西部戦線異状なし All Quiet on the Western Front
公開:
1930年
西部戦線異状なし
製作:
ユニヴァーサル・スタジオ

カール・レムリ・ジュニア
監督:
ルイス・マイルストン
原作:
エリッヒ・マリア・レマルク
脚本:
デル・アンドリューズ

マックスウェル・アンダーソン

ジョージ・アンダーソン
撮影:
アーサー・エディソン
音楽:
デヴィッド・ブロークマン
出演:
ルイ・エアーズ

ウィリアム・ベイクウェル

ラッセル・グリーソン

1915年、第一次世界大戦下のドイツの田舎町。 町は若者たちの出征によって異様な熱気に包まれていた。 高校生のポールたちは、学校の教師に愛国心を煽られて入隊を志願。 上官にしごかれる過酷な訓練を経て、配属された戦場は地獄絵図そのもので、ポールの友人たちも次々に命を落としてゆく。 第一次世界大戦を舞台に戦場で若くして死んでいった青年達の姿を描いた反戦映画の傑作。

1916年、エリッヒ・マリア・レマルクは友人とともにドイツ軍の一兵卒として第一次世界大戦に参戦し、西部戦線に配属された。 その後、戦場での体験を通じて戦場を悲惨さを生々しく書いたルポタージュ形式の小説『西部戦線異状なし』を29年に発表。 小説のタイトルは前線から司令部へ送られる電文の報告からとられた。 いくつもの出版社に出版を拒否されたが、発売されると15ヶ国語に翻訳されて世界中で350万部超える大ベストセラーとなった。 ユニヴァーサルの社長カール・レムリはドイツに赴いてレマルクから映画化権を獲得。 レムリはレマルク自身に主人公ポールを演じるよう勧めたが、自分は俳優でないし執筆で忙しいという理由から出演を断った。 監督には第一次世界大戦時に兵士向けの教育映画の製作に携わっていた、当時33歳のルイス・マイルストンを抜擢。 このベストセラー小説の映画化にあたってユニヴァーサルは費用を惜しまず、 ロサンゼルス近郊の広大な牧場地に軍のキャンプを作り、20エーカーを使って第一次世界大戦当時の戦場を完璧に再現。 砲弾の穴は実際にダイナマイトを爆発させて作り、そこに泥で濁った雨水を満たした。 さらに全長2.4キロの運河と、10エーカーにも及ぶフランスの村も作られた。 この映画のために12台の火炎放射器と20台のドイツ製榴弾砲が用意され、 黒色火薬20トンとダイナマイト10トンが使用されたが、これはロサンゼルス級の都市を爆破するには十分な火薬の量だった。 戦闘シーンの撮影は本物の戦場さながらで、監督のマイルストンは爆発によって破片が当り意識不明に陥ったこともあった。 キャストは総勢5000人にも及び、映画に登場する2000人のエキストラの兵士はいずれも退役軍人だった。 戦闘シーンはドイツ人だけでなく、フランス人、イギリス人、カナダ人、イタリア人もドイツの軍服を着て戦った。 また、エキストラの中には渡米したばかりで後に監督として『地上より永遠に』(53)や『我が命つきるとも』(66)などの傑作を手掛けるフレッド・ジンネマンもいた。 台詞監督として映画に参加していたジョージ・キューカーの推薦で、ルイ・エアーズが主役の青年兵ポール役に抜擢され、 彼の仲間の兵士を演じたのはいずれも19歳から22歳の若手俳優ばかりだった。 最初、ポールの母親には『グリード』(26)の喜劇女優のザス・ピッツが扮していたが、 試写会の観客はピッツが登場すると笑い出し、感動的なシーンが台無しになってしまった。 製作者のカール・レムリ・ジュニアは母親役をベリル・マーサーに変えて母親の登場シーンをすべて撮り直したが、 ヨーロッパには既にプリントが送られていたのでオリジナル版ではピッツが母親を演じている。 また、1930年当時はトーキー映画を上映出来る映画館が少なかったので、サイレント版とトーキー版の2種類が製作された。 ポーランドでは新ドイツ的だという理由から、ドイツでは逆に反ドイツ的だと非難されて共に上映が禁止された。 また、原作者のレマルクはナチスの台頭によって反戦作家として迫害され、39年にはアメリカに亡命して市民権を獲得。 主演のエアーズは第二次世界大戦が勃発すると良心的な戦闘拒否を宣言。当時の世論は彼の行為を非難したが、戦時中は看護兵として負傷兵の治療に当っていた。 戦争の無残さをまざまざと映し出した映画ながら、批評家と観客の両方から絶大な支持を集め、その年の興行収入トップ10に入る大ヒットを記録。 第3回アカデミー賞では4部門にノミネートされ、作品賞と監督賞の2部門に輝いた。

79年にはデルバート・マン監督によってリメイクされ、 マイルストンは48年にイングリッド・バーグマンを主演に迎えて再びレマルク原作の『凱旋門』を演出するが、これはメロドラマ色の強い作品になった。


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