに過ぎないし、自分たちの気持ちや神経とか心配を持ちながら、毎日現実と直面するしかないわけだから。

サニエ:メディアに注目されればされるほど、人から質問を受ければ受けるほど、皆私たちのことを知ったような気になると思うの。それとは反対に自分は小さくで与えるイメージとのギャプに苦しむんじゃないかって。そのギャプが映画祭でより大きくなるのが私は凄く心配なの。でもシャーロットが全く冷静なのを見ると、安心するんだけど。

ランプリング:心配しないで、あなたの手をしっかり握ってあげる・・・私に付いて、本当のヒロインみたいに階段をあがって行きましょう。

サニエ:そうね、でも上映が終わって、お風呂に入れば気分が良くなると思うわ。その時になったら分ると思う。この映画のように幻想みたいなものなんだろうって・・・


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