祖母の遺産でのんびりとした毎日を送るエルウッド。
彼は身長192センチの巨大空想ウサギ、ハーヴェイを連れ回り、相手構わず他人に姿の見えないハーヴェイを紹介していた。
弟の奇怪な行動が娘の縁談に影響するのではないかと恐れた姉のヴィータは、エルウッドを精神病院に入れようとする。
しかし、病院の医師や看護婦たちはエルウッドの純真さの虜となり、彼らも巨大ウサギを見るようになってしまう・・・。
味気ない生活を送る家族や医師たちが、空想好きの楽天家に翻弄される姿をほのぼのと描いたハートウォーミング・コメディの佳作。
女流作家メリイ・チェイスの舞台劇『ハーヴェィ』は、戦争末期の44年にブロードウェイの48丁目劇場で幕を開け、
そのファンタジックで心温まる内容が批評家からも観客からも好評を博して5年間ものロングランを記録する大ヒットとなり、チェイスはピュリッツァー文学賞を受賞した。
ユニヴァーサル社は、5年間の舞台公演で主人公のエルウッドを演じた7人の俳優の一人であるジェームズ・スチュワートに西部劇『ウィンチェスター銃’73』(50)への出演を依頼。
スチュワートをどうしても起用したいスタジオは、彼のお気に入りの舞台『ハーヴェィ』も映画化するという条件で出演契約を結ぶ。
監督には、ディアナ・ダービンをスターにした『オーケストラの少女』(37)などの心温まるドラマに定評のあるヘンリー・コスターが抜擢され、
エルウッドの姉ヴィータ役には舞台でも同じ役を演じた経験のある当時67歳のジョセフィン・ハルに決まり、精神病院の係員ウィルソン役も舞台で同じ役をつとめたジェシー・ホワイトが起用された。
タイトル・ロールのハーヴェイが、2つの穴の開いた帽子と油絵でしか姿を見せないために、俳優たちの演技も演出も非常に難しかったが、出来上がった映画は非常に完成度の高いものとなった。
スチュワートは、舞台版に続いて映画版でもエルウッド役を好演。
彼は自分の持ち味である、おっとりとしたイメージとヌーボーとした風貌を存分に生かし、
エルウッドがアルコール中毒であるという事実をあやふやにして、エルウッドと接する人々だけでなく観客にも空想のウサギの存在を信じさせる素晴らしい演技を披露した。
映画は批評家と観客の両方から好評を博して大きな成功を収め、
第23回アカデミー賞ではスチュワートの主演男優賞と助演女優賞の2部門にノミネートされて、エルウッドに振り回される姉を好演したハルが助演女優賞を獲得した。
その後、スチュワートは地方の舞台やロンドンの舞台で当り役となったエルウッド役を演じ続け、72年にテレビ用映画として再映画化された時もエルウッドを演じた。
また、96年にはテレビ用映画として2度目のリメイクが行われた。
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