十字砲火 Crossfire
公開:
1947年
十字砲火
製作:
RKOスタジオ

エイドリアン・スコット
監督:
エドワード・ドミトリク
原作:
リチャード・ブルックス
脚本:
ジョン・パクストン
撮影:
ロイ・ハント
音楽:
ロイ・ウェッブ
出演:
ロバート・ライアン

ロバート・ヤング

ロバート・ミッチャム

ある夜、一人の復員兵が一般市民を撲殺する事件が起こる。この残酷な殺人事件を担当した警部はその猟奇的な手口に疑問を持って、再調査を開始する。彼は兵士たちの協力を得ながら真犯人を突き止め、犯人の人種差別に満ちた恐るべき動機を知る。軍隊という聖域で起こった殺人事件解決に奔走する人々の葛藤を描いた骨太の殺人捜査ドラマ。

第二次世界大戦後、ハリウッドはそれまでタブー視されていた社会問題をテーマにするようになり、1947年に製作されたハリウッド映画の約三分の一が社会問題を扱っていた。 『十字砲火』もそんな社会問題に真っ向から挑んだ作品であるが、やがて映画監督として名を成すリチャード・ブルックスによる映画の原作小説『瓦礫の塹壕』は、彼の従軍中に実際に起こった同性愛者の殺人事件をもとに書き上げたもの。 しかし、1940年代当時のプロダクション・コードでは同性愛のキャラクターを描く事は固く禁止されていたうえに、当時の観客にも同性愛はタブー視されていて受け入れてもらえなかったため、 製作者のエイドリアン・スコットは原作の権利をRKO社に購入させるために、殺人者である復員兵モンティの性格を原作のホモセクシャルから人種差別主義者に設定し直して、殺人の動機を反ユダヤ人感情に置き換えさせた。 制作費50万ドル以下の低予算のBムービーとして製作され、ドミトリクはライティングやカメラアングルのリハーサル時間を削り、俳優たちの演技を中心に撮影を進めて20日間という短い期間で撮り上げる。 ドミトリクは、最初は明るく鮮明だった画調をストーリーの進行に沿って次第に暗く荒くしていくことによって、観客に最初は善人のイメージを持っていたローバート・ライアンが犯人である事を映画が進むうちに無意識に感じさせるようにさせる。 そのため、ドミトリクはライティングだけでなく、25ミリから50ミリまでのキャメラのレンズ使い分けて撮影を行った。 RKOの社長ドア・シャーリーはライバル・スタジオの20世紀フォックス社がローラ・Z・ホブソン原作の反ユダヤ人問題をテーマにした小説『紳士協定』の映画化権を手に入れたと知ると、スコットに『紳士協定』(47)より先に公開できるよう完成を急がせる。 その結果、今作はユダヤ人問題を扱った初めてのハリウッド映画として公開され、批評家の受けも良く、観客からも支持されて127万ドルを稼ぎ出すヒットとなった。 カンヌ映画祭では社会的映画賞を受賞し、第20回アカデミー賞では作品賞を含む5部門でノミネートされるもののひとつも取れずに、作品賞他3部門を獲得した『紳士協定』に惨敗した。 反ユダヤ人主義の復員兵を演じたライアンは高い評価を得るが、以後、殺人犯の役のイメージが付きまとってしまい、この映画に出たことを後悔するようになる。 ドミトリクとスコットはこの作品を最後に赤狩りに巻き込まれてしまい、 非米活動委員会への証言を拒否したハリウッド・テンの一員として入獄し、RKOは二人の契約を解除して、今作も反ユダヤ人主義をテーマにしているという理由から、アメリカでは初公開の3ヶ月後に一切の上映が禁止された。


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