ジャズ・シンガー The Jazz Singer
公開:
1927年
ジャズ・シンガー
製作:
ワーナー・ブラザーズ・スタジオ

ダリル・F・ザナック
監督:
アラン・クロスランド
原作:
サム・ラファエルソン
脚本:
アルフレッド・A・コーン
撮影:
ハル・モーア
音楽:
ルイス・シルバース
出演:
アル・ジョルスン

メル・マカヴォイ

ワーナー・オーランド

ユダヤ教会で聖歌を先唱する司祭長ラビノウィッツの一人息子ジェイキーは、父親の跡を継ぐことを嫌って家出し、ジャック・ロビンの名でジャズ・シンガーとして生活費を稼ぎながら、ブロードウェイのスターになることを夢みていた。 女優メアリーの助けもあって彼は歌手として成功を収め、念願のブロードウェイでの舞台デビューのチャンスを手に入れる。 しかし、舞台開演の前日、ジェイキーは病気で倒れた父親に代わって先唱役を務めることを頼まれてしまい、彼は舞台に立って夢を実現するか、家業を継いで教会で歌うかの決断を迫られる。 それまでサイレント映画が主流だったハリウッド映画界に革命を起こした初のトーキー長編映画にして最初のミュージカル映画。

1922年、サム・ラファエルソンはラビの息子で歌手のアル・ジョンソンをモデルにした短編小説『The Day of Atonement (贖いの日)』発表。 その後、ラファエルソンは自ら小説を舞台用に脚色。舞台の主役は小説のモデルになったジョルスンが演じる予定だったが、ラファエルソンと意見が合わずに降板し、代わってジョージ・ジェッセルが起用される。 初めは『Prayboy (祈る男)』だったタイトルは『ジャズ・シンガー』に変更され、25年にブロードウェイで上演されると絶大な人気を博して300回を超えるロングランを記録。 舞台の映画化権はワーナー・ブラザーズ社によって5万ドルで買い取られた。 ワーナーはウェスタン・エレクトリック社が開発したディスク式トーキー「バイタフォン」を導入して、26年に効果音と伴奏音楽を映像にシンクロさせた『ドン・ファン』を公開。 映画が好評を博したので、ワーナー4兄弟の三男サムは、台詞と映像をシンクロさせた初の長編映画として『ジャズ・シンガー』の製作を企画する。 監督には当初エルンスト・ルビッチが予定されていたが、スタジオとルビッチとの契約が切れたこともあって、『ドン・ファン』の監督アラン・クロスランドが起用された。 主演は舞台版同様ジェッセルに決まっていたが、彼は演技に音声が加わることによって出演料は上がると考えて契約を破棄したため、スタジオは代役として舞台版を降りたジョルスンを抜擢。 ジョルスンは少ない出演料で喜んで出演を承諾し、出演料のほとんどをこの映画の製作とワーナーの株に投資した。 映画の筋は原作の舞台とほぼ同じだが、映画版にはラストで黒人の扮装をしたジェイキーが観客席にいる母親に向かって「My Mammy」を歌う感動的なシーンが新たに追加された。 ジョルスンは「Dirty hands, dirty face」を歌ったあと、次の歌につなげる前に脚本にない台詞「Wait a minute! Wait a minute! You ain't heard nothin' yet...(待ってくれ。待ってくれ。お楽しみはこれからだ!・・・)」を叫び、これが映画で初めて俳優が声を出して喋った台詞となった。 ジェイキーの父親を演じたワーナー・オランドの歌はジョセフ・デスケイによって吹き替えられ、声の吹き替えも『ジャズ・シンガー』が最初となった。 トーキーといっても、主な台詞は字幕で表示され、俳優が声を出して喋るのはわずか2場面だけだったが、1927年の10月6日にニューヨークのワーナー劇場で映画が公開されると、空前の大ヒットを記録。 ジョルスンがスクリーンで歌うことに観客は熱狂し、これ一本で国民的英雄となったジョルスンは、後に『ジョルスン物語』(46)と『ジョルスン再び歌う』(49)の2本の伝記映画が作られるほどの人気と名声を獲得する。 『ジャズ・シンガー』の成功によって、それまでトーキーが一時的なものだと考えていたハリウッドの各スタジオは一斉に映画のトーキー化を行い、翌28年には早くも全編トーキーの『ニューヨークの灯火』が公開された。

ワーナーは翌28年に再びジョルスンを起用してパート・トーキーの『シンギング・フール』を製作。配給収入が過去最高の400万ドルを記録して前作を上回る大ヒットとなる。45年にワーナーは『ジャズ・シンガー』のリメイクを計画したが『ジョルスン物語』の公開によって延期となり、7年後の52年にダニー・トーマス主演でリメイクされた。また、80年には歌手のニール・ダイヤモンド主演に迎えて舞台をロック音楽界に置き変えた3度目の映画化が行われた。


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