孔雀夫人 Dodsworth
公開:
1936年
製作:
サミュエル・ゴールドウィン・プロダクション

サミュエル・ゴールドウィン
監督:
孔雀夫人
原作:
シンクレア・ルイス
脚本:
シドニー・ハワード
撮影:
ルドルフ・マテ
音楽:
アルフレッド・ニューマン
出演:
ルース・チャタートン

ウォルター・ヒューストン

メアリー・アスター

自動車工場の社長ダズワースは会社を売却し、妻フランと共に船で欧州旅行に出かける。 ロンドンの灯を見て興奮するダズワースを尻目に、フランは若いイギリス人男性との情事を楽しんでいた。 フランスで上流階級の生活に魅了されたフランは、観光に疲れた夫と別れてフランスに滞在。 中年実業家や若き男爵らと浮名を流すフランに腹を立てるダズワースだったが、船上で知り合ったイディスとナポリで再会。 知的で洗練されたイディスに思いを寄せるダズワースは、フランとの離婚を決意するが・・・。 名匠ウィリアム・ワイラーが、辛辣な熟年の愛を実力派俳優を起用して描いた大人の恋愛映画。

サミュエル・ゴールドウィンのもとでノーベル賞受賞した女流作家シンクレア・ルイスの小説『人類の戦士』(31)の脚色をしていたシドニー・ハワードは、ルイスが1929年に発表した『孔雀夫人』の映画化を提案。 2万ドルで小説の映画化権が手に入ると伝えるが、ゴールドウィンは興味を示さなかった。 そこで、ハワードはこの本を戯曲化し、ウォルター・ヒューストンの主演で大ヒットさせた。 舞台の成功によってゴールドウィンは映画化に興味を示すが、映画化権は16万ドルにまではねあがっていた。 シドニー・ハワードが映画の脚本も担当。当時ウォルター・ヒューストンは映画スターではなかったが、ゴールドウィンは彼の他にダズワースを演じる者はいないと考えヒューストンを抜擢。 フラン役にはルイス・チャタートンが扮し、イディス役には新人のロザリンド・ラッセルが考慮されるが、ベテランのメアリー・アスターを起用。 それまで脇役の多かったデヴィッド・ニーヴンが、フランの最初の恋人を演じることになった。 監督には『襤褸と宝石』(36)のグレゴリー・ラ・カヴァに決まりかけていたが、ゴールドウィンは『この三人』(36)での演出力を高く評価していたウィリアム・ワイラーを起用した。 撮影が始まると、ワイラーとチャタートンはダズワース夫人の性格を巡って対立。 自分が演じる役を好きになれないチャタートンは、フランの微妙な性格を演じることを否定して嫌な女として演じようとしていたが、 フランを複雑な性格の女だと考えたワイラーは、かつては夫を魅きつけた色香をまだ充分に持っている女性として描くべきだと説明。 二人の喧嘩は皮肉から始まり、サディスティックなまでにエスカレートして、逆上したチャタートンが監督の顔をひっぱたいて楽屋に閉じこもってしまったこともあった。 また、あらゆる面で完璧を求めたワイラーは、この映画の撮影に膨大な量のフィルムを使用。 ニーヴンのシーンでは、ワイラーはハリウッド・レポーター誌を読みながら何十回もやり直しを命じ、 しわくちゃに丸められた手紙がテラスに舞い落ちるシーンでは完璧なショットが撮れるまで午後一杯かけて何度も撮影した。 映画の撮影中、アスターは娘の養育権を巡って前夫と争っていたが、 夫側は彼女が母親にはふさわしくないという証拠として、アスターがハリウッドの有名人との交際をあからさまに記したとされる日記を暴露。 アスターは窮地に立たされたが、ゴールドウィンはスキャンダルの渦中にいた彼女を全面的に支持した。 結局、日記は破り取られた個所があったために証拠として認められず、アスターには共同親権が認められて、このスキャンダルが映画に影響することもなかった。 ワイラーの完全主義が祟って制作費はかさんだものの、ゴールドウィンは映画の出来に満足し、 それまでのゴールドウィンの作品の中でもっとも高く評価された映画になったが、興行的には大きな成功を収めることは出来なかった。 魅力的な人物が登場しないことが失敗の原因だと考えたゴールドウィンは、中年にさしかかったクラーク・ゲイブルを使って再映画化しようと考えたが実現できなかった。 第9回アカデミー賞では作品、監督賞を含む7部門にノミネートされ、室内装置賞を受賞。ヒューストンはニューヨーク批評家協会の主演男優賞を獲得した。


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