或る夜の出来事 It Happened One Night
公開:
1934年
或る夜の出来事
製作:
コロムビア・スタジオ

ハリー・コーン

フランク・キャプラ
監督:
原作:
サミュエル・H・ホプキンス
脚本:
ロバート・リスキン
撮影:
ジョセフ・ウォーカー
音楽:
ルイス・シルバース
出演:
クラーク・ゲイブル

クローデット・コルベール

ウォルター・コノリー

ニューヨークの銀行家の一人娘で世間知らずのエリーはプレイボーイのキングとの婚約を父親に反対されたことに腹を立てて家を飛び出し、ニューヨークにいるキングに会いに行く為に大陸横断バスに乗り込む。エリーはバスの中で失業新聞記者のピーターと出会い、2人はいがみ合いながら旅を続けるものの、いつしか2人は互いに惹かれてゆく。大恐慌のアメリカを舞台に、じゃじゃ馬娘と新聞記者の珍道中をコミカルに描いて、スクリューボール・コメディという新たなジャンルを形成した作品。

33年、コロムビア社はその年の「コスモポリタン」誌に掲載されたサミュエル・H・ホプキンスが執筆した短編"Night Bus(夜行バス)"の映画権を5,000ドルで購入。『一日だけの淑女』を撮り終えたフランク・キャプラと脚本家のロバート・ラフキンが映画化に着手する。ラフキンはストーリーに手を加えて、男女のセックス劇を巧みで洗練された軽快な語り口で描き、特に未婚の男女はベッドを共に出来ないというヘイズ・オフィスのプロダクション・コードを逆手に取り、二つのベッドの間に掛かるベッド・シーツで作られた「ジェリコの壁」を使って二人の心の揺れを表現して清潔で痛快なベッド・シーンを演出したアイディアは素晴らしいの一言。当時、バスが関係する映画はどれも興行的に失敗していたためにタイトルは『It Happened One Night』に変更される。キャプラは主人公の二人にロバート・モンゴメリーとマーナ・ロイを希望、二人が専属契約を交わすM-G-Mに打診するが、あいにくモンゴメリーもロイも空いていなかった為、M-G-Mのボス、ルイス・B・メイヤーは当時給料の問題で反抗的だったM-G-Mの看板スターのクラーク・ゲイブルを罰の意味を込めて二流スタジオのコロムビアへ貸し出す。ヒロイン探しは難航を極め、クローデット・コルベール、ミレアム・ホプキンス、マーガレット・サリヴァン、コンスタンス・ベネットらに断られた後、コルベールが専属のパラマウント社と争っていると知ると、好機とばかりにもう一度話を持ちかける。映画に興味が無かったコルベールはこの話を断る代わりに、4週間の仕事で5,000ドルもの給料を要求する。しかし、コルベールの考えとは裏腹に、コロムビアのボス、ハリー・コーンは要求を呑み、彼女をヒロインに起用して、33年の11月から撮影は始まる。ニ流スタジオの映画に出ると、自分の名声に傷が付くと考えたゲイブルは最初は乗り気ではなかったものの、次第にキャプラの采配に慣れてゆき、彼がスクリーン上で築き上げてきた元気で気立ての良いキャラクターとは一味違ったチャーミングなキャラクター(キャプラ曰くゲイブル自身の性格を反映したキャラクター)を好演する。同じく最初から乗り気でなかったコルベールは、今作で知的なコメディエンヌという新たな魅力を披露するものの、ゲイブルとは反対に製作の間中キャプラの手を焼かせ、有名なヒッチハイクのシーンでもコルベールは自分の足を見せることを嫌がり、キャプラが足を見せるシーンの代役を探し出すと「自分の足でない」と言い出して、考えを改めて撮影に臨む。撮影が終了するや否やコルベールはサン・ヴァレーに休暇に出かけ、友人に「最悪の映画を撮り終えた」と語っていた。映画は1934年の2月の大恐慌の真っ只中に公開され、不況に落ち込む観客から絶大な支持を集めてその年最大のスリーパー(サプライズ)・ヒットを記録する。ゲイブルは今作の成功で名実共に大スターとなっただけでなく、彼が劇中で披露した下着を着ないファッションは、男性の間でシャツの売上を75%も落ち込ませるほどブームになる。また、今作はアカデミー賞の主要5部門(作品、監督、主演男優、主演女優、脚本)を初めて制覇する[主要5部門を受賞した作品は、この映画を含めて『カッコーの巣の上で』(75)と『羊たちの沈黙』(90)の3作品のみ]。自分が受賞するとは夢にも思っていなかったコルベールは、授賞式に参加せず汽車でニューヨークに向かおうとしていたが、彼女の受賞が決まるとアカデミーの係員が彼女の居所をつきとめて会場まで連れて行く。そして、コルベールが駅に戻るまでの7分間、鉄道会社は彼女のために汽車を待たせていた。


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