50州のチャンピオン・タイトルを持つ強豪ミネソタ・ファッツに試合を挑むためニューヨークにやってきたエディ・フェルスン。
最初は有利に試合を進めていたものの、性格の弱さが災いして逆転負けしてしまう。
全財産を失い、酒に溺れたエディは足の不自由な詩人サラと同棲を始め、生活費を稼ぐために悪徳賭博師バートと組んで再び稼ぎに出るのだが…。
ビリヤードの勝負師たちの世界を非常なタッチで描いた硬派な人間ドラマ。
監督兼脚本家のロバート・ロッセンはウォルター・テヴィスの小説『ハスラー』の映画化権を獲得し、シドニー・キャロルと共に自ら脚色。
赤狩りに巻き込まれてブラックリストに載せられた後、転向を表明したロッセンの経験が脚本にも反映され、
当時重病に冒されていたロッセンはこれが最後の映画になることを覚悟して映画の製作に臨んだ。
若きビリヤード師エディ・フェルスン役にはポール・ニューマンを配し、
ミネソタ・ファッツ役には人気テレビ俳優ジャッキー・グリーソンを起用。
悪徳詐欺師バート役とヒロインのサラ役は共に舞台出身のジョージ・C・スコットとパイパー・ローリーが演じ、主演の二人に負けない存在感を披露した。
ポケット・ビリヤードのチャンピオン、ウイリー・モスモーニがテクニカル・アドバイザーとして雇われ、ニューマンとグリーソンにプロのキューさばきを指導。
モスモーニはビリヤード場にいるウィリー役で映画にも出演した。
前作『栄光への脱出』(60)で監督のオットー・プレミンジャーと対立したニューマンは、エディの役作りでは前作での嫌な思いも忘れるほどに没頭。
自宅のリビング・ルームにプール・テーブルを持ち込んでクランク・インまで練習を積み、
プロ・ビリヤード師としてのキューさばきを完璧に身につけただけでなく、本番の撮影では一箇所を除く全てのビリヤード・シーンを自分で演じてみせた。
特訓後、自分のビリヤードの腕に自信を持ったニューマンは、モスモーニから指導を受ける前からかなりの腕前だったグリーソンに1ゲーム50ドルで挑戦。
結果はグリーソンの圧勝だったが、ニューマンは腹いせに50ドルを1セント硬貨5000枚で支払った。
撮影は母国ドイツで『メトロポリス』(27)の特殊撮影を担当したユージン・シャフタンが担当。
暗く陰翳に富んだハスラーたちの世界を白と黒のコントラストの中に鮮やかに描き出した。
映画は批評家から絶賛されて、ニューヨーク批評家協会賞はその年の監督賞にロッセンを選出。
第34回アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされ、白黒撮影賞と白黒美術監督・装置賞の2部門を獲得。
ニューマン、グリーソン、ローリー、スコットの4人の主要キャストは、受賞は逃したものの全員演技賞にノミネートされる快挙を達成。
スコットはアカデミーの催しが本来の仕事よりも受賞争いに重点を置いているという理由からノミネートを拒否した。
エディ役はニューマンが演じた役の中で思い入れのあるものとなり、80年代に入って円熟した演技を披露するようになったニューマンは、
『レイジング・ブル』(80)でその才能を高く評価していたマーティン・スコセッシ監督を誘って続編『ハスラー2』(86)を企画。
ニューマンはスコセッシと共に脚本の段階から参加し、デヴィスが発表した続編小説ではなく25年後のエディの姿を描くオリジナル・ストーリーを創造。
トム・クルーズ扮する若者を最高のハスラーに育て上げていくうちに昔の情熱を取り戻すエディを魅力たっぷりに演じて念願のアカデミー主演男優賞に輝いた。
この映画に全ての情熱を注いだロッセンはこれが遺作とならず、64年にウォーレン・ビーティとジーン・セバーグ共演のドラマ『リリス』を撮って66年にこの世を去った。
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